上 下
16 / 17

16

しおりを挟む
 ダグラスに凭れた背中が暖かい。大きな体と長い腕を使って抱え込むように奴の膝の上に座らされているから、全身を包み込まれてるみたいだ。ダグラスは自分の手に取った僕の手を熱心に見て、薬指に光る輝きを確かめている。勿論、ダグラスも同じ場所に指輪を嵌めていた。さっき僕が着けてやったのだ。そして、僕の指に指輪を填めたのはダグラスで……。胸中に溢れる幸せに、僕はウットリと目を細める。
「うぅ……。ただ普通に指輪を渡しただけでこんなに可愛い顔してくれるなら、ちゃんとムードを作ってから渡したかった……」
「もー、まだ言ってる。別にいいじゃん。僕はどんな形でも指輪を貰えただけで凄く嬉しいよ?」
「でも、トーリ君に指輪を渡す為に色々計画立てて、その為の準備もしてたんだ。全部無駄になっちゃったのは悔しいなぁ……。まったく、母上さえ余計な事しなければ……!」
 それに関しては流石にフォローしきれないので、曖昧に笑って腕を上げダグラスの頭を撫でるに留めた。それだけでダグラスの機嫌は一気に上向く。頭を撫でる僕の手をソッと取り、そこにキスを落とすダグラス。チュ、チュ、と何度か落とされたキスはだんだんと腕を辿って下に降りてきて、いつの間にか僕の唇へと辿り着いていた。舌を伸ばして上にある唇を迎え入れ、そのまま味わうように合わせる。
「ん、ふ……ぅ……」
 大きくて暖かい手で耳をスリスリ弄られるのが気持ちいい。上を向いてキスをしているせいで仰け反り気味の僕の背を支えてくれる腕が頼もしかった。舌を絡めて、夢中で吸い付き、ダグラスとのキスを味わう。ああ、最近擦れ違いばかりだったのとずっと会えてなかったのとでご無沙汰だから、凄く気持ちがいい。ダグラスの項に指をかけて引き寄せ、もっともっとと強請った。そうしていたら、更にその先が欲しくなるのは、当然の事で……。
「トーリ君……。しても、いい……?」
「……ん」
 僕が小さく……しかし確かに頷くと、膝裏にダグラスの逞しい腕が回ってヒョイッと軽々持ち上げられた。小柄で細身とはいえ、大人の男をこうも簡単に持ち上げるなんて流石鍛えているだけの事はある。ダグラスは腕の中に抱き上げた僕に数回キスを落としながら、部屋を横切って特大サイズのベッドの上に優しく下ろした。天井を背景に、僕を見下ろすダグラスの美しい顔が視界に映る。奴は幸せ一杯なのを隠しもしない蕩けた表情で笑っていて、笑みの形を作った唇で今度は額にキスをして、ようやくキスの雨を降らせるのを止めた。
 愛しくて堪らない。そんな思いが存分に伝わってくる視線が、僕の顔を見て、首に移り、胸を通って、腹まで行き、そしてとうとうに到達する。その欲望に濡れた視線に、まだ一度も使った事もない筈の腰の奥がキュンッと疼いた。僅かな身動ぎからその事が伝わったのか、ダグラスが舌なめずりをする。いつも紳士的なダグラスが見せるその雄臭い仕草に、興奮して頭に血が上って目眩がしそうな程だった。
 シーツの上に横たわる僕を跨ぐように、ダグラスが膝立ちになる。視姦されただけで息を荒らげた僕だったが、僕の体を舐め回すように見ただけで興奮したのはダグラスも同じだったらしい。性的興奮で上気した顔でウッソリと笑い、腰を屈めて彼我の距離を縮めると、ソッと僕の服の裾から手を入れた。肌の上を直に他人の手が滑っていく。火傷しそうなくらい熱いのその感触に、僕は思わず体を跳ねさせる。
「っ、う」
「触られるだけで感じてるの? 可愛い」
「だって、お前の手……気持ちいから……」
 止めろ。そんな可愛くて堪んないって顔するな。恥ずかしくなるだろうが! 羞恥心からついついダグラスの事を睨みつけるが、向こうはそれを気にした風もなく、寧ろゴクリと喉を鳴らされてしまう。
「トーリ君にその気がないのは重々承知の上だけど……。感じているのが丸分かりな状態で睨まれると色々とクるなぁ」
 ダグラスの顔が近づいてきて、何かと思ったら耳元でそんな事を囁かれる。言いながら腹の当たりをさ迷っていた手がスルスルと上に滑っていき、胸部に到達した。開いたての指で楽器でも奏でるかのように、胸の先端を擽られる。そのもどかしい感覚に、腰がビクビクと動いた。前が苦しい。きざしているから、窮屈になっているんだ。もう我慢できなくて、自分のベルトに手をかける。
「フフッ、もう下着に染みを作っちゃうくらい先走りが溢れてる。キスして少しお触りされただけでこんなになるなんて、トーリ君はエッチだね」
「五月蝿い、馬鹿。ほら、ダグラスも腰こっち寄せて。脱がせてやるから……」
 恥じらいを紛らわす為にそんな憎まれ口を叩く。ダグラスが僕のズボンの前を寛げれば、ペニスは見事に半勃ちになっていた。自分だけこんな有様ではなんだか悔しいので、ダグラスも同じにしてやろうと奴のベルトにも手を伸ばす。ダグラスは僕の胸を弄るのを止めて僕の両脇に手を着くようにして四つん這いになり、こっちがベルトのバックルを外しやすくしてくれた。それに甘えて先程の快感の余韻に痺れる指先で、ダグラスのズボンの前を寛げる。僕のよりも一回りは大きくてカリ高の、男らしいペニスが現れその雄姿に僕は思わず生唾を飲み込む。
 これが中に入ったら、どうなっちゃうんだろう……。お腹一杯に突っ込まれて、いい所を擦られて、嫌って言う程満たされて……。そのはしたない想像だけで腰がカクカク揺れそうだ。ペニスに熱が集中して、ググッと先端が更に上を向く。内側から押し上げられた下着に着いた染みが、また一段と広がった。
「ん、有難う。このままだと緊張で上手くイけないかもしれないし、体の力を抜く為にも一回抜いとこうか」
「……ダグラスになら酷くされてもいい」
「んんっ! そ、そんな事言わないの。トーリ君は私の宝物なんだから、大切にさせて?」
 手始めに二人で向かい合って着ていたものを粗方脱いだ。それから、ほら、とダグラスに促され奴の方を向く形で横向きに転がる。すると股を割るようにしてダグラスの足が入ってきて、更にはその足を立てるようにするもんだから向かい合って大股開きする事となってしまった。ついでに言うと腰をグイッと引かれたので股間が密着している。お互いの物がゴリッと擦れ合い、それぞれが元気溌剌なのがバレバレだ。そしてダグラスは僕の手を持ってきて、二人分のペニスを纏めて持たせた。ダグラスは僕の耳元に唇を寄せ、こう囁く。
「好きな所一杯擦って。一緒に気持ちよくなろう」
 そう言うとダグラスは、僕の耳介を唇で優しく食んだ。あむあむと熱心に食べられて、耳元でする水音とダグラスの口内の熱に僕は小さく喘いで身悶えするしかない。それでも指を動かす事は忘れず、僕なりの拙い手管で二人分のペニスを扱き始めた。
「ぁ、ん……ふ……」
「そう、上手だね……。私も気持ちがいいよ……」
 片手で纏めたペニスをチュコチュコと擦り、もう片方の手の掌を使って先端を虐める。気持ちよくって腰が勝手にカクカク動く。発情期の犬みたいでみっともないと思うけれど、自分の意思ではもう止められない。ダグラスに開かされた足の太腿が細かく痙攣した。ダグラスも性感が高まっているのか、熱い息を吐きながら僕の耳介を舐めしゃぶってくる。大きな手で腰を撫でられる度、背筋が震えるのが自分でも分かった。
