107 / 126
106話
しおりを挟む
「かかれー!一歩も引くな!一人でも多くの敵を殺すんだ!」
今日も湿地帯では両軍が死に物狂いで削り合いを朝から繰り広げていた。
そんな様子を少し離れた場所からモルドたち戦場の狼は眺めていた。
「モルドさんあれに合流しなくていいのか?」
「まだいいだろ。正規兵には悪いがギルドの仲間をこんなところで失う訳にはいかないからな。もう少し敵兵の勢いが落ちてから側面を強襲する。それまでみんなに休んでおくよう言っておいてくれ」
「あいよ」
今回の戦争は毎日数百人の戦死者が出ている程酷い戦争だ。
その戦死者を片付けもせずにそのまま同じ場所で戦い続けている。
つい先日も雨が降り足場は泥濘みかなり最悪な事になっている。しかも死体が泥の中に埋まっている可能性すらあるため非常に戦いにくい戦場となっているのである。
ギルドの仲間に十分な休息を与えたモルドは昼過ぎから行動を開始した。
なにも無能な総指揮官の命令通り正面からぶつかる必要はない。
組合員はあくまでも援助の依頼を受けているだけなのだ。もちろん戦争が終わるまでの契約なので戦場から逃げ出す事はできないのだが、軍からの命令を絶対に順守する必要はないのである。
「お前ら側面に移動するぞ」
屈みながら腰丈くらいの植物に紛れてバルクド帝国軍の側面へと回り込みはじめた。
慎重に移動したためなのか側面に到着したのは日が隠れ始める頃になっていた。
「よし、目立つ火魔法はまだ使うなよ。初手は風魔法か土魔法でいくぞ。タイミングはリンダに任せる。発動と同時に強襲だ。そしてセイクリッドホールが発動したらすぐさま撤退だ。リーリャ、撤退のタイミングは任せたぞ」
全員が頷くのを確認してモルドはいつでも突撃できるよう身構えた。
そしてリンダたちによる魔法攻撃がバルクド帝国軍の側面に直撃した。
「「“風よ 風よ 敵を切り裂く 刃となれ エアリルエッジ”!」」
「“土よ 土よ 屈強なる大地よ その屈強なる力をもって 我が敵の悉くを穿つ 槍となれ アースジャベリン”!」
魔法が直撃したのを確認せずにモルドたち戦場の狼はその名に恥じぬ勢いで横っ腹に噛み付いた。
噛み付かれたバルクド帝国側は直ぐに迎撃態勢に移れるはずもなく、戦場の狼に食い散らかされるがままとなっていた。
それも仕方ないといえる。
何せ訓練など受けた事がない農民なのだから。
強襲されて出来た事といえば慌てふためいて混乱を増長させることだけだった。
そして漸く敵の態勢が整いだし反撃に出るかという頃、敵と戦場の狼との間に光り輝く壁が出現した。
もちろんセイクリッドホールだ。
「撤退だ!直ぐに離脱するぞ!」
そのモルドの掛け声を聞く前に戦場の狼全員が撤退を開始していた。
「追え!何をしている!さっさと追わんか!」
後方からそんな怒声が聞こえてくるが戦場の狼はセイクリッドホールのお陰で難無く撤退できた。
「ふー、上手くいったか。これを時間を開けながら繰り返すぞ。リーリャ、良いタイミングだった。次からも頼むぞ」
こうして戦場の狼はジワジワとバルクド帝国軍を疲弊させていった。
今日も湿地帯では両軍が死に物狂いで削り合いを朝から繰り広げていた。
そんな様子を少し離れた場所からモルドたち戦場の狼は眺めていた。
「モルドさんあれに合流しなくていいのか?」
「まだいいだろ。正規兵には悪いがギルドの仲間をこんなところで失う訳にはいかないからな。もう少し敵兵の勢いが落ちてから側面を強襲する。それまでみんなに休んでおくよう言っておいてくれ」
「あいよ」
今回の戦争は毎日数百人の戦死者が出ている程酷い戦争だ。
その戦死者を片付けもせずにそのまま同じ場所で戦い続けている。
つい先日も雨が降り足場は泥濘みかなり最悪な事になっている。しかも死体が泥の中に埋まっている可能性すらあるため非常に戦いにくい戦場となっているのである。
ギルドの仲間に十分な休息を与えたモルドは昼過ぎから行動を開始した。
なにも無能な総指揮官の命令通り正面からぶつかる必要はない。
組合員はあくまでも援助の依頼を受けているだけなのだ。もちろん戦争が終わるまでの契約なので戦場から逃げ出す事はできないのだが、軍からの命令を絶対に順守する必要はないのである。
「お前ら側面に移動するぞ」
屈みながら腰丈くらいの植物に紛れてバルクド帝国軍の側面へと回り込みはじめた。
慎重に移動したためなのか側面に到着したのは日が隠れ始める頃になっていた。
「よし、目立つ火魔法はまだ使うなよ。初手は風魔法か土魔法でいくぞ。タイミングはリンダに任せる。発動と同時に強襲だ。そしてセイクリッドホールが発動したらすぐさま撤退だ。リーリャ、撤退のタイミングは任せたぞ」
全員が頷くのを確認してモルドはいつでも突撃できるよう身構えた。
そしてリンダたちによる魔法攻撃がバルクド帝国軍の側面に直撃した。
「「“風よ 風よ 敵を切り裂く 刃となれ エアリルエッジ”!」」
「“土よ 土よ 屈強なる大地よ その屈強なる力をもって 我が敵の悉くを穿つ 槍となれ アースジャベリン”!」
魔法が直撃したのを確認せずにモルドたち戦場の狼はその名に恥じぬ勢いで横っ腹に噛み付いた。
噛み付かれたバルクド帝国側は直ぐに迎撃態勢に移れるはずもなく、戦場の狼に食い散らかされるがままとなっていた。
それも仕方ないといえる。
何せ訓練など受けた事がない農民なのだから。
強襲されて出来た事といえば慌てふためいて混乱を増長させることだけだった。
そして漸く敵の態勢が整いだし反撃に出るかという頃、敵と戦場の狼との間に光り輝く壁が出現した。
もちろんセイクリッドホールだ。
「撤退だ!直ぐに離脱するぞ!」
そのモルドの掛け声を聞く前に戦場の狼全員が撤退を開始していた。
