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4 完
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骨張ってゴツゴツとした若竹の手が、優しく俺の頬を撫でる。お互いに瞳を見つめ合うだけで胸がいっぱいになるこの感情を、なんと名付けよう。今なら若竹を思うこの気持ちの強さだけで、世界だって滅ぼせそうだ。
「伊崎、何を考えてるんだ?」
「お前のことだよ。なあ、下の名前で呼んでくれないか? 篤志って、お前に呼ばれたい」
「分かった。その代わり、篤志も俺の事は静馬って呼んでくれよ」
「ふふっ、リョーカイ」
2人で至近距離で微笑みあって、体を触りっこしながらキスを繰り返す。本当に、幸せだ。彼の背中を撫で下ろしていた手を腰のあたりまで伸ばし、先程蹴ってしまったところを謝罪の意を込めてそっと摩る。
だが、若竹はそれを別な風に捉えたらしい。俺が彼の腰を摩るのに合わせて、気持ちよさそうにそっと腰を揺らし始めた。若竹は1度ベッドを離れたくせに、また俺の広げた足の間に戻ってきていたので、そこで腰を揺らされるとお互いの局部が擦れあって、かなり卑猥な感じになる。この鈍感がそこまで考えているかは分からないが、少なくとも今、固くなったお互いのペニスを押し付け合うような形になってしまっているため、それに煽られた俺のヤる気は余計に高ぶる一方だ。
「んっ、静馬ぁ。もういいから、中、挿れて?」
キュッと引き締まった彼の魅力的なお尻をスリスリ撫でながらオネダリすれば、俺にメロメロの若竹からはYES以外の答えは返ってこない。若竹の男らしく出っ張った喉仏がゴクリと上下するのが見えて、クラクラする程興奮した。
若竹から発せられる強烈な色気の濃密さに、いつの間にか息がし辛いほど室内の空気の密度が濃くなったような気さえする。そうだ、俺だって、負けず劣らず若竹にメロメロなんだ。頬を撫でていた若竹の手が、俺の体の線を上から順になぞるようにして、ソロソロと下へ移動していく。もちろん、その途中でちゃっかりイタズラをしていくのも忘れない。俺は乳首を摘まれたり、お腹をくすぐられたりする度、小さく身を捩らせ、クスクスと笑い声を上げてそれに応える。
「あっ……」
とうとう若竹の手が俺のペニスに辿り着き、そこを優しく撫でた。若竹にペニスを柔らかい手つきで抜かれるたび、その快感で声が漏れ出る。
「あ、は、ァ、ん」
俺の反応に勢いづいたのか、ペニスを弄る若竹の手にだんだんと熱がこもってきた。そこで、お返しとばかりに先程の抱き合いの最中に見つけた若竹の性感帯を手で愛撫してやれば、彼が低く呻くような声を漏らし、俺の手で感じてくれているのが伝わってくる。その色っぽい息遣いを聞いてるだけで、達してしまいそうだ。何もかもがたまらない。そしてとうとう、若竹の指が俺のアナルへと到達する。
「っ!」
若竹はハッと詰めた俺の息遣いに1度躊躇って指を止めたが、俺が目顔でその先を促すと、ソロリソロリと動きを再開した。ゆっくりと、そして確実に、若竹の太くて骨張った男らしい指が俺の中に入ってくる。
相変わらずその手つきはあまり上手いとは言えないが、今回はその一点に集中しているだけあって最初の時よりは随分マシだ。なにより愛おしさが勝って、若竹の手から施されることは何でもかんでも気持ちよく感じてしまう。
「あぁ、っ。いいよ、静馬。そう、そのまま。そのままもっと深くまで、差し込んで大丈夫だから」
「けど、そんなに急にやったら、痛くないか?」
「平気さ。さっき静馬にたくさん触ってもらったからね。もう十分慣れてると思う」
言外に眠剤にやられて寝ている間に後ろを散々弄られたことを言えば、若竹はその時のことを思い出したのか顔を赤くする。それがまた可愛くて、もうちょっと虐めてやりたいと思う俺はきっとなかなかの末期だ。
「さ、静馬。遠慮は無用だ。お前のコレで、俺の事気持ちよくさせてくれ」
そういう言葉と共に、若竹の腰に回していた手を移動させ、彼の股間を撫で上げる。
