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「えーっと、メインのお肉はダグラスが帰ってきてから焼くとして。サラダは盛り付けた、スープは後もうひと煮立ちさせればよし、ダグラスの好きな海老のアヒージョも大丈夫、鳥と野菜のテリーヌも完成してる、角のベーカリーで買ってきた美味しいパンも準備万端、ワインもいいの買ってきたし、デザートは行きつけのパティスリーのがある……。お夕食はこんなもんかな?」
一つ一つ、口に出しながら確認をする。手抜かりがあってはならない。なんと言っても今日は特別な日なのだから。チラリと時計を見れば、もう直ぐ僕の愛しの旦那様……ダグラスが帰ってくる時間だ。そろそろ料理を盛り付けた皿をテーブルに出しておくか。そうして細々と働いていると……。
ガチャガチャ バタン
「ただいまー」
「あ、帰ってきた」
急いで手を洗ってから、玄関に向かった。エプロン姿のまま顔を見せると、僕を見つけたダグラスがパァッと表情を綻ばせる。タッタッタッ、と駆け寄って荷物を受け取れば、直ぐに大きく手を広げて抱き締められた。慣れた動作で上を向き、おかえりとただいまのキスをする。
「お仕事お疲れ様。ダグラス、そんなにしっかり抱き締められちゃ、動けないんだけど」
「えー、だって、久しぶりのトーリ君なんだもん。堪能したいの」
「朝、一緒に出勤した時に会ったじゃん。そもそも同じ家に住んでるんだし」
「半日ぶりの再会は久しぶりと言っていいと思うんだよね、私。愛しい相手と離れてる時間なんて、とても長く感じるものだから、尚更」
「はいはい、巫山戯てないで、中入って手を洗って。ご飯できてるから」
「えっ、エプロン姿だからもしかしてと思ったけど、作ってくれたの!? 今日も仕事があったのに!? やったー! トーリ君の作るご飯大好き! 嬉しいな、有難う!」
喜びのあまりその場で踊り出しそうなダグラスに笑って返して、早くくつろげる格好に着替えてこいと書斎の前で別れた。さて、僕はキッチンに戻って肉を焼かなくては。肉を焼いたり、温めるものを温めたり、魔法で適温を保っておいたワインを取り出したりしていると、仕事着からゆったりとした部屋着に着替えたダグラスがキッチンに入ってきた。手伝うよ、と言ってくれたので甘えて皿を運んで貰う。二人でやれば、準備なんてあっという間だ。最後にダグラスのグラスにワインを注いだら、完成。席について夕食を摂り始める。
「あれ、トーリ君は飲まないの? このワイン美味しいよ?」
「ああ、僕は今日もオレンジジュースでいいや」
「最近よく飲んでるよね、オレンジジュース。嵌ったの? また買ってくるね」
「好きなメーカーのやつ、ここら辺だと売ってないから助かるよ」
「前に贈り物で貰ったローカルブランドのやつだから、伝手がないとここらじゃ手に入りにくいもんね。私はトーリ君の役に立つ為ならいっくらでも人脈を駆使するつもりだから、もっとこき使っていいよ!」
エッヘンと胸を張るダグラス。王族の端くれとして公務の一環で人脈が広がった結果だとしても、僕の為と言われると悪い気はしない。アハハ、と笑って大好物の海老のアヒージョを多めに取り分けてやる。ダグラスは目を輝かせてお礼や褒め言葉を口にして喜んでいた。
ここは僕とダグラスが二人で住んでいるダグラス個人所有の小さめの邸宅だ。小さめと言ってもダグラスのような高貴な立場の人間が住むには、という但し書きが着く程度には広く、僕達達二人だけで住む分には確実に持て余している。絶対に若夫婦二人で住むレベルの家ではない。実際、住み込みの使用人だけでこの邸宅では維持管理の為に約十人は雇っていた。
てっきり僕はダグラスと結婚したら僕がダグラスの住んでいるエルシャーナ邸に引っ越すのかと思っていたのだが、ダグラスが僕と自分の母親を同居させるのを大層嫌がってこのような形に落ち着いたのだ。ダグラスは母親の軽弾みな発言で僕と破局しかけたのを相当恨んでおり、今でも許していない。更には今までの母親の問題行動と引き起こした騒動の数々を重く見て、結婚した今でも僕はダグラスの付き添いなしではエルシャーナ大公夫人に会った事がない程だ。まあ、僕も自分の親族は諸々の理由があってダグラスに紹介できないし、他人の家庭事情に首を突っ込める程偉くはないのでそこら辺を五月蝿く言うつもりはない。
