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117話
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亜人の隠れ里を探し深層を彷徨うこと7日、ジグレイドは新たな痕跡を発見した。
血痕の付いた木が前方から続いており、どうやら血痕の主は魔物に襲われたように思えた。
そしてその痕跡は斜め後ろへと続いていた。
ジグレイドはこの途切れ途切れに続いている血痕を辿ってみることにした。
幸いこの血痕の主は深手を負っていたらしく難なく痕跡を追うことができた。
痕跡を追うこと半刻、これまで簡単に追うことができていた痕跡が不自然に途切れていた。
最初は付近で横道に逸れたのかと思い、痕跡を探してみるも何処にもそれらしき痕跡は無かった。
何故だ?という気持ちが湧き上がる。
そしてこの痕跡の先に行こうとしても何故だかそんな気分になれない自分がいた。
何か変だ…。
ジグレイドがそう思い至るのも当然だった。
血痕が続いていた先に行こうとしないなんて有り得ないからだ。
亜人の集落への手掛かりが目の前にあるのにそんな気分にならない訳がないからである。
「これはなんだ…?厄介だな」
そう呟き、未だ気分にならない方向へと無理やり歩み出した。
しばらく歩み続けると今までの行きたくないという拒否の気分が気の所為かのように無くなっていた。
所々だが血痕が奥へと続いておりどうやら亜人と思しき者はこの先にいるようだ。
「ようやくだ…空振りなんてことになってくれるなよ!」
不敵な笑みを浮かべ一歩一歩確実に血痕を追いかける。
そして森の木々無い住居が立ち並ぶ簡素な村へと辿り着いた。
そこには獣人だけでなくエルフやドワーフといった様々な亜人が生活していた。
ある者は村の中にある小さな畑を耕し、またある者は狩りで仕留めたと思われる物を解体したりしているのがぱっと見だけでも見受けられる。
「ちっ、竜人はいないようだな…だが亜人は残らず殲滅だ」
ジグレイドは魔素を吸収し始め猛毒の領域をあえてまだ広げずに村へと近づいていく。
するとジグレイドに気がついた亜人の一人が無警戒に近寄ってきて声をかけてきた。
「見ない顔だな、というか兜で顔は見えないけどよ。何処の村から来たんだ?伝言か?」
「伝言?そうだな、どちらかと言えば勧告と言った方がいいだろうな。他の村にも勧告しろと竜人達から言われているから念の為に此処から一番近い村へ道を教えてくれないか?」
せっかく亜人が無警戒で近づいてきたのだから情報を少しでも引き出そうと咄嗟に思いついた事を言ってみた。
「やっぱりかー、竜人の奴らは人使い荒いからなー。一番近い村はあっちの方に三刻ほど行けばあるぜ。にしてもそんな鎧着て重く無いのか?森の中だと動きにくくないか?」
「あっちだな、情報提供感謝するよ。では…さよならだ」
あっさりと村の方角を聞き出すことに成功したのでもはやこの村には用がない。
感謝を述べてずっと吸収して溜め込んでいた魔素を魔力に転換して一気に猛毒の領域を発動した。
こうすることで少しの間だけだが限界以上の範囲に猛毒を振り撒くことができるのである。
「え…?お前、は、味方、じゃ…」
目の前にいた亜人はジグレイドが発動させた猛毒により倒れる。
更に次々に範囲内にいる亜人達は猛毒に侵され地に伏していく。
いくら森の中にある村とはいえ数百もの亜人が生活している村だ。
入り口からでは全体に猛毒を振り撒けないので、ジグレイドは村の中へと侵入していく。
いくら強力無比な猛毒とはいえ以前戦ったハヌマエンやカイチガ、ヤズメなどといった亜人には効きが悪かった。
念の為短槍をいつでも振るえるようにして村の中を歩く。
ちょうど村の中央付近を越えた時には村全体に猛毒の領域が広がり、この村にいた亜人の全てを猛毒に侵すことができた。
しかしまだ油断は出来ない、なぜなら此方へ向かってくる集団がいるからだ。
血痕の付いた木が前方から続いており、どうやら血痕の主は魔物に襲われたように思えた。
そしてその痕跡は斜め後ろへと続いていた。
ジグレイドはこの途切れ途切れに続いている血痕を辿ってみることにした。
幸いこの血痕の主は深手を負っていたらしく難なく痕跡を追うことができた。
痕跡を追うこと半刻、これまで簡単に追うことができていた痕跡が不自然に途切れていた。
最初は付近で横道に逸れたのかと思い、痕跡を探してみるも何処にもそれらしき痕跡は無かった。
何故だ?という気持ちが湧き上がる。
そしてこの痕跡の先に行こうとしても何故だかそんな気分になれない自分がいた。
何か変だ…。
ジグレイドがそう思い至るのも当然だった。
血痕が続いていた先に行こうとしないなんて有り得ないからだ。
亜人の集落への手掛かりが目の前にあるのにそんな気分にならない訳がないからである。
「これはなんだ…?厄介だな」
そう呟き、未だ気分にならない方向へと無理やり歩み出した。
しばらく歩み続けると今までの行きたくないという拒否の気分が気の所為かのように無くなっていた。
所々だが血痕が奥へと続いておりどうやら亜人と思しき者はこの先にいるようだ。
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不敵な笑みを浮かべ一歩一歩確実に血痕を追いかける。
そして森の木々無い住居が立ち並ぶ簡素な村へと辿り着いた。
そこには獣人だけでなくエルフやドワーフといった様々な亜人が生活していた。
ある者は村の中にある小さな畑を耕し、またある者は狩りで仕留めたと思われる物を解体したりしているのがぱっと見だけでも見受けられる。
「ちっ、竜人はいないようだな…だが亜人は残らず殲滅だ」
ジグレイドは魔素を吸収し始め猛毒の領域をあえてまだ広げずに村へと近づいていく。
するとジグレイドに気がついた亜人の一人が無警戒に近寄ってきて声をかけてきた。
「見ない顔だな、というか兜で顔は見えないけどよ。何処の村から来たんだ?伝言か?」
「伝言?そうだな、どちらかと言えば勧告と言った方がいいだろうな。他の村にも勧告しろと竜人達から言われているから念の為に此処から一番近い村へ道を教えてくれないか?」
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「やっぱりかー、竜人の奴らは人使い荒いからなー。一番近い村はあっちの方に三刻ほど行けばあるぜ。にしてもそんな鎧着て重く無いのか?森の中だと動きにくくないか?」
「あっちだな、情報提供感謝するよ。では…さよならだ」
あっさりと村の方角を聞き出すことに成功したのでもはやこの村には用がない。
感謝を述べてずっと吸収して溜め込んでいた魔素を魔力に転換して一気に猛毒の領域を発動した。
こうすることで少しの間だけだが限界以上の範囲に猛毒を振り撒くことができるのである。
「え…?お前、は、味方、じゃ…」
目の前にいた亜人はジグレイドが発動させた猛毒により倒れる。
更に次々に範囲内にいる亜人達は猛毒に侵され地に伏していく。
いくら森の中にある村とはいえ数百もの亜人が生活している村だ。
入り口からでは全体に猛毒を振り撒けないので、ジグレイドは村の中へと侵入していく。
いくら強力無比な猛毒とはいえ以前戦ったハヌマエンやカイチガ、ヤズメなどといった亜人には効きが悪かった。
念の為短槍をいつでも振るえるようにして村の中を歩く。
ちょうど村の中央付近を越えた時には村全体に猛毒の領域が広がり、この村にいた亜人の全てを猛毒に侵すことができた。
しかしまだ油断は出来ない、なぜなら此方へ向かってくる集団がいるからだ。
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