「ダグラス……ダグラスゥ……」
 ハァハァと口で息をしながら、ダグラスの名前を呼んで目の前の伸びあがった首筋を舐める。張り出した喉仏、筋肉の浮き上がった横側、瑞々しい肌。一つ一つ堪能しながら丹念に舌を這わせた。柔らかなそこに軽く歯を当てると、擽ったいのか低く笑って震えるのが伝わってくる。最早それすらも愛しくて、腰の奥がキュンッと痺れた。そうして、夢中になって手と口でダグラスの体を味わっていたら、腰を摩っていた奴の手が唐突に下へと滑る。
「あっ、そこぉ……」
「大丈夫。私に任せて」
 いつの間に用意したのだろう。潤滑油で濡れそぼったダグラスの男らしく太い指が、僕のアナルに触れた。最初は様子を伺うように入口を続くだけだった指は、直ぐに中に侵入してグチグチと広げるような動きをする。その何とも言えない感覚に、僕はブルリと身を震わせた。
「声、我慢しないで。その方が楽だろうから」
 言われるがまま軽く唇を噛んで閉ざしていた口を開く。すると、声を出さないように集中する事に持っていかれていた意識が他に向くようになって、何だか体の感度が増した気がする。僕は手を動かして直接的な快感を貪りつつ、目の前の逞しい胸板に頬を擦り付けて甘えて、思うがままに鼻にかかった喘ぎ声を出した。
「ん……あっあっ、ふ……んぅ……」
 身悶えしながら夢中になって手を動かす。前は勿論、最初違和感しかなかった後ろも、だんだんムズムズするようなもどかしい感覚に変わってきていた。それは確かに快感の前兆で、これからの期待感に陰嚢が持ち上がってペニスが膨れ上がっていく。一緒に握りこんだダグラスのペニスも、順調に育ってきていた。どうやら裏筋が特に好きらしく腰を揺らしてそこを擦ると反応がいいので、今はそこを重点的に刺激している。そうしてユルユルと快感が振り積もっていき、順調にアナルに潜り込ませた指も増えていって中も広げ切った頃。ダグラスが指の動きを中を広げるものから、なにか探るようなものに変えた。無駄に器用なダグラスは、直ぐにその場所を探り当てる。
「ひぃんっ!?」
「わっ! ごめん、大丈夫!?」
「大、丈夫……。ちょっと、ビックリしただけ……」
「そう? 無理そうなら止めるから、遠慮なく言って」
「いや、その……」
 これ、言わなきゃ駄目なんだろうか。駄目なんだろうな。ダグラスは賢い癖にこういう時やけに鈍い。本当はさっきの恥ずかしい嬌声じみた悲鳴で察して欲しかった。感じる所を探り出されてそこを押されたせいで、気持ちよ過ぎて驚いて声が出ただけだって。
「気持ちよくて、声が出ただけだから。むしろ、もっとして欲しい……かも……なんて」
 羞恥心のせいでハッキリとは発さず、モゴモゴと口の中で転がした言葉をダグラスは耳聡く聞きつけたらしい。スッと小さく息を飲む音がして、それから止まっていた指の動きがゆっくりと再開された。
「あっ、あぁー……! そ、こぉ……きもち、ぃ……!」
「フフッ、手元がお留守になってるよ。ほら、ちゃんと動かして」
「ん、うぅ……」
 後ろで覚え始めた快感に全身がガクガクしてるってのに、そんな無茶を言われる。けれど逆らう気にはならず、言われるがまま必死になって力の抜けた手を動かし二人分のペニスを弄った。とはいえ、勝手に揺れる腰のせいである程度握ってさえいれば触れ合った所が擦れて気持ちがいいのだが。しかも、いつの間にかダグラスが空いた手を僕の手の上に重ねてきて強く握るようにしてくるのだから始末に負えない。モダモダ捏ねくり回していた手付きを強い刺激を与える形に塗り替えられる。何にせよ、前も後ろも責め立てられる事となって、僕はもうよがり狂うしかなかった。
