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高橋 遊

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夢で女神様と(その1)

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※少しシリアスです。
彼女の場合ですので、なるべく客観的にお読みください。






「……起きなさい」

優しいけれど有無を言わさないような女性の声に、ぼんやりとしながら目を開けた。

「う、まぶしい!?」

声をかけてきた人を見ようとしたけれど、なぜか彼女は白っぽく強く光っていて、よく見えない。

「ずいぶん悩んでいたようだか
ら、教えてあげる。」

え、何?
何の話?

「あなたは転生したのよ。」

その女性(?)はとんでもないことを言ってきた。
驚いて、私は横になっていた状態から飛び起きた。

「え、なんで!うっ!まぶしいー!じゃなくて!転移じゃなくて!?死んでノエルになったってこと?」

勢い込んで女性(?)に近づこうとしたが、あまりのまぶしさに目がチカチカした。
女性(?)のいる場所より手前辺りに目線を移しながら何とか聞いた。

「そうよ。」

「え、なんで…。」

「違う。オルフェの行動に混乱して悶えて死んだわけではないわ」

「うわ!考えてたのそれ!え、じゃあ一体なぜ?」

「あなた、転んで亡くなったのよ。」

転んで?
思い出そうとするけど分からない。

「アルコールの飲み過ぎよ。」

え?
何ですって?
いまいち理解できずに、思わず黙ってしまう。

「アルコールの飲み過ぎよ。」

さっきと全く同じトーンのお声で言われた。

「急性アルコール中毒ってこと?」

なんでそんなことで?
………思い出した!

居酒屋で女友達……あれ、名前が出てこないな。
普段は私はビールをよく飲んでいた。
だけど、友達である彼女と一緒に盛り上がってて、いつもは飲まない日本酒やらウイスキーも飲んでたんだよね。
お酒の種類が豊富なお店だったから色々試してみたくって。

「意識をなくして頭や肩などを強く打ったのよ。」

「えっ、マジですか!」

「ええ。」

「えー!友達に迷惑かけてるじゃないですかー!一緒にいてそれってー!」

「終わったことだからもう仕方ないわ。」

「ええええー!そういうわけにはー!」

「転んだのは自宅に着いてからだし、一緒にはいなかったわ。」

「あ、じゃあ自分のせいだわ。ビックリした。ビックリしたよおぉー。」

安心したら泣けてきた。
それに、自宅に帰った後とはいえ、友達にも色々と迷惑はかけてしまうだろう。
申し訳ないやら悲しいやら情けないやら、なんともいえない複雑な気分が混ざってる。

でも、そっかー。
もう亡くなってたんだな。
それでノエルちゃんにまでなっちゃって……。

「あ、あれ?そういえば、あなたはどちら様ですか?女神様?」

まだ出てしまう涙を手でぬぐって聞いてみた。

「人はそう呼んでいるわね。」

「あ、そうなんですね。女神様、教えてくれてありがとうございました。」

自称「女神様」に、深々と頭を下げた。

小説やマンガで、異世界転生や異世界転移の設定のときの定番で。
女神様や神様だとか偉い方が、何かお話ししてくれるって展開がよくあるから。
だから、目の前に「女神様」がいても違和感はなかった。

「ええ、自分のせいだから。オルフェのせいにしないでね。」

「へ?……い、いきなりじゃありません?そこが言いたかったんですか?でも、なんでオルフェ様の告白シーンが……。」

下げた頭は勢いよく元に戻した。
驚いて涙も引っ込みそうだ。
あの告白シーンはなんだったのか。ゲームして寝落ちでもしてる間にこっちの世界に来たと思ってたのに。違うなら……。

「夢で見たのよ。ノエルが夢で【あなた】だったときのことを見たの。」

「あ、夢だったんですね。前世の夢ってやつかな。そんなの見たりするんですね。…ノエルちゃん、あんな前世の夢でいいの?」

ここにはいないのにノエルちゃんに聞くように問いかけた。

「そして、【あなた】の意識が起きた。」

「……ん?【あなた】っていうのは」

「ノエルではない、ノエルの前世の【あなた】よ」

「う、今の私ですね。え、夢であれを見たら私が起きた?」

想像してみる。
……うん、衝撃だよね。
男女の告白シーンでなんか心の中で叫んでる外野がいてそれ全部分かっているって。

「あっ!?しかも、ノエルちゃんでプレイしてるときだし!うわあ、怖いよこれ。本当に自分が告白されてるシーンの夢じゃない!」

そしてなんだかうるさい(私の)声が聞こえてる。

「そうね」

「こ、これは意識飛ぶかも。ノエルちゃん、ご、ごめんねぇ。」

また涙の勢いが出てきた。
ノエルちゃんには本当に謝るしかない。
体は自分と同じなんだけど。

「今はノエルより【あなた】が強く出ているけれど。ノエルと、この世界に意識を向けなさい。ノエルと【あなた】の意識が自然と馴染んでいくはずよ。」

私はゲームで見た分しかノエルちゃんを知らないけど。
ノエルちゃんにはゲームが始まるより前の人生が、確かにあるはずで。

「はい。頑張ります。ノエルちゃんにはひどいものを見せてしまったし。」

そうだ。
いつまでも泣いてる場合じゃないや。
これから頑張ろう…。



===============
お読みいただき、ありがとうございます。

もう一話、女神様とのお話が続きます。
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お読みいただきありがとうございます!
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