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ペーター編
73話 重すぎる愛
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☆ ☆ ☆
自動運転中の操縦室内には、静かに飛行音が響いている。
「はぁ……はぁ……」
私はマジックテープとの格闘に疲れ、ぐったりしながら目だけぎょろぎょろさせていた。
ここには、前に操縦席と副操縦席があって、その後ろに三席の乗員席がある。
私は後ろの右出入り口寄りの席に寝かされていて、だからよくは見えないのだけど、もし操縦パネルをいじることができたら、自動運転で火山跡地に戻れないかしら?
さっきペーターが操作する音を聞いていたかぎり、ぴっぴって感じで簡単そうだった。だからやってみたい。それにはまずこの拘束を外してもらう術を考えないと。
「じゃんけんで勝ったら外して? ……だめだ、ペーターにじゃんけんで勝てたことないんだった。……欲しい物をあげるから外して? ……だめだ、私がペーターの欲しい物なんて持ってるわけないや……あ」
しまった、ペーターが戻ってきちゃった。
スライドドアが開いて操縦室に入ってきたペーターは、白衣こそ着ていないものの、手に試験管と注射器を持っていた。
「ちょっと口あけて?」
「!? イヤッ!」
あやしすぎでしょ! 私は首を振りまくった。
「やだやめて!」
「マドラーで口の中を擦るだけでしょ」
「とか言ってその注射打つ気でしょ!?」
「これをフェルが接種しても何も変わらないよ。すでに発症してるんだから」
「じゃあどうして注射器なんか持ってるのっ」
「注射器はボクが使うんだ。ここにフェルのサンプルを入れてね。キミの病を治す方法を探るのさ」
……病を治す?
注射されないよう暴れていた私は動きを止めてペーターを見あげた。
「アバウト先生は治せないって……」
「アバウトは最新医療の勉強を怠ってるだけでしょ。あいつジャムキングとカジノばっか行ってるじゃない」
と、ペーターはマドラーでペン回しをしてみせる。
「ボクが必ず治療法を見つけてみせる。その為にサンプルが必要なだけ」
巧みなペン回し技を、微妙な面持ちで見る。
言ってくれてることはとっても嬉しいけど、素直に喜べない。どうも軽い、怪しい。
「治療法ってどうやって探すの?」
「ボクも発症して、片っ端から実験する」
発……症……?
私はじょじょに目を丸くしていった。
「もしかして自分に注射するつもりなの!?」
「そうだよ」
じょ、冗談じゃないっ。
「だめよ! 絶対だめ! どうしてわざわざ自分から病気になるの!」
「いいよ、力づくでもらうから」
「マグネットしないで!」
いち早く私は叫んだ。
【マグネット】:磁石のようにひきつけて金縛りにする魔法
「【マグ……なんでよ」
「治す方法見つけてくれても、私試さないから!」
「は? なんで?」
「ペーターがきらいだから!」
とっさにそう言ったら、ペーターが注射器と試験管を落っことした。
自動運転中の操縦室内には、静かに飛行音が響いている。
「はぁ……はぁ……」
私はマジックテープとの格闘に疲れ、ぐったりしながら目だけぎょろぎょろさせていた。
ここには、前に操縦席と副操縦席があって、その後ろに三席の乗員席がある。
私は後ろの右出入り口寄りの席に寝かされていて、だからよくは見えないのだけど、もし操縦パネルをいじることができたら、自動運転で火山跡地に戻れないかしら?
さっきペーターが操作する音を聞いていたかぎり、ぴっぴって感じで簡単そうだった。だからやってみたい。それにはまずこの拘束を外してもらう術を考えないと。
「じゃんけんで勝ったら外して? ……だめだ、ペーターにじゃんけんで勝てたことないんだった。……欲しい物をあげるから外して? ……だめだ、私がペーターの欲しい物なんて持ってるわけないや……あ」
しまった、ペーターが戻ってきちゃった。
スライドドアが開いて操縦室に入ってきたペーターは、白衣こそ着ていないものの、手に試験管と注射器を持っていた。
「ちょっと口あけて?」
「!? イヤッ!」
あやしすぎでしょ! 私は首を振りまくった。
「やだやめて!」
「マドラーで口の中を擦るだけでしょ」
「とか言ってその注射打つ気でしょ!?」
「これをフェルが接種しても何も変わらないよ。すでに発症してるんだから」
「じゃあどうして注射器なんか持ってるのっ」
「注射器はボクが使うんだ。ここにフェルのサンプルを入れてね。キミの病を治す方法を探るのさ」
……病を治す?
注射されないよう暴れていた私は動きを止めてペーターを見あげた。
「アバウト先生は治せないって……」
「アバウトは最新医療の勉強を怠ってるだけでしょ。あいつジャムキングとカジノばっか行ってるじゃない」
と、ペーターはマドラーでペン回しをしてみせる。
「ボクが必ず治療法を見つけてみせる。その為にサンプルが必要なだけ」
巧みなペン回し技を、微妙な面持ちで見る。
言ってくれてることはとっても嬉しいけど、素直に喜べない。どうも軽い、怪しい。
「治療法ってどうやって探すの?」
「ボクも発症して、片っ端から実験する」
発……症……?
私はじょじょに目を丸くしていった。
「もしかして自分に注射するつもりなの!?」
「そうだよ」
じょ、冗談じゃないっ。
「だめよ! 絶対だめ! どうしてわざわざ自分から病気になるの!」
「いいよ、力づくでもらうから」
「マグネットしないで!」
いち早く私は叫んだ。
【マグネット】:磁石のようにひきつけて金縛りにする魔法
「【マグ……なんでよ」
「治す方法見つけてくれても、私試さないから!」
「は? なんで?」
「ペーターがきらいだから!」
とっさにそう言ったら、ペーターが注射器と試験管を落っことした。
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