あ、そうそう。家族と言えば、あの不穏な怪しい中身の封筒を送ってきたのは、僕の祖父母だったようだ。両家揃って僕を勘当した癖に、僕が歴史的快挙とも言える男性妊娠の魔法の開発に成功したと聞いたら、途端に惜しくなったらしい。知らないところで僕を家に連れ戻そうとあれこれ暴れ回っていたそうだ。けれど、それは全て僕の耳に入る前に未然にダグラスの配下の人達に処理され、更には馬鹿な事をするなと厳重注意を受けて表立って動けなくなり……。もう後がなくなった両家はここに来て初めて手を組んだ。曰く『恩知らずの孫に思い知らせてやろう』という目的の元恨みを忘れて協力関係を結んだらしい。何ともまあ歪んだ友情だ。
しかし、もう散々暴れ回って厳重注意を受けてしまった後なので、大っぴらな嫌がらせはできない。僕の祖父母はなかなかの馬鹿だが流石にそこは分かったようだ。さりとて僕への理不尽な嫌がらせを諦められる程無欲にもなれず。祖父母は考えた。恩知らずの僕を痛めつけ、悲しませ、苦しませる方法を。考えて考えて……。考えついたのがあの封筒の送付だ。どうも僕に対してストーカー行為を行い大公子との関係に気がついていた祖父母は、僕に『ダグラスには他に相手が居ていつかは捨てられる。やっぱり頼れるのは家族だけ、祖父母の元に戻ろう』と思わせたかったらしい。
まあ、僕に対する脅迫や貴人のサイン捏造等々を理由に処罰を受け、己の愚かしさを思い知らされたのは祖父母の方だったけれど。とっくに勘当されたとは言え大公子の伴侶である僕の実家だから大事にはされなかったが、馬鹿な行いの代償としてそれなりに酷い目にあったみたいだ。少なくとも二度と僕の目の前には現れないから安心して、とダグラスには言われている。大公夫人の件で分かったが、ダグラスは執念深い男だ。きっと祖父母は彼等の品性にお似合いのろくでもない目にあっているのだろう。存在すらも思い出したくもないので仔細に聞く気にもならず、詳しくは知らないが。何にせよ、親族付き合いは僕側の家族と大公夫人を除いて、義父のエルシャーナ大公を中心に穏やかにやらせて頂いている。特に困っていないので、きっとこれからもこのままだろう。
「……トーリ君」
「ん、何だ?」
「何か……ボーッとしてない? そういえば、最近体がホワホワするって言ってたよね。寝る時も抱き締めると体温が高かった。大丈夫? 体の具合でも悪いの?」
「あー、それは……」
「体調が悪いなら無理しないでね。今日も仕事があったのに、こんなに素敵なディナーまで用意してくれて……。嬉しいけど、体調不良なら休める時に休んで欲しいな」
……やっぱり僕の旦那様は優しい。そう、兎に角ダグラスは僕第一主義で、何につけても僕を尊重し大切にしてくれる。そんなダグラスのことが僕も大切で、大好きで堪らなかった。だから……。この事は、ダグラスに一番に伝えなくちゃいけないんだと思っている。ダグラスにとっても、僕にとっても重要な、その事を。
「……実はね、今日は仕事は半休を取って、午後からは行ってないんだ。ついでに言うと、午前中も通常業務はなくてイレギュラーな事をしてた」
「そうなんだ。それなら、半休って言ってくれたらよかったのに。そしたら私もスケジュールを考えて、午後から休みを取って君の為に私自ら色々できたもの」
「半休にするって決めたのが急だったからね。何せ今日の午前に色々あったのを理由にその場で急に午後は休みにしたんだから」
「え……。色々あったって、大丈夫? 何があったの?」
ダグラスが不安そうに食事の手を止める。緊張からか口渇感が気になったので、僕はオレンジジュースを一口飲んだ。酒気のない僅かな酸味を感じるサッパリとした甘さが心地いい。やっぱり、ワインにしなくてよかった。これからする話はとてもじゃないが酒を飲みながらする話でもないので、そういう意味でも酒であるワインは飲めない。コップを置き、落ち着く事を意識して、僕が喋り出すのを静かに待っているダグラスに向き直る。大丈夫。僕なら言える筈だ。
「ダグラスの言う通り、僕最近具合が悪い時が多かったでしょう? 寝込む程じゃないけど、なーんか調子悪いなぁ……。くらいの体調不良が続いてた。それで、このまま放っておくのもしんどいから、国立魔法研究所の附属病院で仕事ついでに午前中に検査受けてきたんだ」
「ええっ!?」
僕の言葉に驚いて席を立ちかけたダグラスを、目顔で制す。ダグラスは不安そうな顔をしながらも、渋々上げかけていた腰を下ろした。それでも落ち着かないのか、いつもはしない貧乏揺すりをしている。僕の事が心配で心配で仕方がないって感じだ。
