トーリの幸せ家族計画

我利我利亡者

文字の大きさ
上 下
6 / 17

6

しおりを挟む
 酒場から真っ直ぐ家に帰った僕は、直ぐに簡単な寝支度を済ませ潜り込んだベッドの中でもう何度目か分からない寝返りを打っていた。……寝れない。全く。全然。これっぽっちも。寝られる気配すら一切ない。寝られない原因は分かっている。気になっている事があるからだ。ダグラスと、彼に対してさっき僕が取ってしまった態度についてだ。
 さっきの僕の、ダグラスに対するあの態度。頭を冷やしてある程度冷静になった今だからこそ思う。ちょっとあれはないんじゃないの? と。
 確かにダグラスの事はあまり好きではない。研究の邪魔ばっかしてきたし、周囲から愛されて育った奴特有の無神経な事を言いやがるからだ。環境に恵まれ、親に大切にされ、いつも人に囲まれニコニコしているのも身勝手な事ながら気に入らない。……認めよう、これは僕の僻みだ。だって全部、どれだけ欲しがっても僕には一つも与えられなかったものなんだもん。理不尽と頭では理解していても、妬み嫉みは理屈じゃないので止められない。ダグラスが良い奴なのだと理解はすれど、気持ちの整理はできていなかった。
 でも、話をされて改めて自分が勘違いしていた部分もあったのだと思う。例えば、女性の事。周辺に女性の影がチラつく度に、一人も余す事なく先んじてダグラスが接触し結果彼女達の眼中に僕がなくなってしまったのは、正直とても悲しかった。けれど、それも僕に色仕掛けして情報やらお金やら色んな利益を引き出すのが目的の人達から僕の事を守ろうとした結果なのだろうと知れれば、怒りはスッと引いていく。きっと僕の知らない内に、本当に害悪になるような人達は視界に入る事もなく弾かれていたのだろう。僕の所まで辿り着けた女性達までもがチェックの過程で軒並みダグラスに惚れてしまったのは……。まあ、奴のスペックを考えれば仕方がない事なのかもしれない。あんな奴と比べたら、僕含め世の中の男全員見劣りしてしまうだろうから。
 行く先全部に都合が着く限り付き纏っていたのも、忙しい筈の奴なりに僕の事を守ろうとしての事だったのだろう。国の為とはいえ人任せにせず忙しい仕事の合間を縫ってできる限りダグラス自身が僕の事を守ってくれたのも、奴の誠実さや責任感の強さの現れなのだと思えば納得が行く。当事者の僕には話してくれても良かったのに、と思わないでもないが、変に気負わせないようにと気を使われたのかもしれなかった。知らず知らずのうちに、僕はとても大切にされていたようだ。それに気がつこうともせず、僕はダグラスの事を嫌って、その態度を隠しもせず……。情けなくて溜息しか出ない。
 こうして一人ヌクヌクと布団に包まっていると、自分の情けなさが益々際立つ。きっと今も、ダグラスは今日の騒ぎの後処理をしてくれているに違いない。それだと言うのに僕はなんだ? そんな奴を置いてサッサと家に帰り、嫌な事は寝て忘れようとグダグダしている。あんまりにもダメ過ぎるだろ。そりゃこんな蛆虫なんかより、ダグラスの方がモテる訳だ。世の中の女性皆見る目があるんだなぁ。
 ……よし、決めた。ダグラスに今までの事を謝ろう。善は急げで、今直ぐにでも。元々こうと決めたら即行動に起こして達成しないと気が済まない頑固な性格だ。だからこそ男性妊娠の魔法を開発しようなんて突拍子もない事を思いついて実行に移したんだし。思いついた今の勢いを逃せば、きっとどんどん言い辛くなってタイミングを逃してしまう。それなら、サッサと謝罪して心配事をなくしてしまうのが一番だ。覚悟を決めると早速僕は入ったばかりの寝床から飛び出して、外出できる服装に着替えようとクローゼットの扉を開けるのだった。





