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高橋 遊

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入学式当日その8

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はあー。
オルフェ様と会ってしまった…。
ノエルの出会いイベントとは全然違う場所で。
アリアとオルフェ様の出会いイベントもノエルと同じだから、あの場所ではないのよね。

ゲームみたいな選択肢もあったし。
今までミハイル様とカナト様と出会ったときは選択肢はなかったと思うけど。
というか、ゲームみたいに選択肢出てくるのね。
どこまでゲームと同じなのかしら。
もうゲームではなく、ゲームと似た世界と思ったほうがいいの?

いろいろ考えながら講堂への道を皆で歩いていく。さっきオルフェ様と話していたカフェテリアが見える。
正確には廊下とカフェテリアの境目付近で立ち話していたんだけれど。
まだ、オルフェ様はあの辺りにいらっしゃるのかしら。

講堂の入り口には、三十センチメートルくらいの白い服を着た小さい子供に羽の生えたような妖精たちが見える。花をまいたり光などまとったりして飛び交っていて、講堂の中でも元気に飛び回っているようだ。さっきまでは見えなかったんだけど、講堂のこのあたりに集中していたのかしら。妖精のいる場所に自分が行けば、会うこと自体は珍しくないのよね。

「なあ!俺の財布知らないか!?」
「ええ?ライル様、財布どこやったんだよ。」
…あ!ライル様の出会いイベント!財布を拾って届けるのよね。
私、講堂に着いてしまったわ!ゲームではノエルが講堂に着く前に、見つけた財布を先生に届けるのに!
どうしよう、ライル様、困っているようだし…。

・財布を探しに行く
・通った道を探すように伝える
・きっとなんとかなるでしょう

選択肢が現れたけど。何、このきっとなんとかなるでしょうって。探しに行かないってことかしら。ライル様がなんとかできるでしょうって?まあ、ライル様は推しだったけど、女神様に私は違うってダメ出しされてオルフェ様にするようにって言われたけれど。困っているときにそれとこれとは違うんじゃないかしら。

探しに行ってみましょう。

「ノエル様?どうしたの?」
アリアちゃんが声をかけてくる。
「ちょっと忘れ物をしたの。とってくるわ。」
「一緒に行こうか?」
え、それは…。
「いいえ、大丈夫よ。」
とっさに断ってしまった。
「そう、気をつけてねー!」
そんなに大きな声で言わないでー!

でも、探し物なら人数がいたほうがよかったのに、なぜ私は断ってしまったのかしら。
講堂に来るまでに通った道を引き返していく。講堂は大きな建物にあるが、教室のある校舎までは外を通る。一応砂というか土で整備された道で、花壇があったり茂みがあったり。ゲームでやっていたときはどこで見つけたのかしら。茂みがどうとかだったような?VRとか3Dとかのゲームじゃなく、このゲームは2Dのゲームだったのよね。

何が言いたいかというと、校舎や講堂など学校全体の場所がテレビ画面にある状態で「あら?茂みに財布が落ちているわ」ってノエルが言っていたのだ。財布のあった場所のヒントは、教室から講堂に移動する間の茂みってことだけ。

「えーと、花壇ではないのよね?そうしたら、茂みのあるところだけ探せばいいかしら?」
とはいえ、入学式がある講堂に向かってくるたくさんの生徒とすれ違っている。私、探し物なんてしたら目立ってしまうわ。いったん校舎に行ってから、講堂に行くときに探せば目立たないかも?そう思い歩き始めたけど…。

「あ、ライル様は騎士科なのよね。」
そう、騎士科は教養科である私とは校舎が違う。ということは。
「騎士科の人たちが通る道と、教養科の人たちが通る道の共通している部分を探せばいいわね!」

よし!そうと決まれば…!
騎士科があるのは教養科の南西だから…。

「騎士科の校舎から講堂までの道としては、騎士科の校舎を出てカフェテリアの脇を通って教養科の校舎の後ろを半分ほど通って教会の脇を少し通って講堂に到着ってところね。教養科は、教養科の校舎の正面と食堂と薬学科と魔法科の校舎や図書館と教会を通るのよね。だから、騎士科とは反対方面。騎士科と教養科が同じ道なのは…教会の横から講堂までの間くらいかしら。だいぶ範囲が狭まったわ!」

教養科の校舎には、カフェテリアが隣接していて、校舎の反対側には食堂も隣接している。だから、騎士科の校舎からはカフェテリアが近く、魔法科と薬学かからは食堂が近い。もちろん教養科はどっちも近くて便利。講堂は教養科の校舎とカフェテリアのほぼ後ろ。講堂と小さい教会とその隣の図書館で、だいたい教養科の校舎とカフェテリアと食堂とで面積が同じくらいかしら?

さて、教養科と騎士科が校舎からきたときに合流する地点はこのあたりかしら。小さい教会が右側にあって、その反対側に講堂が見える。このあたりから講堂に向かって…あれ?合流地点からほぼ動いていないけれど、騎士科の人が通る講堂横の茂みに妙なものを見つけた。茂みの真ん中より少し上に、何か茶色いものが埋まっている。はまっているというか。えーと、これかしら?教養科の人は講堂に行くまでは通らない道だだけど、通り道からは見える。そして、一人(?)の妖精さんがそれをのぞき込んでいる。

「妖精さん、それは落とし物じゃないかしら?」
妖精さんに声をかけてみる。私、妖精さんと話したことはないのよね。ゲームでも妖精さんは登場して力を貸してくれるけれど、話しはしていない。目の前の妖精さんは、ただこちらを見ている。

「落とした人が困っていると思うから、先生に届けたいの。取り出してもいいかしら?」
少しこちらを見たあと、コクリとうなづいてくれた。

「ありがとう。」
私は笑顔でお礼を言って、茂みにはまるように埋まっている財布を傷つけないように慎重に取り出した。

「さて、講堂で先生に渡しましょう。」
妖精さんが、またコクリとうなづき、講堂のほうに少し飛んで、こちらを見た。

「え、案内してくれるのかしら?」
また、コクリとうなづかれる。そして妖精さんは飛んで行って、またこちらをみている。

「あ、はい、行きます!」
妖精さんにせかされながら私は早足でついていった。
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