「体調の変化に気がついておきながら、ちゃんと気遣えなくてごめん。もっと気にしていればよかった……。それで、検査の結果は? ま、まさか……午後仕事を休んだって事は……!」
ダグラスの顔がサァッと青褪め、紙のように白くなる。オロオロと狼狽するその様子は、とてもじゃないが普段大公子として立派に公務を果たしている男の姿と同じとは思えない。この世でダグラスにこんな顔をさせられるのは僕だけだ。その事に仄暗い喜びを覚える醜い自分が居る。ただ、今はそんな気持ちを押し殺し、淡々とダグラスに事実を告げる事に集中しなくては。
「いくつか結果が出るのが明日以降の検査があるけど……。取り急ぎ今日分かる検査結果だけで一応確定診断できたんだ。腕のいい先生方にも見てもらって、間違いないだろうって。僕も医者じゃないけど、魔術の医療応用が専門だからそれなりに医療の知識はある。その僕の判断からしても、ほぼ確実だと思う。……これ、検査結果」
努めて無表情を保ちながららスッと附属病院の名前とロゴが印字された封筒を差し出すと、ダグラスの震える手が伸びてきてそれを受け取った。ガタガタとみっともないくらいに揺らぐ指先で、ダグラスは一生懸命封筒の口を開き、絶望し切った顔でゴクリと唾を飲んで中身を取り出す。畳まれた紙を開く前にスーハー、と大きく深呼吸をした。それでも決心がつかなかったのか暫し逡巡して畳んである紙を睨みつけていたが、とうとう覚悟を決めて紙を開いた。
すると、ハラリと紙の間から小さなカードが落ちる。細かい文字の多い検査結果の書類を読むよりも、そちらの方が先に目に止まったらしい。ダグラスがテーブルの上に落ちたそれを拾う。スッと視線がそのカードに落ち、そこに書かれたメッセージを読んで、絶望から影の差す目を大きく見開く。
「……」
驚きのあまり困り眉になったダグラスが、見開いた目をバッと僕に向けた。唇は真っ青で、とうとう震えが収まらずに検査結果の紙が指の隙間から滑り落ちる。その様子を見ていたらそれ以上は無表情を保っていられず、僕はダグラスに柔らかく微笑みかけ、大きく一度頷いて見せた。僕の体調を心配して震えるダグラスが、読む事によって平静を保っていられなくなったカード。そこにはこう書かれていた。
『おめでとう、パパになったよ!』
そう。結婚したから早速、僕の開発した魔法を使って子作りしたんだ。そしたら、こうしてちゃんと子供を授かれた。本当、男性不妊が分かって婚約破棄された頃を思えば夢みたい。ちょっと気取ってて言うのは照臭いけど、言うなればこの子は僕とダグラスの愛の結晶だ。愛する相手との子供を授かって言い表しようがないくらい凄く嬉しい。それは向こうも同じなようで、ワナワナと言葉もなく震えるダグラスに僕は満面の笑みを向ける。
「今、妊娠三ヶ月だって。僕は男だけど、もうちょっとすればお腹も膨らんでくるだろうってさ」
「赤ちゃん……本当に……?」
「なぁに、実感湧かないの? えへへ、僕もまだ夢見てる気分だよ。でも、確実に僕達の子供が、ここに居るんだよ。そうだ! 僕の同僚がね、魔法を使って体内の形を白黒の陰影で表す機械を作ってるんだって。まだ開発途中だけど、試作機があるから今度それで赤ちゃんの動き見てみないかって言ってくれたんだ。侵襲性がなくて安全らしいから、赤ちゃんや僕に危険性はないよ。ダグラスも立ち会ってみる? 赤ちゃんが動いてるところを見れば、実感湧くかも」
お腹を優しく擦りながら、ダグラスに笑いかけ続けた。さっきまで緊張と絶望でプルプル震えていたダグラスは、今度はビシリとか溜まって動かない。ただただ、僕の顔を信じられない、とでも言いたげな表情で見つめ続けていた。あんまりにも長くそうしているもんだから、息をしてるのか不安になる程だ。
「ダグラス? 聞こえてる?」
「……聞こえてる」
「なら、反応してよ。返事がないと独り言みたいで寂しい」
「だって……赤ちゃんが……私達の所に……」
「そうですよー? これから忙しくなるね、パパ?」
「……ヴッ」
いきなりダグラスは顔をクシャリと歪め、その紺碧の瞳が潤んだかと思ったら、ボロリと大粒の涙を零した。涙は後から後から零れていって、留まる所を知らない。僕は苦笑しつつも立ち上がり、ハンカチを手にダグラスの席まで歩いて近づく。
「泣く程嬉しかった?」
