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ペーター編

52話 ⑥マグ太登場

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「アオーーーン」

ったなし、本当に雷撃する気だ。
もちろんそんな事はさせない。
しがみついてでも空から引きずり下ろしてやるんだ。

私は岩に登り、ペーターの足めがけて渾身こんしんのジャンプをした。
……はずだった。

「ぶ!」
びったん!

何者かに足首をつかまれた私は芝生しばふに鼻を打った。


「時間切れ。」

ちょっと待って!? 今すごい面白い転び方したのコメントなし!?

闇がビカビカッと点滅し、周囲の森が青ざめる。
土がみるみる盛り上がっていく広場から、【スカイハイ】でゼイツ准将じゅんしょうが空へと飛びだす。


「【リターン】」


突風に体がひるがえった。

――――ッッ!

仰向けになった両足首を、さっきの誰かがつかんできた。

一体誰なの?

私は荒ぶる風に顔をしかめながら足元を見た。そこには岩があるだけで、他には誰もいない。ただ、黄緑色っぽいものが自分の足首を拘束していた。

何あれ。……はっ

目が合い、コクリとうなずかれる。何者かがブーツの間からこっちを見ていた。鼻から下は土に埋まっている。私を押さえているのは、岩、そのものだった。
「イワイワ」
私は驚いてあっと身を引いた。
地中に一瞬、赤黒いマグマを透視したから。
湯舟ゆぶねからあがるように全身を現した岩石を、私は目を丸くして見あげた。

「フェルリナちゃん大丈夫? 怪我はない?」

へええっ!?

りりしい顔つきと動作で見おろされる。
しかし声はどこかひょうきんな響きをしていた。私はたじろぎながらもうなずいた。

「イワイワ、それなら良かった。オイラはフェルシック=ヘイル・ボボ・マグマランドといいます」

マ、マグマランド族……!
昨日ギブソンが、岩から手足が生えてると話していた種族。
たしかに生えている。しかしそれは私たちのような皮膚ではなく、黄緑色した結晶石の手足だった。
私は目が離せなかった。

「同胞にはヘイルって呼ばれてるけど、ペーター君にはマグ太君って呼ばれてます。フェルリナちゃんが男二人の戦いに巻き込まれないよう、張り込んでました、イワイワ」

彼はそう言って私をジッと見てきた。
瞳の白目部分が真っ白に輝いている。見つめ合ううち、クォーツだと気がついた。黄緑色の手足も、そういえばペリドット宝石にそっくりだ。

キラキラした瞳で私を注視していた彼だったが、芝居がかった仕草で振り切るように走り出した。

「ペーター君! てやっ!」
かた!」

膝後ひざうしろを蹴られ、ペーターがのけぞる。

「何やってるんだよ、逆にカッコイイところを見せつけられただろイワ。小動物を守るイケメンなんて見たら女の子はイチコロだぞ」

私はハッと広場へふりむいた。そこでは土がき出し、四つのぬいぐるみが地表にでてきていた。
あれは【ダート】の能力、たぶん地中に防空壕かなにかを作って、子ぎつねたちを避難させてたんだ。
だけどゼイツ准将はどこなの?

 
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