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ハラッパバッカのコのセカイ
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それから数分すると、トロンは、一人の男が岩山のふもとを沿うようにしてこちらに歩いてくるのを目にした。その一歩一歩が、大地に深い足跡を残すかのように強く、重かった。徐々に距離が縮まってくると、その姿がはっきりと見て取れた。ところが、それは土偶のような掘ル岩族とは似ても似つかない、異形の同族であった。ほっそりとした痩せ身に着流しを纏った放蕩の素浪人といった外見の岩像であり、その角帯には一振りの剣が抜き身のままで差してあった。恐らくは、その剣こそが歴戦の剣なのだろうが、それ以上に、持ち主ばかりに目が行ってしまう。あれは本当に掘ル岩族なのか、と至極当然の疑問を抱いた。やがて素浪人は、掘ル岩族王の前で立ち止まったかと思うと、猛禽類の如き鋭い目つきでトロンを睨みつけた。心まで見透かされるようなその鋭さに、トロンは心なしか武者震いを覚えた。ただ者ではない、と強敵の予感すらも覚えた。
「この同族、はるばる遠い東方からやって来た」掘ル岩族王は、素浪人と言葉を交わす事もなく、トロンに向けて言った。「我々とは、まるで別物に見えるが、れっきとした掘ル岩族の同族。ここから遥か東の自然、他の地域とかなり異なっている」
以前、ウェザーも同じような事を言っていた。要約すると、“五行で呼び出せる個体は、いささか特別であり、その形態は他の地域の個体と大きく異なっている”と。それから、“五行は、遥か東にある集落で学んだ”とも。ただ、今のトロンにとっては、姿形などどうでもいい事であり、それよりかは、その凄腕を予感させる風格に意識が集中していた。これから刃を交える相手としては不足なし、と心の中で己を奮い立たせ、好戦的な感情を引き出した。
「あらかじめ言っておくが、命の保証、できない」掘ル岩族王は、トロンに対し、事前に警告した。「いくら自然の仔でも、歴戦の剣の所有者を定める以上、手加減、なしだ」
「言われるまでもない」トロンは既に覚悟を決めていた。
トロンと素浪人は、岩山にほど近い平野に場所を移し、決闘の舞台は整った。戦いの行く末を遠巻きに見守る掘ル岩族王とラブ=ラドールの視線を感じつつ、トロンは、刃こぼれした愛剣を引き抜いたが、その様子を素浪人は顎に手を当て、注意深く眺めているだけであった。出方をうかがっているのか、それとも余裕ぶっているのか。どちらにせよ、油断できない相手には違いない。しかし、刃こぼれした剣では、相当に心もとない。それでも、他に得物はない。今この時に頼れるのは、狩人稼業の酸いも甘いも噛み分けた愛剣のみである。
トロンが精神統一を図り、抜刀すらしない相手に目線を見据えていると、背後の方から軽快な足音が聞こえ、集中が途切れてしまった。苛立ちながらも振り向くと、こちらに歩み寄ってくる一頭の巨大猪、及びそれにまたがるシフォンを見た。その緊張感のない姿には、思わずため息をついてしまった。猪がトロンのそばまで歩み寄ってくると、シフォンは飛び降り、微笑みかけながら声をかけてきた。
「あの、少しだけお話、いいですか?」
トロンは無言で小さく頷いた。
すると、シフォンは耳打ちのような小声でこう言った。「あの掘ル岩族の弱点は背中です…。背中に思い切り剣を突き立ててください…。そうすれば、倒せます…」
「なぜアンタが知っている」
「華奢な掘ル岩族は背中が脆い事が多い、と随分前にウェザーが言っていたのを聞いた事があります…」
