90 / 126
89話
しおりを挟む
675年 春 バルクド帝国とフェイシル王国の国境線にある湿地帯には雨が降っていた。
ザーザーと雨が降りしきる中、湿地帯では激しい戦いが繰り広げられていた。
バルクド帝国軍はログ・ハイローを全面に押し出しての一転突破で魔法を放とうとするフェイシル王国軍の中央に陣取っている魔法師団へと突き進んでいた。
案の定組合員では剛鬼を止めることは出来ず簡単に突破されていた。だが組合員の後ろにはローレンとジグレイドが剛鬼を迎え撃つ為に陣取っている。組合員は剛鬼とはまともに打ち合わずに剛鬼の後ろにいる兵士たちを間引くのが役割だったのだが、もちろん作戦を無視して剛鬼へと無謀にも挑んだ組合員もいた。当然剛鬼の振るう大剣で上下に分かたれてしまっていたが。
「久しいな、ローレン将軍」
「ああ、ログ将軍もな。前回は貴殿がいなかったせいで出番がなかった」
「らしいな。それと今は将軍ではなく、ただの兵士だ。してそこの者は?」
「さすがに私も歳でな、貴殿の相手をするのはしんどくてな。助っ人を頼んだのだよ。紹介しよう私の弟子のジグレイドだ」
「どうも、お噂はかねがね」
「なんだ?まだ若いではないか。まだ若いというのに今日殺す気か?」
「はっはっは、剛鬼ともあろうものが戦場で冗談を言うとはな。貴殿はまだそんな歳ではないだろう」
二人は気安い感じで会話しているが周りから見ればただの牽制の仕合だった。少しでも隙を見せたら互いが斬りかかる雰囲気が伝わり誰もが固唾を見守っていた。
「ふっ、敵とはいえこうも何年も顔を逢わせていると気が緩んでしまうな。だが、そろそろ始めようか…」
途端に重圧感が増す。今まではビリビリした空気だったが今ではズンッと重々しい空気に変わりただの兵士ではその重圧に耐えれずまともに動くことすらできないほどだった。
「そうだな、私たちは敵同士戦うのみ…2対1だが許せよ」
ローレンも集中力を高めだした。
一方ジグレイドはというと、じっと佇んでいるだけだった。別に剛鬼からの重圧で動けないということではない。まずはローレンと剛鬼の戦闘速度に目を慣らす必要があるのである。いくらローレンに弟子入りして強くなったとはいってもまだ全力のローレンには及ばない。ましてや剛鬼にいたってはそのローレンよりも格上なのだ。まずは動きについていけるかという問題があるのである。
そしてそれは一瞬の出来事だった。
ガギーンと大気を震わせる激突音が鳴り響いた。
いつの間にかローレンと剛鬼が両者のいた中央で鍔迫り合いをしていた。
そして2人がニヤリと笑った。
それからの戦いは異次元の戦いだった。
両軍の兵士にはお馴染みだが組合員からすると音だけが鳴り響く戦闘光景というのは初めての経験だった。
僅かの間に何十と打ち合っていた両者の姿が現れた。
「俺も衰えたがローレン将軍も衰えたな。互いに以前ほど動きにキレがない」
周囲からしたら何処がだ!と言いたくなるような発言だが、以前2人からするとだいぶ動きが遅くなっていた。
「確かにな、もう引退せねばと考えてはいるが…。ログ殿、貴殿はこの数年何をしていた?いや、何をされたが正しいのか?貴殿ともあろうものがそこまで衰えるとはな」
以前までであればこうも拮抗することは出来なかった。むしろいつも見逃されていた感がしていたのだ。だが今は何とかではあるが拮抗出来ているようにも思えていた。
「ふっ、少し訓練が出来なかったのでな…」
「そうか…ジグ!いけそうか!?」
「ああ、問題ない」
ローレンの問いかけにジグレイドはそう答え、一歩前へ出てログへと声を掛けた。
「若輩者なのでお手柔らかにお願いしますよ」
ザーザーと雨が降りしきる中、湿地帯では激しい戦いが繰り広げられていた。
バルクド帝国軍はログ・ハイローを全面に押し出しての一転突破で魔法を放とうとするフェイシル王国軍の中央に陣取っている魔法師団へと突き進んでいた。
案の定組合員では剛鬼を止めることは出来ず簡単に突破されていた。だが組合員の後ろにはローレンとジグレイドが剛鬼を迎え撃つ為に陣取っている。組合員は剛鬼とはまともに打ち合わずに剛鬼の後ろにいる兵士たちを間引くのが役割だったのだが、もちろん作戦を無視して剛鬼へと無謀にも挑んだ組合員もいた。当然剛鬼の振るう大剣で上下に分かたれてしまっていたが。
「久しいな、ローレン将軍」
「ああ、ログ将軍もな。前回は貴殿がいなかったせいで出番がなかった」
「らしいな。それと今は将軍ではなく、ただの兵士だ。してそこの者は?」
「さすがに私も歳でな、貴殿の相手をするのはしんどくてな。助っ人を頼んだのだよ。紹介しよう私の弟子のジグレイドだ」
「どうも、お噂はかねがね」
「なんだ?まだ若いではないか。まだ若いというのに今日殺す気か?」
「はっはっは、剛鬼ともあろうものが戦場で冗談を言うとはな。貴殿はまだそんな歳ではないだろう」
二人は気安い感じで会話しているが周りから見ればただの牽制の仕合だった。少しでも隙を見せたら互いが斬りかかる雰囲気が伝わり誰もが固唾を見守っていた。
「ふっ、敵とはいえこうも何年も顔を逢わせていると気が緩んでしまうな。だが、そろそろ始めようか…」
途端に重圧感が増す。今まではビリビリした空気だったが今ではズンッと重々しい空気に変わりただの兵士ではその重圧に耐えれずまともに動くことすらできないほどだった。
「そうだな、私たちは敵同士戦うのみ…2対1だが許せよ」
ローレンも集中力を高めだした。
一方ジグレイドはというと、じっと佇んでいるだけだった。別に剛鬼からの重圧で動けないということではない。まずはローレンと剛鬼の戦闘速度に目を慣らす必要があるのである。いくらローレンに弟子入りして強くなったとはいってもまだ全力のローレンには及ばない。ましてや剛鬼にいたってはそのローレンよりも格上なのだ。まずは動きについていけるかという問題があるのである。
そしてそれは一瞬の出来事だった。
ガギーンと大気を震わせる激突音が鳴り響いた。
いつの間にかローレンと剛鬼が両者のいた中央で鍔迫り合いをしていた。
そして2人がニヤリと笑った。
それからの戦いは異次元の戦いだった。