「追え!何をしている!さっさと追わんか!」
後方からそんな怒声が聞こえてくるが戦場の狼はセイクリッドホールのお陰で難無く撤退できた。
「ふー、上手くいったか。これを時間を開けながら繰り返すぞ。リーリャ、良いタイミングだった。次からも頼むぞ」
こうして戦場の狼はジワジワとバルクド帝国軍を疲弊させていった。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説

一人だけ竜が宿っていた説。~異世界召喚されてすぐに逃げました~
十本スイ
ファンタジー
ある日、異世界に召喚された主人公――大森星馬は、自身の中に何かが宿っていることに気づく。驚くことにその正体は神とも呼ばれた竜だった。そのせいか絶大な力を持つことになった星馬は、召喚した者たちに好き勝手に使われるのが嫌で、自由を求めて一人その場から逃げたのである。そうして異世界を満喫しようと、自分に憑依した竜と楽しく会話しつつ旅をする。しかし世の中は乱世を迎えており、星馬も徐々に巻き込まれていくが……。
転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます
藤なごみ
ファンタジー
※2025年2月中旬にアルファポリス様より第四巻が刊行予定です
2024年10月下旬にコミック第一巻刊行予定です
ある少年は、母親よりネグレクトを受けていた上に住んでいたアパートを追い出されてしまった。
高校進学も出来ずにいたとあるバイト帰りに、酔っ払いに駅のホームから突き飛ばされてしまい、電車にひかれて死んでしまった。
しかしながら再び目を覚ました少年は、見た事もない異世界で赤子として新たに生をうけていた。
だが、赤子ながらに周囲の話を聞く内に、この世界の自分も幼い内に追い出されてしまう事に気づいてしまった。
そんな中、突然見知らぬ金髪の幼女が連れてこられ、一緒に部屋で育てられる事に。
幼女の事を妹として接しながら、この子も一緒に追い出されてしまうことが分かった。
幼い二人で来たる追い出される日に備えます。
基本はお兄ちゃんと妹ちゃんを中心としたストーリーです
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しています
2023/08/30
題名を以下に変更しました
「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきたいと思います」→「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます」
書籍化が決定しました
2023/09/01
アルファポリス社様より9月中旬に刊行予定となります
2023/09/06
アルファポリス様より、9月19日に出荷されます
呱々唄七つ先生の素晴らしいイラストとなっております
2024/3/21
アルファポリス様より第二巻が発売されました
2024/4/24
コミカライズスタートしました
2024/8/12
アルファポリス様から第三巻が八月中旬に刊行予定です
2024年10月下旬にコミック第一巻刊行予定です
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!

新世界の空へ飛べ~take off to the new world~ アルファポリス版
葉山宗次郎
ファンタジー
航空業界に入ってパイロットとして活躍することを夢見た青年。
しかしパンデミックにより航空業界は大打撃で内定は取り消し。
ショックで体を崩し、病に掛かって亡くなってしまう。
だが、次に目覚めた時には、彼は異世界にいた。
だが魔法も魔物もいない、百年前の日本のような場所だった。
飛行機など勿論ない。
飛行機が無いなら作れば良いんじゃないか。
そう思った転生した青年、二宮忠弥と名付けられた少年は猛烈に飛行機制作に向かっていく。
しかし、エンジンの動力源となる内燃機関を手に入れられない。
どうしようかと考えていると森の奥から、聞き慣れた音が聞こえてきた。
飛行機好きの少年が、飛行機の無い世界に転生して飛行機を作って行くお話です。
いろいろな飛行機を登場させたいと思います。
是非読んでください。
カクヨムでも連載しています
【完結】ミックス・ブラッド ~とある混血児の英雄譚~
久悟
ファンタジー
人族が生まれる遙か昔、この大陸ではある四つの種族が戦を繰り返していた。
各種族を統べる四人の王。
『鬼王』『仙王』『魔王』『龍王』
『始祖四王』と呼ばれた彼らが互いに睨み合い、この世の均衡が保たれていた。
ユーゴ・グランディールはこの始祖四王の物語が大好きだった。毎晩母親に読み聞かせてもらい、想いを膨らませた。
ユーゴは五歳で母親を亡くし、父親は失踪。
父親の置き手紙で、自分は『ミックス・ブラッド』である事を知る。
異種族間に産まれた子供、ミックス・ブラッド。
ある者は種族に壊滅的な被害をもたらし、ある者は兵器として生み出された存在。
自分がそんな希少な存在であると告げられたユーゴは、父親から受け継いだ刀を手に、置き手紙に書かれた島を目指し二人の仲間と旅に出る。
その島で剣技や術を師匠に学び、様々な技を吸収しどんどん強くなる三人。
仲間たちの悲しい過去や、告白。語られない世界の歴史と、種族間の争い。
各種族の血が複雑に混じり合い、世界を巻き込む争いへと発展する。
お伽噺だと思っていた『始祖四王』の物語が動き出す。
剣技、魔法、術の数々。異世界が舞台の冒険ファンタジー。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる