一日一回シないと死んじゃう妖精の私が、人質になってしまいました。～救命はエッチ？ いじわるな准将様に見張られて～

ペーター編

５４話 ⑧虐める理由

　

ゲホッ、ゲホッ、と咳せきをする。
膝ひざに手をつくゼイツ准将じゅんしょうは、肩に残り火がついていた。

「ペーター……って誰の事だ？」

答えたい。ゼイツ准将に真実を伝えたい。
じゃなきゃまた雷を受けようとしてしまう。あんなにボロボロなのに。

私はマグ太様にキスマークの紙を見せ、唇を指さし目で乞こうた。

「……ん？　フェルリナちゃんどうしたの？」

マグ太様ならペーターの商品、知ってるんじゃないかな。お願い、これをはがしてください……！！

「えっ？　えっ？　き、キス？」
「んううっ」（ちがうっ）
「ええっ///　キスしてほしいの？」

ちがいますっ！　
シールの紙を唇に当ててはがす真似をしてみせると、彼は極太の眉をハの字にして力の抜けた顔になった。

「あーそれさっき貼られた口チャックシールＢタイプね」

熟知じゅくちしてた！　見てたのになんでキスと勘違いしたんですか。
「さすがフェアリー、純情なオイラを誑たぶらかしてくるなぁ」
「ふんふふむひ……」（そんなつもりじゃ）
「はがしてあげたいのはイワイワなんだけどそれ、貼った本人しかはがせない仕組みになってるはずだよ」

「そうだよフェル」

ペーターが斜め後ろに立っていて私はギクッとふりむいた。

「む゛っ、むふふーふふ」（友達ならはがせるんじゃないの？）
「何年前の話してるの？　商品なんだから改善を加えるに決まってるでしょ」
改悪かいあくのまちがいでしょ！
「はがしてほしいなら、ペーター君におねだりすればいいじゃなぁーい」
マグ太様がニヤニヤしている。中等生みたいなノリやってる場合じゃない。私は首をふった。
「ふふんっふんふんっ」（はがしてくれるわけないっ）
「はがしてあげるよ」
と、ペーターが言った。

「はい。顔あげて？」

正面に立たれて、私は顔をあげられなくなった。
顔をあげて頼んだら〝なんて醜いんだ〟ってガッカリされるに決まってるから。

「…………」

嫌な沈黙だった。昔もよくこんな思いした。
思春期になってからペーターは急に毒気が増して、気を許して楽しくお喋りしていたつもりがふいに鋭く貫かれるようなことを言われた。
そのたびに、私はホオヅキみたいな顔色になってうつむいていたっけ。

私分かってたのよ？　ペーター。
どうして貴方が私を虐いじめるか。

貴方の六人のお兄様はみんな、私の美しい姉たちが許嫁なのに、
自分だけどうして私みたいなブスを引き当ててしまったのか。
嫌で嫌でたまらなかったんでしょう？