 そして、ベッドを出てから小一時間後。僕は家の外に居た護衛の人に殿下の所へ連れてってくださいとお願いして、先程の酒場に蜻蛉返りしていた。どうやらダグラスは予想通り、後始末で店に居残っているらしい。僕はと言えば、今は店の前に立ち止まって入口の扉をジッと見つめている最中。何してんだよ、サッサと中入れば? そう言われても仕方がないのは百も承知だが、僕はこの店に戻ってきた事を只今絶賛後悔中でそれどころじゃなかった。
 何故後悔しているんだ。自分の意思でダグラスに謝ろうと戻ってきたんだろう? その疑問も御尤も。だが、護衛の人間に案内されてここに戻ってくるまでの道中、僕はこう考えたんだ。ひょっとして僕がこれからしようとしている事は、くだらない自己満足なのではないのか? って。
 だってそうだろ。僕が今までの自分の言動を反省してダグラスに謝ったってなんになる。優しいあいつはなんの躊躇いもなく僕の謝罪を受けいれ、仲直りをしようとでも言ってくれるだろう。でも、ゴメンで済んだら警察は要らない。今どき子供相手にだって最後に謝れば何したっていいなんて理屈は通らないのに、あれだけ酷い態度をとった僕がダグラスに謝ってそれを受け入れるのを強要するなんて、虫が良過ぎる話だ。もし万が一にでもダグラスが腹に据えかねているのにこっちが勝手に謝ってスッキリして、向こうは謝られたからには許せないだなんて大人気ない事言い出せもせず受け入れざるを得なかった、なんて事になったら本末転倒ではないか。
 ここまで来たけど、やっぱり帰ってしまおうか。幸か不幸か着替えの最中に怖気出し始めたので、いつでも何事もなかったかのように尻尾を巻いて逃げられるよう、護衛の人が出そうとした先触れは断っている。店内を中心に起こった一連の騒動を騒ぎにしないように取り計らったのか、外に立っている捜査機関の人間も特に居ない。それはつまり、今ここに僕がいるのを知っているのは着いてきてくれた護衛の人だけという事になる。その人に頼んで口を噤んでもらいさえすれば、全てはなかった事になるのだ。
 心情としてはこのままここで踵を返してスゴスゴ家に逃げ帰り、何事もなかったかのように過ごしたい。でも、やっぱりダグラスに謝罪したいし……。けど、それも僕の自己満足になってしまったら……。思考が無駄にグルグルと同じ所を回る。帰ろうか、帰るまいか。どちらにも決め難く決心が付けられずにいたら……。突然、ガチャリと酒場の扉が開いた。
「っ、あなたは……」
「こんばんは、バークレー様。お待ちしておりましたよ」
 扉の裏からヒョッコリ顔を出したのは、ダグラスの傍にいつも控えている奴の側近……確か名前はジェラルドと言ったっけ。聞いた話ではダグラスの乳兄弟でもあり、プライベートでは友人付き合いもしている仲らしい。というか、お待ちしてました、って。僕の来訪を知っていた? 護衛の人が知らせたのかな? 止めてくれって頼んだのに。まあ、護衛の任務を与えられたからには、僕の居場所を上司に伝える義務があるだろうから、文句言っても仕方がないか。
「あの、僕」
「申し訳ございません。お話を伺いたいのは山々なんですが、ただ今少々立て込んでおりまして。取り敢えず、お伝えしたい事がありますので中へどうぞ」
 柔かい物腰でそれだけ言うとジェラルドはさあお早く、と扉を抑えて僕に中に入るように促す。忙しいって、後始末がまだ終わってないんじゃ……。それならまた都合のいい時にこっちから伺うから無理に今時間を作らなくてもいいのに。ああ、またここから逃げ出す理由を探してる。こんなんだから駄目なんだよな。それに、話があるって言ってたし、それが急ぎで伝えたい話なのかもしれない。
 けど、話ってなんだろう。とうとう愛想を尽かされて、もう僕の面倒は見られないから後は他の人間に引き継ぐよ、とでも言われるのかな? 完全なる自業自得でしかないのに、その考えに思い浮かべただけで僕は酷くショックを受けている自分に気がついた。あれだけ酷い態度を取ったんだ。今更何をやったって取り返しが着く事じゃないんだろう。こんな事なら、さっき涙を拭おうとしてくれた手を感情に任せて拒むんじゃなかった。キュッと拳を握って悲しみを堪えつつ、ジェラルドに促されるまま店内に入った。
 パッと見、店内には僕とジェラルド以外に人は居ない。一般人の客はあの後直ぐ返されたとしても、てっきりその後は捜査員が何人か居座っていると思っていたのに。意外な程に店内は静かで閑散としている。ポカンと立ち尽くす僕を置いて、ジェラルドは今はバーテンダーも居ないカウンターの中に入って、酒の瓶をゴソゴソと弄っていた。そしてボトルを何本か見繕うとそれを盆に乗せて携えながら、僕の方を向く。
「あの、僕……」
「大丈夫。伝令は私のところで止めておきましたから殿下にはバークレー様がいらしてる事は伝わっていませんよ」
 え、それってどういう……。僕も僕の疑問も置き去りにして、ジェラルドは店の奥をめざして歩き出す。訳が分からなかったがここに置いていかれてもどうしようもないので、大人しく着いていく。
 店の奥にあった扉を開けて中に入ると、その先には細い通路があって何枚かの扉が並んでいた。どうやら個室が用意されているらしい。成程、表のカウンターやボックス席以外にも、こういった特別な席があるのか。初めての店だしこういう雰囲気の酒場には来た事がなかったので分からなかった。ジェラルドはスタスタと一番奥の扉の前まで行って僕が追いつくのを待っている。僕が慌てて彼の隣に行くと、シーッと唇の前で指を立てて静かにするようジェスチャーをしてきた。
「ここで気づかれないようにお待ちください。防音魔法は解除して逆に室内の会話が聞こえるように伝達魔法をかけておきますから、この位置なら中の話がよく聞こえる筈です。……殿下はお怒りになるかもしれませんが、もういい加減これ以上放っておくと拗れまくって大変な事になりそうなので、僭越ながら手を貸させて頂きます」
 そう言ってニッコリ僕に笑いかけたジェラルド。ジェラルドの言った意味が分からなくて混乱する僕だったが、聞き返す前に彼は部屋の扉をノックして失礼しますと中に入って行ってしまう。後の通路には僕だけが一人ポツンと残された。どうしようかとソワソワしていたら、部屋の中から大きな溜息が聞こえてくる。これはジェラルドのものだ。思わず息を潜めると、より一層中の音が聞こえやすくなる。
「一応追加の酒持ってきてやったけど……。本当にまだ飲むのか?」
「当たり前だ。このままこの店の酒を飲み尽くすまで飲んでやる」
 この声。姿を見なくても分かる。ダグラスだ。だが、どうにも様子がおかしい。ダグラスはいつどんな時も清涼な風のように爽やかな声音で話す奴なのに、今聞いた奴の声はやけにやさぐれていた。言い方も何だか乱暴に荒んでいて僕の知るいつものダグラスらしくない。どうしたんだろうか?
「ダグラス……。お前もういい加減決心つけろって。キッパリ諦めて自由にしてやるか、思い切って告白してみるかしない限り、このままだと同じ事の繰り返しだと思うぞ」
「諦められる訳ないだろ! 初恋だぞ!? 告白だって、今したって絶対好感度低いからフラれるだけじゃないか!」
「ならどうするんだよ。どんどん嫌われてく一方で現状維持もできてないってのに、変に縋り付くとまた嫌な顔されるんじゃないか?」
「うぅ……。それくらい私だって分かってるさ……」
 え、何これ。ダグラスの恋バナ? 待って、これ僕が聞いていいの? 駄目じゃない? かなりプライベートな話だ。盗み聞きしちゃいかんだろう。絶対ジェラルドが僕に聞かせたいのはこんな話ではない筈。ジェラルド、お願いだから早く軌道修正してくれー。そう、思っていたのだが。
「ぐすんっ、トーリ君……。どうしたら君は私の事を好きになってくれるんだ……。いっそ付き合いたいなんて我儘言わないから、せめて普通の友達くらいには仲良くなりたい……」
 ……は? ダグラス、今なんて言った? なんか、僕の名前を呼んでからどうしたら好きになってくれるんだとかいってたようなきがするんだけど……。いやいや待て待て、有り得ないって! だって、僕ダグラスに嫌われこそすれ、好かれる訳がないじゃん! あんなに酷い態度を取ったんだ。そんな訳……ない……よね……?
「そもそも初手から間違えてたんだよ。折角パトロンになったんだから、研究を応援してやればよかったんだ」
「だって、あんなに体を酷使してボロボロになってまで研究を続けるもんだから、今にも彼が死にそうに思えてとてもじゃないが応援できなかったんだ。それで、無理だとか失敗するだとか言ってなんとか研究を中止する方に誘導しようとしたら、滅茶苦茶嫌われちゃった……。しかも彼、私が想定してたより優秀で研究を成功させたから私は研究の邪魔だけしまくって成功したらしたで利益目当てで擦り寄ってる奴みたいになっちゃったし……。本当は、トーリ君の傍に居たいだけなのに! 研究資金に困ったトーリ君が臓器売買とか売春に手を出さないように、研究のパトロンをしてたお陰で今も傍に居させてもらえてるけど、あれがなかったらきっと顔だって見せて貰えてなかった」
「バークレー様、文字通り研究に命懸けてたもんな。なんだっけ。お前が自分に目を向けてもらいたい一心で、結婚や子供、家庭なんかから目を逸らさせようと『結婚や子供が幸せの全てじゃない』みたいな事言ったらブチギレられたんだっけ」
「本当は『現行法では同性婚は無理だから正式な結婚はできないし、現状血の繋がった子供も持てないけど、いくらでも暖かい家庭を作れるよう努力をするから、私と一緒になって欲しい。結婚や子供以外の幸せを私が君に教えたい』って言うつもりだったんだ。でも、照れたのと欲が出たのとでパニクって焦りのあまり簡潔に言ったらそれが変な風に伝わっちゃったんだよ……。それで本格的に嫌われた。あー、私に意気地がないせいで……」
 何だよそれ。ていうことは、ダグラスがあんなにも必死になって執拗く研究を止めるようにいってきてたのも、心底ムカつくあの言葉も、全部僕の為を思っての事だったのか? とてもじゃないが信じられない。けど、今この状況でダグラスが嘘をつく必要性は全くないし、それはつまり今の言葉が全部奴の本心からのものなのだという事で……。