「違う。なぜアンタは俺が掘ル岩族と戦おうとしているのを知っている?」
「それは……隠すつもりはなかったのですが、実はずっとあなたの後をつけていたのです…。ごめんなさい…」
わざわざ尾行してくるとは、自分は余程気に掛けられているようだった。ただ大人しいだけかと思ったが、お節介じみた行動を繰り返す事に躊躇がない。決して悪い気はしないし、二度も己の窮地を救った恩人であるため、彼女を無下にあしらう事はできなかった。それに有益な情報をも届けてくれた。掘ル岩族の弱点は背中であるようだが、その情報の出所はウェザーであり、それなりの信憑性はある。彼が正しい知識を持ち合わせている事は、これまで共に行動してきた自分がよく知っている。ならば、試してみる価値は十二分にある。トロンは黙ってシフォンに頷くと、再び素浪人と相対した。
「ご武運を…!」シフォンは、猪にまたがると、トロンから距離を取り、戦いを見守る姿勢を見せた。
トロンは剣先を素浪人に向け、勇ましく構えた。すると、素浪人は、歴戦の剣を悠々と抜刀し、ぶんぶんと二度だけ乱暴に素振りしたのち、腰を低く屈めて構えた。歴戦の剣、それは砲金色の長剣であり、その重厚な見た目とは裏腹に、素浪人は軽々と片手で携えている。向かい合う二人の周囲を流れる空気が一瞬だけ静止したかと思うと、まもなく素浪人がトロンめがけて疾風の如き速さで踏み込んできた。あの鈍重な体から、よくもこれほどの踏み込みを。トロンは素浪人の身のこなしに目を見張ったが、悠長な間は一切与えられず、瞬く間に襲い掛かってきた刃に気付くと、間一髪の所で鍔迫り合った。それからは息もつかせぬ剣戟の応酬となったが、トロンは素浪人の荒々しい剣技に終始圧倒されてしまった。やはり自分の見立ては間違っていなかった。その凄腕を身をもって体感すると、全身から冷や汗が噴き出るほどに心が怖気づいた。しかし、防戦一方といえども、虎視眈々と勝機を狙い、そして、とある決意を固めた。結果を顧みない全身全霊の一太刀を繰り出し、素浪人を一撃の下で打ち倒そうと決意した。たとえ歴戦の剣に受け止められようが、それすらも弾き飛ばし、その暗灰色の岩肌を切り裂いてやろうと試みた。猛撃をしのぎつつも、両腕に力を蓄え、刹那の隙を突いて全身全霊の一撃を繰り出した。案の定、素浪人は歴戦の剣で受け止めようとした。が、トロンの一太刀は歴戦の剣を宙高く弾き飛ばし、素浪人を無防備にさせた。最大の勝機が到来し、トロンは、かすかな望みを掴んだ。ところが、彼の愛剣は、過去最大の一撃を放ち終えると、ついに力尽き、刀身の中程から真っ二つに折れてしまった。掴んだ望みは早くも潰えた、かに見えたが、トロンは何も意に介してはいなかった。折れた剣を逆手に素早く持ち替えると、うろたえる素浪人に飛びかかり、その背中に刀身の断面を深々と突き立ててやった。敵の虚を突いたかに思われたが、やはり折れた剣では岩肌を貫く事ができず、その表面をわずかに抉っただけであった。望みは叶わず、無情に潰えた。背に折れた剣を突き立てながらも素浪人は、反撃に打って出るべく、トロンを振りほどき、片足で蹴り飛ばした。それから、ほど近い地面に突き刺さっていた歴戦の剣に向けて、右手のひらを突き出すと、剣は、ひとりでに宙に浮き、所有者の手の中へ引き寄せられていった。得物を取り戻した素浪人に対し、トロンは剣を失い、望みもなくし、小細工すら思いつかず、まさに万事休すであった。ここまでか、とトロンは潔く観念し、両目を強く閉じ、素浪人の繰り出した剣の一突きに胸を刺し貫かれた。
