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125話
しおりを挟む隣の集落へと向かったククルカとその部隊を除き、この砦に居た亜人はジグレイドの猛毒により殺し尽くされていた。
ジグレイドの予想ではククルカがこの砦を出立する前に即死の猛毒で殺すつもりだったのだが、予想以上にククルカの行動が早く領域の範囲から逃れてしまったのである。
しかし念の為にと遅効性の猛毒を仕込んでいたこともあり、恐らく夜が明ける頃には出て行った部隊も猛毒で苦しみ悶えて死んでいる事だろう。
現在ジグレイドは悩んでいた。
この砦に居座り竜人部隊が帰ってくるのを待つか、次の集落へと赴き再び殺戮の限りを尽くすのか…。
残る集落は僅かとなっており、そこに住む亜人の殆どが非戦闘員であると聞き出していた。
亜人の全滅はやり遂げるべき目標だが、あの竜人部隊と戦うには些か自身の疲労がかなり蓄積されているようにも思えた為、この砦で一日休息をとることにした。
一方、隣の集落へと急行したククルカは、
「ぐっ…研究に没頭し過ぎた所為ですか…身体が思うように動きません。皆さん先に集落へと向かい防衛陣を組んでいて貰えますか?」
ジグレイドの猛毒の影響が僅かながら発揮し始めた所為なのだが、自身の訓練不足だと勘違いし引き連れて来た部隊を先に行かせようとしたのだが、返ってきた返答はククルカの予想外なものだった。
「ククルカ様、我々も何故か思うように身体が動きません。決して訓練をサボっていた訳ではないのですが…」
「そうですか…それならば我々全員が焦っているのかもしれませんね。気が流行り過ぎて上手くいかないことはよくある事です。一旦ペースを落とし落ち着きましょう。焦って事を仕損じることこそが唾棄すべき事です」
ペースを落とし落ち着こうとするが身体の調子は一向に改善せず、寧ろ悪化しているのではないかと思えて仕方なかった。
そして凡そ半日でククルカ達は隣の集落へと辿り着いた。
だがククルカ達が目にしたものは住民は苦しみ悶えた表情で生き絶え壊滅した集落の惨状だった。
しかもその中に幹部であるエリックとエリックが連れて行った精鋭部隊の姿まであった。
住民とエリック達の明確な相違点は斬り傷の有無であり、明らかに何者かの襲撃を受けた事が分かる。
「まさかエリック様が…一体誰がこんな酷い事を…」
「待ってください!何故エリック様が此処にいるのでしょう?伝言では先の集落へ向かったと言っていた、筈…まさかッ!?」
「ククルカ様如何なさいましたか?」
「至急砦へと帰投します!私の予想が正しければ今頃砦に危機が迫っています!いえ、既に戦闘が終わっている可能性すらあります!キツイとは思いますが急いで戻りましょう!」
ククルカの予想は正解していた。
しかも最も最悪な形でである。
だが予想の結果をククルカは知る事は出来ず、道半ばで部隊と共に生き絶えてしまった。
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