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四章 孤軍遠征
29、危なくなったら手を借りる
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「危なくなったら手を借りるさ。島の支部には、強い奴が大勢いるんだろ?」
「むやみに戦いをするなと元帥がお命じになった以上、我々をもってしても、ルージュから約束の地を奪還する機会を窺うばかりだ。シチューリア島支部に所属する騎士は、敵の本拠地に身を置いているわけだから、四六時中に渡る警戒はもちろんの事、ルージュとの決戦に備えて日々の鍛錬は怠っていない」
「約束の地って、ルージュの本拠地になってたんだっけ」
「かつては平原だったが、ルージュが占拠してからというものの、今では湖にほど近い地形へと様変わりしてしまっている。水精霊が寄り集まってできた不浄の水溜まりだ。水精霊は、水の身体を持っているから、海や川などの水気の多い場所で有利となる。奴らは、我々に土地を奪還されないよう、姑息な手段をもって備えているのだ。この際はっきり言っておく。単身でルージュを壊滅させるのは不可能だ」
「なんだって構わない。どうせボスを討ち取れば、それで終わりだ。IDの首さえ取れればな」
「どうやら俺の話を理解していないようだな。だったら、その目にしかと焼き付けなさい。最前線の過酷さを」
そのアマクサの尊大な態度が気に入らなかったのか、メロウは、眉をひそめた。「あなた、ノノバラの同僚のくせして、どうして凄んだりするのよ?」
アマクサは、メロウに視線を移すなり、ため息をついた。「無関係な女が紛れ込んでいるな。ベネチャンに着いたら、即刻自宅に引き返しなさい。赤獣の女王の活動は、そこに所属する騎士によってのみ行われる崇高なものであって、お前のような女がしゃしゃり出て…」
その言葉を遮るように、メロウは、アマクサの頬を平手打ちして、鈍い音を鳴り渡らせた。「あたし好みの良い音がしたわね」
女子のものとは思えぬほどに強烈であったので、アマクサは、メロウに一抹の恐れを抱き、黙り込んだ。ノノバラもまた、心ともなく恐れて口をつぐんだので、以降は静かな通航となった。
「むやみに戦いをするなと元帥がお命じになった以上、我々をもってしても、ルージュから約束の地を奪還する機会を窺うばかりだ。シチューリア島支部に所属する騎士は、敵の本拠地に身を置いているわけだから、四六時中に渡る警戒はもちろんの事、ルージュとの決戦に備えて日々の鍛錬は怠っていない」
「約束の地って、ルージュの本拠地になってたんだっけ」
「かつては平原だったが、ルージュが占拠してからというものの、今では湖にほど近い地形へと様変わりしてしまっている。水精霊が寄り集まってできた不浄の水溜まりだ。水精霊は、水の身体を持っているから、海や川などの水気の多い場所で有利となる。奴らは、我々に土地を奪還されないよう、姑息な手段をもって備えているのだ。この際はっきり言っておく。単身でルージュを壊滅させるのは不可能だ」
「なんだって構わない。どうせボスを討ち取れば、それで終わりだ。IDの首さえ取れればな」
「どうやら俺の話を理解していないようだな。だったら、その目にしかと焼き付けなさい。最前線の過酷さを」
そのアマクサの尊大な態度が気に入らなかったのか、メロウは、眉をひそめた。「あなた、ノノバラの同僚のくせして、どうして凄んだりするのよ?」
アマクサは、メロウに視線を移すなり、ため息をついた。「無関係な女が紛れ込んでいるな。ベネチャンに着いたら、即刻自宅に引き返しなさい。赤獣の女王の活動は、そこに所属する騎士によってのみ行われる崇高なものであって、お前のような女がしゃしゃり出て…」
その言葉を遮るように、メロウは、アマクサの頬を平手打ちして、鈍い音を鳴り渡らせた。「あたし好みの良い音がしたわね」
女子のものとは思えぬほどに強烈であったので、アマクサは、メロウに一抹の恐れを抱き、黙り込んだ。ノノバラもまた、心ともなく恐れて口をつぐんだので、以降は静かな通航となった。
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