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おまけ4 1 子世代視点
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奴に出会ったのは、留学という名目で祖国を追い出された14歳の春の事だった。とある大国の第4王子という一見安楽な立場にありながら、俺の人生はなかなかに波乱万丈なものだったと思う。
俺は王子であるものの、母親は王である父のお手付きとなっただけで元を正せば侍女の1人でしかない。当然母親の社会的地位は低く、側妃にすらなれず、妾としての立場しか与えられなかった。父親は父親なりに母親を愛していたようだったが……。俺には興味がなかったらしい。俺を産み落として直ぐ母親が死んだせいで、憎まれてすらいたと思う。曰く『お前さえ生まれなければ彼女は生きていたのに』だそうだ。それならそもそも孕ませるなよ、としか思えない身勝手さである。
妾腹で後ろ盾はなく、父王の愛顧も得られない。6人目の王の子且つ4人目の王子で王位継承権も高くない俺は、分かりやすく疎まれて育った。日々の生活も教育も、死なない程度の最低ラインさえ護っていれば、あとは放置。継母を始めとした腹違いの兄弟達義理の家族は俺の事を目の敵にしているし、父親は存在をまるで無視。政治的利用価値も低い為阿る者もおらず、唯ひたすら厄介者として幼少期を過ごした。
それでも極々幼かった頃は何故自分が軽んじられているかが分からず、精一杯勉学や鍛錬に励んだ事もあるにはあったのだが……。それも全て徒労に終わった。何せ俺に与えられるのは仮にも一国の王子に宛てがわれたものとは思えない、お粗末な教育係だけだったからな。そんな事も知らずに自分が学んだ精一杯を公の場で披露したら、なんて程度が低いんだとその場に居た全員に嘲笑され、幼かった俺の心はポッキリ折れてしまったのだ。それ以来何もかもが馬鹿らしくなって、俺は好き勝手生きる事にした。
腐っても王子という立場を利用して、権力に飽かせて子供のうちから酒を飲んだり悪い仲間を引連れて城下で遊び歩いたり。眉を顰められるような事は全部やったと自負している。お陰様でどこに出しても恥ずかしくない、穀潰しで恥晒しの出来損ない王子の完成だ。なんて下品な、と顔を顰める家族の反応に、お前達が望んだ通りの人間になってやったぞと、虚しい喜びを覚えながら彼等を見返していた。
だが、そんなやけっぱちな生活は、唐突に終止符が打たれる事になる。腹違いの兄である王太子の結婚が決まったのだ。相手は少し前まで啀み合っていて、ようやく和平条約が締結されたばかりの隣国。その和平の証としての婚姻だった。ようやく決まった和平条約だったが、まだ争いの火種は消えきっていない。ここで王太子の結婚が頓挫すれば、そのまま両国は再び戦争に突入しかねなかった。王太子は能力性格共に大きな問題点は見当たらなかったが、懸念事項が1つ。俺の存在だ。
要は、俺というグータラで素行の悪い恥晒しの弟が居ては、王太子の婚姻に差し障りがあると思われたのである。邪魔者にはいなくなってもらうしかない。しかし、暗殺しようにも仮にも俺は第4王子。近しい親族が死んだとあっては少なからず婚姻に影響が出てくるのは明白。そこで家族は、俺の事を留学という名目で国外追放し、遠くの国に放り出す事に決めたのだ。
そうと決まれば話は早い。ある日突然俺は1人で暮らしていた離宮を追い出され、叩き込むように馬車に詰め込まれた。俺を乗せた馬車はそのまま港へ直行。父王からの『二度と国に帰ってくるな』といった内容が遠回しに書かれた手紙と、手切れ金らしき大量の金を受け取ったのは、船が沖に出てからの事だった。なんとも慌ただしい旅立ちである。そのまま俺は『留学先』へと強制連行されたのである。
自分が国や家族から捨てられたと気がついた時、俺は特に悲しくは思わなかった。ただ、虚しさのような、寂しさのような、空虚な気持ちを覚えたのを記憶している。家族関係は冷えきっていたし、とっくのとうに見捨てられていたので、今更何も悲しめなかったのだ。まあ、国を追い出されたからといって、俺は何も変わらない。国を出されてしまったのも、いっそ好都合。今まで以上に遊んで騒いで大暴れしまくってやる! そんな不遜な思いを胸に、俺は海を渡ったのだった。14歳の誕生日を目前とした、早春の事である。