奇妙な事に、胸を貫かれた感覚はなく、それどころか、蚊ほどの痛みすらない。あるのは、胸を押し付けられるような緊迫感だけであった。おもむろに目を開けてみると、歴戦の剣は左脇の間を通り抜けており、肉体には、かすりもしていなかった。トロンは不可解に思ったが、素浪人は突如として足元に剣を突き立てたかと思うと、後ろに振り向き、そのままゆっくりと遠ざかっていった。その最中、背中に突き刺さったトロンの剣を引き抜くと、歴戦の剣のかわりに角帯に差した。場から去っていく素浪人に、トロンは目を丸くした。眼前には歴戦の剣が残されていたが、その意味する所は、つまり、勝利の二文字であった。
掘ル岩族王が呆然とするトロンに歩み寄るとこう告げた。「見事、善戦してみせたな、仔よ。あの同族、敗北を認め、また、歴戦の剣、お前の力を受け止めた。その剣、しばしお前に預ける。しかし、正式に与えられるの、一つ目の条件、成された時だ」
トロンは、歴戦の剣を引き抜くと、その刀身をまじまじと見つめた。錆びず、傷もなく、極めて美麗であったが、その遺灰を思わせる砲金色は、歴代の所持者によって蓄積された歴史の重さを伝えているかのようだった。
「それ、お前の好きなように使うがいい」掘ル岩族王は、トロンに背を向け、岩山に向かって歩き出した。「では、さらばだ、仔よ。我、そろそろ旅立ちの時を迎える。お前、真に自然な自然の仔であろうとすれば、また相まみえる事もあろう」
トロンは、掘ル岩族王の去り際を黙って見送った。岩山を離れ、気の向くままに世界を放浪するのだろう。結局、掘ル岩族はガゼットに助力してはくれなかったが、そのかわりに新たな武器を貸し与えていった。歴戦の剣、それは使い手の技術を記憶する剣であり、その力は刃を交えてみてもなお未知数である。
「お怪我はありませんか?」トロンの背後から猪に乗ったシフォンが近寄ってくると、心配そうに声をかけた。
トロンは、ふと周囲を見回してみた。ラブ=ラドールの姿が見当たらない。「あの男は、どこだ」
「ここにいますわ」シフォンは、猪のお尻に視線を向けた。
よく見ると、ラブ=ラドールは猪の陰に隠れていた。今は食べ物ではなく、猪に興味を示しているのか、左右に揺れる尾の動きをじっと観察しているようだった。
「ガゼットまでお送りしますわ。どうぞ乗ってください」シフォンはトロンに笑顔を向け、猪に二人乗りするよう促した。
来た道を徒歩で戻るよりかは、ましだろう。トロンは、生まれて初めて猪にまたがった。
「この同族、はるばる遠い東方からやって来た」掘ル岩族王は、素浪人と言葉を交わす事もなく、トロンに向けて言った。「我々とは、まるで別物に見えるが、れっきとした掘ル岩族の同族。ここから遥か東の自然、他の地域とかなり異なっている」
以前、ウェザーも同じような事を言っていた。要約すると、“五行で呼び出せる個体は、いささか特別であり、その形態は他の地域の個体と大きく異なっている”と。それから、“五行は、遥か東にある集落で学んだ”とも。ただ、今のトロンにとっては、姿形などどうでもいい事であり、それよりかは、その凄腕を予感させる風格に意識が集中していた。これから刃を交える相手としては不足なし、と心の中で己を奮い立たせ、好戦的な感情を引き出した。
「あらかじめ言っておくが、命の保証、できない」掘ル岩族王は、トロンに対し、事前に警告した。「いくら自然の仔でも、歴戦の剣の所有者を定める以上、手加減、なしだ」
「言われるまでもない」トロンは既に覚悟を決めていた。
