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本編
公爵は女性執事に永遠を希う
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昨夜、自分に好きだと囁いてくれた彼女が、昨夜、肌を重ね、うれしいと自分を受け止めてくれた彼女が、遠ざかっていく。
朝早く屋敷から出ていく馬車を、リチャードは軋むような胸の痛みを覚えながら寝室の窓から見送っていた。
馬車がその姿を消しても、彼は窓から動こうとせず、そのまま馬車の消えた景色を見つめ続けていた。
どれだけの時間、そうしていただろう。
彼女が消えたことをようやく認めたリチャードは、目を伏せた。
どこかで期待をしていた。
肌を重ねたことで、自分の想いが伝わることを。
彼女が自分と同じ想いを返してくれることを。
絹糸のような栗色の髪と、緑の大きな瞳を持つ、自分より小さな少女が、恥ずかしそうに頬を染めながら、鈴を振るような声で挨拶をくれたときに、彼女をこの世の何より可愛いと思った。
愛らしい彼女が初めてリチャードの為にヴァイオリンを奏でたときに、リチャードはもう彼女に囚われていた。
ずっと彼女を待ち続けていた。彼女が自分に想いを返してくれる日を。
それなのに――、
その音が耳に入ったとき、リチャードは愕然とした。
彼女の音は聞く者の胸を引き千切るような、哀切の色を帯びていた。
彼女が今まで奏でたことのない、身を切るような恋の切ない想いが響き渡る。
―― 一体、誰がこの音を彼女から引き出したのだ。
――なぜ、自分ではないのか。
荒れ狂う感情のままアマリーに問いただしたい思いを、笑顔の下で拳を握りしめて押し殺し、リチャードは、アマリーの音を、彼女の恋を聴いていた。
演奏が終わっても、リチャードは彼の視線に気づきもしないアマリーを見つめ続けた。目を逸らせなかったと言うべきかもしれない。
アマリーが楽器を仕舞う時、彼女の奏でた音そのものの表情で、あの男と見交わし、頷く姿を目にした。
己を焼けつくすような激情を抑え込み、何とか平静を装った帰路の途で、彼には絶望が待っていた。黙して馬車の窓から外を眺める彼女の姿から、彼女が大きな決断をしたことを悟ったのだ。
自分から離れ、あの男の下へ行くと。
彼女が自分から離れる。それだけは、起こらないと思っていた。けれども、彼女は執事としてあっさりその決断をしたのだ。
彼女が自分と同じ想いを抱いてくれていないことは知っていた。
14歳のあの日、「側に居る」と誓いをくれた彼女は、翌日に絹糸のような美しい栗色の髪を切り捨て、リチャードにそれを教えた。
アマリーに執事という立場で隔てを置かれたリチャードは、自分の腕の中で陽だまりのような笑顔を見せてくれる少女を失った。
14歳と12歳では「側に居る」という意味が違うのだと、彼は自分を慰めた。
幼い彼女が恋を知るまで、待つことを決めた。
彼女が自分から離れていくことはないのだから――。
けれども彼女はそれすらもリチャードに残してはくれない。
絶望と、熾火のようにくすぶり続ける妬心から、リチャードは力づくで彼女を引き留めようとした。
そして、リチャードは、彼女が自分に想いを向けてくれたことを知る。
彼女が自分への恋を知ってくれたという歓喜は続かなかった。彼女は想いをくれても、隔ては置いたままだった。執事のままだった。「彼の幸せのために」離れていく。
彼女が自分に一時を捧げてくれたあの時間は、リチャードには、甘く、そしてやるせない一時だった。
彼女と結ばれるときは、彼女が自分と同じ想いを持ってくれたときだと願っていた。
彼への想いで、立場も身分も乗り越える覚悟を持ってくれたときだと思っていた。