「嬉しいに……決まってる……! トーリ君、有難う……本当に、有難う……!」
「ん。ダグラスも、パパになってくれて有難うな」
ベソベソと泣きじゃくるダグラスの頭を抱き寄せれば、椅子に座ったままのダグラスは黙って僕の胸に頬を擦り寄せた。僕は小柄だから、背の高いこいつの旋毛を見下ろすと新鮮な気持ちになる。ダグラスの腕が腰に回って抱き締められるのを感じながら、僕は自分の過去に思いを馳せた。
確かに昔から結婚して子供を授かるのは夢だったし、絶対に叶えると決めていたけど……。こうして実際に叶ってみると不思議な気持ちだ。かつて祖父母や両親、周りの大人に蔑ろにされてばかり居た幼少期。思えばあの頃の僕にとって、頭の中に暖かい家庭を思い浮かべ、自分もその一員になる事を夢想するのは寂しく辛い現実からの逃げだった。そうする事でしか、僕は苦しい現実から自分を守り、自己を保つ方法を知らなかったのだ。いつしか暖かい家庭を作りその一員となる事は、僕にとって強迫観念じみた義務にすらなっていたと思う。
暖かい家庭……それこそが僕の居場所で、それを実現させる夢すらも叶えられない僕には、生きる価値はない。そんな無意識の思い込みは、一度目の婚約破棄で尚更顕著になったと思う。子供を設けられない僕は、家族を作れないから価値はない。奇しくも元婚約者が子供を設けられない僕とは結婚できない、と僕を切捨てた事でそう思い込むようにもなった。今にして思えば、あの頃は色々と追い詰められていたな。
でも、ダグラスからの愛情に気が付けた事でそんな負の思い込みは全て霧散した。だって、ダグラスは魔法が完成して僕でも子供を望めるようになる前でも、僕を愛してくれていたから。君の優しさに惚れたと言って、ありのままの僕でも愛してくれて、頑張って無理に付加価値をつけなくても僕は僕であるだけで大切なんだと教えてくれた。そして、そんなダグラスをいつしか僕も大切に思い、愛するようになって……。ダグラスは真に愛し愛される事の意味や価値を僕に教えてくれた。その事に僕が、どれだけ救われた事か。
きっと、この人と一緒ならどれだけでも幸せになれるし、どんな不幸も耐えられる。確信を持ってそう思えた。ダグラスも、ダグラスとの間に授かる新しい命も……全員纏めて僕のかけがえのない存在だ。彼らが居なくては例えどんなに素晴らしい居場所があっても、恵まれた環境に受け入れてもらえても、僕の人生にはもう価値がない。彼らと一緒に居てこそ、僕の幸福な人生は始まるのだ。彼らが僕を幸福にしてくれるように、僕も彼らを幸せにしよう。それが、僕のこれからの人生における揺るぎなき命題だ。それでこそ、生きている意味がある。ダグラスの止めどない涙を拭いながら、胸中を幸福な思いで満たし、自らの目にも涙が浮かんでくるのを感じる僕なのだった。
「男の子かな? 女の子かな?」
「もー、気が早いな。生まれてみなくちゃ分かんないよ」
「女の子ならきっと、トーリ君そっくりな綺麗なブロンドの聡明な美人になるだろうね」
「それじゃあ、男の子だったらダグラスと同じ、深い藍色の目をした優しいハンサムになるな」
「ああ、楽しみだなぁ……! そのお腹の中の赤ちゃんの動きが見えるっていう検査、絶対立ち会わせてね? 早くこの子が動いてる所が見たくて堪らないよ」
「フフッ、勿論だとも」
そして、件の検査の成果によって抜き打ちで赤ちゃんの性別が分かり、心構えができておらず感極まったダグラスが失神するのを、この時の僕はまだ知らない……。
一つ一つ、口に出しながら確認をする。手抜かりがあってはならない。なんと言っても今日は特別な日なのだから。チラリと時計を見れば、もう直ぐ僕の愛しの旦那様……ダグラスが帰ってくる時間だ。そろそろ料理を盛り付けた皿をテーブルに出しておくか。そうして細々と働いていると……。
ガチャガチャ バタン
「ただいまー」
「あ、帰ってきた」
急いで手を洗ってから、玄関に向かった。エプロン姿のまま顔を見せると、僕を見つけたダグラスがパァッと表情を綻ばせる。タッタッタッ、と駆け寄って荷物を受け取れば、直ぐに大きく手を広げて抱き締められた。慣れた動作で上を向き、おかえりとただいまのキスをする。
「お仕事お疲れ様。ダグラス、そんなにしっかり抱き締められちゃ、動けないんだけど」
「えー、だって、久しぶりのトーリ君なんだもん。堪能したいの」
「朝、一緒に出勤した時に会ったじゃん。そもそも同じ家に住んでるんだし」