トロンと素浪人は、岩山にほど近い平野に場所を移し、決闘の舞台は整った。戦いの行く末を遠巻きに見守る掘ル岩族王とラブ=ラドールの視線を感じつつ、トロンは、刃こぼれした愛剣を引き抜いたが、その様子を素浪人は顎に手を当て、注意深く眺めているだけであった。出方をうかがっているのか、それとも余裕ぶっているのか。どちらにせよ、油断できない相手には違いない。しかし、刃こぼれした剣では、相当に心もとない。それでも、他に得物はない。今この時に頼れるのは、狩人稼業の酸いも甘いも噛み分けた愛剣のみである。
トロンが精神統一を図り、抜刀すらしない相手に目線を見据えていると、背後の方から軽快な足音が聞こえ、集中が途切れてしまった。苛立ちながらも振り向くと、こちらに歩み寄ってくる一頭の巨大猪、及びそれにまたがるシフォンを見た。その緊張感のない姿には、思わずため息をついてしまった。猪がトロンのそばまで歩み寄ってくると、シフォンは飛び降り、微笑みかけながら声をかけてきた。
「あの、少しだけお話、いいですか?」
トロンは無言で小さく頷いた。
すると、シフォンは耳打ちのような小声でこう言った。「あの掘ル岩族の弱点は背中です…。背中に思い切り剣を突き立ててください…。そうすれば、倒せます…」
「なぜアンタが知っている」
「華奢な掘ル岩族は背中が脆い事が多い、と随分前にウェザーが言っていたのを聞いた事があります…」
「違う。なぜアンタは俺が掘ル岩族と戦おうとしているのを知っている?」
「それは……隠すつもりはなかったのですが、実はずっとあなたの後をつけていたのです…。ごめんなさい…」
わざわざ尾行してくるとは、自分は余程気に掛けられているようだった。ただ大人しいだけかと思ったが、お節介じみた行動を繰り返す事に躊躇がない。決して悪い気はしないし、二度も己の窮地を救った恩人であるため、彼女を無下にあしらう事はできなかった。それに有益な情報をも届けてくれた。掘ル岩族の弱点は背中であるようだが、その情報の出所はウェザーであり、それなりの信憑性はある。彼が正しい知識を持ち合わせている事は、これまで共に行動してきた自分がよく知っている。ならば、試してみる価値は十二分にある。トロンは黙ってシフォンに頷くと、再び素浪人と相対した。
「ご武運を…!」シフォンは、猪にまたがると、トロンから距離を取り、戦いを見守る姿勢を見せた。
トロンは剣先を素浪人に向け、勇ましく構えた。すると、素浪人は、歴戦の剣を悠々と抜刀し、ぶんぶんと二度だけ乱暴に素振りしたのち、腰を低く屈めて構えた。歴戦の剣、それは砲金色の長剣であり、その重厚な見た目とは裏腹に、素浪人は軽々と片手で携えている。向かい合う二人の周囲を流れる空気が一瞬だけ静止したかと思うと、まもなく素浪人がトロンめがけて疾風の如き速さで踏み込んできた。あの鈍重な体から、よくもこれほどの踏み込みを。トロンは素浪人の身のこなしに目を見張ったが、悠長な間は一切与えられず、瞬く間に襲い掛かってきた刃に気付くと、間一髪の所で鍔迫り合った。それからは息もつかせぬ剣戟の応酬となったが、トロンは素浪人の荒々しい剣技に終始圧倒されてしまった。やはり自分の見立ては間違っていなかった。その凄腕を身をもって体感すると、全身から冷や汗が噴き出るほどに心が怖気づいた。しかし、防戦一方といえども、虎視眈々と勝機を狙い、そして、とある決意を固めた。結果を顧みない全身全霊の一太刀を繰り出し、素浪人を一撃の下で打ち倒そうと決意した。たとえ歴戦の剣に受け止められようが、それすらも弾き飛ばし、その暗灰色の岩肌を切り裂いてやろうと試みた。猛撃をしのぎつつも、両腕に力を蓄え、刹那の隙を突いて全身全霊の一撃を繰り出した。案の定、素浪人は歴戦の剣で受け止めようとした。が、トロンの一太刀は歴戦の剣を宙高く弾き飛ばし、素浪人を無防備にさせた。