それなのに、彼女は彼から離れる覚悟の為に、一時を捧げたのだ。
結局、14歳のあの時と変わらなかった。彼女と自分とは同じ想いではないのだ。
リチャードは息を吐き、独り言ちる。
「アマリー。もう待ってはあげないよ」
もう7年も待った。
彼女の恋情が自分にあるなら、彼女に覚悟がなくとも、待つことなどしない。
待って誰かに彼女を奪われる隙など消し去るのみだ。
彼女を手に入れる。
「伯爵がいつ乗り込んでこられるか分かりません。着替えて下さい」
リチャードの物思いは、いつもよりはっきりと硬い声で、主人を窘める家令のジェイムスに遮られた。
リチャードは苦笑し、窓から離れ、家令に向き直った。
アマリーは露も知らないが、アマリーの乗った馬車の行き先は、ヴァイオリンの師匠の所ではない。あの男の所に行かせるはずもない。
彼女の行き先は彼女の祖父がいるモートン伯爵家だ。
彼女が眠りに落ちた後、リチャードは書状を認め、ジェイムスを叩き起こし、朝一番に伯爵家に先触れを出すように指示を出した。
家令として非の打ちどころのないジェイムスは、夜中に起こされたことに不満は見せなかったが、先触れとアマリーを伯爵家に送り出す件を伝えられると、彼女の身に何が起こったのか察したのだろう。
職務で許される範囲を超えて、非難の眼差しを主人に向けた。
そして硬い声で「あと半年が待てなかったのですか」と非難を言葉にまで表してきた。
今朝になっても、彼の怒りは続いているようだ。
リチャードは着替えを準備し始めたジェイムスを見遣り、金の髪をかき上げ苦笑した。
「伯爵が乗り込んできたら、式を早めてもらうよう説得するだけだ」
「一発殴られてしまわれなさいませ」
職務で許される範囲を超えて容赦のない家令の返しに、リチャードは肩を竦めた。モートン伯爵ハーベイは若いころ軍に所属していたこともある。実際に殴られる可能性はあるだろう。
殴られるくらい、彼女を手に入れられるなら安いものだ。
リチャードの青の瞳は、アマリーに見せたことのない強かな光を見せた。
彼女が恋を知るまで待つことを決めたが、ただ見守るだけではなかった。
身分も立場も乗り越える覚悟などとうに決めていた彼は、彼女の隔てを取り払うために、着々と準備を始めた。
ジェイムスと謀って、執事に必要な知識だと言いくるめ、両親が亡くなってからもアマリーに貴族の令嬢の教育を受け続けさせた。
領地を回るときも、事業の取引先と会談するときも、執事である彼女を常に連れて、彼女を紹介した。彼女の存在を伝え、つながりを築いてきたのだ。
その際、モートン伯爵ハーベイの孫娘であることもしっかりと伝え、将来の布石を打っていた。
彼の愛しい執事が、無情にもご令嬢たちとの仲を取り持とうとし始めれば、お茶会を開いてご令嬢たちを見定めた。身分を持たないアマリーをあからさまに見下す令嬢は、公爵家の総力を挙げて調べ上げ、弱みを洗い出し、耳元に囁いて黙らせた。
弱みを掴めなかった令嬢は、外国の貴族と縁づかせ、遠地へ追いやった。
彼女がヴァイオリン奏者として夜会に参加し始めてからは、リチャードの裏の仕事は楽になった。彼女のヴァイオリンに惚れこむご婦人が現れたのだ。侯爵夫人であるその女性は自らアマリーの社交界での後見の役割を果たしてくれている。
夫人の取次で、社交界で評判のドレスデザイナーである伯爵令嬢に、アマリーの式のドレスを製作してもらうことを快諾してもらえた。昨夜、夜会で真っ先に礼を述べると、令嬢は祝意を返し、最優先で取り掛かることまで約束してくれた。
7年の間、外堀は埋めてきたのだ。
彼女が成人を迎えて、リチャードは最後の仕上げに入っていた。
アマリーの祖父、ハーベイに、彼女を養女に迎え、貴族の立場を与えるように迫ったのだ。
ハーベイはそもそもアマリーを手元に引き取りたかったのだろう。一つの条件を付けるのみで、養女に迎えることをその場で承諾した。
