おちゆく先に

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両将軍が倒れた時、ジグレイドは治療を受け終えたところだった。
本来ならば数日は安静にしていなければならない様な負傷でもジグレイドには永続的なリジェネレーションがあるおかげで割りとすぐに完治した。

「流石は剛鬼だ、回復魔法を使ってもらってもここまで治りにくいとは…」

そんなジグレイドのつぶやきに周囲にいる誰もが回復魔法そんなにすぐに治る方がどうかしてる!と驚愕していた。
もちろんジグレイドに回復魔法をかけていた魔法師も含めてである。
実際は回復魔法だけではないのだが、周囲の人たちはそんな事は知る由もない。

「ありがとう、助かったよ。これでまた戦える」

ジグレイドは治療部隊にお礼を言いすぐさまローレンの元へと駆け出した。




しかし急いで戻ったジグレイドが見た光景はローレンも剛鬼も共に力尽きており地面に倒れ伏している姿だった。

「っ!」

すぐさま駆け寄りローレンの状態を確認するが、無情にもローレンの死という結果しか分からなかった。

「くそっ!また俺は間に合わなかったのか!」

悲しみと怒りで地面を殴りつけるが、ふと疑問に思えた。
なぜローレンはこんな穏やかな表情をしているのだろう?
なぜ剛鬼も同じような表情をしているのだろう?


なぜ?なぜ?なぜ?


そんな疑問が頭の中をグルグルと駆け巡る。
そして以前ローレンが教えてくれたささやかな願いを思い出した。

「ははっ、ローレンさん漸く剛鬼と友人になれたんだな」

そう感傷に浸っているところに無粋な横槍をいれる者がいた。


「お前も敵将だな!覚悟しやがれ!」

ザ・一般兵としか見えないバルクド帝国軍の兵士がジグレイド目掛けて雄叫びをあげながら突っ込んできた。

なぜ今の今まで誰もジグレイドはおろか両将軍へも近寄ることすらしなかったのかというと、ローレンとログの戦闘を見ており、長年激闘を繰り広げた両者が死に間際に和解した場を汚したくなかったという思いがあったからである。

しかしそんな感傷を持ちもしない者もいる。
そんな奴がジグレイドへと斬りかかっていった。


「あ゛?」


不機嫌丸出しに斬りかかってきた兵士を睨み殴り飛ばした。

如何に鎧を着た兵士であってもジグレイドの本気の攻撃には紙も同然だったようで、鎧を貫通して鳩尾に突き刺さった。
そしてそのまま殴り飛ばされた。


「─────っ!!!!」

殴り飛ばされた兵士は声にもならない程地面で悶え苦しんでいる。
そして懸命に首などを掻きむしっている。

おそらく彼は今、呼吸困難と同時に全身の痒みなどに襲われているのだろう。
もちろんジグレイドの猛毒によるものである。
今の今までジグレイドはただ周囲に猛毒を撒き散らすことしかできていなかった。
しかし無神経な兵士をひたすら苦しませてから殺すという思いにより技が昇華し、猛毒を少しばかり操れるようになったのである。
操った、というよりも敵に与える猛毒を選べるようになったと言った方が正しいかもしれないが。


「クソ野郎が!そのまま死ぬまで苦しんでろ!」

ジグレイドは殴り飛ばした兵士にそう罵声を浴びせてローレンの亡骸を抱え後方へと走り去っていった。

ジグレイドが去ったあとバルクド帝国軍の兵士に剛鬼ことログ・ハイローの亡骸も本陣へと運ばれていった。
もちろんその行動を邪魔するものは誰もいなかった。



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