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102話
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「だー!こんなことなら今回は見送るべきだったぜ!」
戦場の狼のリーダーであるモルドはそう愚痴りつつも目の前の敵を斬り捨てていた。
現在、戦場の狼は最前線に投入されていた。
そのお陰もあってか目の回るような忙しさで、すでに敵兵をモルドだけでも数十は軽く斬り伏せていた。
「リーダー!他の味方が付いて来ていません!このままだと後続と切り離されます!」
「わかった!後続との足並みが揃うまで前線の維持に努めるぞ!」
戦場の狼の副リーダーであるリーリャのおかげで孤立は免れたものの状況はかなり厳しいものだった。
いくら精鋭揃いといえども疲労は確実に蓄積していく。
このまま戦況が変わらなければギルドメンバーの誰かを失う可能性が大きかった。
一方、中陣では
「ぐぬぬ、なぜ攻めきれんのだ!敵に剛鬼は居ないのだろう!?ではなぜ戦況が停滞しておるのだ!」
とボダホン侯爵が荒れていた。
「侯爵様、確かに敵軍の将軍は居りません。ですが何分数が多いため攻めるのに時間がかかるのです。今しばらく待っていれば徐々に敵軍を追い立てることができましょうぞ」
そうボダホン侯爵を諭すのは側近だった。
「そうじゃ!ローレン将軍の弟子がまだ生きておったはずじゃ!其奴を前線に放り込めばより攻め込めるのではないか?そうと決まれば今すぐ弟子を呼び寄せるのだ!」
………
「お呼びと聞きましたが…何の用です?」
ジグレイドはボダホン侯爵に礼すら取らず、ましてや不機嫌感を隠すことなくそう言った。
するともちろんボダホン侯爵側は騒ぎ立てる訳で。
「き、貴様!?貴族に対して無礼であろう!」
「取り巻き風情が……黙っていろよ。で?何の用だ?こちとら師匠が死んで傷心中なんだよ」
あまりの言いようにボダホン侯爵は少なく無い時間呆気にとられてしまった。
さらに側近はジグレイドから軽い威圧まで向けられたため立っているのがやっとの様だった。
「そ、そうじゃ!お主を呼んだのは前線で戦っている兵士達の助力をしてほしいからじゃ。ローレン殿を欠いた今、突破力が少々足りん。それとローレン殿を殺したのは敵の将軍だと報告が来ておる。では敵軍を倒すことでローレン殿の仇をとってはくれまいか」
暗にローレンが早々に死んだ為、戦争が長引きそうだからローレンの弟子として責任とって敵を蹴散らせ、とボダホン侯爵は遠回しに伝える。
「……今回だけその安い口車に敢えて乗ってやる。だが次に俺を顎で使おうとしたら……俺を敵にまわすと思え」
こうしてジグレイドは師匠の仇という体裁でバルクド帝国軍に八つ当たりする事となり、最前線へと自ら進んで行くこととなった。
戦場の狼のリーダーであるモルドはそう愚痴りつつも目の前の敵を斬り捨てていた。
現在、戦場の狼は最前線に投入されていた。
そのお陰もあってか目の回るような忙しさで、すでに敵兵をモルドだけでも数十は軽く斬り伏せていた。
「リーダー!他の味方が付いて来ていません!このままだと後続と切り離されます!」
「わかった!後続との足並みが揃うまで前線の維持に努めるぞ!」
戦場の狼の副リーダーであるリーリャのおかげで孤立は免れたものの状況はかなり厳しいものだった。
いくら精鋭揃いといえども疲労は確実に蓄積していく。
このまま戦況が変わらなければギルドメンバーの誰かを失う可能性が大きかった。
一方、中陣では
「ぐぬぬ、なぜ攻めきれんのだ!敵に剛鬼は居ないのだろう!?ではなぜ戦況が停滞しておるのだ!」
とボダホン侯爵が荒れていた。
「侯爵様、確かに敵軍の将軍は居りません。ですが何分数が多いため攻めるのに時間がかかるのです。今しばらく待っていれば徐々に敵軍を追い立てることができましょうぞ」
そうボダホン侯爵を諭すのは側近だった。
「そうじゃ!ローレン将軍の弟子がまだ生きておったはずじゃ!其奴を前線に放り込めばより攻め込めるのではないか?そうと決まれば今すぐ弟子を呼び寄せるのだ!」
………
「お呼びと聞きましたが…何の用です?」
ジグレイドはボダホン侯爵に礼すら取らず、ましてや不機嫌感を隠すことなくそう言った。
するともちろんボダホン侯爵側は騒ぎ立てる訳で。
「き、貴様!?貴族に対して無礼であろう!」
「取り巻き風情が……黙っていろよ。で?何の用だ?こちとら師匠が死んで傷心中なんだよ」
あまりの言いようにボダホン侯爵は少なく無い時間呆気にとられてしまった。
さらに側近はジグレイドから軽い威圧まで向けられたため立っているのがやっとの様だった。
「そ、そうじゃ!お主を呼んだのは前線で戦っている兵士達の助力をしてほしいからじゃ。ローレン殿を欠いた今、突破力が少々足りん。それとローレン殿を殺したのは敵の将軍だと報告が来ておる。では敵軍を倒すことでローレン殿の仇をとってはくれまいか」
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「……今回だけその安い口車に敢えて乗ってやる。だが次に俺を顎で使おうとしたら……俺を敵にまわすと思え」
こうしてジグレイドは師匠の仇という体裁でバルクド帝国軍に八つ当たりする事となり、最前線へと自ら進んで行くこととなった。
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