娘を勘当し素直という言葉を捨て去ったハーベイが、娘の忘れ形見であるアマリーへ分かりにくい愛情を傾けていることは、公爵家にはお見通しの事であった。
アマリーを公爵家に引き取ってすぐ、公爵家の事業とこれまで取引のなかった伯爵家は欠かせないほどの大きな取引先となった。
アマリーが執事となってからは、取引先として公爵家に足を運び、もてなしの準備をするアマリーに嫌味を吐きながら、結局は、アマリーが部屋から退出すれば、ドアを見つめてしばらくは動かない。
そのようなハーベイを見続けてきたリチャードは、ハーベイの承諾に驚くことはなかったものの、付け加えられた条件には目を見開いた。
――娘になるからには、結婚式まではハーベイの手元で暮らす。
つまり、アマリーを伯爵家に送り出したのは、既定の事だった。
時期は早まってしまったが。
彼女に求婚もできていないけれど――
リチャードは目を伏せた。
今の彼女に求婚すれば、彼女は執事として姿を消すだろう。今朝のように。
それぐらいなら、求婚して彼女の頬を染め上げ、幸せな答えを囁かれる夢など、いくらでも捨てられる。
決して手放さないものは決まっている。
リチャードは強い意志を込めて、言葉を紡いだ。
「アマリー。君を離すことなどあり得ない」
君の夢は、君と僕で叶えればいい。
公爵家のテーブルは、君と僕で築く家族で埋めればいい。
お茶の時間に君のヴァイオリンを聴くのは、僕と、僕たちの子どもたちだ。
もちろん、僕たちの子どもたちにヴァイオリンを教えるのは君だ。
リチャードは夢を近い将来の現実にするため、執事との一時の記憶が残る寝室のドアを閉めた。
伯爵家で主人の性格が災いして贈られることのなかったドレスに着替えたアマリーの首元と鎖骨にリチャードの印を見たハーベイが、青筋を立てて公爵家に乗り込み、渾身の一撃をリチャードに放ってから3か月後、
公爵リチャードは、彼の愛しい執事を公爵夫人として取り戻す。
――神の前で永遠の誓いを交わして。
朝早く屋敷から出ていく馬車を、リチャードは軋むような胸の痛みを覚えながら寝室の窓から見送っていた。
馬車がその姿を消しても、彼は窓から動こうとせず、そのまま馬車の消えた景色を見つめ続けていた。
どれだけの時間、そうしていただろう。
彼女が消えたことをようやく認めたリチャードは、目を伏せた。
どこかで期待をしていた。
肌を重ねたことで、自分の想いが伝わることを。
彼女が自分と同じ想いを返してくれることを。
絹糸のような栗色の髪と、緑の大きな瞳を持つ、自分より小さな少女が、恥ずかしそうに頬を染めながら、鈴を振るような声で挨拶をくれたときに、彼女をこの世の何より可愛いと思った。
愛らしい彼女が初めてリチャードの為にヴァイオリンを奏でたときに、リチャードはもう彼女に囚われていた。
ずっと彼女を待ち続けていた。彼女が自分に想いを返してくれる日を。
それなのに――、
その音が耳に入ったとき、リチャードは愕然とした。
彼女の音は聞く者の胸を引き千切るような、哀切の色を帯びていた。
彼女が今まで奏でたことのない、身を切るような恋の切ない想いが響き渡る。
―― 一体、誰がこの音を彼女から引き出したのだ。
――なぜ、自分ではないのか。
荒れ狂う感情のままアマリーに問いただしたい思いを、笑顔の下で拳を握りしめて押し殺し、リチャードは、アマリーの音を、彼女の恋を聴いていた。
演奏が終わっても、リチャードは彼の視線に気づきもしないアマリーを見つめ続けた。目を逸らせなかったと言うべきかもしれない。
アマリーが楽器を仕舞う時、彼女の奏でた音そのものの表情で、あの男と見交わし、頷く姿を目にした。
