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ペーター編

45話 迎えに来たジョニー

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「塔にインセクトがついてるんですが、どうしやしょう。運送屋ですかね? 妖精のだんなが箱持って立ってやす」

それを聞き、私は小さく歓声をあげた。

「うそっ、来てくれたんだ……!」

今朝アバウト先生に連絡したのだ。

『先生お願いっ、今日中に薬品持ってきてくれませんかっ?』
(じゃないと一人Hを公開するはめになっちゃう)
『えぇ~めんどくしゃい~』
『ひどい! 私死んじゃうんですよ?』
『だぁいじょぶだぁいじょぶ~~』
『テキトーに言わないでくださいよっっ』

こんな感じだったのに、腐ってもお医者さんだったんだ!
これで薬が作れる、心配かけなくてすむ。私はゼイツ准将じゅんしょうに笑いかけた。准将も微笑んで、うなずいてくれた。

「行けよ。良かったな」

そう言って、動こうとしない。いつも先に降りて手を貸してくれるものだから、私は少し戸惑った。

「下りないんですか?」
と言ってしまってからハッとする。
しまった、こういうところをお高くとまってるって思われたのかも。
「ごめんなさい自分でおります」
手すりを掴んで外へ出ようとした私に、ゼイツ准将が言った。

「フェルリナ、そのまま故郷くにに帰っていいぞ」

……?

私は中腰でふりむいた。

「フェアリーアイランドへですか?」
「……」
「ご懐妊かいにんがわかるまでじゃなかったんですか……?」

キェーマ后に赤ちゃんができたか分かるまで待って、それがだめだったら来月も私が必要だって言われていたから、帰国はまだ先だと思っていた。

ゼイツ准将がふっと笑った。

「仕事をやり遂げようとするのは感心だけどな。ここにいたら、キェーマはまた何か仕掛けてくるぜ」

それを聞いて私は密かに唇を噛んだ。

実はもう、仕掛けて来たんです。あなたが眠らされている間に。
私を怪我させたのは自分の責任だって頭を下げたゼイツ准将が痛々しくて、言えないでいた。

「いいから早く行け。久しぶりに会うんだろ」

これ以上話させてくれない雰囲気に、追い出されるように馬車から降りる。

辺りは薄暗くなりはじめていた。
私は呆然と小道から広場へ入り、芝生を踏んだ。
あんなにあっさり「帰っていいぞ」と言われてしまった……。

夕間暮れのブーゲンビリアの庭に、つなぎ姿の背高ピクシーが一人、荷物を抱えて立っている。

老齢ろうれいで小柄なアバウト先生の姿があるとばかり思っていたけれど、御者さんが「妖精のだんな」と言ったのはこの若い配達員のことだったようだ。
塔の上には巨大なクワガタが宿っていて、その機体にPPPコーポレーションとしるされている。

大箱を抱えたまま待たせているので、小走りに駆けていくと、こう呼ばれた。


「そこのブッサイクなフェアリーさん~? お届け物です~」
「はいっ」

反射的に返事をして、直立不動になった。私は目を丸くしていたと思う。

腑抜ふぬけたキツネみたいな顔しないでくれる~? ボク、キツネ大嫌いなのよ」

配達員さんの鮮やかな髪、人を小ばかにしたような目元、口元に見覚えがあった。

「…………。」

この男の子、私知ってる……。

「……っ! ペーター!?」

たくましいピクシーへと成長したかつての幼馴染に、私は息を飲んだ。

 
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