そうして俺は遥々海を渡り、渡海の途中で誕生日を迎え、とある国の貴族の子女が軒並み通う学園へと編入をする事と相成った。中途半端な年齢での編入だ。元々閉鎖的な貴族社会の子供しか通わない学校だし、既に人間関係はできあがっている。色んな意味で余所者の俺は、編入当初分かりやすく浮いていた。もっとも、浮いていたのは余所者だから、だけが理由ではないが。
というのも、その頃の俺の生活態度。服装はこれ以上ないくらい着崩し、直ぐに寮を抜け出して遊び回る素行の悪さ、長く勉学に励んでいないせいで頭の出来のお粗末な事と言ったらこの上なく、貴人にあるまじき堕落しきった有様だったのだ。初手で始業式の最中に高いびきで眠りこけたら、お育ちのいい同級生達はもう皆ドン引きしまくっていた。
別に、今更誰にどう思われようが構わない。俺は最初っから誰にも期待されていない人間だ。家族にすら疎まれて国外追放になったんだぜ? そんな事分かりきってる。折角環境が変わったんだから、心機一転頑張ってみる手もあるのだろうが、今更真面目に生き直して何が変わるのだろうという諦めのようなものが強い。また昔のように頑張ったとして、同じく馬鹿にされ笑われたら? 今度こそ心が折れるだけで済む自信がない。図太く生きてはいても、そこら辺は繊細なのである。
どうせお貴族様は事なかれ主義だ。俺のだらしなさに眉を顰めるだけで、関わり合いになろうとはしないに違いない。誰だって面倒ごとはごめんだもんな。ましてや噂話1つで将来の結婚や出世に影響が出てくる世界で生きているのだ。俺みたいな不良と関わり合いになって、悪評が流れるのは、誰だってごめん蒙りたいに決まってる。精々手切れ金が尽きるまで好き勝手生きて、後は転落人生を味わってそのまま惨めで孤独に死ぬさ。生まれた時から1人の俺には、そんな生き方が似合っている。
そんなやけっぱちとも言うべき人生設計が崩れたのは、始業式から1週間程経った時のある朝の事だ。
「アヴヌエル! ビクトール・サユ・タフリク・アヴヌエルは居るか!?」
俺の名前を呼んでいる、頭にガンガン響く馬鹿でかい声に目が覚める。時計を見れば、9時じゃないか。いつもの俺なら未だ寝ている時間だ。その日学校は休業日で、生徒達は思い思いに休日を謳歌していた。俺はと言えば前日にご多分にもれず無断外出して酒を浴びるように飲みまくり、殆ど早朝になってから帰ってきて、空が白む頃に寝入ったばかり。朝とは言えど俺にとっては立派な睡眠時間だったので、突然大声を上げて部屋の扉をノックしまくる誰かに、酷く腹が立った。
「たく、なんだよ、五月蝿ぇなぁ!」
「おお、アヴヌエル! やっと出てきたな!」
「なんだテメェは!?」
苛立ちを隠しもせず、衝動のままに大声の主を怒鳴りつける。扉を開けた向こうには、1人の男子生徒が立っていた。
胸に着けた学章から見るに、歳は向こうの方が1つ上だろう。しかし、そうとは思えない程恵まれた体躯だ。肩幅があってガッチリとした体、靱やかな筋肉のついた長い手足。骨格は未だ成長途中だが、将来さぞやデカくなるだろうと思わせる雰囲気を持っている。だが、何よりも目を奪われたのはその顔だ。涼やかな目元に凛々しい眉、子供ながらもガッシリした顎、高い鼻梁、肉感的な唇。それら全てが完璧なバランスで配置され、男らしさとこの年頃の少年特有の危うい美しさを醸し出していた。
ハッキリ言って、かなりの美少年だ。将来さぞや男らしい美丈夫になる事だろう。そんな彼は、俺が出てきたのを見るとニッと人好きのする笑みを浮かべた。美形にそれをやられると、何だか目がシパシパする。思わず怯んだ俺だったがそれを表に出しては舐められるだろう。そう判断して、キッと目の前の少年を睨んだ。
「やぁ、アヴヌエル。俺はサムエル・ヴィンチェンツォ・I・ヴィッドルド。君の1学年上で、学年代表をやっている。今日は少々君に話したいことがあって来た!」
「ハァ? 知るかようっせぇな。こっちは寝始めたばっかりなんだよ。人の睡眠の邪魔をすんなや!」
「なんと、睡眠の邪魔をしてしまったか。それは申し訳ない。では、手短に済ませよう」