己を焼けつくすような激情を抑え込み、何とか平静を装った帰路の途で、彼には絶望が待っていた。黙して馬車の窓から外を眺める彼女の姿から、彼女が大きな決断をしたことを悟ったのだ。
自分から離れ、あの男の下へ行くと。
彼女が自分から離れる。それだけは、起こらないと思っていた。けれども、彼女は執事としてあっさりその決断をしたのだ。
彼女が自分と同じ想いを抱いてくれていないことは知っていた。
14歳のあの日、「側に居る」と誓いをくれた彼女は、翌日に絹糸のような美しい栗色の髪を切り捨て、リチャードにそれを教えた。
アマリーに執事という立場で隔てを置かれたリチャードは、自分の腕の中で陽だまりのような笑顔を見せてくれる少女を失った。
14歳と12歳では「側に居る」という意味が違うのだと、彼は自分を慰めた。
幼い彼女が恋を知るまで、待つことを決めた。
彼女が自分から離れていくことはないのだから――。
けれども彼女はそれすらもリチャードに残してはくれない。
絶望と、熾火のようにくすぶり続ける妬心から、リチャードは力づくで彼女を引き留めようとした。
そして、リチャードは、彼女が自分に想いを向けてくれたことを知る。
彼女が自分への恋を知ってくれたという歓喜は続かなかった。彼女は想いをくれても、隔ては置いたままだった。執事のままだった。「彼の幸せのために」離れていく。
彼女が自分に一時を捧げてくれたあの時間は、リチャードには、甘く、そしてやるせない一時だった。
彼女と結ばれるときは、彼女が自分と同じ想いを持ってくれたときだと願っていた。
彼への想いで、立場も身分も乗り越える覚悟を持ってくれたときだと思っていた。
それなのに、彼女は彼から離れる覚悟の為に、一時を捧げたのだ。
結局、14歳のあの時と変わらなかった。彼女と自分とは同じ想いではないのだ。
リチャードは息を吐き、独り言ちる。
「アマリー。もう待ってはあげないよ」
もう7年も待った。
彼女の恋情が自分にあるなら、彼女に覚悟がなくとも、待つことなどしない。
待って誰かに彼女を奪われる隙など消し去るのみだ。
彼女を手に入れる。
「伯爵がいつ乗り込んでこられるか分かりません。着替えて下さい」
リチャードの物思いは、いつもよりはっきりと硬い声で、主人を窘める家令のジェイムスに遮られた。
リチャードは苦笑し、窓から離れ、家令に向き直った。
アマリーは露も知らないが、アマリーの乗った馬車の行き先は、ヴァイオリンの師匠の所ではない。あの男の所に行かせるはずもない。
彼女の行き先は彼女の祖父がいるモートン伯爵家だ。
彼女が眠りに落ちた後、リチャードは書状を認め、ジェイムスを叩き起こし、朝一番に伯爵家に先触れを出すように指示を出した。
家令として非の打ちどころのないジェイムスは、夜中に起こされたことに不満は見せなかったが、先触れとアマリーを伯爵家に送り出す件を伝えられると、彼女の身に何が起こったのか察したのだろう。
職務で許される範囲を超えて、非難の眼差しを主人に向けた。
そして硬い声で「あと半年が待てなかったのですか」と非難を言葉にまで表してきた。
今朝になっても、彼の怒りは続いているようだ。
リチャードは着替えを準備し始めたジェイムスを見遣り、金の髪をかき上げ苦笑した。
「伯爵が乗り込んできたら、式を早めてもらうよう説得するだけだ」
「一発殴られてしまわれなさいませ」
職務で許される範囲を超えて容赦のない家令の返しに、リチャードは肩を竦めた。モートン伯爵ハーベイは若いころ軍に所属していたこともある。実際に殴られる可能性はあるだろう。
殴られるくらい、彼女を手に入れられるなら安いものだ。
リチャードの青の瞳は、アマリーに見せたことのない強かな光を見せた。
彼女が恋を知るまで待つことを決めたが、ただ見守るだけではなかった。
身分も立場も乗り越える覚悟などとうに決めていた彼は、彼女の隔てを取り払うために、着々と準備を始めた。