両軍の兵士にはお馴染みだが組合員からすると音だけが鳴り響く戦闘光景というのは初めての経験だった。
僅かの間に何十と打ち合っていた両者の姿が現れた。
「俺も衰えたがローレン将軍も衰えたな。互いに以前ほど動きにキレがない」
周囲からしたら何処がだ!と言いたくなるような発言だが、以前2人からするとだいぶ動きが遅くなっていた。
「確かにな、もう引退せねばと考えてはいるが…。ログ殿、貴殿はこの数年何をしていた?いや、何をされたが正しいのか?貴殿ともあろうものがそこまで衰えるとはな」
以前までであればこうも拮抗することは出来なかった。むしろいつも見逃されていた感がしていたのだ。だが今は何とかではあるが拮抗出来ているようにも思えていた。
「ふっ、少し訓練が出来なかったのでな…」
「そうか…ジグ!いけそうか!?」
「ああ、問題ない」
ローレンの問いかけにジグレイドはそう答え、一歩前へ出てログへと声を掛けた。
「若輩者なのでお手柔らかにお願いしますよ」
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
異世界坊主の成り上がり
峯松めだか(旧かぐつち)
ファンタジー
山歩き中の似非坊主が気が付いたら異世界に居た、放っておいても生き残る程度の生存能力の山男、どうやら坊主扱いで布教せよということらしい、そんなこと言うと坊主は皆死んだら異世界か?名前だけで和尚(おしょう)にされた山男の明日はどっちだ?
矢鱈と生物学的に細かいゴブリンの生態がウリです?
本編の方は無事完結したので、後はひたすら番外で肉付けしています。
タイトル変えてみました、
旧題異世界坊主のハーレム話
旧旧題ようこそ異世界 迷い混んだのは坊主でした
「坊主が死んだら異世界でした 仏の威光は異世界でも通用しますか? それはそうとして、ゴブリンの生態が色々エグいのですが…」
迷子な坊主のサバイバル生活 異世界で念仏は使えますか?「旧題・異世界坊主」
ヒロイン其の2のエリスのイメージが有る程度固まったので画像にしてみました、灯に関しては未だしっくり来ていないので・・未公開
因みに、新作も一応準備済みです、良かったら見てやって下さい。
少女は石と旅に出る
https://kakuyomu.jp/works/1177354054893967766
SF風味なファンタジー、一応この異世界坊主とパラレル的にリンクします
少女は其れでも生き足掻く
https://kakuyomu.jp/works/1177354054893670055
中世ヨーロッパファンタジー、独立してます


二度目の転生は傍若無人に~元勇者ですが二度目『も』クズ貴族に囲まれていてイラッとしたのでチート無双します~
K1-M
ファンタジー
元日本人の俺は転生勇者として異世界で魔王との戦闘の果てに仲間の裏切りにより命を落とす。
次に目を覚ますと再び赤ちゃんになり二度目の転生をしていた。
生まれた先は下級貴族の五男坊。周りは貴族至上主義、人間族至上主義のクズばかり。
…決めた。最悪、この国をぶっ壊す覚悟で元勇者の力を使おう…と。
※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも掲載しています。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
いい子ちゃんなんて嫌いだわ
F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが
聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。
おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。
どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。
それが優しさだと思ったの?

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします
藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です
2024年6月中旬に第一巻が発売されます
2024年6月16日出荷、19日販売となります
発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」
中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。
数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。
また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています
この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています
戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています
そんな世界の田舎で、男の子は産まれました
男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました
男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます
そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります
絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて……
この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです
各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます
そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる