上 下
21 / 22

おまけ 3の3

しおりを挟む
 決戦の時は直ぐに来た。俺がセヴランさんとロランの話を盗み聞きいてから、丁度3日目の晩のことである。
 その日も例に漏れず、早々に寝室に引っ込んだ俺とは違って、2人は遅くまで談話室で顔を突合せ長々と何事かを話し込んでいた。なんやかんやと理由をつけて俺だけが先に寝室に行くように仕向け、2人きりで話す時間を作ろうとするのはここのところいつもの事。余っ程重要な話をしているに違いない。最近ではもうロランの頭の中はセヴランさんとの話でいっぱいなようで、時々思い悩むような様子も見受けられていた。
 だが、そんな日々も今日この時までだ。これから行うこの行為で、俺はシッカリとロランの関心を取り戻してみせる! その為にも、作戦は何としてでも成功させなくてはならない。拳をグッと握り、ますます決意を固め、ベッドの中で寝たフリをしながらじっとその時を待つ。
 どれだけそうしていただろう。遂に僅かに扉の軋む音がして、灯りを落として暗い室内に、ロランの持つ魔道式ランプの灯りが差し込んだ。いくら獣人の優秀な目を持ってしても、木立に囲まれた山奥のこの屋敷では、月明かりもろくに差さないので夜は明かりなしには歩けないのである。
 瞼越しに感じる仄かな灯りと耳に届く音でロランのいる大体の位置を測り、狸寝入りがバレないようにしながら、彼がベッドに入ってくるのを待つ。やがて、ランプをベッドサイドテーブルに置く音がして、灯りが消された。ベッドが片側へと沈み、掛け布団が持ち上げられて隣に暖かい温もりが滑り込む。ロランだ。
 ロランは少し疲れた様子で小さく息を吐くと、ゴロンと俺の方を向いて横になる。腕を伸ばして俺の体を引き寄せると、自分の胸に俺を抱き込むようにした。俺の存在を確かめるかの様に、俺の体に頭を擦り付けて、そこで漸く落ち着いたみたいだ。ロランは自分の体と俺の体を隙間なく密着させてから、寝入る為に体から力を抜いた。
 ロランはいつもこうなのだ。『マルセルを抱きしめて寝ると安心する』と言って、俺とピッタリくっついて寝たがる。それはセヴランさんと一緒にいる時間が増えた今も同じ。大きな体をした獣人なのに、なんと可愛らしいことか。前まではそう思っていた。
 今は可愛く思っていないのかって? 思っているとも。でも、普段の生活でセヴランさんに重きを置かれている今そんなことされたって、逆に虚しさや寂しさがつのるだけ。俺を置いて王都に行くという話を聞いてしまった後にもなると、ロランの本心が全く分からない。そんなモヤモヤをぶつけるかの様に、ロランが微睡み始め呼吸が深いものに変わりかけたのを確かめてから、俺は遂に行動を開始した。
 素早い動きでクルッと体を回転させ、胴体に回されたロランの両手首をグッと掴む。忍ばせていた幅の狭い布を取りだし、それを使って手早くロランの手を縛り上げた。布と言ってもただの布ではない。俺の血を混ぜたインクで呪文を書いて、強度を上げちょっとやそっとでは外れないように細工した布である。予め用意さえしておけば、あとは使う際に魔力を流し込むだけで効果は抜群。捕虜の捕縛用に兵士時代に習ったものだ。まさかそれをこんな使い方をする日が来るとは。
「マ、マルセル?」
 半分寝惚けた様子で、ロランが驚きの声を上げる。その事に構いもせず、俺はロランの腕の中からスルリと抜け出し、ガバッと掛け布団を跳ね除けた。横向きになっていたロランの体をコロンと転がして仰向けにさせる。絶賛混乱中のロランは、されるがままだ。ロランが目を白黒させている隙を逃さず、すかさず彼の腰にまたがった。
「マルセル、これは一体どういうことなのだ……?」
「ロラン、俺はね、怒っているんだよ」
「怒っている?」
 ロランに嵌めた即席の手枷にさらに魔力を流し込み強化しつつ、ジトッとした目付きでロランの目を見つめる。ほんの僅かな月明かりの下、ロランが困惑で目を瞬かせるのが見て取れた。まだいまいち自分の置かれた状況が理解しきれていないのだろう。まあいいさ、直ぐによく理解できるようになる。
「俺、聞いちゃったんだよね。ロランとセヴランさんが話してるの。盗み聞きしたことに関しては謝るよ。でも、恋人の俺に黙って王都行きを決めるだなんて、ちょっと酷くない? ロランにとって俺って、そんな簡単にほっぽっちゃえるものだったの? ロランも俺の事すんごく好きでいてくれていると思ってたのに……」
「あ、あの話聞いてたのか!? えっ、でも、それならなんで……。いや、いまいち理解できないところはあるが、取り敢えずマルセルが変に誤解しているらしいことは分かったぞ。マルセル、まずは落ち着いて私の話を」
「話すって、何をさ! ロランが俺に飽きたって話? それとも、心変わりしたって話? どっちにせよそんなこと聞きたくなんかない!」
「マルセル、話を聞」
「聞かない! 言い訳も弁明もお断りだ! ロラン、あなたの心を繋ぎ止めるためならば、俺はなんだってする。悪魔に魂を売ったっていい。手始めに、俺がどんなにあなたのことを愛しているか、体に分らせてやろうじゃないか」
 ロランが二の句を告げるよりも早く、彼俺はの寝巻きに手をかけ、ずり下ろした。当然、下着も一緒に、思いっきりね。そうして姿を現したロランのペニスに、やんわりと指を絡めた。自身も跨っていた腰の位置をずらし、ペニスを取り出してロランのモノと合わせる。いわゆる兜合わせってやつ。ロランの狼狽えているのがありありと分かる息遣いに構うこともなく、手を動かし始める。
「っ、マルセル」
「ロランなら、簡単に俺を跳ね除けることもできるだろうね。でも、そんなことしたら許さないからな」
「言われなくても、そんな事しない。今跳ね除けたりしたら、マルセルが怪我をする」
「おやおや、こんな時までお優しいことで」
 俺はロランのそんなところにも惚れた。だからこそ今、この期に及んで優しくされるのが癪に障る。ロランは確かに性根の優しい男だが、その優しさが発揮されるのは彼が心を許した相手だけだ。こんな危機的状況にさえ発揮されるロランの優しさは、彼が俺に対する関心を失っていないのではないかという期待を俺にさせてくるのである。
「マルセル。なあ、少しでいい、話を」
「またまた、そんなこと言って。ロランのペニス、元気におっ立ってきたよ? 今必要なのは話し合いより、こっちの方なんじゃない?」
「くっ、ぅ……」
 言葉と共にペニスを抜きあげる手付きに熱を込めると、ロランは悩ましい声を上げ、手の中のペニスもビクビクと反応を示した。ユスユスと腰を動かせば、裏筋が擦れ合って俺も気持ちがいい。2人分のペニスから先走りが零れ、滑りが良くなり水音がたつ。ロランのペニスはムクムクと容積を増し、触れているだけで皮膚が焼けそうな程の熱を持った。
 ロランが身を攀じるのに合わせて俺は右手でペニスを抜き、左手で下方向から彼の腹を撫で上げる。短い被毛が掌を擽り、その下の固く引き締まった筋肉が性感に細かく震えるのが分かった。ロランが時折耐えかねた様に漏らす呻きが、また色っぽい。先走りのたてる猥りがましい音と手淫の効果か、もうロランも俺もペニスはガチガチに立ち上がっていた。
「んっ、はぁ。ロラン、どう? 気持ちぃ? って、聞くまでもないか。ここを触っていれば、どう感じているかなんて嫌でも分かっちまう」
「あ、ぅん。マル、セル……止め」
「止めない。絶対に、止めたりなんかしてやらない。俺の思いの丈を、あなたに思い知らせてやるんだ」
 こういうことに疎いせいか、相変わらず感じやすい人だ。俺の与える性感に、息も絶え絶え、声を震わせ録な抵抗も叶わず身を戦慄かせている。対して俺は体は熱くなっているのに頭は芯まで冷えて、精神は冴え渡っていた。体が高ぶれば高ぶる程、反対に気持ちはどん底に落ち込んでいく。
 最初はいい案だと思ったんだ。こうして無理矢理にでも体を重ねれば、ロランもほんの少し前までのあの身を焦がす様な、深く互いを思い合う熱い気持ちを思い出してくれるって、考えていた。
 だが、実際はどうだ? ロランは俺の手練手管にも一向に流された様子はなく、性感で思考が散漫に乱れた今も尚、抵抗を止めない。ほら、現にこうしている間にも、何とか手枷を外せやしないかと腕を動かしているし。熱で潤んだ瞳の中にも、虎視眈々とこちらの隙を伺う光は消えてくれない。いつものロランなら、これだけ押しまくればそろそろ流されてくれる頃合なのに。やっぱり、ロランの心はもう、俺のものではなくなってしまったのではないだろうか?
 本当は、獣人のロランに本気で抵抗されたら俺の拘束魔法なんてひとたまりもないし、こうして腰の上に跨っているだけで動きを封じるなんてできやしない。では、何故そうしないのか。ロランは1度は心を傾けた情けで実力行使はせず、話し合いで解決しようとしているのかもしれないが、その事が俺を益々惨めな気持ちにさせる。この硬く膨らみのない傷だらけの男の体では、学もなく面白みもない頭では、立場も後ろ盾もない孤児みなしごの貧乏人では、ロランを繋ぎ止める事はできなかったのか。
 セヴランさんのことを考える。俺と同じ男であると言うことが恥ずかしいくなるくらい、立派な人だ。ハンサムな顔立ちに、頭が良くてロランとは旧知の仲の、貴族で王宮勤めのサラブレッド。そんな人にこんな山奥の寂しい場所から、もっと面白おかしく楽しい場所に行こうと誘われたら? 最近では1番のネックであるロランの対人恐怖症も回復傾向にある。どうしても見劣りのする俺とこの場所から、気持ちが離れて言ってしまうのは、当然のことではなかろうか?
 ギリッ、と歯を食いしばる。様々な感情が体の中をグルグルと駆け巡った。ロランの気持ちが離れていくのが悲しい。こんな事になるまで気が付けなかったことに悔しさで目眩がする。そして、ロランを繋ぎ止めておけなかった、自分自身の不甲斐なさが何より腹立たしかった。俺はこんなにも、こんなにもロランのことを愛しているのに。それなのに、どうして。果てしない嫉妬と恋慕がこの身を焼き、カッと頭に血が昇る。
 ペニスから手を離し、跨っていた腰を浮かせた。ロランを跨いでシーツに膝立ちになり、ジッと彼を見下ろす。
「マルセル……?」
 微かな光の元でも分かる、美しい黄金の瞳。眩しい光の下で、本の溢れた本棚の前で、性感に溺れる閨の中で。俺は何度も何度もそれを見た。これからもずっと、見続けられると、その瞳に見つめ返してもらえると、そう信じて疑わなかったのに。
「ロラン、愛しい人。あなたがこの目を治してくれた時から、いいやその前から、俺はあなただけを見つめている。それなのに、あなたって人は……。いや、本当は分かっているんだ。1番悪いのは、あなたの心変わりを止められなかった俺なんだってことくらい」
「マルセル、なにを言って……、ッ!?」
 矢場やにわに俺はロランのペニスを掴み、自分の腰の位置を動かした。素早い動作で腰を落とし、ロランの切先を自らのアナルに宛てがう。熱く硬いその感触に、ブルリと大きく背筋を震わせ、目を瞑って一息に足の力を抜く。予め準備をしていたそこは、いとも簡単にロランのペニスを飲み込んだ。それと同時に息をするのも忘れさせる様な性感が、全身を突き抜ける。
「ッア!」
「うぅ、ふぅ」
 ロランが短く叫ぶ様に声を上げ、体を硬直させるのを文字通り直に肌で感じた。すっかり体内に収めたペニスがビクビクと痙攣するのが、手に取るように分かる。衝撃に意図せずしてキュウキュウと中を蠢かせ締めつければ、ロランは小さく息を飲み、俺は俺で後ろから拾い上げる性感に身震いした。
 とても気持ちがよくてそのままへたりこんでしまいそうだったが、ここで止めるわけにはいかない。惚けた様子のロランにも躊躇うことなく、俺は震える体を気力だけで奮い立たせ、抜き差しを始める。抽挿をする度、擦れ合う結合部からヌチヌチといやらしく水音がたった。
 だが、そこにいつもの睦みあいのような甘さはない。俺は互いに分け合う様な快楽を追いかけるよりも、ロランを気持ちよくさせることただその一点のみに意識を集中させているからだ。ロランさえ気持ちよければいい。そう考えて後ろを締め付け体を揺すり、ロランのいい所を狙って攻める。自分がどうとかなんて、考えない。全てはロランの心を取り戻す為。ただ、それだけの為に義務的に体を動かす。