俺の体を気遣ってか、しばらく躊躇う素振りを見せた若竹だったが、この行動に煽られいよいよ決心が着いたらしい。なによりもう若竹の方も色々と限界なようで、無言のまま性急に指を引き抜かれた。
そうして余裕のない手付きで腰を掴まれ、どこからか取り出したローションをぶっかけられるのもそこそこに、あっという間に熱く滾った若竹のペニスの先端が、アナルにあてがわれる。下から見上げる若竹の目は、熱と欲にうかされて、爛々と輝いて見えた。
「篤志……大事にする」
若竹が唸るように呟く。次の瞬間、若竹の長大なペニスが俺の体を刺し貫いた。
「……っあああぁ!」
爪先から頭のてっぺんまで、えもいわれぬ衝撃が駆け巡り、それに耐えるためにシーツを掴む。あまりの快感に、大きく背がしなった。
グズグズに蕩けたアナルはなんの苦もなく若竹のペニスを受け止め、全身に快感を伝えてくる。若竹のペニスは俺の体内を隙間なく満たし、長さも太さもまるで誂えたようにピッタリと、俺の体内に収まった。
挿入の衝撃に耐えているのだろう。若竹は息遣いも荒く、俺に覆いかぶさって動かないでいる。俺の方も少しでも身動ぎすると、若竹のペニスに体内を擦られてしまって快感が湧いてくるので、いっぱいいっぱいで動けない。そうして暫く、性感に感じ入ってお互い何もできずにじっとしている。
どれくらいの間そうしていただろう。先に動けるようになったのは若竹の方だった。俺の顔の両脇に手をついて体を起こす。息づかいはもう落ち着いていたが、瞳に宿った情欲の熱は未だ冷めやらない。いつもの無表情を取り繕っているのに、瞳だけがギラギラと、やけに雄弁に彼の欲を表しているので、少し笑ってしまった。
「……何笑ってんだよ」
「悪い、悪い。ちょっとな」
「まあいいさ、直ぐにそんな余裕もなくなる」
その言葉と同時に、若竹が甘く腰を揺らす。高ぶった体には、それだけでもう十分だ。結合部分がヌチヌチと音を立て、体の内側からジワリと快感が溢れてくる。
「んん、ふっ……」
思わず滑り落ちた声を舐めとるように唇を合わせられ、伸ばされた舌を迎え入れるその間にも若竹の腰の動きは止まらない。腰使いは、最初は様子を見るように弱々しく小刻みだったが、次第に大胆で力強いものになっていき、それと共にその律動に誘われるようにして、俺の中で生まれる快感も大きくなっていく。
「あっ、は、ひぁ、ぅん」
「ふふっ、だんだん声出てきた」
「しかた、ない、だろ! きもち、ん、いいんだ、から!」
体を揺さぶられ、小刻みになった言葉はさぞかし聞き取り辛いだろうに、若竹はそれでも楽しそうに抜き差しを止めない。その時、滅多に表情を変えない彼がうっそりと浮かべた艶笑に、不覚にもドキリと胸が高鳴った。そのせいで、体が勝手に反応して若竹のペニスをキュウッと締め付けてしまう。
「っ! ……篤志は人をヤる気にさせるのが上手だなぁ」
「べ、別にそういう訳じゃ……ああ!」
突然、若竹が大きく突いてきたせいで言葉が途切れる。そのままガツガツと数回立て続けに突かれ、強烈な快感に意識を失いかけた。シーツを強く握りしめて、なんとか耐える。
「きゅ、急にやめろよ、トぶかと思ったじゃないか!」
「安心しろって。まだまだこんなもんで終わらせるつもりは無いから」
それは嬉しいような、少し恐ろしいような感じだな。でも、楽しみな感情が1番デカいかも。俺のまんざらでもない気持ちがなんとなく伝わったのか、若竹の方もユルユルと腰の動きを再開する。
と、そこで若竹が大きく引き抜いたペニスの先端が、途中である場所に引っかかった。
「んっ」
「……」
ビクリと今までとは違う反応をした俺の様子を見て、若竹の目の色が変わる。そうしてそのまま腰をカクカクと揺らして的確にその場所を攻め立て始めた。
「───っ!」
途端、声もあげられないほど、逃げ出したくなるような激しい性感に襲われる。本能的に過ぎた快感から逃れようとするが、もうほとんど抜けたと思っていた薬の倦怠感と、体からほど近い位置にあったヘッドボードのせいで動きを制限され、それはかなわない。
なにより獲物を目の前にした肉食獣となった若竹が、それを許すはずもなかった。結果、成すすべもなく体内にあるイイトコロを好き放題擦られる。
