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一先ず、俺にだけ分かる法則に則って空中にばら撒かれている血でできた式を移動させ、一纏めにする。突然不躾に俺と式だけの美しい世界に入ってきたよく分からん男にどうにかされたら嫌だと思ったからだ。折角生まれたこの新しい理論を、誰にも汚されたくない。できるだけ小さく纏めた式達を背中に隠し、声のした方を思いっきり睨みつける。
俺の視線の先には一人の男が立っていた。あまりにも世事に疎く、人の造形の美醜すら俺には分からないが、輝く金髪と深蒼の瞳が印象的な若い男だ。手足も長く、背が高い。引き締まった体をしているから、武人だろうか。身なりもいいし、金持ちっぽいのでパトロンになってくれないか頼んでもよかったが、武人なら駄目だ。あいつらはいかにマウントを取り合うかしか考えてないノータリンだからな。支援なんて求めたらよく分かりもしないくせして文武両道、博識な自分を気取ろうと、研究に口出ししてくるのがオチである。そんなの真っ平御免だ。
一瞬で男が自分にとって関わる価値無しと判断した俺は、直ぐさま振り返って式に向き直り、修正を始める。今のままでもいいが、思うままに書きなぐったものなので、間違えてはいないだろうが余分な部分や重複している部分があるのだ。あちこちパズルみたいに当てはめて、よりコンパクトにしなくては。シェイプアップすることで、式には磨きがかかりより美しくなる。よく知りもしない男の相手をするよりも、俺にとってはこっちの方が余っ程の重要事だ。黙って作業を始める。
「おやおや、アーリ君。せめて一言くらいは返事してくれてもいいんじゃないかい? ここまでキッパリ無視されるといっそ清々しい程だけど、私は君と話がしてみたい」
「……」
「アハハッ、これも無視か!」
後ろで男が何かゴチャゴチャ言っているが、全く気にならない。今俺は理論式と対話しているんだ。クルクルと変化していく式の見せる輝きから、一瞬たりとも目を逸らしたくない。そうして周囲の何もかもを無視し、余分な式を消し、時に新しく簡潔なものを書き加え、式の整理をしていると。
「コラッ! ルクレツィオ!」
突然耳元でとても大きな声がして、ゴインッ、ととんでもない衝撃が頭にかかる。あまりのことに目の前に火花が飛ぶ。驚きで式を空中に式を書き込んでいる血を固定する魔法が解けなかったのは、俺の執念によるものだ。痛みと困惑で頭をいっぱいにして横を見れば、そこには拳を固め、悪魔のような形相をした俺の兄さん、サミュエルの姿が。いつも悠然と微笑みを湛えている穏やかな兄さんの恐ろしい形相に、俺は漸く身も心も浮世に戻ってきた。
「に、兄さん? どうしたの。そんなに怖い顔して」
「どうしたもこうしたもあるか、ルクレツィオ! お前、とんでもないことを……!」
そう言って言葉の続きを告げることもできずワナワナと震える兄さん。こ、怖い。俺に対してこんなに怒っている兄さん、初めて見た。
ハッキリ言って兄さんは俺に激甘だ。小さい頃から人の輪というものから外れがちで、まともな対話ができないせいで周囲からは知恵足らずと見放され、実の両親からすら呆れられていた俺を、お前は俺の天使だ癒しだ太陽だと、猫っ可愛がわり。俺が虐められていれば真剣を持ち出して本気で虐めっ子を追いかけ回し、学校を追い出されればお前の価値が分からない向こうが悪いと自ら勉強を教えてくれた。人付き合いが煩わしいのなら全て自分が引き受けるから、お前は好きな研究だけに専念していなさいと今の環境を整えてくれたのも兄さんだ。本当に、本当に、本当に、兄さんは俺の大恩人で、救世主で、1番の理解者なのである。
その兄さんが、俺に怒っている。見たことも無い憤怒の表情で、今にも俺に再び殴りかからんばかりの勢いで。兄さんがこんな顔するなんて、信じられない。というか、俺が兄さんに怒られるのも、殴られるのも、これが初めてじゃないか? 兄さんは今まで俺が研究室を爆破しても、兄さんがセッティングしてくれたパトロン探しのパーティーをブッチしても『しょうがないなぁ』の一言で笑って済ませてくれていた。『2度とするな』とも『いい加減にしろ』とも、言わなかったんだ。
なのに、今はこれ程までに俺に怒ってる。どうして? その理由は、すぐに判明した。
「ヴェチェッリオ様! 大変申し訳ありません! 弟はなんというか、頭はいいのですがどうも人間らしい機微や世間の様式に関する理解が欠けていまして。どうも興味があることに夢中になり過ぎてしまうきらいがあるのです。今回のことも決して悪気があったわけではなく、目の前の計算式に没頭してしまったばかりに起こったことでして……。態とヴェチェッリオ様を無視しようといった、そんな失礼な意図はないんです! 神に誓って本当です! この子はそんなことできる程器用にはできていませんから! ですからどうか、命だけは……!」
兄さんが俺の頭を鷲掴み、男に対して無理矢理下げさせる。兄さん自身もペコペコ頭を下げながら、必死になって弁明をしていた。そこで漸く俺にも今起きていることの察しがつく。
どうやら俺は、理論証明に夢中になるあまり、無視してはいけない程位の高い……えーっと……ヴェチェ何とか様を無視する形になってしまったらしい。確か兄さんはこのパーティーには王家に連なるお偉方も出席すると言っていた。若しかしたらこの男は、その王家に連なるという誰かの内の1人なのかもしれない。そうだとすれば全ての辻褄が合う。
それらい高位の人間ならば、俺の態度に気分を害したら、即刻俺を打首にできるだけの権力がある。そして俺にはそれに対抗できるだけの価値も実力も地位もない。兄さんがこうして今までにないくらい俺に対して怒っているのは、ヴェ何とか様に対する『これだけ反省してるので許してください』アピールというものなのだろう。
遅まきながら漸く自分が危機的状況に置かれていることを理解した俺は、ああ、またやっちまった、と他人事のように考えた。いつもいつも俺はそうだ。研究に血道をあげるあまり、他のことを疎かにして失敗ばかりする。ところ構わず研究のことを考え続け、教師に嫌われ放校処分になるし、しょっちゅう飯を食うのを忘れ、体は酷使し過ぎてボロボロだ。きっと長生きはできないと思っていたが、まさかお偉いさんの機嫌を損ねて処刑されて死ぬとは、まったく想像だにしなかった。
死ぬのは別に怖くない。普段から自分の研究越しにこの世の心理の深淵を覗き込むことがままあり、その壮大さを思うとたかが自分1人の命はあまりにもちっぽけで軽かった。特に惜しむべきものとも思えないのである。研究が続けられなくなるのは残念だが、俺が居なくても学問というものは進歩し続けるだろうし、究明し切れず自分が見られない真実があるのは今でも一緒。どう足掻いても全てを知るには人間の一生はあまりにも短い。そう考えていれば、全てが仕方がないことだと諦められてしまった。
気がかりなことといえば、兄さんのことだ。俺が俺のヘマで死ぬのは別にいい。適者生存、俺はこの世界に適していなかった。それだけ。仕方のないことである。
けれど、もし今回のことで俺の親族ということで兄さんまで道連れに処罰の対象とされてしまったらやり切れない。兄さんは本当にいい人なのだ。俺のような人間以下の生き物を人並みまでとは行かない迄も、ある程度までは仕立てあげ、死なないように気を配ってくれている。兄さんにはなんの利益もないどころか、迷惑ばかりかけている俺のことを、心から愛し大切にしてくれているのだ。兄さんには幸せになって欲しいし、俺が処罰されたらむしろ人生の邪魔者が居なくなったと大手を振って自由に生きて欲しい。
ああ、けれど。薄情な俺は兄さん以上に気がかりなことがある。むしろ殆どそれについての心配ばっかりだ。それは、自分の築き上げた研究達のこと。確かに兄さんは人がいいし俺が研究していることに対して理解はあるが、研究内容自体に関しては少しも理解できていない。定理も方程式も、全部チンプンカンプンだろう。俺亡き後、兄さんが俺の残した研究成果を適切に扱えるかと聞かれると、ちょっと……いやかなり、諾と頷き辛い。
自己流で作った効率のいい実験器具も、急いで殴り書いた観測データも、俺に扱いやすいようにというか、俺にしか分からないようにできている為、俺が居なくちゃ読み解けずただのゴミ。本当は同じだけの重さの黄金以上に価値のある、宝の山なのに。そうなると他のどんな研究機関や研究者に引き継がれることもなく、俺の愛しい研究成果達はただただ埃を被って朽ちていく、それだけのガラクタになってしまう。考えるだけで泣きたくなる程恐ろしいことだ。
そのことに思い至ると、俺はもう矢も盾も堪らなくなった。頭を押さえつけていた兄さんの手を振り払い顔を上げ、何とか様の顔を睨めつけると、長考の間にも止まらなかった兄さんの謝罪を遮って、その言葉を口にする。
「俺の命はどうなってもいい。けど、兄さんの命と俺の研究だけは見逃してくれ。あと、処刑されるならその前に3日程時間をくれ。別に逃げも隠れもしない、その間に何とか研究の引き継ぎを終わらせるだけだ。今上げた条件がクリアされたら、俺のことは煮るなり焼くなりあんたの好きにさせてやるよ」
俺の言葉に、男は青い目をパチクリとさせ、大きく見開く。俺は今の提案を承諾しろ、という意味を込めて、益々力を入れてその瞳を睨んだ。場がシーンと静まり返り、誰も動かずにいる。若しかして聞こえなかったのかともう1度口を開こうとすると、俺は再び横から伸びてきた手に頭を押さえつけられた。
「ヴェチェッリオ様、ホンッッットーーに、申し訳ありません! 弟に悪気はないんです! 常識もないだけで! 私からきつく言い聞かせますので、どうかどうか、お命だけは」
「アッハッハッハッ!」
兄さんの言葉を遮って、大きな笑い声が辺りに響く。驚きからか俺の頭を押さえつける手が緩んだのでその隙にこっそり顔を上げてみると、何とか様が腹を抱えて笑っていた。『何事も上品に』がモットーの貴人にしては珍しく、取り繕うことなくヒーヒーと引き笑いをして涙まで零し、心底面白そうだ。笑い過ぎて力が入らないのか傍らにあったテーブルに手を付き、全身を震わせなお笑っている。
「あの……ヴェチェッリオ様……?」
「フフフッ、いや、すまない。あまりにも面白くて……。アハハッ。サミュエル・アーリ殿、貴殿の弟君は噂以上に面白い人間だな。益々気にいったよ」
「き、気にいった?」
何とか様の言葉に、兄さんが虚をつかれたような声を出す。それを見た相手は、満面の笑みで首肯をした。
「ああ、そうさ。私はね、ずーっと、どの分野でもいいからひとつの物事に一意専心で真面目な人間を探していたんだよ。ルクレツィオ・アーリ君は真面目というか他に気を向けられないだけという感じだが、それはそれでいい。とことん研究にしか興味のないと聞いていたが、まさかこれ程までとはね。『研究狂いのルクレツィオ・アーリ』の2つ名は、伊達じゃなかった!」
喜色満面の何とか様は、漸く笑いの発作が一段落したらしく、ニコニコと笑いながらこちらに歩み寄り、スッと俺に向かって片手を差し出す。その行動の意味が分からず、何とか様を目付きも悪く見つめ返す俺。何とか様はそれすらも面白そうに見ている。
「ルクレツィオ・アーリ君。君はこのパーティーにパトロン探しにやってきたんだろう? だったら、それに私が立候補してもいいかな?」
……は? 今なんつった、この男。俺のパトロンになるだって? こいつが? 確かにパトロンは欲しいけど、こいつの様子から見るに俺の予想だけど多分軍人だよな? うーん。軍人のパトロンは嫌だな。威張るし五月蝿いし脳筋だし。だから俺は差し出された手も取らず、こう言った。
「え、嫌だけ」
「なんと身に余る幸せ! 有難うございます!! 謹んでお受けいたします!!!」
俺のセリフを遮るように、言葉と共に兄さんが無理矢理俺の手を掴んで差し出し、何とか様と握手させる。そこに俺の意思は介在しないけれど、何とか様はそれはもうニッコニコだ。俺の片手を両手で掴み、上下に大きく振ってとっても楽しそう。
「そうかそうか、ルクレツィオ・アーリ君。快諾してくれて嬉しいよ。これで私は君のパトロンだ。なに、心配しなくていい。私は金だけ出して、あとは君に自由にさせると約束するよ。君の活動に口出しするような野暮な真似は一切しないから安心してくれ。そこら辺は弁えている。詳しい支援の内容など色々話したいことがあるが、悪いが今直ぐには暇がないんだ。細かいことは後日詰めるとして、君はいつが空いてるかな?」
「私共はいつでも予定は空いておりますので、ヴェチェッリオ様のご都合のいい日をお教え下さいませ」
「そうかい? 悪いね。じゃあ、また3日後の夜9時頃でどうだろうか? その日ならいくらかまとまった時間が空いてるんだ。実験室を見学してみたいから、場所は君の家がいいな」
「では、その時間で。私共の屋敷の方で準備してお待ち申し上げております」
「交渉成立だね。サミュエル・アーリ殿、弟君との橋渡し、どうもありがとう。そうだな、契約成立のお祝いとして、手始めにこれ位渡しておくから、好きに使ってくれ。それじゃあ、私はまだ用事が残っているからここらでお暇させていただくよ。2人共、いい夜を」