ジェイムスと謀って、執事に必要な知識だと言いくるめ、両親が亡くなってからもアマリーに貴族の令嬢の教育を受け続けさせた。
領地を回るときも、事業の取引先と会談するときも、執事である彼女を常に連れて、彼女を紹介した。彼女の存在を伝え、つながりを築いてきたのだ。
その際、モートン伯爵ハーベイの孫娘であることもしっかりと伝え、将来の布石を打っていた。
彼の愛しい執事が、無情にもご令嬢たちとの仲を取り持とうとし始めれば、お茶会を開いてご令嬢たちを見定めた。身分を持たないアマリーをあからさまに見下す令嬢は、公爵家の総力を挙げて調べ上げ、弱みを洗い出し、耳元に囁いて黙らせた。
弱みを掴めなかった令嬢は、外国の貴族と縁づかせ、遠地へ追いやった。
彼女がヴァイオリン奏者として夜会に参加し始めてからは、リチャードの裏の仕事は楽になった。彼女のヴァイオリンに惚れこむご婦人が現れたのだ。侯爵夫人であるその女性は自らアマリーの社交界での後見の役割を果たしてくれている。
夫人の取次で、社交界で評判のドレスデザイナーである伯爵令嬢に、アマリーの式のドレスを製作してもらうことを快諾してもらえた。昨夜、夜会で真っ先に礼を述べると、令嬢は祝意を返し、最優先で取り掛かることまで約束してくれた。
7年の間、外堀は埋めてきたのだ。
彼女が成人を迎えて、リチャードは最後の仕上げに入っていた。
アマリーの祖父、ハーベイに、彼女を養女に迎え、貴族の立場を与えるように迫ったのだ。
ハーベイはそもそもアマリーを手元に引き取りたかったのだろう。一つの条件を付けるのみで、養女に迎えることをその場で承諾した。
娘を勘当し素直という言葉を捨て去ったハーベイが、娘の忘れ形見であるアマリーへ分かりにくい愛情を傾けていることは、公爵家にはお見通しの事であった。
アマリーを公爵家に引き取ってすぐ、公爵家の事業とこれまで取引のなかった伯爵家は欠かせないほどの大きな取引先となった。
アマリーが執事となってからは、取引先として公爵家に足を運び、もてなしの準備をするアマリーに嫌味を吐きながら、結局は、アマリーが部屋から退出すれば、ドアを見つめてしばらくは動かない。
そのようなハーベイを見続けてきたリチャードは、ハーベイの承諾に驚くことはなかったものの、付け加えられた条件には目を見開いた。
――娘になるからには、結婚式まではハーベイの手元で暮らす。
つまり、アマリーを伯爵家に送り出したのは、既定の事だった。
時期は早まってしまったが。
彼女に求婚もできていないけれど――
リチャードは目を伏せた。
今の彼女に求婚すれば、彼女は執事として姿を消すだろう。今朝のように。
それぐらいなら、求婚して彼女の頬を染め上げ、幸せな答えを囁かれる夢など、いくらでも捨てられる。
決して手放さないものは決まっている。
リチャードは強い意志を込めて、言葉を紡いだ。
「アマリー。君を離すことなどあり得ない」
君の夢は、君と僕で叶えればいい。
公爵家のテーブルは、君と僕で築く家族で埋めればいい。
お茶の時間に君のヴァイオリンを聴くのは、僕と、僕たちの子どもたちだ。
もちろん、僕たちの子どもたちにヴァイオリンを教えるのは君だ。
リチャードは夢を近い将来の現実にするため、執事との一時の記憶が残る寝室のドアを閉めた。
伯爵家で主人の性格が災いして贈られることのなかったドレスに着替えたアマリーの首元と鎖骨にリチャードの印を見たハーベイが、青筋を立てて公爵家に乗り込み、渾身の一撃をリチャードに放ってから3か月後、
公爵リチャードは、彼の愛しい執事を公爵夫人として取り戻す。
――神の前で永遠の誓いを交わして。
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