「まあでも、現状お前のやってる事ただのストーカーだからな? 好きな相手だからって仕事の合間で割ける時間は全部バークレー様の近くに居る事に費やしてるだろ? んで、あの人に近づく女性全員にちょっかいかけて自分に惚れさせて婚活邪魔して……。改めて言葉にしてみるとかなりヤバイな」
「だって、女ってだけでトーリ君の恋愛対象になれて堂々とアプローチできるのが羨ましいやら妬ましいやらで……。トーリ君、異性愛者だから同性の私の事なんか端から眼中にないんだ。彼の中に男と付き合うっていう選択肢が存在しないから、私は意識すらして貰えないんだよ。よしんばトーリ君が誰かと付き合うとしても、身辺調査に近づいただけで私に惚れるような尻軽とはくっついて欲しくない」
「いや、それを決めるのはバークレー様だから。他人のお前が頼まれてもいないのに勝手にあの人の選択肢狭めちゃ駄目だろう。案の定それで女性を横取りしてるって益々嫌われてるし。あれこれ裏で手を回して婚活パーティー出禁にさせてるしさ。そんな事に大公家の権力使ってるなんてバレたら、お父上の大公殿下や叔父である陛下にどんな目で見られるか。この前のトリケット夫人のパーティーの件だって、権力のあるお前の命令と名誉ある賞を受賞したバークレー様の懇願との板挟みになって夫人はかなり困ったらしいじゃないか。しかも、お前の方の命令に正当性が感じられないからって、正しさを優先した夫人に命令無視されかけるし。やっぱり他から見てもおかしく思われてるんだって。挙句女遊びが激しいなんて噂まで立ち始めるしさ……もう潮時なんだって」
 ダグラスの女遊びが激しい理由僕かよ! なんというか、あのオーリツァー賞の授賞式とバッティングしたトリケット夫人主催の婚活パーティーに、そんな裏話があったとは。ていうか、婚活パーティー軒並み出禁になり続けてるのダグラスが圧かけてたからだって!? 何それ酷い! 僕は必死に婚活してたのに! けど……。これはそれだけダグラスが僕に夢中だという事だ。恥も外聞もかなぐり捨て、形振り構っていられない程に。そう考えると、不思議と腹は立ってこない。むしろなんだか心臓の辺りがポヤポヤする感じがする。この気持ちは……。
「もういっそ真実含め気持ちを告白して今までの事全部謝ったらどうだ? その方が上手くいく事があるかもよ?」
「告白なんてできるわけないし上手くいくわけもない……。今の好感度で告白したって、確定で嫌な顔されて罵られるじゃんか。そんな事になってショック死しない自信がないよ。本当に、ずっとずっとずっと……ずぅっと好きだったんだ。恋するのなんて初めてだから、諦め方も分かんないし、諦めたいとも思えないんだよ……」
「そうか……。でも、もうしちゃったから問題ないよな?」
「え?」
 パチン、と指を鳴らしたような音がした。すると突然、皮膚の表面にピリピリと魔法に触れた時特有の感覚のようなものが走る。それと同時にグイッと体が引っ張られ、ひとりでに開いた個室の扉の向こう側へと僕は吸い込まれた。どうやら魔法で部屋の中へ移動させられたようだ。驚いて目をパチクリさせている僕の前で、酒が入っているらしいグラスを片手に真っ赤に泣き濡れた瞳をしたダグラスがアングリと口を開けている。ジェラルドさんは澄まし顔でその様子を見ていた。
「な、な……なんで……トーリ君がここに……!? ていうか、今までの全部、聞かれ……!?」
「丁度こちらにいらっしゃるって事だったから、ついでにいつまで経ってもウジウジしてて行動を起こせない腑抜けの話を聞いて貰ったんだ。いい機会だから話し合えよ」
「ジェラルド、お前裏切ったな……!」
「今まで大人しく恋バナという名のストーカーの独白を聞いてやっただけで十分主従の義理は果たしただろ。これ以上はもう勘弁。堂々巡りでいい加減気が狂う。後は当人同士でやってくれ。親切な親友兼主人思いの従者を持ってよかったな、殿下」
 そう言うとジェラルドは手をヒラヒラ振って退出の挨拶代わりとし、僕の横をすり抜けるようにして部屋を退出する。パタン、と背後で扉の閉まる気配がした。個室内に残されたのは、僕とダグラス、あと大量の酒瓶。突然訪れたこの状況に、僕はただただ呆然とするしかなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」 「恩? 私と君は初対面だったはず」 「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」 「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」 奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。 彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?

