一日一回シないと死んじゃう妖精の私が、人質になってしまいました。~救命はエッチ? いじわるな准将様に見張られて~

夢沢とな

文字の大きさ
上 下
3 / 97

2話 救命  R18

しおりを挟む
 
     ♡ ♡ ♡

――――。
ああ……ああ……んんっ
眠りの中で、私は喘いでいた。
すっごくきもちいい……。とろけちゃいそう……
たぶん誰かが後ろから私の体を抱っこしているの。体重を全部あずけてるのに、びくともしない硬くてあったかい体なの。
目をあけると、私は白いワンピースを着たままだけど、おしっこをする時のようにふとももを広げていた。すべすべしたベッドの上にいて、金ぶちの壁紙の綺麗な部屋にいた。
「……あっ ああっ ひあぁっ」
いっぱい喘いで、何かが終わって、力が抜けた。……今すごい声でちゃった。胸を震わせて呼吸をしていると、
「大丈夫か?」
と耳元で囁かれた。顔はみえない、声だけ。ソファみたいに寄りかかっちゃってたけど、私ずっとこの人に抱っこされて、えっちなことされてたの? 私を羽交い絞めにしている腕が裸で少し怖くなる。
「……っ」
彼が指を抜くと、吸いつくような水音がして、私は恥ずかしさで震えた。彼は私の膝を閉じて、ブランケットをたぐりよせてかけてくれた。腕がむきだしだったのはランニングシャツ姿だったからで、ボトムスもブーツも履いていた。
私が体を動かそうとすると、彼はベッドからおりた。
あ……! えっ、隣の牢の人?
横顔と爽やかな短髪でわかった。どうして牢から出ているんだろう。鍛えられた背中にラフなジャケットを羽織り、襟を正している後ろ姿を見ていると、彼は眉をしかめて私をふりむいた。

「やっかいなモン持ってんなあ、妖精の王女様は」

と言う口元は笑っている。そうだわ、私、遺言のときの持病のこと口走っちゃったんだ。助けるためにしてくれたんだとは分かった。だけど……。私はブランケットを鼻の上までひっぱりあげた。

「ここで寝てろ。朝には着く。悪いが鍵はかけさせてもらうぞ」

彼が部屋を出たあと、鍵穴に鍵がさしこまれた。そのあと話し声がした。

「ゼイツ准将じゅんしょう! ここにいらっしゃいましたか。デッカイーナ大国から再三の通達が入っております!」
「何て言ってきてんだ?」

ゼイツ准将じゅんしょう……?
そう呼ばれて答えたのは、今の人の声。兵士に会っているのに、「むむっ、お前は! 脱獄したな!」みたいな騒ぎになってない。むしろへこへこされていて、一緒に歩いて行ってしまった。
もしかして今の人、犯罪者じゃなくて士官さんだったの?
悪いけどがまんしてくれ、って何度か言われたし、デッカイーナ大国の話もわかっているみたいだった。
でもなんで牢にいたのかな?

     ♡ ♡ ♡

翌朝、私は窓から緑の大地を見おろしていた。ここがイークアル公国なのかな。この飛空艇は、チュウリッツー連邦の軍のもので、イークアル公国はチュウリッツー連邦の一つだ。今のわたしにわかっていることは、それくらいしかない。
鍵がさしこまれて、ドアが開いた。私はパッとふりむいて、ゼイツ准将の姿を見た。昨日部屋を出ていった時と同じ服装で、手に鎖を持っていた。

「城につくまで、囚人のふりをしてくれ。あとで外してやるから」

彼はそう言って、私の両手首に手枷をはめた。はめている間、眉をしかめてまじめな顔をしている。わりと三白眼で、贅肉のついていない頬。こめかみに筋がういている。昨日、私を抱きすくめてえっちなことをしてきた人…… だ、だめ、考えちゃだめ。あれは救命活動だったんだから。
部屋からでると、士官たちは皆そろいの詰襟の制服を着ているのに、彼だけゆるいジャケット姿だった。こんな格好してるから犯罪者と間違えられたのかしらと思ったけど、全員が敬礼して畏まっているからたぶんそれはない。この船で一番偉かったなんて、知らなかったです。

飛空艇からおりる時、ゼイツ准将は私の腕を掴んだ。両手が不自由だから転ばないようにかしら。いかつい雰囲気なのに優しい気がした。馬車に乗りこむ時は頭をぶつけないように手を乗っけられたし、変なの。そして箱馬車の中で二人きりになると、すぐに手枷を外してくれた。

「悪かったな」

ゼイツ准将は動きだした景色に目をやって言った。

「フェルリナっつったか。なんか質問あるか」
「あの、昨日どうして牢屋にいたんですか?」
と私は聞いてみた。
「理由は二つだな。監視と、もう一つは、誘惑に負けておりてくる部下どもの抑制か」

私の監視と、誘惑……?

「何人も兵がおりてきては、オレを見て上へあがっていったのはそういうことだ」
あ。そういえばそうだった。皆さん挙動不審だった。あれはゼイツ准将がいるのに驚いてUターンしていったのね。私、誘惑なんてしてないです。ただ、息すって吐いてるだけです。でもそれだけで、妖精の王女が人間の男性を呼び寄せちゃうっていうのは、知ってる。お姉さま方がよく話していたから……。

「聞くが、それは妖精の女はみんなそうなのか?」
「……私、何かちがいますか?」
「その、匂いっつーか、雰囲気っつーか」

ゼイツ准将が窓をあける。馬車は木立に挟まれた道を進んでいて、がらがらと車輪の音が近くなる。

「まあいい。気にするな、こっちががまんすりゃあいいだけの話だ。事が済んだら故郷へ送り届けてやる。約束する」
「事ってなんですか? 今どこに向かっているんですか?」
「国王の塔だ。それ以上は本人から聞いてくれ」

ゼイツ准将はため息を吐いて、首をぐるりと回した。
なんか、ばかばかしい仕事やらされてるって態度だわ……。説明する気にもならないみたい
事が済んだら、フェアリーアイランドのお城へ帰れる。約束する、って言ってくれた。
でも、事ってなんだろう? 国王の塔って、私はまた牢屋に入れられちゃうのかな。
考え込んでいる私を、ゼイツ准将がじっと見ていた。

「タチアグラって知ってるか?」
「……モグラの仲間ですか?」

と言うと、ヘヘッとゼイツ准将が笑って外を向く。白い歯がのぞいた。かわいい笑顔だった。

「そんなようなもんだ。こっちの世界じゃ精力剤のことをいう。妖精には、その百倍力があるといわれているが、本当だったんだな」
それって……。
「私、精力剤代わりに連れてこられたんですか?」
「ああ。バカ国王に必要なんだと。世継ぎを作るためにな」
今、バカ国王って言った?
「フェルリナはただ塔で暮らしてればいい。牢じゃないぞ、普通の部屋だ」
「世継ぎ!?」
わたし国王様の妾みたいにされちゃうの!?
「もちろん世継ぎは王妃と作るためのものだ」
良かった。ほっとした。
「何も心配する必要はないと思うが。お前自身の問題はどうする。一日一回のアレは、今まではどうしていたんだ」

!! 私はかあっと熱くなった。答えられずにいる間、ゼイツ准将は眉をしかめて、窓の外に目をやったり、ポーカーフェイスでいたけれど、おもむろに胸元から紙をとりだした。

「この遺書だが、『拝啓プリシラお姉様、牢屋で――』」
「きゃああっ」

私は立ち上がってゼイツ准将から紙を取り返そうとした。

「返して!」
「さいごガクッ、って言ったよなあ? ハハハハ」
「返してください! ていうか燃やして!」
「あー着いた。おりるぞ」

馬車が停まっていた。ゼイツ准将はにっかり笑った横顔で、私の遺言を胸元にしまいながら、先におりてしまう。私の弱味をにぎったみたいなわるい横顔で。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【R18】人気AV嬢だった私は乙ゲーのヒロインに転生したので、攻略キャラを全員美味しくいただくことにしました♪

奏音 美都
恋愛
「レイラちゃん、おつかれさまぁ。今日もよかったよ」 「おつかれさまでーす。シャワー浴びますね」 AV女優の私は、仕事を終えてシャワーを浴びてたんだけど、石鹸に滑って転んで頭を打って失神し……なぜか、乙女ゲームの世界に転生してた。 そこで、可愛くて美味しそうなDKたちに出会うんだけど、この乙ゲーって全対象年齢なのよね。 でも、誘惑に抗えるわけないでしょっ! 全員美味しくいただいちゃいまーす。

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

【R18】仲のいいバイト仲間だと思ってたら、いきなり襲われちゃいました!

奏音 美都
恋愛
ファミレスのバイト仲間の豪。 ノリがよくて、いい友達だと思ってたんだけど……いきなり、襲われちゃった。 ダメだって思うのに、なんで拒否れないのー!!

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

処理中です...