「ふ、ぅ、んくっ、そ、そこ……も、やぁ、あぅっ!」
「うんうん、気持ちいいね」
 ダグラスの低い笑い声が耳を擽る。腰の奥が痺れて重い。さっきから足を開きっぱなしなせいで、上手く快感を逃せなくて頭がおかしくなりそうだ。過ぎた快感のせいでビクビク痙攣する僕の足に、ダグラスの足が絡みつく。そのせいで益々腰の辺りが密着した。ただただ気持ちよくて、指を突っ込まれたアナルが切なくて、僕は指の隙間から滴る程に先走りを零した。
「あ、あぁっ! ダ、ダグラス! は、激し……はぁんっ!」
「っ、可愛いなぁ……。ほら、出しちゃいな」
「あぅ──っ!」
 ダグラスの指が強くアナルの中の性感帯を押し込む。瞬間的に走る、弾けるような激しい快感。チカチカと視界で光がスパークして、思わず強く目を大きく見開く。ダグラスの大きな手によって包まれた自分の手で、僕の意思に反して激しくペニスを扱かれた。後ろからも前からも快感を拾えば、限界を迎えるのはあっという間だ。気がつけば僕は、腰をガクガク震えさせながら達していた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「凄い、私の胸まで飛んでる。よく頑張ったね」
 チュ、チュとダグラスが僕の額にキスを落とす。僕はそれを射精の開放感に浸りながら、ボーッと受け入れた。そしてふとした瞬間、ある事に気が付く。ダグラスのペニスが、まだ張り詰めていてガチガチな事に。
「ダグラス……お前、出せてない……。気持ちよく、なかった?」
「えっ!? 違う違う! とんでもない! ごめんね、で可愛がってもらおうと思って、我慢しちゃった」
 そう言ってダグラスはアナルに突っ込んでいない指を使って僕の尻たぶを優しく撫でる。ついでに突っ込んだままの指をヒクつかせて、意識させる事も忘れない。ダグラスの意図することが分かった僕がバッと奴の胸から顔を上げると、眼前には蠱惑的に微笑む美しい美丈夫の顔面があった。欲情し切ってギラついた目で見られて、射精したばかりで萎えていた筈のペニスが知らず知らずの内にまたムクムクと元気を取り戻す。
「トーリ君。後ろからがいい? それとも前から?」
「……前から」
「了解」
 微笑みと共に絡めていた足を解かれる。射精の余韻でクテンとしている体をコロリと転がされ、仰向けになった。体を起こしたダグラスが、足の方に移動する。それからダグラスは一旦掌に出して温めた潤滑油を僕の股間に塗りこんだ。丹念に、丁寧に、慈しむような手付きで、ジックリと。ダグラスの指が際どい所を通る度、僕は押し殺した声で喘いで身体を震わせ、ダグラスはそれを心底嬉しそうな目で見ていた。やがて、幾らか潤滑油を塗りたくって満足したのか、ダグラスの手が離れていく。奴は目を細めて僕の事を頭の天辺から爪先まで舐めるようにして見た。
「フフ、イッたから上手く体から力が抜けて、軽くマッサージもしたから感度も上がってる。トロットロで食べ頃だ。そろそろいただこうかな」
 そう言ってダグラスは僕の片足を跨ぎ、もう片足を肩に担ぐ。そのままダグラスの股間と僕の後ろをくっつける形で局部を密着させられた。担ぎあげた足の太ももをダグラスが嫌らしい手付きでネットリと撫で上げ、顔の近くの足首辺りを熱い舌でネロリと舐められる。その感触に火照りきった僕の体はあからさまに反応して、腰をカクつかせながら先走りを零す。
「それじゃあ、入れるよ?」
「ん……来て」
 ダグラスの昂ったが、ズルリと僕の尻のあわいを擦るようにして接触するのを感じた。先程まで弄られていたせいで敏感になっているアナルの表面を、固く張り出した雁首が何度も引っ掛けるようにして刺激してくる。それに反応して僕が肩を揺らせば、上の方から楽しそうな忍び笑いが返ってくる。やがて、熱くて固い切っ先が、ニュグリとほんの僅かだけ潜り込んできた。たったそれだけの事でこれから巻き起こることに対する期待感が最高潮に達して、僕は静かに背筋を震わせ小さく息を飲んだ。
 ゆっくりと……ゆっくりと、ダグラスのペニスが中への侵入を果たす。最初は少し抵抗があったものの、雁首が入口の窄まりを抜けてしまえば後はわりあいスンナリ入った。指三本を使ってジックリと慣らされた筈なのに、ダグラスのペニスが想像以上に太くってミッチリと隙間なく後ろで食んでしまう。その堪らない感覚に、思わず恍惚とした吐息が漏れた。腰を小刻みに動かして小さく抜き差しを繰り返しながら、ダグラスは少しずつペニスを進めていく。その間、僕の足を撫で回して性感を高めるのも忘れない。
「う、ぁ……、はぁ……」
 正直、まだ未開発の後ろだけで快感を拾うのは難しく、体を太くて熱い楔で割開かれていく圧迫感に浅い呼吸で耐えるので手一杯だ。それでもダグラスに抱かれているのだという充足感は凄まじく、僕のペニスは一向に萎える様子がない。ダラダラと溢れる先走りはとめどなく、肌触りのいい高級なシーツにはしたない染みを作った。そうして体内に感じる火傷しそうな程の他人の熱にウットリとしていた、その時。
「んあぁっ!?」
 先程責め立てられて果ててしまった感じる所をペニスの雁首でゴリッと抉られた。油断していた所にいきなりそこそこの快感を与えられビクンと腰が暴れる。それを予期していたのかダグラスの大きな手がグッと押さえ込んだ。そのせいで快感が腰の奥に留まり、甘イキしてしまってピュクピュクとペニスの先端から液体が迸る。
「や、ぁ、何……?」
「トーリ君が気持ちよくなれるところ。前立腺って言うんだよ。中キュンキュンでキツイくらいだから、もう少しだけここら辺を重点的に解すね」
「へ……、んんぅ!」
 甘イキしているせいで散漫とする意識を何とか纏めあげようとしていたら、ダグラスがペニスを小刻みに動かし始めた。それも、感じる所……前立腺とやらを重点的に虐める形で。驚いて腰を浮かせかけるが、先程僕の腰を押さえつける為に置かれた手がまだ留まっていて、全く逃げられない。少し刺激されただけで軽くイッてしまた程気持ちが良い前立腺を、ゴリゴリと間断なく押し潰される甘苦しい責め苦が始まった。
「やぁっ! あっ、あっ、んぅ! 気持ち、ぃっ……!」
「ん……。私も、チュウチュウ吸いつかれて気持ちがいいよ」
 性的に刺激されてビクンビクン大きく体を揺らす。喉を逸らして大きく喘ぎ、髪を振り乱してかぶりを振った。もうイッてしまいたいのだけれど、いつの間にか僕のペニスに絡みついたダグラスの指が根元を押えていて出そうにも出せない。イク寸前の快感の高みから下りられず、思考がどんどん霞んでいく。
「やらぁ! 意地悪、しない、で! あんっ、ぅ、イ、イキ、たい! も、無理ぃ!」
「分かった……。ラストスパート、行こうか」
 口ではそんな優しい事を言えども、腰を押さえつける手もペニスを塞き止める指も離れていかない。チラリとダグラスの顔を見上げる。そこには、ギラついた肉食獣の目をした雄の顔で僕を貪る美丈夫が居た。そんなのを見てしまったら、どれだけ自分が求められているか否が応でも思い知らされてしまって、恥ずかしさからセーブしていた頭の中のストッパーのようなものが緩んでしまう。腰を押え付けるダグラスの手に自分の手を重ね、甘えた目つきでその藍色の瞳を見上げた。
