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ペーター編
50話 ④反省のないペーター
しおりを挟むキツネの真似、マニアックすぎました。
私はすごすごと、ラベンダーポーション120個箱の横にしゃがみこんだ。
エリアス様がいてくれたら……こんな時、一番耳を傾けてくれそうな方なのに。
暗い塔には、クワガタモデルのインセクトが頭を下にして留まっている。両翅のナビゲーションライトが夜の広場を煌々と照らしている。
「おいジョニー! こっちの気が変わらないうちにさっさと雷落としやがれ」
広場の真ん中でゼイツ准将が吠える。
ペーターが降りてきたので私は駆け寄って腕をつかんだ。彼はビクッとした。
「むーむ、んん、んーんん!」(もうけんかしないで!)
「喧嘩ふっかけてるのはボクじゃない、あっちだ。それより、はいコレ」
片手でヒョイと渡されたものがジタバタし、私は慌てて胸に抱きとめた。
わっ わわっ? わあああ
温かで湿っていてちょっと引っ掻く、毛がふわふわな子ぎつねだ。
「それぬいぐるみだからね。忠告したよ、フェル」
これがぬいぐるみ? 本物じゃないの?
小さな顔を覗きこむと、無垢な瞳に吸い込まれそうになった。
「ボクが攻撃してるように見えて、向こうが煽ってきてるってこと、フェル分かってる?」
「……」
「フェアリーのフェロモンの虜になっちゃった馬鹿な男かと思ってたけど。実のところ、物凄い計算高くて腹黒いよアイツ」
「……」
「フェルを人質にとったのもイークアルの世継ぎを作る為だけじゃないね。もっと深い理由がある。臭うんだよ秘密が」
私は子ぎつねに夢中であんまり聞いていなかった。
「ねえフェル! これからアイツの本性を暴くから」
「むーむ?」(どういう意味?)
「これを投げつけて雷撃する。キツネ嫌いな奴がどうするか、しっかり目に焼き付けておいて」
……私は顔をあげた。
この人、何を言ってるの。
「へーふぁー……ふふーへはいほ」(ペーター……覚えてないの?)
八年前のあの時、なぜ私があなたからのプレゼントを見て白化したのか。
後から聞けばあれは泥だらけに細工したぬいぐるみだったそうだ。
でも箱を開けた瞬間、私はそれを動かなくなったジョニーだと思ってしまった。
草原の真ん中で白化した私を置いて、
ペーターは逃げてしまった。
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