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ペーター編
71話 イケメンにコンプレックス
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煮えたぎるマグマの中へ落とされそうになったゼイツだったが、
間一髪、岩壁に腕を埋め込んでどうにかぶら下がっていた。
「ハァッ、ハァッ、危ねェ……」
足を曲げていないと、ブーツの先に火がつく。逆上がりして巨岩の上へ飛びあがると、ゼイツは二本のクリスタルを放った。一本はマグ太の足、もう一本は落下寸前に折ってやった腕だった。
「返すぞ」
それらはマグマの炎に迎えられて沈んでいった。その横で突っ伏しているマグ太が死んだように動かないでいるのでゼイツは言った。
「勝負あったようだな。フェルリナの居場所を吐いてもらおうか」
「…………」
「おい、ミートボール」
「誰がミートボールだ」
マグ太は片手でクルリと岩体を回転させ、マグマの中で胡坐をかくように座った。
「ほざけ、勝負あったのはお前の方だろ。その状況で一体どうするというんだ」
マグ太の言うように、ゼイツは赤い海の孤岩に取り残されていた。
周りの岩塊は溶けはじめ、これではもう武器となる土の捻出もできないと思われた。
「俺は勝つぜ」
「手足を折ったくらいで調子に乗るな。こんなのはいくらでも再生可能だイワ」
マグマに浸けた腕をマグ太があげてみせると、折れた断面が尖り始めていた。
「へえ、そんな能力がありゃ金に困らないんじゃねーのか? わざわざハル大陸から出て来て、見世物になる必要もないだろ」
「馬鹿言え。ペリドットじゃはした金くらいにしかならないぞ」
「ペリドット?」
とゼイツは聞き返した。
「お前宝石屋行った事ないだろ。イケメンだから女の子に贈り物しなくても、マグわわせてもらえるんだろ」
「詳しくはないが、贈った事はあるぜ」
「それはマグわう前か? 後か?」
「何でそんな事知りたいんだ」
「お前みたいな男が、どういう理由で女に金を使うのか知りたい」
腰湯につかっているマグ太が恨めしそうにこちらの答えを待っている。
どうやらコイツは見た目に対するコンプレックスがガチガチに固まっちまってるらしい、とゼイツは思った。 岩だけに。
「軍で離れてる事が多いから、淋しい思いさせたくなくてな。さ、時間稼ぎは済んだろ? さっさと立ってくれねーか」
「……それはどういう意味だイワ?」
「温泉つかってないで早く戦えっつってんだ!///」
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