悪役令息の結婚相手として、断罪も兼ねて野獣侯爵と悪名高い俺が選ばれましたが、絶対幸せにします!

我利我利亡者

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おまけ1 攻め視点

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「なぁ、ルカ。いいだろう? ちょっとだけだからさ」
「嫌です」
「本当にちょっとだけだって。な? 先っちょだけ!」
「駄目です」
「そんな事言うなよ……。絶対優しくするからさぁ。なぁ、お願いっ!」
「拒否します」
 猫撫で声でコッソリこちらに手を伸ばしてきた婚約者を、ヒョイッと身軽な動作で躱す。婚約者はおっとっと、とたたらを踏んで蹌踉めき、恨みがましい目つきでこちらを見てきた。が、そんなの無視だ無視。これが『勉強で分からないところを教えてくれ』だとか『今度の休みに一緒に遊びに行こう』だとか、そんな普通の頼み事だったら耳を傾けていた。仮に『金を貸してくれ』というのでも、僕の裁量の範囲内でなんとかしてやっただろう。
 ……しかし、婚約者であるネヴィオの頼み事はそのどれでもない。もっと低俗で下らない頼み事。それは『婚前交渉して欲しい』というものだった。はぁ? お前巫山戯てんの? 社交界での自分の評価分かってる? 影で『ファルネア公爵家の、パッとしない方の子息』って言われてんだぞ? ぶっちゃけ後妻の子供なせいで軽く見られている次男である弟の方が優秀なのは、客観的に判断して火を見るよりも明らかだ。ネヴィオの婚約者であるこの僕でもそこは擁護できない。
 それだというのにネヴィオは、特に勉強する訳でもなく『公爵家の長男なんだから将来安泰でしょ!』という態度を隠しもせず遊び回ってる。領地運営を学びもせず毎日ボンヤリノホホン生きてるし。パーティーに参加しても文字通り遊ぶだけ遊んで、そういう場につきものの他家の情報を集める事も全くしやしない。極めつけはこの『婚前交渉したい』という要求。舐めてんのか? 舐めてんだろ? なぁ、おい。
 全く勉強してこなかったせいで将来領地運営が満足にできず、困るのはお前だけじゃないんだぞ? 領民は勿論、ファルネア公爵家に連なって暮らしを立てている人々だって共倒れになるかもしれない。こういうのは波及するんだ。お前だけが困るなら放っておくが、他人にも迷惑がかかるんだから、シッカリしろや! 他家の財政状況や権力図を知っておくのだって、付き合いを円滑にしていく上で必要な事だ。いくら貴族でも横の繋がりがなくては何もできないからね。
「ネヴィオ殿。そんな事よりも他にやる事があるでしょう。3日後には経済学の小テストですよ。この間も前回の小テストの点数が悪くて先生から呼び出されてたじゃないですか。今からでも遅くないですから、一緒に勉強しましょう」
「えぇー、ルカと2人きりならいいけど……」
 こいつ、絶対変な事する気だな。筋肉ムキムキに憧れて鍛えてはいるが、いかんせん僕は体質的に筋肉が付きにくい。かなり頑張ってるのにそれでも人並み程度。対するネヴィオは憎らしい事に鍛えればある程度は筋肉がつくタイプらしく、それなりに筋肉があってそれに伴い力もある。2人きりになってしまったら無理矢理押し切られてしまうだろう。それだけは絶対に避けなくては。貴族として常識的な貞操観念を持っている者として婚前交渉したくないのもあるが、そもそも僕は未だこのキモイ婚約者とそういう関係になる覚悟ができていなかった。
 だってさぁ。頭のできが良くないのはまあ仕方がないとしても、全然勉強せずにいて、挙句『ちょっと抜けてる方が人間的に魅力があるだろう?』なんて言うし。あと、宜しくない心がけの人間に近寄られて、財布代わりにする為にチヤホヤされてるのに『俺って人気者!』とかのたまうところとか。僕の全身を舐めまわすようにいやらしい目で見てくるから、それとなく止めるように言ったら『照れてるんだね。そんなに俺の視線が気になるなんて、意識してるのか?』とか言ってくるのも。そういう頭が悪くて無駄にポジティブでナルシストっぽいところが、マジで無理。
 じゃあそもそも婚約すんなやって話なのだが、仕方がなかったんだ。婚約した時僕達は学園に入りたての未だ6歳。向こうが勝手に僕に一目惚れして、毎日毎日朝から晩まで付き纏わられるわ、勝手に相思相愛なんだと周囲に言いふらすわ、奴の叔母である王妃殿下を使って僕の実家に圧力をかけてくるわで、もう大変。それで、あんまりにも執拗いもんだから、まあそのうち飽きるかもしれないし、今は馬鹿でも成長するにつれマシになるかもしれないし、これで気が済むなら、と婚約したのだ。そんな判断をしちゃうだなんて、冷静に対処できているつもりであれで結構僕もネヴィオの所業に疲れてたんだな。
 まあ、そんな訳でネヴィオと婚約したのだが、こいつ僕には飽きないし成長しても別に頭は良くならないしで大誤算だ。むしろ馬鹿に拍車かかかってるし。ナルっぽくなってくるわ、性欲を見せつけてくるわで、どっちかと言うと悪化してる。どうしてあの時もっと真剣に自分の将来を考えなかったのか。6歳の自分をすりこぎ使ってフルスイングで殴りたい。
「いけません。勉強は図書室の自習スペースでします。あそこなら、分からない事があっても直ぐに参考文献を見られるので」
「でもさぁ。俺としては、ルカともっと親しくなりたいっていうかさぁ」
「学習を通して親睦を深めましょう」
「そういう深め方じゃなくて……。ほら、他にもあるだろう?」
 だから、ね? とキモい声で擦り寄ってくるネヴィオに、嫌悪感が増す。そのネチャついた目付きを止めろ。鼻の下伸ばして笑うな。頭ん中で僕をネタにいやらしい事考えてるのがモロバレだ。あー、何もかもが嫌。マジで無理ぃ。
 あーあ、これでネヴィオに山のような筋肉があったら、まだ我慢できるのに。勿論筋肉があろうがなかろうが駄目な事は駄目だが、許容できる範囲が変わってくるからな。ネヴィオも鍛えてはいるんだけど、それは精々腹筋……割れて、る……? という程度。本当にほんのちょっとだからなぁ。僕の理想には程遠い。
 そう、僕は筋肉が大好きだ。性的な対象としては勿論、純粋に愛でる対象としても。変態のそしりを受ける事を承知で言う。盛り上がった上腕二頭筋に頬ずりしたい。張りのある大腿四頭筋を撫で回すのもいいな。でも、何より好きなのは大胸筋。死ぬまでに1度でいいから、たわわな大胸筋に顔を埋めてパフパフしてみたいんだ! あぁー、どこかにお触りオッケーウェルカム大歓迎なムキムキマッチョ居ないかなぁ? ネヴィオのせいで疲れた僕を、その筋肉で癒しておくれ。
「なぁ、ルカァ。お前も1回経験すれば気に入るって。天国見せてやるから」
「見せていただかなくていいです。ほら、図書室で勉強しますよ。分からないところは教えてさしあげますから。部屋に戻って道具取ってきてください」
「でも、ルカ」
「ほら、早く!」
 こちらに擦り寄ってくるネヴィオを無理矢理押しのけて奴の自室の方に向かわせる。向こうは追い縋ろうとしてきたが、僕はそれを冷たい目で跳ね除けてやった。なんでこいつはこうそっち方面の事しか考えられないんだ。年頃だからある程度は仕方がないとはいえ、いくらなんでも盛り過ぎだと思う。溜息をつきながら指先で自分の頬を撫でる。よく美しいと評される、両親譲りのこの顔が悪いのだろうか。色白で女っぽくて、糞とはいえ仮にもネヴィオという婚約者が居るのによく告白される原因となってるこの見た目。ただでさえ僕の理想である筋骨隆々に程遠く業腹なのに、誘蛾灯のように男と面倒事を引き寄せる。
 こんな見た目のせいで、僕は絶対嫌だっつってんのに抱かれる側ばかり提案されるし、抱きたい側だっつってんのに冗談だと思われて笑われるし。なんでだよ。僕が男を、それもムキムキの男を抱きたいと思っててもいいじゃんか! 筋肉は男らしさの象徴だ。その筋肉が山盛りで男らしさの権化みたいな男を、組み敷いてアンアン鳴かせる事こそが、何より唆られるんじゃねぇか! 男の中の男を、自分だけの『雌』にする背徳感。ああぁー……。1度でいいから経験したい。どこかに居ないかな? 運命のマッチョ。……まあ、僕にはネヴィオという婚約者が居るから、今更どうしようもないのだけれど。
 分かってる。運命のマッチョなんて、全部幻想だ。そんなの有り得ない。全ては思春期特有の妄想。ある日突然白馬に乗った王子様がやってきて、自分を選んでくれてつまらない生活が素晴らしいものに一変しないかなぁ。なんていう、夢見がちな乙女の戯言と同じ。現実の僕はへっぽこの婚約者に縛りつけられ、その尻拭いやフォローにおわれてる。残念ながら、運命のマッチョに出会って結ばれるシンデレラストーリーなんて到底起こりえないんだ。ああ、それでも。せめて1度でいいから、タユンタユンの雄っぱいに触れてみたかったなぁ……。
「おーい、ルカ! 道具とってきたぞー!」
 そんな事をあれそれ考えていたら、ネヴィオが戻ってきた。やれやれ、大人しく勉強道具を取ってきたみたいでよかった。これで変にゴネられてたらいい加減ブチギレてしまってたところだ。生来の勝気な性格のまま生きたら、僕を女扱いしてくる連中相手に直ぐ喧嘩になってしまうだろうから、僕はいつもは冷静沈着な人間を装ってる。我慢は必要だが、実際それで無用なトラブルを避けられた事も多かった。ブチ切れたりしたら今までの演技が全部水の泡だ。もっとも……。婚約者なのにネヴィオに対して未だ素の自分を見せる気になれないのは、それはそれで問題なのだろうが。
「よし、道具を取ってきたのなら、早速図書室で勉強を……を……? ……ネヴィオ殿。それ、何ですか……?」
「何って、道具だ!」
 元気いっぱい、満面の笑みで僕の質問に答えるネヴィオ。そうだな、確かにお前が両手いっぱい取り零さんばかりに持っているのは道具だ。だが、道具は道具でも、僕が持ってこいと言った勉強の道具ではない。口にしたくない形状をした棒、なんか玉が連なってるやつ、使い方も形容する言葉も思いつかないやつ……。知識の少ない僕でも分かる。これ、全部性行為の際に使う、性具だ。
「どうだ? いいだろう? ルカに使いたくて、集めたんだ!」
「……どうして、これを、持ってきたんですか……?」
「どうしてって、勿論お前に使うためじゃないか! さぁ、早くどこか2人きりになれるところに行こう。そこでタップリ可愛がってあげ」
「巫山戯んなや、こんのクソボケがああぁぁぁ!!!」
 勢いに任せてネヴィオを殴らなかった僕を誰か褒めて欲しい。勉強を教えてやろうって時に、巫山戯てエログッズ持ってくる奴に切れない奴っているのか? 少なくとも、僕は切れざるを得なかった。今までの積み重ねやその時の心情を考えれば当前である。ネヴィオに対する怒りで吹き上がった僕は、建物全体が揺れる程の全力シャウトをするのだった。





 ネヴィオのタチの悪いお巫山戯にブチ切れたあの日以来。僕はネヴィオに対して猫を被るのを止めにした。素の勝気な性格と乱暴な口振りで接したのである。もうあの糞に気を使ってやる気になれなかったし、変に優しい言葉遣いをするから向こうに付け上がられるのだと悟ったからだ。今からでもネヴィオを厳しく教育的指導をしておかないと、将来的に周囲を巻き込んで破滅の道を辿るのは必至。もう体面とか気にしてられる段階じゃねぇ。遅まきながら、ようやくその事に気がついたのである。
 だから僕は頑張った。ネヴィオが鏡の前でしたいって言ってきた時は、向こうが自分に自信をなくして暫く鏡なんて見たくもありませんって思うまで整容指導をしてみたり。何もかもほっぽり出して遊びに行こうとした時は、文字通り椅子に縛り付けて勉強を教え込むのもしてやった。そんな釣れない態度じゃ嫌いになっちゃうぞっ! って巫山戯た事抜かして小突いてきた時は、小突いてきた手をそのまま取って関節を痛める寸前まで無言で変な方向に曲げてやりもしたな。婚約者として、未来の伴侶として、僕にはネヴィオを何とかする義務がある。悲しいがこんな奴の婚約者になってしまったのが運の尽きだ。『婚約者更生計画』は、ネヴィオの実家から『うちのボンクラがとんだご迷惑を……』とそれとなく詫びの手紙が届いたくらい大変な道のりだが、やってやる!
 そう意気込んでネヴィオをビシバシ教育した結果。どうなったか? それは……。
「ネヴィオ先ぱぁーい。ケーキ食べさせてあげるぅ。ほら、あーん」
「あーん」
「どう、おいしぃ?」
「おいちー!」
 有力貴族の子女と、その婚約者が招かれる内輪の小さなお茶会にて。僕の婚約者である筈のネヴィオは、何故か婚約者の僕ではなく、後輩の男をエスコートしてきていた。更にはそいつを膝の上に座らせてケーキを食べさせてもらっている。今、人の婚約者とベッチャべチャにイチャついてる少年の名は、ロレンツォ。オルレアテ子爵家の次男坊だ。有力貴族でもなく、誰かの婚約者でもなく、そもそも招かれてすらいないロレンツォは本来この場に居てはいけない。それなのに連れてきたネヴィオが、いいからいいからと無理やり押しきってしまい、そのままここに居座っている。
 最近、ネヴィオは厳しく接する僕に当て付けるように、ロレンツォと急接近していた。あれだけ性行為を迫ってきていたのに、本性が見えた途端手のひら返しなんて現金な奴。別に愛情はこれっぽっちもないので心変わりは構わないが、こっちはネヴィオみたいな糞相手でも一生添い遂げて責任もって手綱を握る覚悟をしたので、その気持ちを軽く扱われて腹が立つ。1度『ルカも俺のテクを知ればその反抗的な態度もできなくなる筈』と阿呆な事言って夜這いしてきた時に『僕と寝たいのならお前が抱かれる準備をしてから出直せ』とキモがりながら言ったら、抱かれるでなく抱くなんて、お前の見た目には似合わないとか言って馬鹿にしてきたのも許せん。ついでに僕は抱きたい側だと言ったら薄ら笑いで優しく諭されたのは、何度思い出しても怒りで頭の血管が切れそうだ。あー、何もかもが苛つく。勿論、そんな事曖気にも出してやらないが。
「……ネヴィオ殿。その……。ここは将来社交界を牽引していく立場の家の子女と、そんな人物を支えていく将来の伴侶が、親睦を深める場ですから。無関係な部外者を引き入れるのはどうかと……。それと、あなたの婚約者のルカ殿があちらでお待ちですよ? 早く行ってさしあげた方がいいのでは……?」
「まあ、そう硬いことを言うなよ。ロレンツォは本当にいい子なんだ。伴侶を立てようともせず、従順さの欠けらもないどっかのとは違ってな。だからここに居させてやってくれ。ルカは1人でも平気だから、あのままで大丈夫だ」
 それとなくマナー違反を注意されたのに、それに気がついた様子もなく僕に対する当てこすりらしき頓珍漢な事を言うネヴィオ。注意をしたさる侯爵家の子息は、どうしたものかと困り顔をしている。お茶会の他の参加者達も、ネヴィオとロレンツォの問題行動に眉を顰めてヒソヒソ話をしていた。まったく、いつまで経っても待ち合わせの場所に来ないから、もしやと思って直接会場に来てみればこれだ。仮にも婚約者である僕を放ったらかしにして、他の相手を連れて勝手にお茶会に参加とは。ほとほと呆れ返る。
 できることなら回れ右をしてこのまま帰り、秘蔵のマッチョ絵画だけが載った画集を見て癒されたいが、そうもいかない。婚約者として、僕にはネヴィオの問題行動をおさめる義務がある。それに、ネヴィオ本人の評判はもう僕だけではどうしようもないくらいにガタガタでどうしようもないが、ここで放ったらかしにして帰ったら婚約者の僕の評判まで落ちるのは確実。こんな考えなしの馬鹿のせいでうちの家名にまで傷が着くのは許せない。……行くしか、ないか。
 溜め息を噛み殺しつつ、僕はツカツカとネヴィオとロレンツォに近づいた。僕の登場に、周囲の空気がピリリと緊張感を孕む。そんな事に気が付きもせずイチャコラしている馬鹿2人だったが、僕が咳払いをすれば面倒臭そうな顔をしながらもこちらを見る。
「ああ、ルカ。なんだ、来てたのか。見当たらないから今日は来ないのかと思った」
「来るに決まってるでしょう。不参加の報せもせずドタキャンなんて、礼儀として有り得ませんから。僕だって本当は開始に間に合うように来たかったのですが、待ち合わせ相手が一向に来なかったものですから。その人を待っていたらこんなに遅くなってしまったんです」
「えぇー。ルカ先輩、忘れられちゃったんですか? 可哀想ぉー!」
「言ってやるなよ、ロレンツォ。本当の事を言ったら可哀想だ」
 可哀想なのはお前等の頭だ。この空気の中自分達が顰蹙を買っている事にも気がつけないなんて、本当に終わってる。それとロレンツォ、さっきからその態とらしいブリブリした喋り方、止めてくれない? 地味に苛つくから。怒りを原動力に変え、冷徹さを瞳に灯し睥睨すれば、馬鹿2匹はそこでようやくギクリと肩を揺らした。
「ネヴィオ殿。奔放に振る舞うのも結構ですが、もう少し公爵家嫡子という自覚を持ってください。あなたが勝手をすればするだけ、あなたご自身だけでなくあなたのご実家であるファルネア公爵家の名前にも傷がつくんですよ? 勉強もせず遊び歩くのも、勝手な事ばかり言って人を振り回すのも、婚約者が居ながら他の人を連れ歩くのも、全部目に余ります。いいですか、そんな事して結局最後に困るのはあなたなんですよ? いい加減公爵家嫡子としての自覚を持ち、落ち着いてください」
「う、五月蝿い! 俺が何をしようとも、俺の勝手だろ!」
「確かに、あなたが何をしようとあなたの勝手です。ネヴィオ殿がちゃんと自分で責任を取れる範囲でなら、という大前提がつきますがね。ネヴィオ殿、来月にある期末テストは大丈夫ですか? 前回は一ヶ月前から僕が勉強を見てさしあげて、それでもようやく赤点を回避……といったところでしたけれど、今回は勉強をしている様子もないし心配しているんですよ? 公爵家嫡子が赤点とって補習、ましてや留年なんてことになったら、笑われますよ? 最近遊び回っていらっしゃるようですが、相変わらずお友達の皆さんの分までお金をお出しになっていらっしゃるんですか? 気前がいいのは結構ですが、お父様から頂いたお金で考えなしに豪遊するのは如何なものかと。身の丈にあった生活をしないと、いつか手痛いしっぺ返しが来ますよ。それと、ロレンツォについても。後輩を可愛がるのはいいことだと僕も思いますが、婚約者が居る目の前で、そんな風に膝の上に乗せてベッタリくっついていたら、不貞を疑われるとは思わないのですか? 盛りのついた犬じゃないんですから、落ち着きを持ってくださいな」
「ウググググ……」
 ペラペラと思うがままに注意をする。あくまでも常々思っていた文句の一部分だけしか言わなかったが、これだけでもネヴィオはぐうの音も出なくなり、呻き声をあげることしかできなくなっていた。僕は気持ちを隠しきれず、顔を真っ赤にして唸るネヴィオを、ついつい見下した目で見つめる。あーあ。こんなのが婚約者とは。僕の人生本当におっ先真っ暗だな。僕が暗澹たる気持ちでいると、不意に目の前に人影が。ネヴィオの膝から立ち上がったロレンツォだ。
「ル、ルカ先輩。酷いです!」
「ハァ?」
「難しい事ばっか言ってネヴィオ先輩を虐めて……。思いやりって言葉を知らないんですか!?」
「……ハァ」
「勉強が大変ならサポートするのは婚約者であるルカ先輩の役目だし、人望があるのはいい事じゃありませんか! 僕に良くしてくれるのも、ネヴィオ先輩が優しい人だからで……。それを理解しようともせずに悪し様に言うなんて、最低です! ネヴィオ先輩だって頑張ってるのに!」
「ロ、ロレンツォ……!」
 無茶苦茶言いやがるな、こいつ。勉強なんていくら教えても当人にやる気がないのならたかが知れてるし、第一今のネヴィオは教えようにも遊びに夢中で勉強から逃げ回っている。ネヴィオのあれは奴の人徳じゃなくて持ってる金に人が集まってんだ。僕はそれを指摘しただけ。事実を突きつけてるだけなのに、悪し様も糞もあるかよ。おい、何感動してんだ、少しは我が身を振り返りやがれ糞ネヴィオ。
「ロレンツォ。これは婚約関係にあるネヴィオ殿と僕との問題だ。部外者は口を挟まないでくれ。そもそも君はこのお茶会に招待されていない筈だが、何故さも当然のような顔をしてここに居るんだ?」
「そ、それは。ネヴィオ先輩が誘ってくれたから」
「誘われたからって普通来ないだろう。侯爵家以上の爵位を持つ家の者と、その婚約者だけが参加資格を持つお茶会だぞ? 君はそのどれにも当てはまらない。常識的に考えて来ちゃいけないことくらい分からないのか?」
「……っ! ネヴィオ先輩、ルカ先輩が虐めてくる!」
「こら、ルカ! 可愛い後輩になんてことを言うんだ! 幻滅したぞ!」
 そんなこと言ったらこっちはお前らに幻滅し続けのし通しだわ。本当の事を指摘されただけで虐められてるって。都合が悪くなったからって、そりゃぁないだろう。向こうはそう言えばこっちを悪者にしたてあげられるとでも思っているのかもしれないが、それは当人だけの思い込みだ。現にさっきから成り行きを見守っているギャラリーは、公正な目でどちらが悪いか判断をしているらしい。2人が気がつこうとしていないだけで、奴等に対して非難がましい視線を送っている。
「もう我慢ならない! 最近やけにこ煩くなっと思ったら、こんなにもいたいけな後輩に辛く当たったりするなんて! 自分にない可愛らしさと若さを持っているロレンツォに嫉妬しているのか? だとしてもちょっとどうかしてるぞ!? そもそも、人前では隠しているようだが、男勝りな性格もがらっぱちな言葉遣いも、何もかもが思っていたのと違う! その見た目に似合ったしとやかな内面を持っていると思ったのに……騙された! こんな事なら、お前なんかと婚約なんてするんじゃなかった!」
 それはこっちの台詞だわ。ネヴィオと婚約してからこっち、何百何千何万回その後悔をした事か。婚約破棄しようにも1度受けいれてしまった手前、こっちからはそれができなくて困ってたんだ。でも、ネヴィオの方から愛想が尽きてくれたのなら、もういいよな?
「左様ですか。そりゃどうも。それでしたらどうぞ今からでも遅くありませんから、実家の方に婚約関係破棄の旨をしたためた書状を送ってください。結婚してしまう前にお互い相手にそぐわない事に気がつけてよかった」
「ああ、そうしてやるさ! 後から泣き言言うなよ!」
 泣き言言うなはこっちの台詞である。売り言葉に買い言葉。あっという間に破局が決定した。そうと決まればもう一分一秒も顔を見たくない相手なので、周囲に最低限の挨拶だけをして来たばかりのお茶会を後にする。これで僕は自由だ!
 そして、帰りしな移動しながら考えた。ネヴィオの方は口先だけでも破談を言い出してくれたが、果たしてこのまま本当に婚約破棄できるかな? ネヴィオは馬鹿だがネヴィオの家族は馬鹿じゃない。今、阿呆のネヴィオが何とかドロップアウトする事なく、どうにかこうにかファルネア公爵家嫡子として生きていられているのは、僕の献身的な介助あってこそと分かっているだろう。そんな奴の実家がこの破談を簡単に了承するとは思えない。むしろ、思い直せとネヴィオを説得するかも。いや、絶対するな。そうに決まってる。
 あー、何もかも一筋縄では行かないか。これから先面倒事が山盛り待ってそう。関係が破綻しても迷惑をかけてくるネヴィオに、憎しみすら湧いてきそうな僕だった。





 お茶会の騒動から数ヶ月。僕は未だ、ネヴィオと婚約関係を破棄できていない。理由は簡単。ネヴィオの実家であるファルネア公爵家が、破談をよしとしないから。
 あったり前だ。だってネヴィオの奴、あのポンコツ具合だし。僕がついていないと生まれた順だけで正当性を主張してきた嫡子の立場も危うくなる。仮にこのまま当主になれたとしても、あれじゃぁそういくらもしないうちに家を没落させてしまうに決まってる。その事が分っているからこそ、ファルネア公爵家の面々はネヴィオを表に立てておいて裏で全てを上手く回す役回りを担うであろう、僕を手放す訳には行かない。そのせいで僕達の破談に待ったをかけてるって訳。
 家人からなにか吹き込まれたのかネヴィオの奴もやっぱ破談はなしで! とか言ってくるし。遊ぶ約束じゃねんだから、そんな軽々しく言うなっての。あんな人前で宣言しといて、そんな口先だけで何もなしになるわけないじゃん。そもそも僕に謝れや。先ずはそこからだろうが。そして相変わらず巫山戯た態度は改めないし、ロレンツォとは堂々とイチャつきまくるし。マジどつき回してぇ。
 あんまりにも派手にあそびまわるもんだから、その素行はついに世間にも知られ始めている。ネヴィオの舐めた所業に、僕は最早呆れているだけだが、僕の家族はもうカンカンだ。こうなったらいっそ無理にでもこちらから破談にするか……。とまで考えていたのだが、そんな時に思わぬところから横槍が入った。王家から、妹宛に王太子との縁談が入ったのだ。同時にファルネア公爵家からこれで満足でしょう? とでも言いたげな内容の書状が。
 大方妹に次期王妃の立場をくれてやるから、代わりに僕を生贄としてファルネア公爵家に差し出せという事だろう。王妃殿下の実家だからって、やりたい放題だな。王妃殿下は公正な人だし僕のことを気に入ってくれているので、彼女自身は純粋に息子と僕の妹を縁組したいだけなのかもしれない。だが、そこにファルネア公爵家の嫌な思惑がのっているわけで……。あんなに人のいい王妃殿下まで利用するとは、とことん糞みてぇな家だな。まあ、嫡子が馬鹿過ぎて誇り高い公爵家が潰れるなんてことになったら恥だから、あっちも必死なのかもしれない。
 まったく、それにしても僕の家族まで巻き込むなんて。本当に度し難い。妹には想い人が居て家族皆で応援してるってのに、王太子からの縁談があったら断れないじゃないか! 僕の縁談が破談になっても妹は逃れられないし! どうすんだよ!? どこまでこっちに迷惑をかければ気が済むんだ、ネヴィオの奴! そもそも全てはあいつが出来損ないなのが諸悪の根源なんじゃないか! 畜生、なにか上手くネヴィオと僕の婚約が破棄されて、妹に来た縁談も断れる上手い手はないものか……。そう思っていたら。
「ルカ・ナタナエレ・F・カノーラ! 俺はお前を断罪し、今ここでお前との婚約を破棄を宣言する!」
 学園の卒業記念パーティーでの事。ネヴィオがそう高らかに宣言してくれた。長々と色々言っていたが要はこうだ。『お前みたいな尻軽、自分には相応しくない。お前が浮気をしていたからお前有責で婚約関係を解消する。浮気の証拠? そんなものない。俺の言葉が全てだ。罪のない後輩も虐めたな。なんて性悪なんだ。罰として、この世で1番恐ろしい男の元に嫁がせてやる。淫売のお前にはお似合いだ。精々苦しむがいい』。
 そう、なんと、ネヴィオの奴が僕を言われのない罪で断罪しやがったのだ。大方卒業記念パーティーでなら、家人の邪魔も入らず僕と婚約破棄を宣言できて、更には貶めるのも一緒にやれて一石二鳥! 一挙両得! と、暴走したのだろう。いかにも後先考えない馬鹿らしい行動だ。愚か極まりない。
 このネヴィオの話を聞いた僕は、直ぐさま行動を起こした。裁判にかけて本当に悪いのはどちらかを争う? 違う。反駁をして悪い噂を払拭する? これも違う。テメェのやってきた事ちゃんと振り返れや! って断罪返し? 残念、そうじゃない。僕はね、この身勝手で言いがかりでしかない断罪を受け入れたんだ。
 断罪された瞬間、僕の頭の中に天啓のように素晴らしい考えが浮かんできた。奴との婚約破棄……。妹の縁談の破談……。全てのピースがカチリと当てはまる。そうだ、ここで僕が断罪されれば、全てが丸く収まるじゃないか。
 周囲をチラリと見やる。誰もがネヴィオの奴を『お前何言ってんの?』という目で見て、僕の方に気の毒そうな表情を向けている。ここに至るまでに考え無しの馬鹿ネヴィオが好き勝手してくれたお陰で、奴の阿呆な所業は誰もが知る有名な話となっていた。そんな馬鹿婚約者を支え、尻拭いをし、浮気をされても怒るでもなくコンコンと世の理をとく僕は、見た目も相まって今や『逆境にも耐え抜く悲劇のヒロイン』とまで形容されていた。よし、皆が真実に気がついているこの状況なら、まかり間違っても僕の家族が言われなき風評被害を受ける事はないだろう。これなら僕の計画を心置きなく発動できる。安心と確信を得た僕は、そのままネヴィオの断罪を受けいれたのだった。





 暗闇の中、フと目を覚ます。寝台に寝っ転がったまま微動だにせず、ボーッと天井を見上げた。何だか懐かしい夢を見たな。ほんの少し前のようにも、随分昔のようにも感じるあの頃。全て今では遠い昔の事だ。
 僕がヴィッドルド侯爵家に来て、約1年が経った。最初はネヴィオに嫌がらせとして恐ろしく評判の悪い侯爵の元に嫁がされ、最後っ屁まで迷惑なやつだなぁと思っていたのだが……。今にして思えばネヴィオが僕を彼の元に嫁がせてくれて、本当に運が良かった。
 ああ、初めて当時婚約者だった自分の伴侶に会った時の事を、今でも感動と共にありありと思い出せる。道中停められ何か緊急事態でも起きたのかと思って馬車から出てみれば、そこに居たのは正しく僕の理想を体現したとしか言いようのないムキムキの大男。骨太でガッシリした体も、浅黒くはち切れんばかりに盛り上がった全身の筋肉も、その何もかもに僕は目を奪われた。そして、何よりも目を引いたのはその雄っぱい。彼の鍛えられた体つきから言って特注なのであろうスーツが、その雄っぱいのデカさを強調していた。……ヤバい。もろタイプ。
 あれは駄目だろう。この世にあんな完璧な人が存在していいのか? 若しかして、天界から天使が落っこちてきちゃった? だとしたらあの美しさも頷ける。いけない。直視したら興奮のあまり絶対発狂する。飛びかかって服ひん剥いてむしゃぶりついてしまう。流石にそんな事したら色々と取り返しつかない。……よし、極力接触を減らそう。仕方がない。これはお互いの為だ。自分にそう言い聞かせながら、かなり後ろ髪引かれながら僕は馬車に戻った。勿論、1人きりの馬車の中で力強くガッツポーズしたのは言うまでもない。
 それからは本当に大変だった。事前に婚約者であるヴィッドルド侯爵がどんな人物かは、人の噂を聞いて調べておいたのだが……。傍若無人。人の皮を被った悪魔。魔物よりも魔物らしい。そんな噂ばかりを聞いていた。あんなにも美しい人が、そんな恐ろしい人格を持っているのか。まあ、天は二物を与えずと言うからな。僕も見た目に騙されて酷い目に合わされないよう、気をつけないと。そう覚悟して距離をとって接し続けたのだが……。
 ん? あれ? なんかおかしくない? だって毎日朝昼晩欠かさず挨拶してくるし。たまに行きあっちゃったら可愛い笑顔で話しかけてくれる。数日に1度は庭の散歩にだって誘われた。おまけに、こないだ届いたラブレター。『野獣侯爵』の二つ名からは想像もできない、物凄いピュアッピュアな内容のが届いたぞ。好き好き大好き愛してる! って感情がダダ漏れのやつ。その全てに粛々と対応しながら、僕の中で疑問が大きくなっていく。なんか……僕の婚約者様、噂と違くない?
 そして、とうとう結婚式を終えた初夜当日。あれだけ警戒していたのに、僕は婚約者から伴侶となった彼の雄っぱいの魔力に負けて、性行為を促し更には本性まで曝け出してしまった。しかし、話していくうちに明らかになる伴侶の正体。気性が穏やかで思いやり深く、誰より優しいその心。『野獣侯爵』? どこが? こんなにも素晴らしい伴侶をくだらない噂だけで知った気になり誤解していた事を、僕は心の底から猛省した。
 この優しい人になら、処女を捧げてもいいかもしれない……。伴侶の優しさに触れるにつれ、僕はそう思うようになった。あまり気が進まないし、できることならこの素晴らしい伴侶の体を男として好きなだけ味わいたいが、それはきっと許されないだろうから。この雄っぱいが僕だけのものになるという事実だけで、我慢しよう。そう、覚悟を決めたのに。なんと伴侶は、僕に抱かれてもいいと言うではないか! 馬鹿にせず、冗談だろうと一笑に付さず、彼は僕の全てを受け入れてくれた。あの時の感情を言葉に表す事など到底できない。ただただ、嬉しくて、幸せで、あまりの事にちょっとだけ泣きそうだった。ああ、何としてでも伴侶の素晴らしい心遣いに応えなくては。幸せな気持ちのまま、僕達は結ばれた。
 それからの毎日は本当に幸せに溢れている。大好きな伴侶……アルフォンソは本当にいい人で、僕の事を心から愛し大切にしてくれるし、僕の方も身も心も美しい彼にベタ惚れ。一緒に過ごす時間が長くなる程、益々彼に惚れ込んでいく一方だ。毎日デレデレしながら幸せを噛み締め生きている。こないだ新婚旅行に行った際には余計な茶々が入ったが、お陰でアルフォンソとの愛がよりいっそう深まった。その結果として、今やアルフォンソのお腹には僕達の愛の結晶が……。ああ、こんなにも幸せでいいのだろうか? 幸せ過ぎていっそ恐ろしいくらいだ。
 頭を動かして、横を見る。隣には穏やかな寝顔を晒す、ムキムキでエロエロな僕の理想を体現した旦那様。胸中にとめどなく溢れる愛しさに従って、逞しい彼の体に寄り添う。すると眠ったままのアルフォンソが、ムニャムニャしながら腕を動かし、僕の体を抱き寄せてくれた。愛しい伴侶の筋肉に包まれる安心感。何にも変え難い。その温もりに身を任せていると、静かに眠気が戻ってくる。僕はアルフォンソに頬擦りし、そのまま静かに目を閉じた。
 家族は優しくて僕を愛してくれるし、友達にも恵まれてそれなりに過したけど、僕の子供時代の記憶は暗いものが多い。家で養育されていた頃は兎も角、少なくとも学園に通っている間はネヴィオの馬鹿に付き纏われて、あまり幸せと思えるようなものではなかったのだ。来る日も来る日も神経を擦り減らし、婚約者の所業に頭を痛め、どうしたものかと悩む日々。将来ネヴィオと結婚して、こんな尻拭いの生活が一生続くのかと思うと、いっそ殺してくれとすら思ったものだ。
 だが、今は違う。死ぬなんてとんでもない。何がなんでも人間の寿命の限界ギリギリまで生きてやる。勿論、愛しいアルフォンソと一緒に。その長い人生を、アルフォンソとラブラブして過ごすんだ。婚約者というだけで好きでもなんでもない相手の面倒を見させられ、ウンザリしていた不幸な僕はもう居ない。今の僕は、理想の見た目と中身を持った、その雄っぱいと度量の深さで存分に甘やかしてくれる、本物の天使みたいな伴侶を迎えられた、史上最高に幸福な男だ。
 僕を救ってくれたこの人を、生涯をかけて愛し、幸せにし続けよう。勿論、彼との間に産まれてくるであろう、可愛い赤ちゃん達も。彼との子供が1人だけなんて満足できない。アルフォンソは大の子供好きだし、今お腹に居る子にも兄弟をもうけさせてやりたかった。何よりアルフォンソの血を引いた子供を沢山可愛がりたい。多ければ多いだけいいけれど、せめて3人は欲しいな。早速、明日朝起きたらアルフォンソに相談しよう。まだ1人目がお腹にいる段階なのに、気が早いかな? まあ、こういうのは早いにこしたことないか。考える時間が必要だもんな。そうして色んなことを心の中で決めた僕は、安心して眠りの世界へと旅だったのだった。
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