「も、奥……来て……!」
「っ! 優しくしたいんだから、煽らないでよ……」
 焦れた顔でそう言うとダグラスは手早く体を動かして僕の両足を抱え込み、腰ごと持ち上げるようにしてニチニチとペニスを僕の体内へと進め始める。前立腺を擦られるのは勿論、割開かれるのも、圧迫されるのも、全部が気持ちがいい。堪らず僕は背中がシーツから浮く程体をしならせた。正常位にしたお陰でさっきよりダグラスの距離が近い。更に言えばダグラスが腰を進めれば進めるだけ体が密着して距離が縮まる。両足を抱え直してから再度僕のペニスの根元を堰き止めているダグラスの手を強く掴むと、肌は熱く汗で湿っていて相手の興奮が如実に伝わるようだった。やがて、近くなったダグラスとの距離がもう直ぐキスできそうなくらいにまでなった頃。トン、と僕の尻にダグラスの腰が当たった。
「はー……、全部入った……。凄っ。熱くてトロトロなのに、絡みつくみたいにして締め付けてくる……。最高……」
「う、ふ……。くぅ……」
「アハ、トーリ君目がトロンとしちゃってるね」
 あ、カッコいいダグラスの顔が、目の前に。僕の事が愛しくって堪らないって目がこちらに向けられている。目の前の光景に興奮した僕は思わずキュンッと後ろを締め付けてしまって、ただでさえ大きなダグラスのペニスが腸壁に食い込んだ。それがお互いに気持ちよかったらしく、ダグラスは低く唸り僕は喉を逸らして甘く蕩けた嬌声を上げる事となった。
「あー、もう無理。限界。動いていい?」
「ん……」
 ポワポワしながらもその先が待ち遠しくてコクリと頷けば、ダグラスは静かに抽挿を開始する。壊さないよう慎重に、労りながらも情熱的に。ダグラスのペニスが僕の中をグチュグチュ掻き回す。前立腺を、腸壁を、最奥を、ダグラスのペニスで優しく暴かれた。
「は、うぅ……! あっ、そこ、そこ好きぃ! 奥、トント、ン、されて、あっ、はぁ、あぁ……!」
 ダグラスの腰の動きはだんだん激しくなっていって、今ではジュポジュポと音を立て泡が立ちそうな程だ。いやらしい水音に気分が煽られる。前立腺を虐められるのだけでなく、ダグラスの長いペニスで奥をノックされるのも気持ちがいい。こんな事からも快感が生まれるなんて、今まで知らなかった。ペニスの根元を押えられたままあちこち嬲られるもんだからもう堪らない。限界なんて、とっくの昔に超えていた。
「トーリ君。中出し、していい?」
「ん、いいよ、来て? は、っ、……ダ、ダグラス、の、全部欲しぃ……!」
「ああ、中に注ぐから、全部飲んでね」
 僕のペニスから手が離れていき、両手で腰を強く掴まれる。大きくズルリと体内からペニスが引き抜かれ、その喪失感に背筋を震わせる間もなく間髪入れずにゴチュン! とダグラスは叩きつけるようにして強くペニスを突き入れた。カハ、と衝撃と快感に目を見開いた僕だったがそんなのまだまだ序の口で、ダグラスはその激しい抽挿を何度も繰り返す。強い力で翻弄されているけれど決して乱暴ではなくて、揺さぶられる度に新しい快感が振り積もっていった。ああ、もう。死んじゃいそうなくらい気持ちいい……。
「ハァ、トーリ君……トーリ……。好き。大好き。愛してる……」
「ぼ、僕……も……! あっ、愛して、る、っ、んぅ、ダグ、ラス……! ぁ……!」
