95 / 126
94話
しおりを挟む
救護部隊が詰めているテントには多くの負傷した兵士や冒険者がいたる所に横たわり今もなお回復魔法で治療を受けていた。
「カリーナを!誰でもいい!カリーナを助けてくれ!」
ジグレイドは今にも疲労と魔力不足で倒れそうになりながらも回復魔法を使い続けている救護部隊にカリーナを診てもらおうと駆け寄った。
「今は手が離せません!空いているスペースに…って魔法師団団長様!?」
詰め寄られた回復魔法師はジグレイドが抱いているカリーナを見て驚愕した。
魔法師団はまさしく魔法師のエリート部隊である。そんな部隊の団長ともなればエリート中のエリートで雲の上の存在ともいえる。そんな人が血塗れになり運び込まれてきたのだ。驚くのも必然だった。
「と、とりあえず!あそこで診てみましょう!」
急いで空いているスペースへとカリーナを運び横たえた。
「…っ!誰か!手を貸してくれ!レッドだ!」
回復魔法師がそう叫ぶと重篤でない患者を診ている回復魔法師がこちらに駆け寄ってきた。
「どんな状態だ!」
「辛うじて即死は免れていますが、胸部から背部まで貫通しており、臓器が損傷し出血多量で一刻の猶予もありません!代わる代わる持てる最上の回復魔法を行使し続けなければ命が危ない状態です!」
「よし!二人一組になり持てる回復魔法で最上のものを放て!絶対に助けるぞ!」
救護部隊の健闘のおかげでカリーナの命は何とか繋がった。だがそれは辛うじて命を繋ぐことができたというものでしかなかった。背骨を損傷し神経を傷付けたのである。そのせいでカリーナは足を動かすことができなくなった。幸い麻痺は胴から下で済んで手や腕を動かすことはできるため魔法を行使することには問題はなかったが、今回の戦争への復帰は不可能となってしまった。
亜人族の奇襲があったからといって戦争が中断できるはずもない。バルクド帝国側は合成魔法による被害が前回よりも少なく、さらに合成魔法が途中で消失したため今が攻め時と執拗に攻めてきていた。その為に援軍が来ずにローレンは防戦一方のまま未だに一人で剛鬼と戦い続けていた。
「何があったかは知らんが…どうやら魔法師は死んだようだな」
「くっ!何が起きている!?」
ローレンはジグレイドが魔法師団の方へと走っていったのは気が付いていたが、なぜ合成魔法が動き出す前に消失したのか分からなかった。
後方で守られている魔法師団がそう易々と倒されるはずもないと思うが、魔法の消失ということは術者に何かがあったということしか分からなかった。
未だに両将軍は激しい剣撃をぶつけ合っており、誰もその戦闘に介入出来ずにいた。
いつもであればローレン直属の部下が外から手助けしてくれるのだが、今回は何故だかその手助けがまだなく、苦戦を強いられていた。
「ローレン様!遅くなり申し訳ありません!只今より加勢させていただきます!」
「よし!やるぞ!今日こそ剛鬼を倒すぞ!」
ローレン直属の部下の加勢により戦いの情勢が変わった。流石の剛鬼もローレンとその部下を相手に正面から破るには腕が鈍っている状態でなくともきつい戦力差であり、さらに殿を務めつつ逃げきるのも腕が鈍ってしまっている状態では無理だとログは思えた。
「くっ…ローレン殿!此度は素直に逃げさせてもらおう!撤退だ!退けー!」
ログはそう声を張り上げてすぐさま撤退を開始した。
撤退を開始したバルクド帝国軍に前線のフェイシル王国軍の兵士たちはもちろん追撃を掛けようとしたがローレンはそれを良しとしなかった。
「カリーナを!誰でもいい!カリーナを助けてくれ!」
ジグレイドは今にも疲労と魔力不足で倒れそうになりながらも回復魔法を使い続けている救護部隊にカリーナを診てもらおうと駆け寄った。
「今は手が離せません!空いているスペースに…って魔法師団団長様!?」
詰め寄られた回復魔法師はジグレイドが抱いているカリーナを見て驚愕した。
魔法師団はまさしく魔法師のエリート部隊である。そんな部隊の団長ともなればエリート中のエリートで雲の上の存在ともいえる。そんな人が血塗れになり運び込まれてきたのだ。驚くのも必然だった。
「と、とりあえず!あそこで診てみましょう!」
急いで空いているスペースへとカリーナを運び横たえた。
「…っ!誰か!手を貸してくれ!レッドだ!」
回復魔法師がそう叫ぶと重篤でない患者を診ている回復魔法師がこちらに駆け寄ってきた。
「どんな状態だ!」
「辛うじて即死は免れていますが、胸部から背部まで貫通しており、臓器が損傷し出血多量で一刻の猶予もありません!代わる代わる持てる最上の回復魔法を行使し続けなければ命が危ない状態です!」
「よし!二人一組になり持てる回復魔法で最上のものを放て!絶対に助けるぞ!」
救護部隊の健闘のおかげでカリーナの命は何とか繋がった。だがそれは辛うじて命を繋ぐことができたというものでしかなかった。背骨を損傷し神経を傷付けたのである。そのせいでカリーナは足を動かすことができなくなった。幸い麻痺は胴から下で済んで手や腕を動かすことはできるため魔法を行使することには問題はなかったが、今回の戦争への復帰は不可能となってしまった。
亜人族の奇襲があったからといって戦争が中断できるはずもない。バルクド帝国側は合成魔法による被害が前回よりも少なく、さらに合成魔法が途中で消失したため今が攻め時と執拗に攻めてきていた。その為に援軍が来ずにローレンは防戦一方のまま未だに一人で剛鬼と戦い続けていた。
「何があったかは知らんが…どうやら魔法師は死んだようだな」
「くっ!何が起きている!?」
ローレンはジグレイドが魔法師団の方へと走っていったのは気が付いていたが、なぜ合成魔法が動き出す前に消失したのか分からなかった。
後方で守られている魔法師団がそう易々と倒されるはずもないと思うが、魔法の消失ということは術者に何かがあったということしか分からなかった。