「半日ぶりの再会は久しぶりと言っていいと思うんだよね、私。愛しい相手と離れてる時間なんて、とても長く感じるものだから、尚更」
「はいはい、巫山戯てないで、中入って手を洗って。ご飯できてるから」
「えっ、エプロン姿だからもしかしてと思ったけど、作ってくれたの!? 今日も仕事があったのに!? やったー! トーリ君の作るご飯大好き! 嬉しいな、有難う!」
喜びのあまりその場で踊り出しそうなダグラスに笑って返して、早くくつろげる格好に着替えてこいと書斎の前で別れた。さて、僕はキッチンに戻って肉を焼かなくては。肉を焼いたり、温めるものを温めたり、魔法で適温を保っておいたワインを取り出したりしていると、仕事着からゆったりとした部屋着に着替えたダグラスがキッチンに入ってきた。手伝うよ、と言ってくれたので甘えて皿を運んで貰う。二人でやれば、準備なんてあっという間だ。最後にダグラスのグラスにワインを注いだら、完成。席について夕食を摂り始める。
「あれ、トーリ君は飲まないの? このワイン美味しいよ?」
「ああ、僕は今日もオレンジジュースでいいや」
「最近よく飲んでるよね、オレンジジュース。嵌ったの? また買ってくるね」
「好きなメーカーのやつ、ここら辺だと売ってないから助かるよ」
「前に贈り物で貰ったローカルブランドのやつだから、伝手がないとここらじゃ手に入りにくいもんね。私はトーリ君の役に立つ為ならいっくらでも人脈を駆使するつもりだから、もっとこき使っていいよ!」
エッヘンと胸を張るダグラス。王族の端くれとして公務の一環で人脈が広がった結果だとしても、僕の為と言われると悪い気はしない。アハハ、と笑って大好物の海老のアヒージョを多めに取り分けてやる。ダグラスは目を輝かせてお礼や褒め言葉を口にして喜んでいた。
ここは僕とダグラスが二人で住んでいるダグラス個人所有の小さめの邸宅だ。小さめと言ってもダグラスのような高貴な立場の人間が住むには、という但し書きが着く程度には広く、僕達達二人だけで住む分には確実に持て余している。絶対に若夫婦二人で住むレベルの家ではない。実際、住み込みの使用人だけでこの邸宅では維持管理の為に約十人は雇っていた。
てっきり僕はダグラスと結婚したら僕がダグラスの住んでいるエルシャーナ邸に引っ越すのかと思っていたのだが、ダグラスが僕と自分の母親を同居させるのを大層嫌がってこのような形に落ち着いたのだ。ダグラスは母親の軽弾みな発言で僕と破局しかけたのを相当恨んでおり、今でも許していない。更には今までの母親の問題行動と引き起こした騒動の数々を重く見て、結婚した今でも僕はダグラスの付き添いなしではエルシャーナ大公夫人に会った事がない程だ。まあ、僕も自分の親族は諸々の理由があってダグラスに紹介できないし、他人の家庭事情に首を突っ込める程偉くはないのでそこら辺を五月蝿く言うつもりはない。
あ、そうそう。家族と言えば、あの不穏な怪しい中身の封筒を送ってきたのは、僕の祖父母だったようだ。両家揃って僕を勘当した癖に、僕が歴史的快挙とも言える男性妊娠の魔法の開発に成功したと聞いたら、途端に惜しくなったらしい。知らないところで僕を家に連れ戻そうとあれこれ暴れ回っていたそうだ。けれど、それは全て僕の耳に入る前に未然にダグラスの配下の人達に処理され、更には馬鹿な事をするなと厳重注意を受けて表立って動けなくなり……。もう後がなくなった両家はここに来て初めて手を組んだ。曰く『恩知らずの孫に思い知らせてやろう』という目的の元恨みを忘れて協力関係を結んだらしい。何ともまあ歪んだ友情だ。
しかし、もう散々暴れ回って厳重注意を受けてしまった後なので、大っぴらな嫌がらせはできない。僕の祖父母はなかなかの馬鹿だが流石にそこは分かったようだ。さりとて僕への理不尽な嫌がらせを諦められる程無欲にもなれず。祖父母は考えた。恩知らずの僕を痛めつけ、悲しませ、苦しませる方法を。考えて考えて……。考えついたのがあの封筒の送付だ。どうも僕に対してストーカー行為を行い大公子との関係に気がついていた祖父母は、僕に『ダグラスには他に相手が居ていつかは捨てられる。やっぱり頼れるのは家族だけ、祖父母の元に戻ろう』と思わせたかったらしい。