寝る途中だったという俺に配慮してか、ヴィッドルドは元気にハキハキさせていた声のボリュームを抑えた。誰かに気を使われる事が皆無な人生だったので、たったそれだけの事にドギマギしてしまう。って、いやいや、絆されるな俺。これくらいの事で気を抜いてどうする。気を引き締めないと、いっぱい食わされるぞ。油断を振り払い、目の前の少年を睨めつける。
「いや、実はな。君の生活音の事なんだが……。ちょっと近隣に大きく響いてるみたいなんだ。君の隣室の者がそれでまいってしまっている。夜と朝方に活動する時は、少々気をつけて貰えないだろうか?」
生活音……。正直心当たりはありまくる。毎日デロッデロに酩酊して帰ってくる俺は、部屋中あちこち物にぶつかったり、足を踏み鳴らしたり、酔っぱらいの常で上機嫌に大声で歌を歌ったりしているから。一般的な生活リズムで暮らしている人間からしてみれば、俺が帰ってくる時間帯にそれだけ大騒ぎされたら確かに迷惑だろう。馬鹿な俺でもそれは理解できた。……まあ、だからといって気を使ってやる気は、サラサラないがね。
「……気に食わねぇな」
「え?」
「お前……ヴィッドルドとか言ったか。お前は俺の隣室じゃねぇよな?」
「ああ、俺は代理だ。それがどうかしたのか?」
「別にぃ? 縮み上がって文句の1つも自分で言えねぇ甘ちゃんだなって思っただけだ。そんな甘ったれの為に、なんで俺が我慢しなくちゃいけねぇ。俺はこれからも好き勝手生きる。その隣室の奴に文句があるなら自分で言いにこいって伝えろ。話はそれからだ」
ま、そんなの無理だろうけどな。大方向こうは俺の態度にビビってこんな体格の大きい年上の強そうな奴を送り込んできたのだろう。そんな何もかも人任せの奴の言うことなんて、誰が聞くか。分かってる。これはただの八つ当たりだ。今まで誰にも顧みられなかった自分と、こんな友人思いの少年と交友関係を持った隣室者との境遇の差に、勝手に劣等感を抱いているだけ。身勝手なのは分かってる。それでも、腹が立って仕方がない。俺は風邪を拗らせ死にかけても、見舞いどころか看病もされなかった。騒音くらい我慢しやがれ、この甘ったれクソ野郎。
いっそ憎しみすら覚えながら、目の前のヴィッドルドを嘲笑った。しかし、明らかに馬鹿にした表情をしているであろう俺を、奴は冷静な目で見つめ返してる。その思わぬ反応に少々面食らってしまう。どうせこいつにも、またいつものようにどうしようもない不良に向けるに相応しい、嫌そうな目で見られると思っていたのに。何かを考え込んでいるような静かな瞳に、そんなつもりはないのにどうしようもなく狼狽えてしまう。
「な、なんだよ」
「いや……。そんなに敵意剥き出しで、疲れないのかな、と思っただけだ」
「はぁ? ……馬鹿にしてんのか」
「まさか! 俺は馬鹿にできる程アヴヌエルの事を知らない。なんにせよ、生活音をどうにかして貰えないのは困ったな。隣室の寮生は本当に疲弊してしまっているんだ。アヴヌエルは夜中に大きな音が立つ程、何をしているんだ? それが分かれば根本的な問題解決になるかもしれないぞ」
ケッ、脳天気な奴め。どうせ今まで大した挫折も失敗も経験せず、親に庇護されヌクヌク育ってきた苦労知らずなんだろう。孤独に過ごしてきた俺からしてみれば、こいつの立ち振る舞いから愛され慣れた人間だって事ぐらい、嫌って程分かってしまった。そんな奴に、俺の自暴自棄に生きざるを得ない、このやるせない気持ちが分かるものか。幸せの空気を纏いながら俺に意見してくるヴィッドルドに、理不尽に腹が立つ。
まあ、どれだけ図体が大きく周りに愛されて自己肯定感が強くとも、俺みたいな手の付けられない不良の相手など、こんな見るからに優等生のお坊ちゃんにはできないに違いない。こいつも俺の素行の悪さを一端でも味わえば、二度と関わり合いになろうとは思わないに決まってる。今まで俺の人生に関わってきた、多くの他人と同じように、な。
「根本的な問題解決は……絶対に無理だな。俺が夜に活動するのは、外で夜遊びして酒を大量に飲んでいるからだ。騒音をどうにかしたいのなら、俺に夜遊びを止めさせるしかない。が、俺は止める気はないぜ。ここでの暮らしはあんまりにも退屈だ。酒でも飲んでねぇとやってられねぇからな」
「アヴヌエル、君は未だ14歳だろう。我が国では飲酒できるのは16歳からだ。寮を出て夜遊びするのも、あまり賛成できないな」
「へーえ。だから? なんだっていうんだ? 飲酒や夜遊びを止めろとでも? 絶対に嫌だね。言ったろう? 兎に角退屈なんだよ。ここでの暮らしはのんびりし過ぎてて欠伸が出る。あんまりにも刺激が少なくて、俺には到底馴染めない。退屈するくらいなら、死んだ方がマシだ! それとも何か? ヴィッドルド、お前が夜遊びや飲酒よりも楽しい事を、俺に教えてくれるってのか? えぇ?」
言外にそんなの無理だろう? とヴィッドルドを煽る。きっとこいつも、いきなり逆ギレかましてきた俺の事なんて、理解できないと距離を取るだろう。俺の相手をするなんて無駄な事止めて、問題行動を教師にでも告げ口すればいいさ。それでも俺は、問題行動を止めてやる気はないがな! 停学なり退学なり好きに処分すればいい。どうせ学校に大人しく通う気はないし、ここを追い出されたって金が尽きるまで好き勝手するだけさ。あとは野垂れ死にするのが俺にはお似合いだ。
そうしてやさぐれた気持ちでヴィッドルドを一瞥し、扉を閉めて話を切り上げようとしたのだが……。向こうは驚くべき反応をした。
「いいぞ。夜遊びや飲酒よりももっと楽しい事、俺が君に教えてあげよう」
「……は?」
「アヴヌエルが夜中に音を立ててしまうのは、夜遊びして飲酒しているせい。そして夜遊びして飲酒するのは、退屈だから。つまり君の退屈を解消すれば、全ての問題が解決するというわけだ。それなら俺は、喜んで退屈しのぎに協力しよう。遊び歩いて飲酒するよりも、もっと刺激的で楽しい事を一緒にしようじゃないか!」
予想外の返答に、俺は思わず目をパチクリとさせてヴィッドルドを見た。それにヴィッドルドはニッカリ明るい笑顔を返してくる。そんな優しい表情、俺は今まで誰にも向けられた事ない。その事に俺はなんだか酷く狼狽してしまって、咄嗟に奴から視線を外す。
クソッ、なんで俺がこんな奴相手に気圧されなくちゃならない。一瞬だけ目にした奴の真剣な眼差しに、期待をしてしまいそうになった。畜生、何もかもが酷く癪に障る。どうせこんないい子ちゃんの言うところの『楽しい事』なんて、観劇や詩を読むだとか、そういった型に嵌った貴族的なお楽しみか何かだろう。そんなのが楽しいもんか。いいさ、こいつが俺を楽しまそうとして出してきたもの全て、真っ向から全否定してやる。あの日俺がされたのと同じように、ヴィッドルドの心もポッキリ折ってやるんだ。
なんだかグチャグチャになった気持ちを抱え、グッと歯を噛み締める。そうして俯いてムスッとしていると、肩にポンッと手を置かれた。それに誘われノロノロと顔を上げると、柔らかく笑う瞳と視線がかち合う。暖かで優しいそれに、俺は何だか少しだけ恐ろしさのような何かを感じるのだった。
「さて、そうと決まれば話は早い。早速行こうじゃないか!」
「は? 行くって、なんの事だ?」
「決まってる。遊びに行くんだよ! 大丈夫、軽く体を動かすだけだから!」
「いや、俺これから二度寝を」
「何を言ってるんだ! 今から寝たら、夜眠れなくなってしまうぞ? 生活リズムが崩れると、体の調子が悪くなってしまう。一緒に健康的な生活を取り戻し、健康な体を作っていこうじゃないか!」
そう言ったヴィッドルドは呆気に取られている俺を小脇に抱え、あれよあれよという間に運んでいく。驚いて少し暴れてみたが、俺を退屈させるものかという使命感に燃えるヴィッドルドは止まらない。奴の大きな体が相手では、不摂生が祟ってヒョロッちい体つきの俺など、ろくな抵抗ができなかった。擦れ違う人々のギョッとした視線を全身に感じながらも、俺にはどうする事もできない。
「ちょ、おい! ヴィッドルド! 一旦止まれ!」
「サムエル」
「え」
「さっき言ったろう? 俺の名前はサムエルだ。もう友達なんだから、ファーストネームで呼んでくれ。ヴィッドルドだと俺には6人の弟妹が居るからややこしい」
「な……! 友達って、そんなのいつなったっていうんだよ!」
「なんだ、照れているのか? 一緒に遊ぶ約束をしたんだから、それはもう友達だろう? 友達としての親しみを込めて、俺も君の事をビクトールと呼ぶな!」
「はぁ!? 何勝手に決めて……! あ、おい! 取り敢えず止まれって!」
「アッハッハ! 暴れるな暴れるな。君の力じゃ俺から逃れるのは無理だ。無駄に疲れるだけだぞ? ほら、目的地まで連れてってやるから大人しくしておきなさい」
「はぁーなぁーせぇー!」
俺の全力の抵抗にビクともせず、笑っていなすヴィッドルド……いいや、サムエルが憎らしい。腹立ち紛れに河岸にあげられた魚のようにビチビチバタバタしてみるも、元気が良くて何よりと喜ばれる始末。結局俺はサムエルの手によって、成す術もなく連行されて行ったのだった。
俺は王子であるものの、母親は王である父のお手付きとなっただけで元を正せば侍女の1人でしかない。当然母親の社会的地位は低く、側妃にすらなれず、妾としての立場しか与えられなかった。父親は父親なりに母親を愛していたようだったが……。俺には興味がなかったらしい。俺を産み落として直ぐ母親が死んだせいで、憎まれてすらいたと思う。曰く『お前さえ生まれなければ彼女は生きていたのに』だそうだ。それならそもそも孕ませるなよ、としか思えない身勝手さである。
妾腹で後ろ盾はなく、父王の愛顧も得られない。6人目の王の子且つ4人目の王子で王位継承権も高くない俺は、分かりやすく疎まれて育った。日々の生活も教育も、死なない程度の最低ラインさえ護っていれば、あとは放置。継母を始めとした腹違いの兄弟達義理の家族は俺の事を目の敵にしているし、父親は存在をまるで無視。政治的利用価値も低い為阿る者もおらず、唯ひたすら厄介者として幼少期を過ごした。
それでも極々幼かった頃は何故自分が軽んじられているかが分からず、精一杯勉学や鍛錬に励んだ事もあるにはあったのだが……。それも全て徒労に終わった。何せ俺に与えられるのは仮にも一国の王子に宛てがわれたものとは思えない、お粗末な教育係だけだったからな。そんな事も知らずに自分が学んだ精一杯を公の場で披露したら、なんて程度が低いんだとその場に居た全員に嘲笑され、幼かった俺の心はポッキリ折れてしまったのだ。それ以来何もかもが馬鹿らしくなって、俺は好き勝手生きる事にした。
腐っても王子という立場を利用して、権力に飽かせて子供のうちから酒を飲んだり悪い仲間を引連れて城下で遊び歩いたり。眉を顰められるような事は全部やったと自負している。お陰様でどこに出しても恥ずかしくない、穀潰しで恥晒しの出来損ない王子の完成だ。なんて下品な、と顔を顰める家族の反応に、お前達が望んだ通りの人間になってやったぞと、虚しい喜びを覚えながら彼等を見返していた。
だが、そんなやけっぱちな生活は、唐突に終止符が打たれる事になる。腹違いの兄である王太子の結婚が決まったのだ。相手は少し前まで啀み合っていて、ようやく和平条約が締結されたばかりの隣国。その和平の証としての婚姻だった。ようやく決まった和平条約だったが、まだ争いの火種は消えきっていない。ここで王太子の結婚が頓挫すれば、そのまま両国は再び戦争に突入しかねなかった。王太子は能力性格共に大きな問題点は見当たらなかったが、懸念事項が1つ。俺の存在だ。
要は、俺というグータラで素行の悪い恥晒しの弟が居ては、王太子の婚姻に差し障りがあると思われたのである。邪魔者にはいなくなってもらうしかない。しかし、暗殺しようにも仮にも俺は第4王子。近しい親族が死んだとあっては少なからず婚姻に影響が出てくるのは明白。そこで家族は、俺の事を留学という名目で国外追放し、遠くの国に放り出す事に決めたのだ。
そうと決まれば話は早い。ある日突然俺は1人で暮らしていた離宮を追い出され、叩き込むように馬車に詰め込まれた。俺を乗せた馬車はそのまま港へ直行。父王からの『二度と国に帰ってくるな』といった内容が遠回しに書かれた手紙と、手切れ金らしき大量の金を受け取ったのは、船が沖に出てからの事だった。なんとも慌ただしい旅立ちである。そのまま俺は『留学先』へと強制連行されたのである。
自分が国や家族から捨てられたと気がついた時、俺は特に悲しくは思わなかった。ただ、虚しさのような、寂しさのような、空虚な気持ちを覚えたのを記憶している。家族関係は冷えきっていたし、とっくのとうに見捨てられていたので、今更何も悲しめなかったのだ。まあ、国を追い出されたからといって、俺は何も変わらない。国を出されてしまったのも、いっそ好都合。今まで以上に遊んで騒いで大暴れしまくってやる! そんな不遜な思いを胸に、俺は海を渡ったのだった。14歳の誕生日を目前とした、早春の事である。
そうして俺は遥々海を渡り、渡海の途中で誕生日を迎え、とある国の貴族の子女が軒並み通う学園へと編入をする事と相成った。中途半端な年齢での編入だ。元々閉鎖的な貴族社会の子供しか通わない学校だし、既に人間関係はできあがっている。色んな意味で余所者の俺は、編入当初分かりやすく浮いていた。もっとも、浮いていたのは余所者だから、だけが理由ではないが。
というのも、その頃の俺の生活態度。服装はこれ以上ないくらい着崩し、直ぐに寮を抜け出して遊び回る素行の悪さ、長く勉学に励んでいないせいで頭の出来のお粗末な事と言ったらこの上なく、貴人にあるまじき堕落しきった有様だったのだ。初手で始業式の最中に高いびきで眠りこけたら、お育ちのいい同級生達はもう皆ドン引きしまくっていた。
別に、今更誰にどう思われようが構わない。俺は最初っから誰にも期待されていない人間だ。家族にすら疎まれて国外追放になったんだぜ? そんな事分かりきってる。折角環境が変わったんだから、心機一転頑張ってみる手もあるのだろうが、今更真面目に生き直して何が変わるのだろうという諦めのようなものが強い。また昔のように頑張ったとして、同じく馬鹿にされ笑われたら? 今度こそ心が折れるだけで済む自信がない。図太く生きてはいても、そこら辺は繊細なのである。
どうせお貴族様は事なかれ主義だ。俺のだらしなさに眉を顰めるだけで、関わり合いになろうとはしないに違いない。誰だって面倒ごとはごめんだもんな。ましてや噂話1つで将来の結婚や出世に影響が出てくる世界で生きているのだ。俺みたいな不良と関わり合いになって、悪評が流れるのは、誰だってごめん蒙りたいに決まってる。精々手切れ金が尽きるまで好き勝手生きて、後は転落人生を味わってそのまま惨めで孤独に死ぬさ。生まれた時から1人の俺には、そんな生き方が似合っている。
そんなやけっぱちとも言うべき人生設計が崩れたのは、始業式から1週間程経った時のある朝の事だ。
「アヴヌエル! ビクトール・サユ・タフリク・アヴヌエルは居るか!?」
俺の名前を呼んでいる、頭にガンガン響く馬鹿でかい声に目が覚める。時計を見れば、9時じゃないか。いつもの俺なら未だ寝ている時間だ。その日学校は休業日で、生徒達は思い思いに休日を謳歌していた。俺はと言えば前日にご多分にもれず無断外出して酒を浴びるように飲みまくり、殆ど早朝になってから帰ってきて、空が白む頃に寝入ったばかり。朝とは言えど俺にとっては立派な睡眠時間だったので、突然大声を上げて部屋の扉をノックしまくる誰かに、酷く腹が立った。
「たく、なんだよ、五月蝿ぇなぁ!」
「おお、アヴヌエル! やっと出てきたな!」
「なんだテメェは!?」
苛立ちを隠しもせず、衝動のままに大声の主を怒鳴りつける。扉を開けた向こうには、1人の男子生徒が立っていた。
胸に着けた学章から見るに、歳は向こうの方が1つ上だろう。しかし、そうとは思えない程恵まれた体躯だ。肩幅があってガッチリとした体、靱やかな筋肉のついた長い手足。骨格は未だ成長途中だが、将来さぞやデカくなるだろうと思わせる雰囲気を持っている。だが、何よりも目を奪われたのはその顔だ。涼やかな目元に凛々しい眉、子供ながらもガッシリした顎、高い鼻梁、肉感的な唇。それら全てが完璧なバランスで配置され、男らしさとこの年頃の少年特有の危うい美しさを醸し出していた。
ハッキリ言って、かなりの美少年だ。将来さぞや男らしい美丈夫になる事だろう。そんな彼は、俺が出てきたのを見るとニッと人好きのする笑みを浮かべた。美形にそれをやられると、何だか目がシパシパする。思わず怯んだ俺だったがそれを表に出しては舐められるだろう。そう判断して、キッと目の前の少年を睨んだ。
「やぁ、アヴヌエル。俺はサムエル・ヴィンチェンツォ・I・ヴィッドルド。君の1学年上で、学年代表をやっている。今日は少々君に話したいことがあって来た!」
「ハァ? 知るかようっせぇな。こっちは寝始めたばっかりなんだよ。人の睡眠の邪魔をすんなや!」
「なんと、睡眠の邪魔をしてしまったか。それは申し訳ない。では、手短に済ませよう」
寝る途中だったという俺に配慮してか、ヴィッドルドは元気にハキハキさせていた声のボリュームを抑えた。誰かに気を使われる事が皆無な人生だったので、たったそれだけの事にドギマギしてしまう。って、いやいや、絆されるな俺。これくらいの事で気を抜いてどうする。気を引き締めないと、いっぱい食わされるぞ。油断を振り払い、目の前の少年を睨めつける。
「いや、実はな。君の生活音の事なんだが……。ちょっと近隣に大きく響いてるみたいなんだ。君の隣室の者がそれでまいってしまっている。夜と朝方に活動する時は、少々気をつけて貰えないだろうか?」
生活音……。正直心当たりはありまくる。毎日デロッデロに酩酊して帰ってくる俺は、部屋中あちこち物にぶつかったり、足を踏み鳴らしたり、酔っぱらいの常で上機嫌に大声で歌を歌ったりしているから。一般的な生活リズムで暮らしている人間からしてみれば、俺が帰ってくる時間帯にそれだけ大騒ぎされたら確かに迷惑だろう。馬鹿な俺でもそれは理解できた。……まあ、だからといって気を使ってやる気は、サラサラないがね。
「……気に食わねぇな」
「え?」
「お前……ヴィッドルドとか言ったか。お前は俺の隣室じゃねぇよな?」
「ああ、俺は代理だ。それがどうかしたのか?」
「別にぃ? 縮み上がって文句の1つも自分で言えねぇ甘ちゃんだなって思っただけだ。そんな甘ったれの為に、なんで俺が我慢しなくちゃいけねぇ。俺はこれからも好き勝手生きる。その隣室の奴に文句があるなら自分で言いにこいって伝えろ。話はそれからだ」
ま、そんなの無理だろうけどな。大方向こうは俺の態度にビビってこんな体格の大きい年上の強そうな奴を送り込んできたのだろう。そんな何もかも人任せの奴の言うことなんて、誰が聞くか。分かってる。これはただの八つ当たりだ。今まで誰にも顧みられなかった自分と、こんな友人思いの少年と交友関係を持った隣室者との境遇の差に、勝手に劣等感を抱いているだけ。身勝手なのは分かってる。それでも、腹が立って仕方がない。俺は風邪を拗らせ死にかけても、見舞いどころか看病もされなかった。騒音くらい我慢しやがれ、この甘ったれクソ野郎。
いっそ憎しみすら覚えながら、目の前のヴィッドルドを嘲笑った。しかし、明らかに馬鹿にした表情をしているであろう俺を、奴は冷静な目で見つめ返してる。その思わぬ反応に少々面食らってしまう。どうせこいつにも、またいつものようにどうしようもない不良に向けるに相応しい、嫌そうな目で見られると思っていたのに。何かを考え込んでいるような静かな瞳に、そんなつもりはないのにどうしようもなく狼狽えてしまう。
「な、なんだよ」
「いや……。そんなに敵意剥き出しで、疲れないのかな、と思っただけだ」
「はぁ? ……馬鹿にしてんのか」
「まさか! 俺は馬鹿にできる程アヴヌエルの事を知らない。なんにせよ、生活音をどうにかして貰えないのは困ったな。隣室の寮生は本当に疲弊してしまっているんだ。アヴヌエルは夜中に大きな音が立つ程、何をしているんだ? それが分かれば根本的な問題解決になるかもしれないぞ」
ケッ、脳天気な奴め。どうせ今まで大した挫折も失敗も経験せず、親に庇護されヌクヌク育ってきた苦労知らずなんだろう。孤独に過ごしてきた俺からしてみれば、こいつの立ち振る舞いから愛され慣れた人間だって事ぐらい、嫌って程分かってしまった。そんな奴に、俺の自暴自棄に生きざるを得ない、このやるせない気持ちが分かるものか。幸せの空気を纏いながら俺に意見してくるヴィッドルドに、理不尽に腹が立つ。
まあ、どれだけ図体が大きく周りに愛されて自己肯定感が強くとも、俺みたいな手の付けられない不良の相手など、こんな見るからに優等生のお坊ちゃんにはできないに違いない。こいつも俺の素行の悪さを一端でも味わえば、二度と関わり合いになろうとは思わないに決まってる。今まで俺の人生に関わってきた、多くの他人と同じように、な。
「根本的な問題解決は……絶対に無理だな。俺が夜に活動するのは、外で夜遊びして酒を大量に飲んでいるからだ。騒音をどうにかしたいのなら、俺に夜遊びを止めさせるしかない。が、俺は止める気はないぜ。ここでの暮らしはあんまりにも退屈だ。酒でも飲んでねぇとやってられねぇからな」
「アヴヌエル、君は未だ14歳だろう。我が国では飲酒できるのは16歳からだ。寮を出て夜遊びするのも、あまり賛成できないな」
「へーえ。だから? なんだっていうんだ? 飲酒や夜遊びを止めろとでも? 絶対に嫌だね。言ったろう? 兎に角退屈なんだよ。ここでの暮らしはのんびりし過ぎてて欠伸が出る。あんまりにも刺激が少なくて、俺には到底馴染めない。退屈するくらいなら、死んだ方がマシだ! それとも何か? ヴィッドルド、お前が夜遊びや飲酒よりも楽しい事を、俺に教えてくれるってのか? えぇ?」
言外にそんなの無理だろう? とヴィッドルドを煽る。きっとこいつも、いきなり逆ギレかましてきた俺の事なんて、理解できないと距離を取るだろう。俺の相手をするなんて無駄な事止めて、問題行動を教師にでも告げ口すればいいさ。それでも俺は、問題行動を止めてやる気はないがな! 停学なり退学なり好きに処分すればいい。どうせ学校に大人しく通う気はないし、ここを追い出されたって金が尽きるまで好き勝手するだけさ。あとは野垂れ死にするのが俺にはお似合いだ。
そうしてやさぐれた気持ちでヴィッドルドを一瞥し、扉を閉めて話を切り上げようとしたのだが……。向こうは驚くべき反応をした。
「いいぞ。夜遊びや飲酒よりももっと楽しい事、俺が君に教えてあげよう」
「……は?」
「アヴヌエルが夜中に音を立ててしまうのは、夜遊びして飲酒しているせい。そして夜遊びして飲酒するのは、退屈だから。つまり君の退屈を解消すれば、全ての問題が解決するというわけだ。それなら俺は、喜んで退屈しのぎに協力しよう。遊び歩いて飲酒するよりも、もっと刺激的で楽しい事を一緒にしようじゃないか!」
予想外の返答に、俺は思わず目をパチクリとさせてヴィッドルドを見た。それにヴィッドルドはニッカリ明るい笑顔を返してくる。そんな優しい表情、俺は今まで誰にも向けられた事ない。その事に俺はなんだか酷く狼狽してしまって、咄嗟に奴から視線を外す。
クソッ、なんで俺がこんな奴相手に気圧されなくちゃならない。一瞬だけ目にした奴の真剣な眼差しに、期待をしてしまいそうになった。畜生、何もかもが酷く癪に障る。どうせこんないい子ちゃんの言うところの『楽しい事』なんて、観劇や詩を読むだとか、そういった型に嵌った貴族的なお楽しみか何かだろう。そんなのが楽しいもんか。いいさ、こいつが俺を楽しまそうとして出してきたもの全て、真っ向から全否定してやる。あの日俺がされたのと同じように、ヴィッドルドの心もポッキリ折ってやるんだ。
なんだかグチャグチャになった気持ちを抱え、グッと歯を噛み締める。そうして俯いてムスッとしていると、肩にポンッと手を置かれた。それに誘われノロノロと顔を上げると、柔らかく笑う瞳と視線がかち合う。暖かで優しいそれに、俺は何だか少しだけ恐ろしさのような何かを感じるのだった。
「さて、そうと決まれば話は早い。早速行こうじゃないか!」
「は? 行くって、なんの事だ?」
「決まってる。遊びに行くんだよ! 大丈夫、軽く体を動かすだけだから!」
「いや、俺これから二度寝を」
「何を言ってるんだ! 今から寝たら、夜眠れなくなってしまうぞ? 生活リズムが崩れると、体の調子が悪くなってしまう。一緒に健康的な生活を取り戻し、健康な体を作っていこうじゃないか!」
そう言ったヴィッドルドは呆気に取られている俺を小脇に抱え、あれよあれよという間に運んでいく。驚いて少し暴れてみたが、俺を退屈させるものかという使命感に燃えるヴィッドルドは止まらない。奴の大きな体が相手では、不摂生が祟ってヒョロッちい体つきの俺など、ろくな抵抗ができなかった。擦れ違う人々のギョッとした視線を全身に感じながらも、俺にはどうする事もできない。
「ちょ、おい! ヴィッドルド! 一旦止まれ!」
「サムエル」
「え」
「さっき言ったろう? 俺の名前はサムエルだ。もう友達なんだから、ファーストネームで呼んでくれ。ヴィッドルドだと俺には6人の弟妹が居るからややこしい」
「な……! 友達って、そんなのいつなったっていうんだよ!」
「なんだ、照れているのか? 一緒に遊ぶ約束をしたんだから、それはもう友達だろう? 友達としての親しみを込めて、俺も君の事をビクトールと呼ぶな!」
「はぁ!? 何勝手に決めて……! あ、おい! 取り敢えず止まれって!」
「アッハッハ! 暴れるな暴れるな。君の力じゃ俺から逃れるのは無理だ。無駄に疲れるだけだぞ? ほら、目的地まで連れてってやるから大人しくしておきなさい」
「はぁーなぁーせぇー!」
俺の全力の抵抗にビクともせず、笑っていなすヴィッドルド……いいや、サムエルが憎らしい。腹立ち紛れに河岸にあげられた魚のようにビチビチバタバタしてみるも、元気が良くて何よりと喜ばれる始末。結局俺はサムエルの手によって、成す術もなく連行されて行ったのだった。
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