最大の勝機が到来し、トロンは、かすかな望みを掴んだ。ところが、彼の愛剣は、過去最大の一撃を放ち終えると、ついに力尽き、刀身の中程から真っ二つに折れてしまった。掴んだ望みは早くも潰えた、かに見えたが、トロンは何も意に介してはいなかった。折れた剣を逆手に素早く持ち替えると、うろたえる素浪人に飛びかかり、その背中に刀身の断面を深々と突き立ててやった。敵の虚を突いたかに思われたが、やはり折れた剣では岩肌を貫く事ができず、その表面をわずかに抉っただけであった。望みは叶わず、無情に潰えた。背に折れた剣を突き立てながらも素浪人は、反撃に打って出るべく、トロンを振りほどき、片足で蹴り飛ばした。それから、ほど近い地面に突き刺さっていた歴戦の剣に向けて、右手のひらを突き出すと、剣は、ひとりでに宙に浮き、所有者の手の中へ引き寄せられていった。得物を取り戻した素浪人に対し、トロンは剣を失い、望みもなくし、小細工すら思いつかず、まさに万事休すであった。ここまでか、とトロンは潔く観念し、両目を強く閉じ、素浪人の繰り出した剣の一突きに胸を刺し貫かれた。
奇妙な事に、胸を貫かれた感覚はなく、それどころか、蚊ほどの痛みすらない。あるのは、胸を押し付けられるような緊迫感だけであった。おもむろに目を開けてみると、歴戦の剣は左脇の間を通り抜けており、肉体には、かすりもしていなかった。トロンは不可解に思ったが、素浪人は突如として足元に剣を突き立てたかと思うと、後ろに振り向き、そのままゆっくりと遠ざかっていった。その最中、背中に突き刺さったトロンの剣を引き抜くと、歴戦の剣のかわりに角帯に差した。場から去っていく素浪人に、トロンは目を丸くした。眼前には歴戦の剣が残されていたが、その意味する所は、つまり、勝利の二文字であった。
掘ル岩族王が呆然とするトロンに歩み寄るとこう告げた。「見事、善戦してみせたな、仔よ。あの同族、敗北を認め、また、歴戦の剣、お前の力を受け止めた。その剣、しばしお前に預ける。しかし、正式に与えられるの、一つ目の条件、成された時だ」
トロンは、歴戦の剣を引き抜くと、その刀身をまじまじと見つめた。錆びず、傷もなく、極めて美麗であったが、その遺灰を思わせる砲金色は、歴代の所持者によって蓄積された歴史の重さを伝えているかのようだった。
「それ、お前の好きなように使うがいい」掘ル岩族王は、トロンに背を向け、岩山に向かって歩き出した。「では、さらばだ、仔よ。我、そろそろ旅立ちの時を迎える。お前、真に自然な自然の仔であろうとすれば、また相まみえる事もあろう」
トロンは、掘ル岩族王の去り際を黙って見送った。岩山を離れ、気の向くままに世界を放浪するのだろう。結局、掘ル岩族はガゼットに助力してはくれなかったが、そのかわりに新たな武器を貸し与えていった。歴戦の剣、それは使い手の技術を記憶する剣であり、その力は刃を交えてみてもなお未知数である。
「お怪我はありませんか?」トロンの背後から猪に乗ったシフォンが近寄ってくると、心配そうに声をかけた。
トロンは、ふと周囲を見回してみた。ラブ=ラドールの姿が見当たらない。「あの男は、どこだ」
「ここにいますわ」シフォンは、猪のお尻に視線を向けた。
よく見ると、ラブ=ラドールは猪の陰に隠れていた。今は食べ物ではなく、猪に興味を示しているのか、左右に揺れる尾の動きをじっと観察しているようだった。
「ガゼットまでお送りしますわ。どうぞ乗ってください」シフォンはトロンに笑顔を向け、猪に二人乗りするよう促した。
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