未だに両将軍は激しい剣撃をぶつけ合っており、誰もその戦闘に介入出来ずにいた。
いつもであればローレン直属の部下が外から手助けしてくれるのだが、今回は何故だかその手助けがまだなく、苦戦を強いられていた。
「ローレン様!遅くなり申し訳ありません!只今より加勢させていただきます!」
「よし!やるぞ!今日こそ剛鬼を倒すぞ!」
ローレン直属の部下の加勢により戦いの情勢が変わった。流石の剛鬼もローレンとその部下を相手に正面から破るには腕が鈍っている状態でなくともきつい戦力差であり、さらに殿を務めつつ逃げきるのも腕が鈍ってしまっている状態では無理だとログは思えた。
「くっ…ローレン殿!此度は素直に逃げさせてもらおう!撤退だ!退けー!」
ログはそう声を張り上げてすぐさま撤退を開始した。
撤退を開始したバルクド帝国軍に前線のフェイシル王国軍の兵士たちはもちろん追撃を掛けようとしたがローレンはそれを良しとしなかった。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜
言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。
しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。
それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。
「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」
破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。
気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。
「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。
「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」
学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス!
"悪役令嬢"、ここに爆誕!
いい子ちゃんなんて嫌いだわ
F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが
聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。
おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。
どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。
それが優しさだと思ったの?

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします
藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です
2024年6月中旬に第一巻が発売されます
2024年6月16日出荷、19日販売となります
発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」
中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。
数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。
また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています
この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています
戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています
そんな世界の田舎で、男の子は産まれました
男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました
男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます
そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります
絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて……
この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです
各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます
そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

糸と蜘蛛
犬若丸
ファンタジー
瑠璃が見る夢はいつも同じ。地獄の風景であった。それを除けば彼女は一般的な女子高生だった。
止まない雨が続くある日のこと、誤って階段から落ちた瑠璃。目が覚めると夢で見ていた地獄に立っていた。
男は独り地獄を彷徨っていた。その男に記憶はなく、名前も自分が誰なのかさえ覚えていなかった。鬼から逃げる日々を繰り返すある日のこと、男は地獄に落ちた瑠璃と出会う。
地獄に落ちた女子高生と地獄に住む男、生と死の境界線が交差し、止まっていた時間が再び動き出す。
「カクヨム」にも投稿してます。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる