99 / 126
98話
しおりを挟む───グサッ
ログは脇腹に違和感を感じた。
すぐ確認してみると、何やら紐がつけられた黒灰色の短剣が後ろ脇腹に刺さっていた。
「ぐっ…これは油断した…」
「ゴホッ、ゴホッ───剛鬼さんは猪突猛進だって噂があったが、どうやら違うようだな。ちゃんと周りを見れているじゃないか……だがそのせいでこんな若造に噛み付かれているけどな」
蹴られたお腹が余程効いているのか、短槍を杖代わりにしてなんとか立ち上がっているジグレイドに向き直りログは刺さっている短剣を引き抜いた。
血が溢れ出てくるが今はそんな事を気にしている場合ではない。
なぜ味方の兵士が血を吐いて倒れ伏しているのか、これはこの男がやった事なのかと頭の中でグルグルと考えが駆け巡るが、自他共に認める脳筋のログでは解明出来るはずもないため、今自分に出来ることをやろうと決めた。
「ここで何が起きたのかは知らんが…貴公だけはここで仕留めさせてもらう!」
そう宣言してログは立つのがやっとなジグレイドに再び攻勢をかける。
「っ!?」
剛鬼の攻撃が目の前まで迫ってきており絶体絶命のピンチなのだが、ジグレイドは身体強化魔法を領域が発動しない程度まで解いた。
「そうはさせんよ!」
そう言ってジグレイドの前に立ちはだかり剛鬼の大剣を巧く横に逸らしてくれたのはローレンだった。
ジグレイドはローレンが走り寄ってきていることに気づき領域を解除しておいたのである。
確実に剛鬼を倒すなら恩師であるローレンをも領域に巻き込み二人で剛鬼を倒すという考えもあったが、ジグレイドはまだそこまで畜生には落ちていなかった。
「くっ、いいところで邪魔してくれる!」
「ジグ!大丈夫か!?」
「少し時間が欲しいですね…蹴られたところが折れてるみたいです」
「なら下がって回復魔法をかけてもらえ!それまでは私がログ将軍の相手をしていよう。───さてログ将軍、お待たせした」
連れてきた部下にジグレイドを任せローレンはログと対峙した。
ジグレイドから今後の経験の為に剛鬼とまず一騎討ちをさせてくれという無茶な要求をされた時はどうなることかと思ったが、ジグレイドはなかなか奮戦したようだ。
なにせあの剛鬼に手傷を負わせているのだ。
それにここら一帯で何が起きたのか知らないが、バルグド帝国軍の回復魔法師らしき人たちは倒れ伏しており、未だにログを治療できる人は到着していないようだ。
「この状況でローレン将軍と戦う羽目になるとは…俺も運が尽きたようだな。だがこのログ・ハイロー!伊達に剛鬼とは呼ばれてはおらん!貴公だけでも道連れにこの命、燃やし尽くして戦場の誉れとしよう!」
自分のことを誰よりも把握している。
先程まではほんの僅かな違和感でしかなかったが、今ではどの程度動けるのかを把握できていた。
どうしてこの様な状態になったのかは分からないが、自分の身体が毒に侵されている事だけは分かった。
恐らくだがあの短剣にも毒が塗られていたのだろう。短剣に刺される前から僅かな違和感があったが、如実に症状が現れだしたのは刺されてからだ。
並大抵の毒ならば耐性を持っている為、殆ど意味をなさないはずだが、この毒の耐性は持っていなかったようだ。
一体何の毒なのだろうか……吐き気に眩暈、酷い頭痛、高熱、全身の痺れなど色々な症状が出てきている。
もはや一刻も保たないだろう。
それまでにローレン将軍を倒さねば、祖国の未来は明るくないのは明白だ。
只でさえフェイシル王国には将来有望な戦士が育ってきているのだ、せめてフェイシル王国最強だけでも道連れにしなければ死んでも死に切れないというものだ。
今少し我が身体よ!保ってくれ!
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします
藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です
2024年6月中旬に第一巻が発売されます
2024年6月16日出荷、19日販売となります
発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」
中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。
数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。
また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています
この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています
戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています
そんな世界の田舎で、男の子は産まれました
男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました
男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます
そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります
絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて……
この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです
各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます
そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!

【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~
椿紅颯
ファンタジー
目標である登録者3万人の夢を叶えた葭谷和昌こと活動名【カズマ】。
しかし次の日、身に覚えのない大炎上を経験してしまい、SNSと活動アカウントが大量の通報の後に削除されてしまう。
タイミング良くアルバイトもやめてしまい、完全に収入が途絶えてしまったことから探索者になることを決める。
数日間が経過し、とある都市伝説を友人から聞いて実践することに。
すると、聞いていた内容とは異なるものの、レアドロップ&レアスキルを手に入れてしまう!
手に入れたものを活かすため、一度は去った配信業界へと戻ることを決める。
そんな矢先、ダンジョンで狩りをしていると少女達の危機的状況を助け、しかも一部始終が配信されていてバズってしまう。
無名にまで落ちてしまったが、一躍時の人となり、その少女らとパーティを組むことになった。
和昌は次々と偉業を成し遂げ、底辺から最速で成り上がっていく。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

一人だけ竜が宿っていた説。~異世界召喚されてすぐに逃げました~
十本スイ
ファンタジー
ある日、異世界に召喚された主人公――大森星馬は、自身の中に何かが宿っていることに気づく。驚くことにその正体は神とも呼ばれた竜だった。そのせいか絶大な力を持つことになった星馬は、召喚した者たちに好き勝手に使われるのが嫌で、自由を求めて一人その場から逃げたのである。そうして異世界を満喫しようと、自分に憑依した竜と楽しく会話しつつ旅をする。しかし世の中は乱世を迎えており、星馬も徐々に巻き込まれていくが……。

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる