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chu!(◦˘ ³(˶♡ᗜ ♡˶)
しおりを挟む『はあ、重たい。誰か助けてくれないかしら。しんどいわ』
そんな心の声が伝わってきて、私はふりむいた。
裏門の外の道路で、
腰のまがったおばあさんが、パンパンになった買い物袋を両手にさげて歩いている。
「あのおばあさん荷物重たそう。運んであげないとだね……」
ライアくんはそう言ったけど、
心の中ではぜんぜんちがうことを考えていた。
『じゃますんなよ。はやく行けよ』
私はいてもたってもいられなくなって、おばあさんにかけよった。
「あのー」
「ひゃあっ危ない! あんたそんなとがったもの向けないでちょうだい!」
「ごめんなさい。でも、こうやって離れて歩くから、荷物持つの手伝います」
「あら……あらそう? 手伝いにきてくれたの? ごめんなさいね、カン違いしちゃって」
「平気です」
私はおばあさんの袋を半分持って、歩きだした。
「ライアく……」
……あれ、ライアくん……?
ふりかえると、ライアくんはいなくなってしまっていた。
「本当にありがとう。助かりました。お茶でもいれますから、あがっていって?」
「もう帰らないと……」
おばあさんの家の前で、私は帰り道がわからなくなってしまった。
空はオレンジ色になっている。
もうすぐ夜になってドクターペッパー色になる。
また急性アルコール中毒になっちゃったらどうしよう。心臓がバクバクしてきた。
早くエッジくんのおうちに帰りたい。
「エッジくん、帰り道わかんないよ……迎えに来て……」
パッポー パッポー パッポー
うすぐらい横断歩道を渡っている人がさわいでいた。
「はようせんか! もうすぐ井上尚弥の試合が始まってしまうわい!」
「じーさん目ぇ見えねえんじゃねーのかよッ!」
えっ……エッジくん!?
エッジくんが黒いサングラスをかけたおじいさんをおんぶしている。
おじいさんは白杖(目の見えない人のつえ)でエッジくんをばしばししている。
「エッジくーんっ!」
私は彼の元へとびついた。
「ぐおっ!?」
勢いあまってエッジくんのこめかみに角が刺さってしまった。
「あ、あ、あ、あぶねーなユニ!」
「ごめん」
「みけん! こめかみ! 急所ばっかねらってくんなよ!」
「やり手のボクサーのようじゃな」
信号がどっきんどっきん点滅して赤になった。
エッジくんに会いたいって思ってたら会えた。
「ライアと帰ったんじゃなかったの?」
「ううん! 帰らなかった!」
私はエッジくんと並んで歩いた。
おじいさんの家は、なんとさっきのおばあさんの家だった。
そこで私たちはボクシングの試合を見て盛りあがり、
おばあさんの作ったお夕飯をごちそうになった。
帰り道、
私は勇気をだして頼んでみた。
「エッジくん、私にキスしてくれない?」
「……」
「私、エッジくんがいい。ライアくんじゃやだ」
そう言うと、エッジくんの心の中が伝わってきて、
私の胸があったかくなった。
「おれたちちゃんと付き合おう」
「う、うん」
エッジくんが私の手をとる。
もう片方の手で私のうなじにふれて、エッジくんが顔を横にかたむける。
エッジくんが目を閉じたのを見て、私も目をつむった。
私の上下の唇を、横からはむって食べるみたいにされて、
柔らかくて、気持ちよくて、うっとりする。
『おれ、ユニのことずっと大切にする』
お月さまへの、願いごとが叶った。
fin♡
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