「へー、男は中に感じるポイントがあって、そこを触ると滅茶苦茶善がるって聞いたけど、本当だったんだ。さっきまであんなに余裕綽々だったのに、もう俺の声、聞こえてないんじゃない?」
なに? 何を言っているんだ? 痺れるような性感で頭が蕩けて何も考えられない。頭の中にあるのは腰から這い上がってくる強烈な性感のことだけだ。
「う、くっ、静馬、そこ、いい……」
腰がガクガクと揺れる。開きっぱなしの口からは喘ぎ声と涎がダラダラと漏れ出て、止めることができない。視界がチカチカと瞬く。全身を使ってもがけば、それすらも楽しそうに受容された。
「ん、気持ちいいんだな、良かった。キュンキュン締め付けて、そんなに嬉しいのか? こっちまで搾り取られそうだ」
「静馬っ、もうダメっ、馬鹿になるっ、よすぎて、馬鹿に、なっちゃう、からぁ、あ、あ」
「俺も限界近いし、ちゃんとイかせてやるって。ほら、手、こっち回して」
シーツを握っていた指を優しく解かれ、若竹の太い首に回させられる。頼るものがなくなった俺は、もう何が何だかわからずにその逞しい首に必死で縋りついた。そのせいで2人の体勢が僅かに変わり、また違った角度でイイトコロを抉られ悶絶する。
「ひっ、あぁー!」
「っ、耳元で喘がれるのもなかなか腰にクるな。いつまででもこうしていたくなる」
蕩けた頭でなんとか若竹の言ってることを理解しようとしても、なんの間違いか頭に入ってくる言葉は、嬉しくて心までフニャフニャ蕩けてしまうような睦言ばかり。若竹は俺をどうしたいんだ。マジで身も心もグズグズになっちまいそう。
「あ、あんまっ、そういう、こと、言うな、ぁ」
「照れてんの? 珍しい、もっと見せて」
「ん、やぁ」
は、恥ずかしい……! なに、若竹ってば普段素っ気ないのに、恋人になった相手にはこんなに構い倒してくる奴だったの!? うわぁ、新発見!
そうこうしている間にも何も答えない俺に痺れを切らしたのか、若竹はチュッ、チュッと、恥ずかしさから顔を見られないよう精一杯逸らした俺の頬へと、執拗にキスを落としている。
「何、顔見せてくれないの? ふーん、まあいいや。そっちがその気なら、こっちにも考えがあるから」
「何、んあああぁっ!」
ゴリュッ、と一際大きな音を音を立ててイイトコロを抉られる。途端、全身がバラバラになりそうなほど激しい性感の奔流が全身を駆け巡った。爪先が丸まり、背中が弓なりに反る。頭の中が真っ白にスパークした。若竹の背中に思いっきり爪を立てると嬉しそうに喉の奥で笑われて、極めつけに、快感に仰け反った喉元にガブリと歯を立てられる。あまりの衝撃に俺の体がビクビクと痙攣するのが治まるまで、そうして噛み付かれたままだった。
「あ、は……」
しばらく経ってから、ようやく息がつけるようになる。気がつけば俺の下半身は、精液でビショビショだった。これ全部俺1人で出したのか。三十路間近にしちゃなかなか元気だな、俺。射精直後の生理的虚脱状態の中、なんとかそれだけ考えた。
「篤志、どう? 気持ちよかった?」
半ば放心状態で荒く息をしていると、若竹に問いかけられる。その声で飛びかけていた意識がハッと現実に引き戻された。若竹のペニスは未だ熱と硬さを保ったまま、俺の中にズップリハマっている。自分のことは二の次にして、宣言通り俺を気持ちよくさせてくれたのか。男なら惚れた相手の中に挿れているなら、一刻も早く動かして出すことしか考えられなくなるだろうに、それを我慢して相手を気持ちよくさせることにだけ集中するとか、紳士すぎるだろ。どんだけ俺のこと大事にしてくれてんの? ヤバい、キュンキュンする。
そうとくれば、今度はこっちの番だ。せいぜい沢山ご奉仕して見せよう。
「俺はすごく気持ちよかったよ、じゃあ今晩はこれで……」
「逃がさねーよ、静馬。まだお前出してないだろーが。遠慮すんなって」
「あっ、ちょ」
若竹が引き抜こうとしたペニスを、彼の腰を足でがっしりホールドすることで押し戻す。絶対に逃がしてなんかやんない。
「あ、篤志。無理すんなって。俺の事はいいから」
「無理してないしよくない。その立派なもん、俺の中でイかせずに終わらせる気か? 折角だからヤってけって。ここは変に痩せ我慢するところじゃねぇぞ?」
「……せめてゴムつけさせてくれ」
「今更だろ。中出ししていいよ」
「っ! そういうこと簡単に言うなよな!」
「いいから、ほら、早く。俺が許可してんだから構わねえだろ。ヤっちまえって、俺に恥かせる気か?」
さんざん煽ってやれば、しょせん若竹も色欲に駆り立てられる1匹の雄だ。しばらくの押し問答の末、とうとう最後には我慢できないと言った様子で、一応渋面を作りつつも興奮で顔を真っ赤にして勢いよく俺に覆い被さってきた。
「……待てって言っても止めねぇからな」
低く唸るように呟かれる。俺はそれに挑発するような笑みで答えてやった。
「あああああぁぁぁ────!」
途端、息もつかせず勢いよく最奥まで貫かれる。そのままこちらの都合なんて一切無視した律動が開始された。骨盤ごと砕かれそうなその激しい動きに翻弄されながらも、下腹に力を込めてアナルをキュウッとしめつける。
「っう」
アハ、今ちょっと中でデカくなった。良かった、感じてるんだ。……嬉しいな。そのまま、荒々しい律動は続く。
「篤志、篤志……」
切羽詰まった手つきで顎を取られ、乱暴にキスされた。キスの合間にうわ言のように名前を呼ばれて益々幸せな気持ちになる。
「篤志、イく、もうイきそう」
「ん、イって。俺ん中で、いっぱい、出して」
「篤志、う、くぁ……!」
「んぁ……」
若竹がきつく俺の体を抱きしめ、ブルリと身体を震わせた。体内で若竹のペニスがドクンと脈動したかと思うと、間を置かずに体内に暖かい感触が広がる。俺は一仕事終えた若竹の背を優しく撫でてやった。
「……篤志、ごめん。中に出しちまった」
「いーって、別に。俺がしてくれって言ったんだし」
「でも、男に中出しすると腹下すって……」
「すぐ掻き出しゃ平気だよ」
「なら、今すぐやろう。お前の体に負担がかかるのは嫌だ」
「えー、今はちょっと待って欲しいんだけど」
「なぜだ? こういうのは少しでも早い方がいいだろう。体がだるくて自分じゃできないっていうなら、全部俺がやるから」
「本当に? 嬉しい事言ってくれるね。ま、今はそんなことよりもこっちの方をどうにかして欲しいんだけど……」
言うなり彼の手を取って俺の股間に導く。
俺の股間を触らされた若竹は、なんともまあ微妙な顔をした。
「あ、ひっでぇの。人のペニス触っといて何その表情。傷つくんですけど」
「いや、だってお前……その、なんというか、なんで勃ってるんだ?」
「さっき静馬がイくのをアシストした時、成り行きで」
「いや、かなり乱暴にしてしまっただろう。なんであんなので勃つんだ」
「そりゃあ、好きな人とヤってますからね。勃つもん勃ちますよ」
「ばっ、馬鹿なことを……」
フッ、口ではそんなこと言って、嬉しいのバレバレですぜ、お兄さん。口角が上がりそうになってるの丸わかりだし、顔真っ赤だもの。
「それよりさぁ、静馬は中出しの後処理はしてくれるのに、これを抜いてはくれねーの?」
「抜いてやる、抜いてやるから、先にそっちの方をどうにかさせてくれ。俺はお前の体が心配なんだ」
「んじゃぁさぁ。風呂場で掻き出して、ついでに俺のコレも抜いてよ! 名案じゃん?」
「あー、もう! 馬鹿なことばっか言ってんなよ! 俺、風呂の準備してくるから大人しく待ってろ!」
そう言ってまだ腰の立たない俺の代わりに、1人風呂の準備をしに行ってくれる若竹はやっぱり紳士だ。照れて真っ赤になった顔を隠し切れていないのもいい。
その逞しい背中を見送りながら、俺は考える。
最初は叶う望みのない、目覚めと共に消えてしまう夢のような儚い恋だった。なのに、これはどういうことだろう。目が覚めれば消えるはずの夢はいつの間にか現実のものとなり、あれよあれよという間に若竹からの告白や恋人関係といった望んだ以上のものまで与えられた。
まさに夢見るような展開だ。
きっと今度のこの夢は、何度目覚めを迎えても消えないに違いない。多分、俺たち2人の進んでいく未来にあるのは、夢のようなこの幸せの続きなんだろう。