 目の前に来たダグラスの太い首に腕を回し、引き寄せる。ダグラスも黙って僕の動きに従った。ダグラスは体が熔けそうなくらい熱が籠った目付きで、僕の目を真っ直ぐに見る。その事にキュンキュンしてしまってつい誘うように唇を寄せれば、向こうから噛み付くようにしてキスをされた。ダグラスが必死に腰を振りたくり、僕は夢中になって舌を絡め溢れる唾液を啜る。ダグラスのペニスが一際大きく膨れ上がり、興奮した僕は後ろを締め付け、そして。
「んんぅ~~~──!」
「クッ──!」
 腰が砕けるような甘い衝撃。切ない騒めきが全身を駆け巡って苛んだ。力が入ってピンッと伸ばした足がガクガクと揺れる。絶頂時の叫びは丸ごとダグラスに食べられた。過ぎた快感で目の前が一瞬白くなる。僕の吐き出した精液がビシャビシャと二人の腹を汚した。そして、同時に体の奥で受け止めた熱い迸り。ダグラスもほぼ同時にイッて、中出しされたのだ。その事実に多幸感が溢れ、トロリと心臓が溶けていく。
「ハア、ハァ……フー……。トーリ君、体はどう?」
「感じ過ぎて……足閉じれない……」
「あー……。初めてだもんね、慣れてないからしょうがないよ。今日はもうこれくらいにしとこうか」
「……もうちょっとだけ、駄目?」
「トーリ君、無理したら後が大変だよ」
「無理じゃない。もっとダグラスの事、感じていたいんだ」
「……ちょっとだけだよ?」
「ん、ちょっとだけ」
 してやったり、と笑う僕の唇にダグラスの唇が重なる。挿入されたままだったダグラスのペニスが少しずつ固さを取り戻していく。僕のぺニスも、ヨダレを垂らしながら半勃ちになっていた。ダグラスの手が今度は僕の乳首に伸びて、そこを優しく摘んだ。そこから生まれる快感に身を任せながら、幸せを噛み締めダグラスの首に回した腕をさらに引き寄せる僕なのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

好きだと伝えたい!!

えの
BL
俺には大好きな人がいる!毎日「好き」と告白してるのに、全然相手にしてもらえない!!でも、気にしない。最初からこの恋が実るとは思ってない。せめて別れが来るその日まで…。好きだと伝えたい。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

愛がなければ生きていけない

ニノ
BL
 巻き込まれて異世界に召喚された僕には、この世界のどこにも居場所がなかった。  唯一手を差しのべてくれた優しい人にすら今では他に愛する人がいる。  何故、元の世界に帰るチャンスをふいにしてしまったんだろう……今ではそのことをとても後悔している。 ※ムーンライトさんでも投稿しています。

本日のディナーは勇者さんです。

木樫
BL
〈12/8 完結〉 純情ツンデレ溺愛魔王✕素直な鈍感天然勇者で、魔王に負けたら飼われた話。  【あらすじ】  異世界に強制召喚され酷使される日々に辟易していた社畜勇者の勝流は、魔王を殺ってこいと城を追い出され、単身、魔王城へ乗り込んだ……が、あっさり敗北。  死を覚悟した勝流が目を覚ますと、鉄の檻に閉じ込められ、やたら豪奢なベッドに檻ごとのせられていた。 「なにも怪我人檻に入れるこたねぇだろ!? うっかり最終形態になっちまった俺が悪いんだ……ッ!」 「いけません魔王様! 勇者というのは魔物をサーチアンドデストロイするデンジャラスバーサーカーなんです! 噛みつかれたらどうするのですか!」 「か、噛むのか!?」 ※ただいまレイアウト修正中!  途中からレイアウトが変わっていて読みにくいかもしれません。申し訳ねぇ。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

処理中です...