一日一回シないと死んじゃう妖精の私が、人質になってしまいました。～救命はエッチ？ いじわるな准将様に見張られて～

ペーター編

５５話 ⑨醜い私にキスをする

　

ポケットに手をつっこみ私の様子を待っていたペーターだが、

森から出てきたゼイツ准将じゅんしょうを煽あおりはじめた。

「〝フェルリナ悪いな。これから俺がすること勘弁しろよ〟？？？　あれ何だったの、カッコ悪すぎない？」

「これからっつったらこれからだ、ケホッ」

「そんなんで世界有数の戦闘民族っていうんだから、世も末だね。キミ知ってる？　雷土らいど戦争の時、こっちはタピオカドリンク片手に戦ってたらしいよ？　全員が右手縛って戦ってたのに、そんな相手にどうして負けられるの？」

ゼイツ准将はしゃがんで、ぬいぐるみの土を払っていた。

「さあな。なんか事情があったんだろ」

彼はぬいぐるみ四匹を並べると、ひび割れた腕時計を気にし、アホンを取り出して「こっちもか」としまいこんだ。雷で壊れてしまったのだ。

「あと二発。油断しないでね准将さん、次は本物でいくかもよ？」

もうやめて。

私はペーターを自分の方へふりむかせた。

「何？」

涼しい目で見下ろされ、トラウマが疼うずく。
私は泣くまいと懸命に眉をもちあげ、奥歯を食いしばった。

「むひっ……」
「は？」
「ははひへ……」（はがして）
「あいつの為に言ってんの？」
そうじゃない、

声を返して！

ドンと彼を突いた。
驚いた顔をしたペーターを見て、涙が溢れた。
こんな事したかったわけじゃないのに。

ペーターがゆっくりとまばたきをする。
思えばこの世で一番、私の泣きだす顔を見慣れている男の子が彼だった。

「そうだね。顔をあげたらはがしてあげるって、ずいぶん昔に約束したね」

彼がポケットから手をだして、私のあごにそえた。
その手はおかしいほどぶるぶる震えていた。

……。

顔に影が落とされたので目を閉じて開けたら、ペーターが顔をそむけていた。

口元に触れるとシールははがされていなかった。何をされたのか私はすぐには気づけなかった。マグ太様の呟きがなければ。

「キス……した……」