それは確信に近い予感だった。
ああ、それはなんとも嬉しいことだ。
そうして俺は、1人静かにひっそりと笑うのだった。
なお、風呂場で第2回戦目をしたのは、言うまでもない。
「伊崎、何を考えてるんだ?」
「お前のことだよ。なあ、下の名前で呼んでくれないか? 篤志って、お前に呼ばれたい」
「分かった。その代わり、篤志も俺の事は静馬って呼んでくれよ」
「ふふっ、リョーカイ」
2人で至近距離で微笑みあって、体を触りっこしながらキスを繰り返す。本当に、幸せだ。彼の背中を撫で下ろしていた手を腰のあたりまで伸ばし、先程蹴ってしまったところを謝罪の意を込めてそっと摩る。
だが、若竹はそれを別な風に捉えたらしい。俺が彼の腰を摩るのに合わせて、気持ちよさそうにそっと腰を揺らし始めた。若竹は1度ベッドを離れたくせに、また俺の広げた足の間に戻ってきていたので、そこで腰を揺らされるとお互いの局部が擦れあって、かなり卑猥な感じになる。この鈍感がそこまで考えているかは分からないが、少なくとも今、固くなったお互いのペニスを押し付け合うような形になってしまっているため、それに煽られた俺のヤる気は余計に高ぶる一方だ。
「んっ、静馬ぁ。もういいから、中、挿れて?」
キュッと引き締まった彼の魅力的なお尻をスリスリ撫でながらオネダリすれば、俺にメロメロの若竹からはYES以外の答えは返ってこない。若竹の男らしく出っ張った喉仏がゴクリと上下するのが見えて、クラクラする程興奮した。
若竹から発せられる強烈な色気の濃密さに、いつの間にか息がし辛いほど室内の空気の密度が濃くなったような気さえする。そうだ、俺だって、負けず劣らず若竹にメロメロなんだ。頬を撫でていた若竹の手が、俺の体の線を上から順になぞるようにして、ソロソロと下へ移動していく。もちろん、その途中でちゃっかりイタズラをしていくのも忘れない。俺は乳首を摘まれたり、お腹をくすぐられたりする度、小さく身を捩らせ、クスクスと笑い声を上げてそれに応える。
「あっ……」
とうとう若竹の手が俺のペニスに辿り着き、そこを優しく撫でた。若竹にペニスを柔らかい手つきで抜かれるたび、その快感で声が漏れ出る。
「あ、は、ァ、ん」
俺の反応に勢いづいたのか、ペニスを弄る若竹の手にだんだんと熱がこもってきた。そこで、お返しとばかりに先程の抱き合いの最中に見つけた若竹の性感帯を手で愛撫してやれば、彼が低く呻くような声を漏らし、俺の手で感じてくれているのが伝わってくる。その色っぽい息遣いを聞いてるだけで、達してしまいそうだ。何もかもがたまらない。そしてとうとう、若竹の指が俺のアナルへと到達する。
「っ!」
若竹はハッと詰めた俺の息遣いに1度躊躇って指を止めたが、俺が目顔でその先を促すと、ソロリソロリと動きを再開した。ゆっくりと、そして確実に、若竹の太くて骨張った男らしい指が俺の中に入ってくる。
相変わらずその手つきはあまり上手いとは言えないが、今回はその一点に集中しているだけあって最初の時よりは随分マシだ。なにより愛おしさが勝って、若竹の手から施されることは何でもかんでも気持ちよく感じてしまう。
「あぁ、っ。いいよ、静馬。そう、そのまま。そのままもっと深くまで、差し込んで大丈夫だから」
「けど、そんなに急にやったら、痛くないか?」
「平気さ。さっき静馬にたくさん触ってもらったからね。もう十分慣れてると思う」
言外に眠剤にやられて寝ている間に後ろを散々弄られたことを言えば、若竹はその時のことを思い出したのか顔を赤くする。それがまた可愛くて、もうちょっと虐めてやりたいと思う俺はきっとなかなかの末期だ。
「さ、静馬。遠慮は無用だ。お前のコレで、俺の事気持ちよくさせてくれ」
そういう言葉と共に、若竹の腰に回していた手を移動させ、彼の股間を撫で上げる。
俺の体を気遣ってか、しばらく躊躇う素振りを見せた若竹だったが、この行動に煽られいよいよ決心が着いたらしい。なによりもう若竹の方も色々と限界なようで、無言のまま性急に指を引き抜かれた。