メランコリック・ハートビート

おしゃべりマドレーヌ
BL
【幼い頃から一途に受けを好きな騎士団団長】×【頭が良すぎて周りに嫌われてる第二王子】 ------------------------------------------------------ 『王様、それでは、褒章として、我が伴侶にエレノア様をください!』 あの男が、アベルが、そんな事を言わなければ、エレノアは生涯ひとりで過ごすつもりだったのだ。誰にも迷惑をかけずに、ちゃんとわきまえて暮らすつもりだったのに。 ------------------------------------------------------- 第二王子のエレノアは、アベルという騎士団団長と結婚する。そもそもアベルが戦で武功をあげた褒賞として、エレノアが欲しいと言ったせいなのだが、結婚してから一年。二人の間に身体の関係は無い。 幼いころからお互いを知っている二人がゆっくりと、両想いになる話。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【BL】こんな恋、したくなかった

のらねことすていぬ
BL
【貴族×貴族。明るい人気者×暗め引っ込み思案。】  人付き合いの苦手なルース(受け)は、貴族学校に居た頃からずっと人気者のギルバート(攻め)に恋をしていた。だけど彼はきらきらと輝く人気者で、この恋心はそっと己の中で葬り去るつもりだった。  ある日、彼が成り上がりの令嬢に恋をしていると聞く。苦しい気持ちを抑えつつ、二人の恋を応援しようとするルースだが……。 ※ご都合主義、ハッピーエンド

【完結】オーロラ魔法士と第3王子

N2O
BL
全16話 ※2022.2.18 完結しました。ありがとうございました。 ※2023.11.18 文章を整えました。 辺境伯爵家次男のリーシュ・ギデオン(16)が、突然第3王子のラファド・ミファエル(18)の専属魔法士に任命された。 「なんで、僕?」 一人狼第3王子×黒髪美人魔法士 設定はふんわりです。 小説を書くのは初めてなので、何卒ご容赦ください。 嫌な人が出てこない、ふわふわハッピーエンドを書きたくて始めました。 感想聞かせていただけると大変嬉しいです。 表紙絵 ⇨ キラクニ 様 X(@kirakunibl)

急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。

石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。 雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。 一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。 ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。 その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。 愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。

不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター
BL
 ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。 自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。 ――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。  そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように―― 「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」 「無理。邪魔」 「ガーン!」  とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。 「……その子、生きてるっすか?」 「……ああ」 ◆◆◆ 溺愛攻め  × 明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...