まあ、僕に対する脅迫や貴人のサイン捏造等々を理由に処罰を受け、己の愚かしさを思い知らされたのは祖父母の方だったけれど。とっくに勘当されたとは言え大公子の伴侶である僕の実家だから大事にはされなかったが、馬鹿な行いの代償としてそれなりに酷い目にあったみたいだ。少なくとも二度と僕の目の前には現れないから安心して、とダグラスには言われている。大公夫人の件で分かったが、ダグラスは執念深い男だ。きっと祖父母は彼等の品性にお似合いのろくでもない目にあっているのだろう。存在すらも思い出したくもないので仔細に聞く気にもならず、詳しくは知らないが。何にせよ、親族付き合いは僕側の家族と大公夫人を除いて、義父のエルシャーナ大公を中心に穏やかにやらせて頂いている。特に困っていないので、きっとこれからもこのままだろう。
「……トーリ君」
「ん、何だ?」
「何か……ボーッとしてない? そういえば、最近体がホワホワするって言ってたよね。寝る時も抱き締めると体温が高かった。大丈夫? 体の具合でも悪いの?」
「あー、それは……」
「体調が悪いなら無理しないでね。今日も仕事があったのに、こんなに素敵なディナーまで用意してくれて……。嬉しいけど、体調不良なら休める時に休んで欲しいな」
……やっぱり僕の旦那様は優しい。そう、兎に角ダグラスは僕第一主義で、何につけても僕を尊重し大切にしてくれる。そんなダグラスのことが僕も大切で、大好きで堪らなかった。だから……。この事は、ダグラスに一番に伝えなくちゃいけないんだと思っている。ダグラスにとっても、僕にとっても重要な、その事を。
「……実はね、今日は仕事は半休を取って、午後からは行ってないんだ。ついでに言うと、午前中も通常業務はなくてイレギュラーな事をしてた」
「そうなんだ。それなら、半休って言ってくれたらよかったのに。そしたら私もスケジュールを考えて、午後から休みを取って君の為に私自ら色々できたもの」
「半休にするって決めたのが急だったからね。何せ今日の午前に色々あったのを理由にその場で急に午後は休みにしたんだから」
「え……。色々あったって、大丈夫? 何があったの?」
ダグラスが不安そうに食事の手を止める。緊張からか口渇感が気になったので、僕はオレンジジュースを一口飲んだ。酒気のない僅かな酸味を感じるサッパリとした甘さが心地いい。やっぱり、ワインにしなくてよかった。これからする話はとてもじゃないが酒を飲みながらする話でもないので、そういう意味でも酒であるワインは飲めない。コップを置き、落ち着く事を意識して、僕が喋り出すのを静かに待っているダグラスに向き直る。大丈夫。僕なら言える筈だ。
「ダグラスの言う通り、僕最近具合が悪い時が多かったでしょう? 寝込む程じゃないけど、なーんか調子悪いなぁ……。くらいの体調不良が続いてた。それで、このまま放っておくのもしんどいから、国立魔法研究所の附属病院で仕事ついでに午前中に検査受けてきたんだ」
「ええっ!?」
僕の言葉に驚いて席を立ちかけたダグラスを、目顔で制す。ダグラスは不安そうな顔をしながらも、渋々上げかけていた腰を下ろした。それでも落ち着かないのか、いつもはしない貧乏揺すりをしている。僕の事が心配で心配で仕方がないって感じだ。
「体調の変化に気がついておきながら、ちゃんと気遣えなくてごめん。もっと気にしていればよかった……。それで、検査の結果は? ま、まさか……午後仕事を休んだって事は……!」
ダグラスの顔がサァッと青褪め、紙のように白くなる。オロオロと狼狽するその様子は、とてもじゃないが普段大公子として立派に公務を果たしている男の姿と同じとは思えない。この世でダグラスにこんな顔をさせられるのは僕だけだ。その事に仄暗い喜びを覚える醜い自分が居る。ただ、今はそんな気持ちを押し殺し、淡々とダグラスに事実を告げる事に集中しなくては。
「いくつか結果が出るのが明日以降の検査があるけど……。取り急ぎ今日分かる検査結果だけで一応確定診断できたんだ。腕のいい先生方にも見てもらって、間違いないだろうって。僕も医者じゃないけど、魔術の医療応用が専門だからそれなりに医療の知識はある。その僕の判断からしても、ほぼ確実だと思う。……これ、検査結果」
努めて無表情を保ちながららスッと附属病院の名前とロゴが印字された封筒を差し出すと、ダグラスの震える手が伸びてきてそれを受け取った。ガタガタとみっともないくらいに揺らぐ指先で、ダグラスは一生懸命封筒の口を開き、絶望し切った顔でゴクリと唾を飲んで中身を取り出す。畳まれた紙を開く前にスーハー、と大きく深呼吸をした。それでも決心がつかなかったのか暫し逡巡して畳んである紙を睨みつけていたが、とうとう覚悟を決めて紙を開いた。