「ロラン、ロラン、ロラン……」
「マ、マルセル。お願いだ、止めてくれ。こんな事、今直ぐにでも止めなくては」
「……どうして。どうして、そんなことを言うんだ」
 お互い何を置いても相手のことを思い、揺るぎない愛を誓い、永遠を約束した。その筈だった。それなのに、どこでボタンをかけ違ってしまったのだろう。今やロランの気持ちは俺から離れ、俺は彼を繋ぎ止めようと無理矢理襲うようなマネまでしている。なんという体たらく。まったく目も当てられない。
 俺にはロランだけなのに、こんなにも愛しているのに、幸福とはロランそのものなのに。それなのに、今にもロランは俺の人生から消えようとしている。俺に光を、希望を、生きる意味を授けたのは、他でもないこの美しい獣人その人だったのに。それが意図したものであろうとなかろうと、今では俺に全てを与えたロランが、今度は全てを奪っていこうとしている。ああ、俺はロランを永遠に失うんだ。知らず知らずのうちに、ポロリ、と目から熱い水が零れ落ちた。
「マルセル!? えっ、どうして泣いているんだ!?」
「……グスッ。あなたには、関係ない」
「いや、そんな訳ないだろう! さっきからなんだか様子がおかしいし、本当にどうしてしまったんだ今日のお前は!」
「あなたが、それを言うんですか。グスッ、うぅー」
「ああ、マルセル!」
 本格的に泣き出した俺に、ロランは慌てて身を起こし寄せてくる。体勢を変えたのとロランが萎えたのとで呆気なくペニスは抜け、俺はブルリと身体を震わせた。だが、その事を深く感じる暇もない。手首で縛られた腕の中に、上から俺を通して、そのまま抱きしめられた。その優しい仕草と手つきに、俺は在りし日の2人の甘いやり取りを思い出して益々涙が止まらなくなる。計画は失敗したし、自分からしかけた最中に突然泣き出したことできっとロランを酷く幻滅させてしまったことだろう。もう何もかもが苦しくて、悲しくて、ロランの美しい毛皮が涙で濡れるのも構わず、俺は何もかもお終いだと泣きじゃくった。
「……グスッ、グスッ」
「マルセル、声を押し殺して泣かないでくれ。そんな風に唇を噛んだら、血が出てしまう」
「うぅ、でも……」
「なにか辛いことがあったんだろう。泣くなとは言わないから、せめて私の前では包み隠さないそのままの君でいてくれ。私は君の苦しみを、少しでも和らげたいんだ」
 この期に及んでまでそんな優しい言葉をかけるなんて、ロランはなんて酷い人なんだ。俺の涙の原因はロランだというのに、恨む気持ちなんてこれっぽっちも起こらなくなってくる。いや、それどころかその優しさにますます惚れ込む勢いだ。ああ、俺、本当に心からロランの事が好きなのか。他人事のようにそう思う。
 それなら、このままロランの優しさに漬け込んで、彼をこの場所に繋ぎとめておけないだろうか? ロランの良心に訴えかければ、それは簡単にできるように思えた。いや、駄目だ。そんなことできない。可能が不可能かという問題ではなく、そんなことやりたくなかった。
 みっともなくロランに縋れば、成程確かに優しいロランは俺の元にとどまってくれるかもしれない。けど、そこから先何十年と俺はロランの心が別のところにあるのを間近で感じ続け、自分がロランから可能性や自由を奪ってしまったという責め苦に苛まされ続けるのだ。そんなのとても耐えられない。なにより俺の人生を取り戻してくれたロランに対して、彼の人生を理不尽に取り上げる様なマネができよう筈もないのだ。
 ロランにはロランの、俺には俺の道がある。1度でもその道が交わり、共に歩む事ができた。それだけでもとても素晴らしく有難いことだ。俺にこれ以上ロランを独占する権利はない。もうそろそろ、ロランを自由にしてあげなくては。俺はロランとの美しい思い出と、彼が治してくれたこの目を宝物にして、あとの彼の居ない人生を歩んでいこう。泣いて格好はつかなくても、せめて最後はみっともない所はロランに見せずに終わりたい。この決意が鈍って未練がましくロランに縋ってしまう前に、と俺は震える声のままロランに別れを告げ始めた。
「ロラン、ごめん。今までありがとう。あなたと過ごした時間は俺の人生の中で最良のものだった。きっとあなたのことは生涯忘れないだろう。これからはあなたの健康と幸福を遠くから願って」
「んんんっ!? 待て待て、ちょっと待て! なんだかマルセルが私と別れること前提で話を進めている様な気がするのだが」
「気がするも何も、そういう話をして」
「おい、ということは、私は今マルセルに振られそうになっているのか?」
 瞬間、ゾワリ、と背中に寒気が走る。俺を抱きしめるロランの体の毛がボワリと立ち上がり、腕に力が籠った。怒っているのだ。驚いて体を離そうとするが、叶わない。そのままロランは閉じ込めるように深く俺を抱き込み、怒りで低くなった声を囁きかけた。
「マルセル、駄目だ。それだけは、絶対に駄目だ。何があっても許さない。私にはお前だけなんだ。それなのに、別れるなんて。マルセル、どうして今になって私のことを捨てようとするんだ。……まさか、セヴランか? 私に隠れて誘惑されて、靡いたのか? ……あいつ、殺してやる」
 そう一息に言い切ったロランがぐっと腕に力を込めたのを感じたかと思えば、背後でガラスの割れる様な繊細な音と、布の引き裂ける音がする。ロランが力任せに無理やり魔法を破壊し、布の錠を破ったのだ。そのまま優しく俺をベッドに座らせ、全身から怒気を発しながら勢いよく部屋を出ていこうとするのを、腰に抱きついて慌てて止める。状況がいまいち飲み込めないが、今のロランを解き放ったら確実にセヴランさんを、冗談抜きで殺しに行くであろうことだけは確実だ。
「マルセル、なぜ止める! さては、セヴランを庇っているんだな? なんという事だ! セヴランの奴め、マルセルをここまで夢中にさせるなんて、益々もって許せない! 散々甚振ってから殺すしか」
「待ちなよロラン! どうしてそうなるのさ! セヴランさんに心変わりしたのは、寧ろあなたの方だろう? だから俺は嫌で嫌で堪らないけど、身を引こうと」
「はああ? 何故そうなる! わたしがセヴランに心変わりだって? とんでもない! 今も昔も私を夢中にさせるのは、マルセル、お前だけだ!  セヴランとなんてキスどころか手を繋ぐことも、見つめ合うことさえ寒気がしてできやしない!」
 何? どういうこと? 俺がセヴランさんに夢中? ロランがセヴランさんのことは好きでもなんでもない? 何が何だか分からなくなってきた。混乱しすぎて一周まわって逆に冷静になってきたぞ。それはロランも同じだった様で、首を捻って自分の腰に縋り付く俺の顔を見つめた。
「……取り敢えず、俺達よくよく話し合った方が良さそうだね」
「あー、そのようだな」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

冷酷な少年に成り代わってしまった俺の話

BL / 連載中 24h.ポイント:14,306pt お気に入り:2,436

四十路の側近はただ王の傍にいたい

BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:200

異世界ファンタジーモノ(仮)

BL / 連載中 24h.ポイント:248pt お気に入り:54

愛してるって言って欲しい

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:22

目が覚めたら

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:28

ケモホモナーが求むは異世界を渡るエロ旅

BL / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:210

見つめ合える程近くて触れられない程遠い

BL / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:194

処理中です...