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第三章 イナズマ組
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しおりを挟むめっちゃ、個性的な女の子だなおいっ! どうやら、イナズマ組には変人しかいないみたいだと、呆れる飛華流だった。
「飛華流、こいつは相手にしなくていい」
永戸はそう言うと、飛華流の腕を引っ張って歩き出す。
「もう、永戸君の照れ屋さーん。後で寂しくなっても、知らないよっ?」
背を向けて自分から去っていく永戸に、愛羅はムスッとしてどこかへと姿を消した。
ツリーハウスから離れていく永戸に、飛華流は疑問を抱く。
「あ、あの……僕をアジトに連れていくのが目的なんじゃないんですか?」
「アジトには入れるつもりだったが……生憎、今日は満室だ。俺達は、昼行性でも夜行性でもねー。時間の縛りが無いから、好きな時に自由に動く。……だから、アジトの空き状況は日によってかなりバラバラだ」
飛華流は、永戸に更に質問を続ける。
「では……どこへ?」
「……お前を、菊谷さんに会わせる」
「……菊谷さん? ど、どなたですか?」
「……この組のボス」
永戸の言葉に、飛華流は体を震わせた。
「ボ、ボスッ? どうして、僕が……」
「ごちゃごちゃ言わず、黙ってついて来い」
今直ぐにでも逃げ帰りたい飛華流だったが、どうする事も出来ず、とぼとぼと進んでいく。
どうしようどうしようっ! 絶対に会いたくないんだけどっ!
積もった雪を踏みしめて歩いていく二人に向かい、小さな白く丸い塊が飛んでいく。そして、それは永戸の背中に命中した。
「おい、永戸―っ! お前よー、俺様の愛羅とさっき何してやがったー? あーん?」
永戸が振り返る先には、チャラそうな赤金髪の少年がツリーハウスのはしごにぶら下がっていた。その少年に、飛華流は見覚えがあった。
こ、こいつは……確か、武寧陽翔っ! この前、僕をボコボコにしたクソヤンキーだ。
「はあ……あいつがひっつき虫みてーに、張り付いてきただけだ」
ため息交じりに、永戸は陽翔に返事をした。すると、陽翔は気に入らなそうに永戸から視線を逸らす。そして、おどおどとしている飛華流にグレーの鋭い瞳を向けた。
「あっ? お前……この俺様に突進してきやがった、無礼なチビガキじゃねーかっ! 俺、お前の事ちゃんと覚えてんだからなー」
僕だってお前の事、しっかりと記憶に残ってるよっ! 心では強気な言葉を出す飛華流だが、陽翔にどう反応すればいいのかと戸惑っていた。
「ほら、お前もぼさっと突っ立ってねーで俺様に挨拶しろや」
陽翔は、飛華流にも雪玉を投げつけた。
「ご、ごめんなさい……宜しくお願い……します」
「飛華流……このアホも無視でいい」
飛華流にそう教え、永戸は再び歩き出す。そんな彼に、陽翔は腹を立てる。
「おい、待てやこらーっ! 俺様にそんな無礼な態度取ったら、土下座じゃー済まされねーぞ」
「…………」
「おい、永戸っ! 何、シカトしてんだよっ! 舐めてんのかー? あーん?」
手に抱えている雪の塊を、陽翔は永戸の背に投げつける。しかし、永戸は動じることなく、飛華流と共に枯れ木と枯れ木の間を通り抜けていく。
すると、陽翔はいくつもの雪玉を二人に次から次へと命中させた。
「本当に、礼儀がなってねーなーお前らはよーっ! 何か俺様に言う事があんじゃーねーの?」
「……言う事? ああ、確かにある……陽翔、お前しつこいぞ」
ピタッと足を止め、永戸はその場にしゃがみ込むと、両手に雪玉を掴み始めた。
「あっ? 永戸……やっぱお前、俺様に喧嘩売ってんな―。いつも言ってるけどよー、お前は俺の後輩なんだから敬語使えや。お前……菊谷さんとかにはちゃんと敬語じゃねーか」
「……俺は、尊敬してる人にしか敬語使わねーよ」
「あっ? 何だよそれ……つまり、お前は俺様を尊敬してねーって事かー? ぶっ殺すぞっ! あー?」
煩く吠え続ける陽翔を目掛け、永戸はサッカーボールくらいの大きさの雪玉を放り投げた。
「グアッ……永戸この野郎――――っ! お前なんか、死刑だからなーーっ!」
高速の雪玉を喰らった陽翔は、そう叫びながらはしごから転落した。そして、雪の山の中へ彼は姿を消すのだった。
一対一の雪合戦? ――――勝者、永戸。
雪に埋もれた陽翔を置いて、二人はどんどんと歩いていく。
「……命より価値のある、重いモノはねー。……そんな事、本当は俺だって分かってんだよ」
しばらくの沈黙の後、永戸はそう口にした。何の話かと飛華流が首を傾げていると、永戸は言葉を付け足す。
「……お前さっき、人の命を何だと思ってるんだって俺に聞いただろ。……その答えだ」
飛華流が永戸への返事を考えていた時、二人の前方にそこそこ大きさのある洞窟が現れた。
「着いた……菊谷さんの家」
永戸の言う通りなら、この洞窟がボスの住処なのかと飛華流は目を丸くさせる。
すると、洞窟の方から、たばこを吸った金髪の高身長な男が二人へ近づいてくる。怖そうな見た目のこの男の人が、イナズマ組のボスなのだろうか。飛華流は、生唾をゴクリと飲み込んだ。
明るく元気な金髪の少年は、永戸に声をかける。
「よー永戸! そこの可愛い顔した兄ちゃん誰?」
「前に話してた奴だ……連れてきた」
「ひ、飛華流です。宜しくお願いします」
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