そうして余裕のない手付きで腰を掴まれ、どこからか取り出したローションをぶっかけられるのもそこそこに、あっという間に熱く滾った若竹のペニスの先端が、アナルにあてがわれる。下から見上げる若竹の目は、熱と欲にうかされて、爛々と輝いて見えた。
「篤志……大事にする」
若竹が唸るように呟く。次の瞬間、若竹の長大なペニスが俺の体を刺し貫いた。
「……っあああぁ!」
爪先から頭のてっぺんまで、えもいわれぬ衝撃が駆け巡り、それに耐えるためにシーツを掴む。あまりの快感に、大きく背がしなった。
グズグズに蕩けたアナルはなんの苦もなく若竹のペニスを受け止め、全身に快感を伝えてくる。若竹のペニスは俺の体内を隙間なく満たし、長さも太さもまるで誂えたようにピッタリと、俺の体内に収まった。
挿入の衝撃に耐えているのだろう。若竹は息遣いも荒く、俺に覆いかぶさって動かないでいる。俺の方も少しでも身動ぎすると、若竹のペニスに体内を擦られてしまって快感が湧いてくるので、いっぱいいっぱいで動けない。そうして暫く、性感に感じ入ってお互い何もできずにじっとしている。
どれくらいの間そうしていただろう。先に動けるようになったのは若竹の方だった。俺の顔の両脇に手をついて体を起こす。息づかいはもう落ち着いていたが、瞳に宿った情欲の熱は未だ冷めやらない。いつもの無表情を取り繕っているのに、瞳だけがギラギラと、やけに雄弁に彼の欲を表しているので、少し笑ってしまった。
「……何笑ってんだよ」
「悪い、悪い。ちょっとな」
「まあいいさ、直ぐにそんな余裕もなくなる」
その言葉と同時に、若竹が甘く腰を揺らす。高ぶった体には、それだけでもう十分だ。結合部分がヌチヌチと音を立て、体の内側からジワリと快感が溢れてくる。
「んん、ふっ……」
思わず滑り落ちた声を舐めとるように唇を合わせられ、伸ばされた舌を迎え入れるその間にも若竹の腰の動きは止まらない。腰使いは、最初は様子を見るように弱々しく小刻みだったが、次第に大胆で力強いものになっていき、それと共にその律動に誘われるようにして、俺の中で生まれる快感も大きくなっていく。
「あっ、は、ひぁ、ぅん」
「ふふっ、だんだん声出てきた」
「しかた、ない、だろ! きもち、ん、いいんだ、から!」
体を揺さぶられ、小刻みになった言葉はさぞかし聞き取り辛いだろうに、若竹はそれでも楽しそうに抜き差しを止めない。その時、滅多に表情を変えない彼がうっそりと浮かべた艶笑に、不覚にもドキリと胸が高鳴った。そのせいで、体が勝手に反応して若竹のペニスをキュウッと締め付けてしまう。
「っ! ……篤志は人をヤる気にさせるのが上手だなぁ」
「べ、別にそういう訳じゃ……ああ!」
突然、若竹が大きく突いてきたせいで言葉が途切れる。そのままガツガツと数回立て続けに突かれ、強烈な快感に意識を失いかけた。シーツを強く握りしめて、なんとか耐える。
「きゅ、急にやめろよ、トぶかと思ったじゃないか!」
「安心しろって。まだまだこんなもんで終わらせるつもりは無いから」
それは嬉しいような、少し恐ろしいような感じだな。でも、楽しみな感情が1番デカいかも。俺のまんざらでもない気持ちがなんとなく伝わったのか、若竹の方もユルユルと腰の動きを再開する。
と、そこで若竹が大きく引き抜いたペニスの先端が、途中である場所に引っかかった。
「んっ」
「……」
ビクリと今までとは違う反応をした俺の様子を見て、若竹の目の色が変わる。そうしてそのまま腰をカクカクと揺らして的確にその場所を攻め立て始めた。
「───っ!」
途端、声もあげられないほど、逃げ出したくなるような激しい性感に襲われる。本能的に過ぎた快感から逃れようとするが、もうほとんど抜けたと思っていた薬の倦怠感と、体からほど近い位置にあったヘッドボードのせいで動きを制限され、それはかなわない。
なにより獲物を目の前にした肉食獣となった若竹が、それを許すはずもなかった。結果、成すすべもなく体内にあるイイトコロを好き放題擦られる。
「へー、男は中に感じるポイントがあって、そこを触ると滅茶苦茶善がるって聞いたけど、本当だったんだ。さっきまであんなに余裕綽々だったのに、もう俺の声、聞こえてないんじゃない?」
なに? 何を言っているんだ? 痺れるような性感で頭が蕩けて何も考えられない。頭の中にあるのは腰から這い上がってくる強烈な性感のことだけだ。
「う、くっ、静馬、そこ、いい……」
腰がガクガクと揺れる。開きっぱなしの口からは喘ぎ声と涎がダラダラと漏れ出て、止めることができない。視界がチカチカと瞬く。全身を使ってもがけば、それすらも楽しそうに受容された。
「ん、気持ちいいんだな、良かった。キュンキュン締め付けて、そんなに嬉しいのか? こっちまで搾り取られそうだ」
「静馬っ、もうダメっ、馬鹿になるっ、よすぎて、馬鹿に、なっちゃう、からぁ、あ、あ」
「俺も限界近いし、ちゃんとイかせてやるって。ほら、手、こっち回して」
シーツを握っていた指を優しく解かれ、若竹の太い首に回させられる。頼るものがなくなった俺は、もう何が何だかわからずにその逞しい首に必死で縋りついた。そのせいで2人の体勢が僅かに変わり、また違った角度でイイトコロを抉られ悶絶する。
「ひっ、あぁー!」
「っ、耳元で喘がれるのもなかなか腰にクるな。いつまででもこうしていたくなる」
蕩けた頭でなんとか若竹の言ってることを理解しようとしても、なんの間違いか頭に入ってくる言葉は、嬉しくて心までフニャフニャ蕩けてしまうような睦言ばかり。若竹は俺をどうしたいんだ。マジで身も心もグズグズになっちまいそう。
「あ、あんまっ、そういう、こと、言うな、ぁ」
「照れてんの? 珍しい、もっと見せて」
「ん、やぁ」
は、恥ずかしい……! なに、若竹ってば普段素っ気ないのに、恋人になった相手にはこんなに構い倒してくる奴だったの!? うわぁ、新発見!
そうこうしている間にも何も答えない俺に痺れを切らしたのか、若竹はチュッ、チュッと、恥ずかしさから顔を見られないよう精一杯逸らした俺の頬へと、執拗にキスを落としている。
「何、顔見せてくれないの? ふーん、まあいいや。そっちがその気なら、こっちにも考えがあるから」
「何、んあああぁっ!」
ゴリュッ、と一際大きな音を音を立ててイイトコロを抉られる。途端、全身がバラバラになりそうなほど激しい性感の奔流が全身を駆け巡った。爪先が丸まり、背中が弓なりに反る。頭の中が真っ白にスパークした。若竹の背中に思いっきり爪を立てると嬉しそうに喉の奥で笑われて、極めつけに、快感に仰け反った喉元にガブリと歯を立てられる。あまりの衝撃に俺の体がビクビクと痙攣するのが治まるまで、そうして噛み付かれたままだった。
「あ、は……」
しばらく経ってから、ようやく息がつけるようになる。気がつけば俺の下半身は、精液でビショビショだった。これ全部俺1人で出したのか。三十路間近にしちゃなかなか元気だな、俺。射精直後の生理的虚脱状態の中、なんとかそれだけ考えた。
「篤志、どう? 気持ちよかった?」
半ば放心状態で荒く息をしていると、若竹に問いかけられる。その声で飛びかけていた意識がハッと現実に引き戻された。若竹のペニスは未だ熱と硬さを保ったまま、俺の中にズップリハマっている。自分のことは二の次にして、宣言通り俺を気持ちよくさせてくれたのか。男なら惚れた相手の中に挿れているなら、一刻も早く動かして出すことしか考えられなくなるだろうに、それを我慢して相手を気持ちよくさせることにだけ集中するとか、紳士すぎるだろ。どんだけ俺のこと大事にしてくれてんの? ヤバい、キュンキュンする。
そうとくれば、今度はこっちの番だ。せいぜい沢山ご奉仕して見せよう。
「俺はすごく気持ちよかったよ、じゃあ今晩はこれで……」
「逃がさねーよ、静馬。まだお前出してないだろーが。遠慮すんなって」
「あっ、ちょ」
若竹が引き抜こうとしたペニスを、彼の腰を足でがっしりホールドすることで押し戻す。絶対に逃がしてなんかやんない。
「あ、篤志。無理すんなって。俺の事はいいから」
「無理してないしよくない。その立派なもん、俺の中でイかせずに終わらせる気か? 折角だからヤってけって。ここは変に痩せ我慢するところじゃねぇぞ?」
「……せめてゴムつけさせてくれ」
「今更だろ。中出ししていいよ」
「っ! そういうこと簡単に言うなよな!」