すると、ハラリと紙の間から小さなカードが落ちる。細かい文字の多い検査結果の書類を読むよりも、そちらの方が先に目に止まったらしい。ダグラスがテーブルの上に落ちたそれを拾う。スッと視線がそのカードに落ち、そこに書かれたメッセージを読んで、絶望から影の差す目を大きく見開く。
「……」
驚きのあまり困り眉になったダグラスが、見開いた目をバッと僕に向けた。唇は真っ青で、とうとう震えが収まらずに検査結果の紙が指の隙間から滑り落ちる。その様子を見ていたらそれ以上は無表情を保っていられず、僕はダグラスに柔らかく微笑みかけ、大きく一度頷いて見せた。僕の体調を心配して震えるダグラスが、読む事によって平静を保っていられなくなったカード。そこにはこう書かれていた。
『おめでとう、パパになったよ!』
そう。結婚したから早速、僕の開発した魔法を使って子作りしたんだ。そしたら、こうしてちゃんと子供を授かれた。本当、男性不妊が分かって婚約破棄された頃を思えば夢みたい。ちょっと気取ってて言うのは照臭いけど、言うなればこの子は僕とダグラスの愛の結晶だ。愛する相手との子供を授かって言い表しようがないくらい凄く嬉しい。それは向こうも同じなようで、ワナワナと言葉もなく震えるダグラスに僕は満面の笑みを向ける。
「今、妊娠三ヶ月だって。僕は男だけど、もうちょっとすればお腹も膨らんでくるだろうってさ」
「赤ちゃん……本当に……?」
「なぁに、実感湧かないの? えへへ、僕もまだ夢見てる気分だよ。でも、確実に僕達の子供が、ここに居るんだよ。そうだ! 僕の同僚がね、魔法を使って体内の形を白黒の陰影で表す機械を作ってるんだって。まだ開発途中だけど、試作機があるから今度それで赤ちゃんの動き見てみないかって言ってくれたんだ。侵襲性がなくて安全らしいから、赤ちゃんや僕に危険性はないよ。ダグラスも立ち会ってみる? 赤ちゃんが動いてるところを見れば、実感湧くかも」
お腹を優しく擦りながら、ダグラスに笑いかけ続けた。さっきまで緊張と絶望でプルプル震えていたダグラスは、今度はビシリとか溜まって動かない。ただただ、僕の顔を信じられない、とでも言いたげな表情で見つめ続けていた。あんまりにも長くそうしているもんだから、息をしてるのか不安になる程だ。
「ダグラス? 聞こえてる?」
「……聞こえてる」
「なら、反応してよ。返事がないと独り言みたいで寂しい」
「だって……赤ちゃんが……私達の所に……」
「そうですよー? これから忙しくなるね、パパ?」
「……ヴッ」
いきなりダグラスは顔をクシャリと歪め、その紺碧の瞳が潤んだかと思ったら、ボロリと大粒の涙を零した。涙は後から後から零れていって、留まる所を知らない。僕は苦笑しつつも立ち上がり、ハンカチを手にダグラスの席まで歩いて近づく。
「泣く程嬉しかった?」
「嬉しいに……決まってる……! トーリ君、有難う……本当に、有難う……!」
「ん。ダグラスも、パパになってくれて有難うな」
ベソベソと泣きじゃくるダグラスの頭を抱き寄せれば、椅子に座ったままのダグラスは黙って僕の胸に頬を擦り寄せた。僕は小柄だから、背の高いこいつの旋毛を見下ろすと新鮮な気持ちになる。ダグラスの腕が腰に回って抱き締められるのを感じながら、僕は自分の過去に思いを馳せた。
確かに昔から結婚して子供を授かるのは夢だったし、絶対に叶えると決めていたけど……。こうして実際に叶ってみると不思議な気持ちだ。かつて祖父母や両親、周りの大人に蔑ろにされてばかり居た幼少期。思えばあの頃の僕にとって、頭の中に暖かい家庭を思い浮かべ、自分もその一員になる事を夢想するのは寂しく辛い現実からの逃げだった。そうする事でしか、僕は苦しい現実から自分を守り、自己を保つ方法を知らなかったのだ。いつしか暖かい家庭を作りその一員となる事は、僕にとって強迫観念じみた義務にすらなっていたと思う。
暖かい家庭……それこそが僕の居場所で、それを実現させる夢すらも叶えられない僕には、生きる価値はない。そんな無意識の思い込みは、一度目の婚約破棄で尚更顕著になったと思う。子供を設けられない僕は、家族を作れないから価値はない。奇しくも元婚約者が子供を設けられない僕とは結婚できない、と僕を切捨てた事でそう思い込むようにもなった。今にして思えば、あの頃は色々と追い詰められていたな。
でも、ダグラスからの愛情に気が付けた事でそんな負の思い込みは全て霧散した。だって、ダグラスは魔法が完成して僕でも子供を望めるようになる前でも、僕を愛してくれていたから。君の優しさに惚れたと言って、ありのままの僕でも愛してくれて、頑張って無理に付加価値をつけなくても僕は僕であるだけで大切なんだと教えてくれた。そして、そんなダグラスをいつしか僕も大切に思い、愛するようになって……。ダグラスは真に愛し愛される事の意味や価値を僕に教えてくれた。その事に僕が、どれだけ救われた事か。
きっと、この人と一緒ならどれだけでも幸せになれるし、どんな不幸も耐えられる。確信を持ってそう思えた。ダグラスも、ダグラスとの間に授かる新しい命も……全員纏めて僕のかけがえのない存在だ。彼らが居なくては例えどんなに素晴らしい居場所があっても、恵まれた環境に受け入れてもらえても、僕の人生にはもう価値がない。彼らと一緒に居てこそ、僕の幸福な人生は始まるのだ。彼らが僕を幸福にしてくれるように、僕も彼らを幸せにしよう。それが、僕のこれからの人生における揺るぎなき命題だ。それでこそ、生きている意味がある。ダグラスの止めどない涙を拭いながら、胸中を幸福な思いで満たし、自らの目にも涙が浮かんでくるのを感じる僕なのだった。
「男の子かな? 女の子かな?」
「もー、気が早いな。生まれてみなくちゃ分かんないよ」
「女の子ならきっと、トーリ君そっくりな綺麗なブロンドの聡明な美人になるだろうね」
「それじゃあ、男の子だったらダグラスと同じ、深い藍色の目をした優しいハンサムになるな」
「ああ、楽しみだなぁ……! そのお腹の中の赤ちゃんの動きが見えるっていう検査、絶対立ち会わせてね? 早くこの子が動いてる所が見たくて堪らないよ」
「フフッ、勿論だとも」
そして、件の検査の成果によって抜き打ちで赤ちゃんの性別が分かり、心構えができておらず感極まったダグラスが失神するのを、この時の僕はまだ知らない……。
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美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
愛がなければ生きていけない
ニノ
BL
巻き込まれて異世界に召喚された僕には、この世界のどこにも居場所がなかった。
唯一手を差しのべてくれた優しい人にすら今では他に愛する人がいる。
何故、元の世界に帰るチャンスをふいにしてしまったんだろう……今ではそのことをとても後悔している。
※ムーンライトさんでも投稿しています。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
姉が結婚式から逃げ出したので、身代わりにヤクザの嫁になりました
拓海のり
BL
芳原暖斗(はると)は学校の文化祭の都合で姉の結婚式に遅れた。会場に行ってみると姉も両親もいなくて相手の男が身代わりになれと言う。とても断れる雰囲気ではなくて結婚式を挙げた暖斗だったがそのまま男の家に引き摺られて──。
昔書いたお話です。殆んど直していません。やくざ、カップル続々がダメな方はブラウザバックお願いします。やおいファンタジーなので細かい事はお許しください。よろしくお願いします。
タイトルを変えてみました。
メランコリック・ハートビート
おしゃべりマドレーヌ
BL
【幼い頃から一途に受けを好きな騎士団団長】×【頭が良すぎて周りに嫌われてる第二王子】
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『王様、それでは、褒章として、我が伴侶にエレノア様をください!』
あの男が、アベルが、そんな事を言わなければ、エレノアは生涯ひとりで過ごすつもりだったのだ。誰にも迷惑をかけずに、ちゃんとわきまえて暮らすつもりだったのに。
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第二王子のエレノアは、アベルという騎士団団長と結婚する。そもそもアベルが戦で武功をあげた褒賞として、エレノアが欲しいと言ったせいなのだが、結婚してから一年。二人の間に身体の関係は無い。
幼いころからお互いを知っている二人がゆっくりと、両想いになる話。
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