悪役令息の結婚相手として、断罪も兼ねて野獣侯爵と悪名高い俺が選ばれましたが、絶対幸せにします!

我利我利亡者

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 そんなテンヤワンヤの初夜から早半年。俺とルカは夫婦として大変仲良くやっている。
 元々この国有数の名家である、カノーラ公爵家の生まれでファルネア公爵家の嫡子の婚約者だっただけの事はあって、それに見合った資質を持ち教育を受けたルカはそれはそれは優秀な人材だった。彼の手助けで領地運営の調子は上々。ルカの持ち込んだ専門知識のおかげで畑の実りは多くなり、彼の考案した対策案で魔物の被害も減った。腹を割って話し合ったお陰で余所余所しかった態度も改善され、人当たりの良くなったルカは、その功績と美しさも相まって今では領民達から大変慕われている。お陰で俺は、美しくて有能でおまけに気立てもいい完璧超人な若妻を娶った幸運な男として、羨望の的だ。
 当のルカと言えば、俺の事を全身全霊で愛している事を隠しもしない。毎日毎日暇さえあれば俺に引っ付いて『僕のスイートハニー』だとか『可愛いキャラメルキャンディーちゃん』だとか、およそこんな大男にかけるには適さない言葉で俺に愛を囁いてくる。それに未だ慣れず、恥ずかしくて同じように返せない俺だったが『そういう初心なところもあなたの魅力の1つだから』と、ルカは益々俺に入れ込むのだった。
 というかルカは、甘い言葉に恥ずかしがる俺を見たくてあんな事を言っている気がする。俺が恥ずかしがって顔を赤らめれば赤らめる程、夜になったらベッドの上で大盛り上がりしてるし。最近では俺も体が慣れて若いルカが満足するまでヤれるようになったし、昼も夜も毎日ズッと薔薇色である。
 まあ、そんな事は置いておいて。なんだかんだ仲睦まじくやっている俺達だったが、この度突然だが結婚半年目にして今更になってしまうが新婚旅行に行く事にした。俺達はスピード結婚だった為、やらなくてはならない事が多くて結婚する直前直後は書類上籍を入れて式を挙げるだけで精一杯だったから、こんなにも遅くなってしまったのだ。でも折角ラブラブになれたんだから新婚旅行も行きたくない? と夫婦2人共意見が一致したので、遅まきながらも結婚半年目に新婚旅行をすることになったのである。
 新婚旅行決行の時期としては年始頃。行先は王都になった。というのも新年になるとこの国の貴族は王様の主催するパーティーに行って新年の挨拶をする決まりになっている。手紙で済ませてしまって直接は挨拶に行けていないルカのご実家も王都にあるし、彼の里帰りや大切なご子息の結婚相手として俺がちゃんと顔を見て挨拶をする事もしておきたい。仕事があってそう何度も領地を離れられないし、諸々用事があるなら一緒に済ませてしまおうと、横着者の夫婦は用事を片付けるのも兼ねて王都を新婚旅行先に選んだのだ。
 早速ルカの実家に新婚旅行も兼ねてお邪魔してもいいかと伺いを立てれば、色良い返事。なんなら旅行中は当家に泊まっていけ、いや絶対に泊まれ、歓迎し倒してやる。と、何とも頼もしい返事も来た。ルカもその方が落ち着くだろうし、久しぶりに家族水入らず過ごしたいだろう。俺は邪魔しないように外出でもしていればいい。そう思ってお言葉に甘えさせてもらって訪ねたのだが……。
「ルカ、いつまで引っ付いているんだい? そんなにベッタリくっついてちゃ、アルフォンソ君が歩きにくいよ」
「いいんだよ、父様。アルフォンソは僕の隣から1歩も動かないんだから」
「またそんな屁理屈言って。全く、周りの反対も聞かずにいきなり『妹の為になるから』とか言って家を飛び出し結婚したと思ったら『半月もせずに離婚すると思う』とか言ってた相手とそのままラブラブになって帰ってこないし、お前は昔から無茶苦茶過ぎる」
「だってニコロ兄様! 見てよ、この僕の心優しいチョコレートちゃんを! こんな身も心も完璧な人に惚れないとか、有り得なくない!? 始まりがどうであれ折角結婚したなら好都合、逃がすわけないじゃん! 片時も離れたくないし、里帰りなんてとんでもない!」
「ルカ、チョコレートちゃんは止めてくれ。恥ずかしい」
「おや、照れてるのかい? 僕の天使。そんなこと言わずに僕達のアツアツっぷりをもっと周りに見せつけて……。いや、やっぱり止めだ。そんなに可愛い照れ顔見せたら、他の奴等が軒並みあなたに惚れてしまう。アルフォンソの魅力を知っているのは僕だけでいい」
「ルカ兄様、前にも増して情緒不安定ですわね……」
 場所は王宮。時は新年の挨拶をするパーティーの真っ最中。俺は片腕にひっつき虫になったルカをぶら下げながら、カノーラ公爵家の面々から頂戴する生暖かい視線を受けていた。
 こうなったのには訳がある。というのもルカの実家であるカノーラ公爵家の屋敷について歓待を受け、暫し交流を深めてから『さて。積もる話もあるでしょうし、後はご家族水入らずで団欒してください。部外者で邪魔者の私はお邪魔にならないように外で暇を潰しています』と言ってからルカの様子がおかしくなった。曰く『僕を置いてどこに行く気だ』。『片時も付かず離れず傍に居たい、居て欲しい、と思っているのは僕だけだったのか』。『僕を置いて1人になりたいなんて、若しかしてもう僕に飽きたの? 離婚したいの?』。との事だ。
 そこからはもう大騒ぎ。『束縛し過ぎるな、アルフォンソ君にも自由な1人だけの時間をあげてやれ』という彼の家族の言葉など右から左。『お願いだから捨てないで! あなたに捨てられたら死んでやる!』と、泣いたり怒ったり忙しく喚くルカを宥めるのは一苦労だった。ルカが俺にいかにゾッコンなのか思い知らされたし、それを満更でもないと思ってしまう自分も居て、何だか複雑な気分だ。しかも、ルカの束縛を喜んでるのが顔に出てしまって、義家族には微妙に呆れられてしまうし。『なんと言うか……。お似合いね、あなた達』という苦笑いした義母の言葉を、俺はどう受け止めればよかったんだろうか。今になっても分からない。
 兎も角。そんな事があってから、ルカは俺から前よりもっと離れなくなってしまった。本人に聞いてみたところ、少なくとも王都に居る間はこのままでいたいらしい。華やかな王都で俺が他に目移りしないように、だそうだ。こんな美しい伴侶が居るんだから、そんな事到底有り得ないのに。王都に存在するどんな美麗な人や物も、ルカの美貌の前では霞んでしまう。けれど、ルカはそんな言葉納得しない。どこに行くにもベッタリ一緒。お陰で行く先々で周りの視線が刺さる事、刺さる事。カノーラ公爵家の面々は慣れてくれたが、その他の人々には視界に入る度にギョッとされる。
「せめて国王夫妻の前では止めておけよ。相方の腕にぶら下がりながら挨拶するとか、どんな夫婦かと思われるぞ」
「でも、ルチャーノ兄様。僕少しもアルフォンソと離れたくないし、陛下達にも2人の仲を見せつけたいです」
「お願いだから止めてくれ、ルカ。お前、周りが見えてないのか? ただでさえ久しぶりに人前に出てきて関心を集めているってのに、更には『社交界に咲いた笑わない氷の花』と呼ばれたお前が、アルフォンソ君にデレデレしてるのを見せられて、周りにいる連中全員驚きで目玉が飛び出してるんだぞ。アルフォンソ君がお前に禁術である『洗脳の魔法』を使って無理矢理自分に惚れさせたと勘違いされる前に、そのダラケた表情を取り繕え」
「無理でーす。アルフォンソにデレないとか、有り得ないでーす。それにしても、アルフォンソみたいに魅力的な人、魔法がなくても惚れちゃうのにそんな簡単な事が分からないなんて、世間の人間は間抜けだなぁ」
「やれやれ、ルカの筋肉狂いは昔っからの筋金入りだったものねえ。本当、困ったわぁ」
「母様、アルフォンソは筋肉ムキムキの見た目も完璧だけど、中身だって負けず劣らず素敵なんですよ。例えば」
「ああ、もう! 母様何してるの! ルカ兄様がまた惚気け始めちゃったわ!」
「今日だけで何度目だよ! いい加減にしてくれ! 気が狂う!」
 家族の悲鳴も意に介さず、ルカは倩々つらつらと澱みなく俺の魅力をプレゼンしている。ああ、またか。こうなるとルカはなかなか止まらないんだよな。
 前にあんまりにも惚気を聞かされ続けて発狂しかけた下のお兄さんに、ショックを与えれば落ち着くかと浮遊の魔法をかけられて空中に飛ばされた時ですら、動じる事無く漂いながらも平然とまだ話していた。それを見たご家族の絶望の表情と言ったら。今までの経験から言って、俺が話しかけて気を逸らしてやらないと何がどうあっても気が済むまで喋る。そして決まって話が長い。義家族が物凄い表情になっているし、俺が止めてやらねば。
「ルカ、あまり喋り過ぎたらあなたの美しい声が涸れてしまうよ」
「アルフォンソの魅力を伝える為ならば、声なんて涸れたっていい」
「なら、ルカは俺の魅力を伝えるのが最優先で、俺自身とは話をしてくれないのかい? それは寂しいな」
「そ、そんな事はない! この世にアルフォンソと話をする以上に優先すべき事があるものか! 早速話をしよう! 何がいい? 今日もあなたは素敵だねって話にする?」
 よし、気が逸れたな。これでよし。少なくとも暫くは、ルカは俺との話に夢中になるだろう。ルカのお喋りを止めた事で、ご家族から感謝と感激の視線を向けられた。気にしなくていい。俺の魅力を延々と語られ続けると、俺も恥ずかしいからな。ルカの惚気は2人切りの時だけの楽しみに取っておこう。
「ルカ、あまり俺の話ばかりしていると周りの人達が着いて来れなくなるから、他の話題にしよう」
「えー、でも僕興味ない」
「もう、ルカってば」
「あ、そういえばルカ。お前を捨てて子爵家の次男坊に乗り換えたあの糞野郎、最近落ち目らしいぜ」
 これ以上ルカに惚気られては堪らないとでも思ったのか、上のお兄さんが話題を振る。ルカを捨ててって事は、ルカの前の婚約者、ファルネア公爵家の嫡子の事か。仮にも他家の嫡子を『糞野郎』呼ばわりとは。なかなか思い切ったな。まあ、仕方がないか。ご家族はなんだかんだルカの事を可愛がっているみたいだし、ルカを貶めたそいつに色々と思うところがあるのだろう。
「なんでも、あれだけ必死になって『僕ちん悪くないでちゅ!』って沢山言い訳用意してルカを断罪したのに、普段の素行があんまりにも悪いもんだから誰にも信じて貰えなくて、逆に濡れ衣であろうルカが黙って断罪されるなんてどんな汚い手を使ったんだって噂になってるらしいな」
「そうそう。しかも、新しい婚約者と連れ立ってあんまりにもあちこちでルカ兄様の事を悪くいうもんだから、益々顰蹙を買って今では立派な社交界の鼻摘み者。呼んでもないパーティーに出張ってはルカ兄様の悪口を言いふらして、そのせいで2人一緒にどんどん株を下げて行ってるって話だわ。こっちは兄様のありもしない悪評を払拭する手間が省けて助かるけど、本当馬鹿みたい」
「せめてほとぼりが冷めてから2度目の婚約をすれば宜しかったのにねぇ。ルカとの婚約破棄の後直ぐに別の相手と婚約するものだから、節操なしだの浅慮で短慮なんて色々言われるのよ。元々は向こうが是非にと言って執拗く頼み込んでくるから、根負けしたルカが家の為にもなるしと仕方なしに受け入れた縁組だったし、それを自己都合でアッサリ捨てたものだから尚更印象が悪いんでしょうね」
 こうやって話を聞いて、改めて思うんだが……。ルカの前の婚約者、なかなかの屑だな。無理を押して婚約した相手を婚前交渉してくれないし思ってたのと違うからって浮気して、おまけに事実無根の悪い噂をでっち上げて断罪。うん、物凄い屑だ。ルカは特に気にしてない様子だしそれなりに報いも受けているようだが、できることなら折角鍛え上げられたこの筋力を使って懲らしめてやりたいくらいである。
「あんな甚助、知るもんか! アルフォンソの話でいい気分になってたのに、嫌な奴の話をしないでくださいよ!」
「ルカ、お前、仮にも現在進行形で迷惑をかけられている相手だぞ? ちっとも気にならないのか?」
「全く! アルフォンソが居るのになんでゴミを気にかけなくちゃいけないんですか!?」
「本当、ルカはアルフォンソ君にベタ惚れだねぇ。でも気をつけるんだよ。どうも最近、ファルネア公爵家にはお前の元婚約者を素行不良を理由に跡継ぎの立場から下ろし、代わりに弟である次男坊を担ぎ出す動きがある。それ関連でこちらにも何か迷惑がかかるかもしれないと、この間ファルネア公爵家から話があったんだ」
「うぇー、面倒臭い。人の新婚旅行中になんて面倒事を持ち込むんですか。縁が切れてまでも煩わしい。あー、もう一生アルフォンソとイチャイチャラブラブするだけの世界で生きていたいです」
 言いながら俺の腕にウリウリと頭を擦り付け、甘えてくるルカ。今の本心からであろう言葉も相まって、とっても可愛い。ルカは俺と一生一緒に居たいと思ってくれている。嬉しいなぁ。喜びのままにむくれたルカの機嫌を取ろうと口を開きかけた、その時。
「おやおやおや。誰かと思ったら、ルカ・ナタナエレ・F・カノーラじゃないか! いや、待てよ。今はルカ・ナタナエレ・F・ヴィッドルドだったかな?」
 気品があるのにどこか嫌な感じのする男の声。やけに馴れ馴れしい台詞。気安い話し方。なんだか嫌な予感がする。眉を顰めそうになるのを堪えてから、振り返った。
「ネヴィオ殿……」
 その台詞は誰のものだっただろうか。ネヴィオと言えば、聞き覚えがある。初対面だが、誰か分かった。こいつ、ルカの元婚約者だ。
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