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第二章 怪しい森
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しおりを挟むエミナーは、飛華流の血と髪を影の中へ入れた。
「はい、これで完成です。これから、この貴方の怨念を分割し、三人へ送ります。そうする事で、呪いが始まります」
飛華流が頷くと、エミナーは影を空中へ舞い上げ、呪文を唱える。
「苦しみと恨みから生まれし、悪のパワーよ……彼らを呪いたまえ彼らを呪いたまえっ!」
そうすると、影は小さく三つに分かれ、勢いよく壁をすり抜けて外へと出ていった。
「因みに、呪いはいつ発動するのか分かりません……お二人とも、この度は魔法相談所をご利用頂き、誠にありがとうございました」
深々と頭を下げるエミナーに、凛も礼を言う。
「エミナーちゃん、こちらこそありがとう……私が日常生活を不自由なく過ごせてるのは、エミナーちゃんのおかげだよ」
凛は、「私、そろそろ帰るね」と言い、スッと席を立った。そして、どこか悲しげな瞳で飛華流を見つめる。
「飛華流君には……少しがっかりしちゃったな」
それはこっちのセリフだよ。僕がいじめられている事を知っているはずなのに、凛はどうして僕を分かってくれないんだっ! 自分の気持ちを全く理解してはくれない凛に、飛華流も不満を感じていたのだった。
ふと飛華流は、窓の向こう側へ目をやった。辺りはすっかり闇に包まれ、天気も酷く荒れている。おい、嘘だろ。この激しい雨風の中、あの危険な道を通って帰らないといけないの?
「夜道は危険ですので、私が貴方達を家までワープ致しましょう。目を閉じ、頭の中に自分のご自宅を浮かべて下さい」
エミナーの親切な対応に、二人は救われた。
「エミナーちゃん、本当にありがとう。エミナーちゃんには、感謝してもしきれないよ」
「いえいえ、私に出来る事はこれくらいですから」
エミナーと微笑み合うと、凛は飛華流に声をかける。
「……飛華流君も、言われた通りにしてね」
凛に頷き、飛華流は凛と共に脳内でそれぞれのマイホームをイメージする。それから、数秒後――落ち着きのある優しい口調で、エミナーが飛華流の脳内へ話しかけてくる。
「はい、目を開けて下さい。ご自宅に到着しましたよ。……魔法相談所の料金は、後程請求させて頂きますので、宜しくお願い致します」
エミナーの声でまぶたを上げると、飛華流はずぶ濡れの状態で家の前に立っていた。
そんな事まで可能なのかと、飛華流はエミナーの持つ能力に最後まで驚かされていた。まるで、彼は夢でも見ていた気分だった。
だが、お金を取られるなんて知らなかったと、飛華流は焦る。どうしよう……いくらかかるのかな。
あの三人が不幸になるのなら、例え自分のお年玉全額を犠牲にしてでも、いくらかかろうと構わない。そう思う飛華流だった。
どうしてこんな町で、魔女が暮らしているのだろうか。湧き上がってきた疑問を、飛華流はいつかエミナーに聞いてみたくなった。
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