「いいから、ほら、早く。俺が許可してんだから構わねえだろ。ヤっちまえって、俺に恥かせる気か?」
さんざん煽ってやれば、しょせん若竹も色欲に駆り立てられる1匹の雄だ。しばらくの押し問答の末、とうとう最後には我慢できないと言った様子で、一応渋面を作りつつも興奮で顔を真っ赤にして勢いよく俺に覆い被さってきた。
「……待てって言っても止めねぇからな」
低く唸るように呟かれる。俺はそれに挑発するような笑みで答えてやった。
「あああああぁぁぁ────!」
途端、息もつかせず勢いよく最奥まで貫かれる。そのままこちらの都合なんて一切無視した律動が開始された。骨盤ごと砕かれそうなその激しい動きに翻弄されながらも、下腹に力を込めてアナルをキュウッとしめつける。
「っう」
アハ、今ちょっと中でデカくなった。良かった、感じてるんだ。……嬉しいな。そのまま、荒々しい律動は続く。
「篤志、篤志……」
切羽詰まった手つきで顎を取られ、乱暴にキスされた。キスの合間にうわ言のように名前を呼ばれて益々幸せな気持ちになる。
「篤志、イく、もうイきそう」
「ん、イって。俺ん中で、いっぱい、出して」
「篤志、う、くぁ……!」
「んぁ……」
若竹がきつく俺の体を抱きしめ、ブルリと身体を震わせた。体内で若竹のペニスがドクンと脈動したかと思うと、間を置かずに体内に暖かい感触が広がる。俺は一仕事終えた若竹の背を優しく撫でてやった。
「……篤志、ごめん。中に出しちまった」
「いーって、別に。俺がしてくれって言ったんだし」
「でも、男に中出しすると腹下すって……」
「すぐ掻き出しゃ平気だよ」
「なら、今すぐやろう。お前の体に負担がかかるのは嫌だ」
「えー、今はちょっと待って欲しいんだけど」
「なぜだ? こういうのは少しでも早い方がいいだろう。体がだるくて自分じゃできないっていうなら、全部俺がやるから」
「本当に? 嬉しい事言ってくれるね。ま、今はそんなことよりもこっちの方をどうにかして欲しいんだけど……」
言うなり彼の手を取って俺の股間に導く。
俺の股間を触らされた若竹は、なんともまあ微妙な顔をした。
「あ、ひっでぇの。人のペニス触っといて何その表情。傷つくんですけど」
「いや、だってお前……その、なんというか、なんで勃ってるんだ?」
「さっき静馬がイくのをアシストした時、成り行きで」
「いや、かなり乱暴にしてしまっただろう。なんであんなので勃つんだ」
「そりゃあ、好きな人とヤってますからね。勃つもん勃ちますよ」
「ばっ、馬鹿なことを……」
フッ、口ではそんなこと言って、嬉しいのバレバレですぜ、お兄さん。口角が上がりそうになってるの丸わかりだし、顔真っ赤だもの。
「それよりさぁ、静馬は中出しの後処理はしてくれるのに、これを抜いてはくれねーの?」
「抜いてやる、抜いてやるから、先にそっちの方をどうにかさせてくれ。俺はお前の体が心配なんだ」
「んじゃぁさぁ。風呂場で掻き出して、ついでに俺のコレも抜いてよ! 名案じゃん?」
「あー、もう! 馬鹿なことばっか言ってんなよ! 俺、風呂の準備してくるから大人しく待ってろ!」
そう言ってまだ腰の立たない俺の代わりに、1人風呂の準備をしに行ってくれる若竹はやっぱり紳士だ。照れて真っ赤になった顔を隠し切れていないのもいい。
その逞しい背中を見送りながら、俺は考える。
最初は叶う望みのない、目覚めと共に消えてしまう夢のような儚い恋だった。なのに、これはどういうことだろう。目が覚めれば消えるはずの夢はいつの間にか現実のものとなり、あれよあれよという間に若竹からの告白や恋人関係といった望んだ以上のものまで与えられた。
まさに夢見るような展開だ。
きっと今度のこの夢は、何度目覚めを迎えても消えないに違いない。多分、俺たち2人の進んでいく未来にあるのは、夢のようなこの幸せの続きなんだろう。
それは確信に近い予感だった。
ああ、それはなんとも嬉しいことだ。
そうして俺は、1人静かにひっそりと笑うのだった。
なお、風呂場で第2回戦目をしたのは、言うまでもない。
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