兄さんと話しながら懐から紙を取りだし、サラサラと何か書きつける何とか様。その紙をはいっ、と俺の手に捩じ込み、ヒラヒラと手を振ってどこかへと歩き去っていった。
何とか様の姿が見えなくなっても未だ頭を下げている兄さんの横で、その紙を見てみる。紙だと思っていたものは、俺は初めて見るが書かれた文字からするにどうやら小切手のようだった。数字が書かれているが、俺には実験中に見る魔法陣の呪印への平均魔法伝導率の測定値と比べて少ないな、くらいにしか感じなくてその価値が分からない。ついでに手の中のそれをどうしていいかも分からなくて、いつまでも頭を下げ続けている兄さんの服の裾を引っ張る。
「兄さん、なんかよく分かんないけどこれ貰ったよ。どうしたらいい?」
「ルクレツィオ、お前ってやつは……。お兄ちゃんは寿命が10年は縮まったよ。可愛いからいつまでも純粋なままでいてくれていいと思っていたけれど、最低限のことは教えておくべきだったかも……ヒイィッ! なんだその額は!?」
兄さんが聞いたことないような情けない悲鳴をあげて、俺から渡された小切手を持ったままその場にへたり込む。驚いて支えようとするが、非力なので一緒にべシャリと床に倒れ込んでしまった。慌てて後ろにあった血の式を避けさせる。
「うっ、うっ、こんな額、本当に貰ってもいいのか? なんか含みがあるんじゃないか? ああ、でもこれだけの額があれば……」
小切手片手に頭を抱え咽ぶ兄さん。完全に錯乱してる。大丈夫かよ、おい。兄さんの背中を撫でて落ち着かせようとしつつ、混乱の原因であるあの男のことを知りたくて尋ねた。
「兄さん、今の何とか様って、誰なの? そんなに変な状態になるなら、今からでもパトロンの話断ってきてその小切手返してこようか?」
「そんなことしちゃ駄目だ! ルクレツィオ、お前は何も知らないから平然としていられるのかもしれないが、これはとても名誉で恵まれたことなんだよ! こちらからお断りするなんて、とんでもない! 第一そんなことしたら、今度こそ不敬罪でお前が処罰されてしまうかも……。可愛いお前がそんなことになったら、私は生きていけないよ」
ああ、それもそうか。そこまで考えが至らなかった。ていうか不敬罪が適応されるって、何とか様って本当になんなんだ? 王族? でもこの国の王家は女系一族で、今の王室には王様以外あの年頃の男性はいなかった筈。そして王様は茶髪で緑眼だ。流石の俺でもそれくらいは知ってるぞ。だから、金髪碧眼のあいつと同一人物とは思えない。益々深まる謎に、俺はもう1度兄さんに尋ねる。
「で、結局あの人誰なの? 王室の係累? 海外の王族?」
「ルクレツィオ、お前ってば本当に世間知らずだね。世事に惑わされて研究に支障がでないようにと甘やかしたのは私だけれど、ちょっと度が過ぎたかもしれないな……。ルクレツィオ、あの人はね、王様の幼馴染みであり、親友且つ右腕でもある宰相様で、王室の相談役も務めるエドアルド・ヴェチェッリオ様だよ」
「難しくてよく分かんない。つまり?」
「事実上この国のNo.2だ」
……うわぁーお。思ったよりも大事っぽいな、これは。
俺の視線の先には一人の男が立っていた。あまりにも世事に疎く、人の造形の美醜すら俺には分からないが、輝く金髪と深蒼の瞳が印象的な若い男だ。手足も長く、背が高い。引き締まった体をしているから、武人だろうか。身なりもいいし、金持ちっぽいのでパトロンになってくれないか頼んでもよかったが、武人なら駄目だ。あいつらはいかにマウントを取り合うかしか考えてないノータリンだからな。支援なんて求めたらよく分かりもしないくせして文武両道、博識な自分を気取ろうと、研究に口出ししてくるのがオチである。そんなの真っ平御免だ。
一瞬で男が自分にとって関わる価値無しと判断した俺は、直ぐさま振り返って式に向き直り、修正を始める。今のままでもいいが、思うままに書きなぐったものなので、間違えてはいないだろうが余分な部分や重複している部分があるのだ。あちこちパズルみたいに当てはめて、よりコンパクトにしなくては。シェイプアップすることで、式には磨きがかかりより美しくなる。よく知りもしない男の相手をするよりも、俺にとってはこっちの方が余っ程の重要事だ。黙って作業を始める。
「おやおや、アーリ君。せめて一言くらいは返事してくれてもいいんじゃないかい? ここまでキッパリ無視されるといっそ清々しい程だけど、私は君と話がしてみたい」
「……」
「アハハッ、これも無視か!」
後ろで男が何かゴチャゴチャ言っているが、全く気にならない。今俺は理論式と対話しているんだ。クルクルと変化していく式の見せる輝きから、一瞬たりとも目を逸らしたくない。そうして周囲の何もかもを無視し、余分な式を消し、時に新しく簡潔なものを書き加え、式の整理をしていると。
「コラッ! ルクレツィオ!」
突然耳元でとても大きな声がして、ゴインッ、ととんでもない衝撃が頭にかかる。あまりのことに目の前に火花が飛ぶ。驚きで式を空中に式を書き込んでいる血を固定する魔法が解けなかったのは、俺の執念によるものだ。痛みと困惑で頭をいっぱいにして横を見れば、そこには拳を固め、悪魔のような形相をした俺の兄さん、サミュエルの姿が。いつも悠然と微笑みを湛えている穏やかな兄さんの恐ろしい形相に、俺は漸く身も心も浮世に戻ってきた。
「に、兄さん? どうしたの。そんなに怖い顔して」
「どうしたもこうしたもあるか、ルクレツィオ! お前、とんでもないことを……!」
そう言って言葉の続きを告げることもできずワナワナと震える兄さん。こ、怖い。俺に対してこんなに怒っている兄さん、初めて見た。
ハッキリ言って兄さんは俺に激甘だ。小さい頃から人の輪というものから外れがちで、まともな対話ができないせいで周囲からは知恵足らずと見放され、実の両親からすら呆れられていた俺を、お前は俺の天使だ癒しだ太陽だと、猫っ可愛がわり。俺が虐められていれば真剣を持ち出して本気で虐めっ子を追いかけ回し、学校を追い出されればお前の価値が分からない向こうが悪いと自ら勉強を教えてくれた。人付き合いが煩わしいのなら全て自分が引き受けるから、お前は好きな研究だけに専念していなさいと今の環境を整えてくれたのも兄さんだ。本当に、本当に、本当に、兄さんは俺の大恩人で、救世主で、1番の理解者なのである。
その兄さんが、俺に怒っている。見たことも無い憤怒の表情で、今にも俺に再び殴りかからんばかりの勢いで。兄さんがこんな顔するなんて、信じられない。というか、俺が兄さんに怒られるのも、殴られるのも、これが初めてじゃないか? 兄さんは今まで俺が研究室を爆破しても、兄さんがセッティングしてくれたパトロン探しのパーティーをブッチしても『しょうがないなぁ』の一言で笑って済ませてくれていた。『2度とするな』とも『いい加減にしろ』とも、言わなかったんだ。
なのに、今はこれ程までに俺に怒ってる。どうして? その理由は、すぐに判明した。
「ヴェチェッリオ様! 大変申し訳ありません! 弟はなんというか、頭はいいのですがどうも人間らしい機微や世間の様式に関する理解が欠けていまして。どうも興味があることに夢中になり過ぎてしまうきらいがあるのです。今回のことも決して悪気があったわけではなく、目の前の計算式に没頭してしまったばかりに起こったことでして……。態とヴェチェッリオ様を無視しようといった、そんな失礼な意図はないんです! 神に誓って本当です! この子はそんなことできる程器用にはできていませんから! ですからどうか、命だけは……!」
兄さんが俺の頭を鷲掴み、男に対して無理矢理下げさせる。兄さん自身もペコペコ頭を下げながら、必死になって弁明をしていた。そこで漸く俺にも今起きていることの察しがつく。
どうやら俺は、理論証明に夢中になるあまり、無視してはいけない程位の高い……えーっと……ヴェチェ何とか様を無視する形になってしまったらしい。確か兄さんはこのパーティーには王家に連なるお偉方も出席すると言っていた。若しかしたらこの男は、その王家に連なるという誰かの内の1人なのかもしれない。そうだとすれば全ての辻褄が合う。
それらい高位の人間ならば、俺の態度に気分を害したら、即刻俺を打首にできるだけの権力がある。そして俺にはそれに対抗できるだけの価値も実力も地位もない。兄さんがこうして今までにないくらい俺に対して怒っているのは、ヴェ何とか様に対する『これだけ反省してるので許してください』アピールというものなのだろう。
遅まきながら漸く自分が危機的状況に置かれていることを理解した俺は、ああ、またやっちまった、と他人事のように考えた。いつもいつも俺はそうだ。研究に血道をあげるあまり、他のことを疎かにして失敗ばかりする。ところ構わず研究のことを考え続け、教師に嫌われ放校処分になるし、しょっちゅう飯を食うのを忘れ、体は酷使し過ぎてボロボロだ。きっと長生きはできないと思っていたが、まさかお偉いさんの機嫌を損ねて処刑されて死ぬとは、まったく想像だにしなかった。
死ぬのは別に怖くない。普段から自分の研究越しにこの世の心理の深淵を覗き込むことがままあり、その壮大さを思うとたかが自分1人の命はあまりにもちっぽけで軽かった。特に惜しむべきものとも思えないのである。研究が続けられなくなるのは残念だが、俺が居なくても学問というものは進歩し続けるだろうし、究明し切れず自分が見られない真実があるのは今でも一緒。どう足掻いても全てを知るには人間の一生はあまりにも短い。そう考えていれば、全てが仕方がないことだと諦められてしまった。
気がかりなことといえば、兄さんのことだ。俺が俺のヘマで死ぬのは別にいい。適者生存、俺はこの世界に適していなかった。それだけ。仕方のないことである。
けれど、もし今回のことで俺の親族ということで兄さんまで道連れに処罰の対象とされてしまったらやり切れない。兄さんは本当にいい人なのだ。俺のような人間以下の生き物を人並みまでとは行かない迄も、ある程度までは仕立てあげ、死なないように気を配ってくれている。兄さんにはなんの利益もないどころか、迷惑ばかりかけている俺のことを、心から愛し大切にしてくれているのだ。兄さんには幸せになって欲しいし、俺が処罰されたらむしろ人生の邪魔者が居なくなったと大手を振って自由に生きて欲しい。
ああ、けれど。薄情な俺は兄さん以上に気がかりなことがある。むしろ殆どそれについての心配ばっかりだ。それは、自分の築き上げた研究達のこと。確かに兄さんは人がいいし俺が研究していることに対して理解はあるが、研究内容自体に関しては少しも理解できていない。定理も方程式も、全部チンプンカンプンだろう。俺亡き後、兄さんが俺の残した研究成果を適切に扱えるかと聞かれると、ちょっと……いやかなり、諾と頷き辛い。
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「ヴェチェッリオ様、ホンッッットーーに、申し訳ありません! 弟に悪気はないんです! 常識もないだけで! 私からきつく言い聞かせますので、どうかどうか、お命だけは」
「アッハッハッハッ!」
兄さんの言葉を遮って、大きな笑い声が辺りに響く。驚きからか俺の頭を押さえつける手が緩んだのでその隙にこっそり顔を上げてみると、何とか様が腹を抱えて笑っていた。『何事も上品に』がモットーの貴人にしては珍しく、取り繕うことなくヒーヒーと引き笑いをして涙まで零し、心底面白そうだ。笑い過ぎて力が入らないのか傍らにあったテーブルに手を付き、全身を震わせなお笑っている。
「あの……ヴェチェッリオ様……?」
「フフフッ、いや、すまない。あまりにも面白くて……。アハハッ。サミュエル・アーリ殿、貴殿の弟君は噂以上に面白い人間だな。益々気にいったよ」
「き、気にいった?」
何とか様の言葉に、兄さんが虚をつかれたような声を出す。それを見た相手は、満面の笑みで首肯をした。
「ああ、そうさ。私はね、ずーっと、どの分野でもいいからひとつの物事に一意専心で真面目な人間を探していたんだよ。ルクレツィオ・アーリ君は真面目というか他に気を向けられないだけという感じだが、それはそれでいい。とことん研究にしか興味のないと聞いていたが、まさかこれ程までとはね。『研究狂いのルクレツィオ・アーリ』の2つ名は、伊達じゃなかった!」
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「ルクレツィオ・アーリ君。君はこのパーティーにパトロン探しにやってきたんだろう? だったら、それに私が立候補してもいいかな?」
……は? 今なんつった、この男。俺のパトロンになるだって? こいつが? 確かにパトロンは欲しいけど、こいつの様子から見るに俺の予想だけど多分軍人だよな? うーん。軍人のパトロンは嫌だな。威張るし五月蝿いし脳筋だし。だから俺は差し出された手も取らず、こう言った。
「え、嫌だけ」
「なんと身に余る幸せ! 有難うございます!! 謹んでお受けいたします!!!」
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「そうかそうか、ルクレツィオ・アーリ君。快諾してくれて嬉しいよ。これで私は君のパトロンだ。なに、心配しなくていい。私は金だけ出して、あとは君に自由にさせると約束するよ。君の活動に口出しするような野暮な真似は一切しないから安心してくれ。そこら辺は弁えている。詳しい支援の内容など色々話したいことがあるが、悪いが今直ぐには暇がないんだ。細かいことは後日詰めるとして、君はいつが空いてるかな?」
「私共はいつでも予定は空いておりますので、ヴェチェッリオ様のご都合のいい日をお教え下さいませ」
「そうかい? 悪いね。じゃあ、また3日後の夜9時頃でどうだろうか? その日ならいくらかまとまった時間が空いてるんだ。実験室を見学してみたいから、場所は君の家がいいな」
「では、その時間で。私共の屋敷の方で準備してお待ち申し上げております」
「交渉成立だね。サミュエル・アーリ殿、弟君との橋渡し、どうもありがとう。そうだな、契約成立のお祝いとして、手始めにこれ位渡しておくから、好きに使ってくれ。それじゃあ、私はまだ用事が残っているからここらでお暇させていただくよ。2人共、いい夜を」
兄さんと話しながら懐から紙を取りだし、サラサラと何か書きつける何とか様。その紙をはいっ、と俺の手に捩じ込み、ヒラヒラと手を振ってどこかへと歩き去っていった。
何とか様の姿が見えなくなっても未だ頭を下げている兄さんの横で、その紙を見てみる。紙だと思っていたものは、俺は初めて見るが書かれた文字からするにどうやら小切手のようだった。数字が書かれているが、俺には実験中に見る魔法陣の呪印への平均魔法伝導率の測定値と比べて少ないな、くらいにしか感じなくてその価値が分からない。ついでに手の中のそれをどうしていいかも分からなくて、いつまでも頭を下げ続けている兄さんの服の裾を引っ張る。
「兄さん、なんかよく分かんないけどこれ貰ったよ。どうしたらいい?」
「ルクレツィオ、お前ってやつは……。お兄ちゃんは寿命が10年は縮まったよ。可愛いからいつまでも純粋なままでいてくれていいと思っていたけれど、最低限のことは教えておくべきだったかも……ヒイィッ! なんだその額は!?」
兄さんが聞いたことないような情けない悲鳴をあげて、俺から渡された小切手を持ったままその場にへたり込む。驚いて支えようとするが、非力なので一緒にべシャリと床に倒れ込んでしまった。慌てて後ろにあった血の式を避けさせる。
「うっ、うっ、こんな額、本当に貰ってもいいのか? なんか含みがあるんじゃないか? ああ、でもこれだけの額があれば……」
小切手片手に頭を抱え咽ぶ兄さん。完全に錯乱してる。大丈夫かよ、おい。兄さんの背中を撫でて落ち着かせようとしつつ、混乱の原因であるあの男のことを知りたくて尋ねた。
「兄さん、今の何とか様って、誰なの? そんなに変な状態になるなら、今からでもパトロンの話断ってきてその小切手返してこようか?」
「そんなことしちゃ駄目だ! ルクレツィオ、お前は何も知らないから平然としていられるのかもしれないが、これはとても名誉で恵まれたことなんだよ! こちらからお断りするなんて、とんでもない! 第一そんなことしたら、今度こそ不敬罪でお前が処罰されてしまうかも……。可愛いお前がそんなことになったら、私は生きていけないよ」
ああ、それもそうか。そこまで考えが至らなかった。ていうか不敬罪が適応されるって、何とか様って本当になんなんだ? 王族? でもこの国の王家は女系一族で、今の王室には王様以外あの年頃の男性はいなかった筈。そして王様は茶髪で緑眼だ。流石の俺でもそれくらいは知ってるぞ。だから、金髪碧眼のあいつと同一人物とは思えない。益々深まる謎に、俺はもう1度兄さんに尋ねる。
「で、結局あの人誰なの? 王室の係累? 海外の王族?」
「ルクレツィオ、お前ってば本当に世間知らずだね。世事に惑わされて研究に支障がでないようにと甘やかしたのは私だけれど、ちょっと度が過ぎたかもしれないな……。ルクレツィオ、あの人はね、王様の幼馴染みであり、親友且つ右腕でもある宰相様で、王室の相談役も務めるエドアルド・ヴェチェッリオ様だよ」
「難しくてよく分かんない。つまり?」
「事実上この国のNo.2だ」
……うわぁーお。思ったよりも大事っぽいな、これは。
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目が覚めたらそこは、知らない国だった。
平凡に日々を過ごし無事高校3年間を終えた翌日、何もかもが違う場所で目が覚めた。
そして言われる。「おかえりなさい、王子」と・・・。
何も知らない僕に皆が強引に王子と言い、迎えに来た強引な婚約者は・・・男!?
異世界転移 王子×王子・・・?
こちらは個人サイトからの再録になります。
十年以上前の作品をそのまま移してますので変だったらすみません。
薬師は語る、その・・・
香野ジャスミン
BL
微かに香る薬草の匂い、息が乱れ、体の奥が熱くなる。人は死が近づくとこのようになるのだと、頭のどこかで理解しそのまま、身体の力は抜け、もう、なにもできなくなっていました。
目を閉じ、かすかに聞こえる兄の声、母の声、
そして多くの民の怒号。
最後に映るものが美しいものであったなら、最後に聞こえるものが、心を動かす音ならば・・・
私の人生は幸せだったのかもしれません。※「ムーンライトノベルズ」で公開中
神獣の僕、ついに人化できることがバレました。
猫いちご
BL
神獣フェンリルのハクです!
片思いの皇子に人化できるとバレました!
突然思いついた作品なので軽い気持ちで読んでくださると幸いです。
好評だった場合、番外編やエロエロを書こうかなと考えています!
本編二話完結。以降番外編。
君が好き過ぎてレイプした
眠りん
BL
ぼくは大柄で力は強いけれど、かなりの小心者です。好きな人に告白なんて絶対出来ません。
放課後の教室で……ぼくの好きな湊也君が一人、席に座って眠っていました。
これはチャンスです。
目隠しをして、体を押え付ければ小柄な湊也君は抵抗出来ません。
どうせ恋人同士になんてなれません。
この先の長い人生、君の隣にいられないのなら、たった一度少しの時間でいい。君とセックスがしたいのです。
それで君への恋心は忘れます。
でも、翌日湊也君がぼくを呼び出しました。犯人がぼくだとバレてしまったのでしょうか?
不安に思いましたが、そんな事はありませんでした。
「犯人が誰か分からないんだ。ねぇ、柚月。しばらく俺と一緒にいて。俺の事守ってよ」
ぼくはガタイが良いだけで弱い人間です。小心者だし、人を守るなんて出来ません。
その時、湊也君が衝撃発言をしました。
「柚月の事……本当はずっと好きだったから」
なんと告白されたのです。
ぼくと湊也君は両思いだったのです。
このままレイプ事件の事はなかった事にしたいと思います。
※誤字脱字があったらすみません
男とラブホに入ろうとしてるのがわんこ属性の親友に見つかった件
水瀬かずか
BL
一夜限りの相手とホテルに入ろうとしていたら、後からきた男女がケンカを始め、その場でその男はふられた。
殴られてこっち向いた男と、うっかりそれをじっと見ていた俺の目が合った。
それは、ずっと好きだけど、忘れなきゃと思っていた親友だった。
俺は親友に、ゲイだと、バレてしまった。
イラストは、すぎちよさまからいただきました。
処女姫Ωと帝の初夜
切羽未依
BL
αの皇子を産むため、男なのに姫として後宮に入れられたΩのぼく。
七年も経っても、未だに帝に番われず、未通(おとめ=処女)のままだった。
幼なじみでもある帝と仲は良かったが、Ωとして求められないことに、ぼくは不安と悲しみを抱えていた・・・
『紫式部~実は、歴史上の人物がΩだった件』の紫式部の就職先・藤原彰子も実はΩで、男の子だった!?というオメガバースな歴史ファンタジー。
歴史や古文が苦手でも、だいじょうぶ。ふりがな満載・カッコ書きの説明大量。
フツーの日本語で書いています。
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