おちゆく先に

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111話

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 戦争が終結し戦勝国としてフェイシル王国がバルクド帝国から領土やら鉱山やらを勝ち取ったらしいが、ジグレイドからすればそんな事はどうでも良かった。

そんなジグレイドは現在王都ムルスに戻ってきていた。
何のためにかというと、国王陛下に謁見する為だ。
此度の戦争で愚帝アルザーンの首を取った事により褒賞を与えられることになったのである。
もちろんジグレイドの他にも褒賞を受ける人たちはたくさんいる。



「ジグレイド様は叙勲され貴族様になるつもりなのですか?」

そう尋ねてきたのはジグレイドの屋敷で雇っているメイドのメルティオルだ。

「いや、貴族になるつもりはないな。報酬は一生遊んで暮らせるだけのお金を貰うことにしてるよ。俺の勝手なイメージだけど貴族って何かと不自由みたいなんだよな」

「ではこれから忙しくなるということは無いですよね?」

「多分な。これまで通り見知らぬ訪問者は屋敷には入れずに追い返していいよ。それと追加で数名メイドを増やそうと思うんだけど、どうかな?」

の世話係ですか?それならば二名も雇えば十分かと思います。むしろ一名でもいいのでは?」

「そうか、ならメルさんとサラさんに負担が掛からないように二名新たに雇うことにするよ。知り合いに職場探しているメイドはいないか探しておいてくれる?」


実は治療は終わったのにも関わらず未だに目覚めないカリーナを屋敷へと連れてきていた。
何故かというと、王都に戻ってきた日にカリーナの生家であるメルベス伯爵家に連れて行ったが、そんな小娘なぞ知らん!と言って追い払われたのである。
理由は知らないがメルベス伯爵家からカリーナは随分と疎まれているようだ。
フルクトスを含めた魔法師団が殉職したので面倒を見る知り合いが自分しかジグレイドには思いつけなかったのである。
正直お金には困っていない為、知り合いの異性を助けたかったというのものあるが。




 サラーサとメルティオルにメイドを探してもらっている間、ジグレイドは王城へと出向いていた。

「ジグレイド殿此度は誠に大儀であった。後ほど謁見の間でも伝えるがあんな場所よりも先に私室で伝えたくてな。しかしローレンの事は残念であったな…。惜しい男を亡くしたものだ。今暫くは将軍として仕えていて欲しかったものだ。で、どうだ将軍候補として仕えてみないか?」

「ありがとうございます。ですが私では将軍など勤まりません。謹んで辞退させていただきたく」

「やはりそうか…こればかりは仕方ないな。では報酬として何を望むのだ?」

「はい、一生遊んで暮らせるだけの大金を望ませていただきます」

「無欲だな、金など既に沢山持っているだろう?」

「はい、国王陛下より頂戴した屋敷もありますので今のところは金銭に余裕がありますが、いつ働けなるかわからない身ですので」

「そうか、ならばお主の武勲に見合うほどの大金を用意してやろう。さてそろそろ時間だな、また謁見のの間で会おうぞ」

そう言い終わるや否や国王は立ち去って行った。
次の褒賞者との顔合わせがあるのだろう。
態々国王陛下自らしなくても良いとは思うが、それもまたウルスマグア陛下の良いところなのだろう。




 そして此度の戦争で功績を挙げた者たちの褒賞式が無事に終わった。
多くの傭兵や組合員が名誉貴族として一世代だけの騎士爵となった。
だが中にはジグレイドのように貴族とならない者もいたがそれは少数派だった。
元から貴族だった者は陞爵されたりしたが、戦争に参加した貴族の中で陞爵されなかった者もいた。

その一部の貴族は国王に無礼にも抗議を申し上げてきたが、当然聞き入れてはもらえなかったようだ。

なぜならその貴族の戦争での行いが国王が放っていた間者により筒抜けだったからである。

その他は特に問題と言うほどのことも起きずに褒賞式は終わり、ジグレイドは十数人が一生遊んで暮らせるほどの大金を手に入れた。
予想以上の大金に驚いたが、あるだけ困らないものなので謹んで受け取った。



ジグレイドは龍人共を探す為に今後屋敷のあるムルスから出て深緑の森で活動しようと考えているのである程度の金額を屋敷に残して当分の間留守にしようと考え、今回貰った報酬の半分をサラーサとメルティオルに預け、自身は翌日にはカザフ要塞へと旅立っていった。





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