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87話
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うららかな春の日差しに植物は芽吹き、花が咲き出し、動物は元気に森や草原を駆け回っている季節の中、バルクド帝国とフェイシル王国の国境線にある湿地帯では総勢約2万もの人がピリピリとした空気の中向かい合っていた。この2万という数はかつて無いほど大軍であった。
この内バルクド帝国の戦力は15,000を超えるほどであり、対してフェイシル王国の戦力は例年通り5,000程度だった。数だけで言えば圧倒的にバルクド帝国が有利である。だがここに兵士の練達度も込みで考えるとほぼ同程度にまでなってしまう。
更に軍師の有無までこれに加わるため結局はフェイシル王国が有利なのには未だ変わりはなかった。
675年 春 湿地帯のフェイシル王国陣地にて
「ジグ、亜人族への警戒は頼んだぞ。もし勝てないと思ったらこれを使え、すぐにとは言えないが駆け付けよう」
そう言ってローレンは丸い石のようなものをジグレイドに手渡した。
「これは魔道具?魔力を流せばいいのか?」
「そうだ、使い切りの魔道具だから今は流すなよ。これはまだ開発途中のものだからそう数はない。元とはいえ弟子の安否は気になるからな」
なぜ元が付くのか…それは単にジグレイドがローレンに一撃いれることが出来たからであり、約束通りにローレンの弟子ではなくなっていた。
だがここ数年はずっと一緒に訓練などしていたため師弟でなくなった今でも自然と一緒に訓練をしていた。
「そうか、ありがとう。ローレンさんも気をつけてな。今回は剛鬼もいるんだろ?」
「ああ、そうらしいな。今回も魔法師団に開幕から魔法を放ってほしかったのだが…剛鬼がいては無理だろうな」
残念そうに言っているが、ジグレイドにはどこか楽しげにも見えた。
「前々から思っていたんだが、なぜ剛鬼がいると魔法が使えないんだ?」
それは当然の疑問だった。魔法はあれだけの被害を与えれるのだ。毎回開幕に魔法を放てばそれだけこちらの被害を減らせるはずなのである。
「確かに魔法の効果は絶大だ。普通の相手ならば毎回魔法を放ってもいいだろう。だが相手はあの剛鬼だ。何年前だったか…剛鬼はな、前任の魔法師団団長が放った魔法を瞬時に察知し、どうやったかは知らないが効果が現れる前に魔法を斬り裂いたのだ。そして剛鬼はその魔法が危険だと判断し、すぐに発動者を殺しにかかった。遠く離れていたはずなのに剛鬼は一人で突進して逃げる前団長の首を跳ねたのだ。この出来事から剛鬼がいるときは魔法を放つことを止めている。魔法師というのは貴重だからな」
「ローレンさんでも止めれないのか?」
「無理だな。確かに毎回剛鬼を止めているのは私だ。皆には力が拮抗しているようにも見えるだろう。だがな、それはまやかしだ。剛鬼の方が私よりもずっと強い。私が剛鬼を止めれていれるのは周りの味方のおかげでもあるのだ。攻撃をしてはこないが武器を持った敵に囲まれている状況では私一人に集中できるはずもない。毎回剛鬼はその状況で私と互角に以上に戦っているのだ。剛鬼こそ本物の化け物だよ」
やれやれと首を竦めてそう言うローレン。
すると外からこちらへ走り寄ってくる音がした。
「ローレン様、そろそろ会議を始めるため、至急指揮官テントへ出向くようにとのことです」
兵士がそう言ってきたので、ローレンは返事をして立ち上がった。
「やれやれ、オウルが総指揮官であれば良かったんだがな。ジグ少し出てくる。ここに居てもいいが、私の酒を飲み干したりしないでくれよ。ではまたな」
今回の戦争が始まる前、オウルーゼルは急に体調を崩した。すぐに体調が良くなると思われたが、数ヶ月経とうと体調は良くならなかった。
そして戦争の兆しが現れた時には体調はまだ回復しておらずやむなく違う総指揮官を国王陛下が任命したのだった。
この内バルクド帝国の戦力は15,000を超えるほどであり、対してフェイシル王国の戦力は例年通り5,000程度だった。数だけで言えば圧倒的にバルクド帝国が有利である。だがここに兵士の練達度も込みで考えるとほぼ同程度にまでなってしまう。
更に軍師の有無までこれに加わるため結局はフェイシル王国が有利なのには未だ変わりはなかった。
675年 春 湿地帯のフェイシル王国陣地にて
「ジグ、亜人族への警戒は頼んだぞ。もし勝てないと思ったらこれを使え、すぐにとは言えないが駆け付けよう」
そう言ってローレンは丸い石のようなものをジグレイドに手渡した。
「これは魔道具?魔力を流せばいいのか?」
「そうだ、使い切りの魔道具だから今は流すなよ。これはまだ開発途中のものだからそう数はない。元とはいえ弟子の安否は気になるからな」
なぜ元が付くのか…それは単にジグレイドがローレンに一撃いれることが出来たからであり、約束通りにローレンの弟子ではなくなっていた。
だがここ数年はずっと一緒に訓練などしていたため師弟でなくなった今でも自然と一緒に訓練をしていた。
「そうか、ありがとう。ローレンさんも気をつけてな。今回は剛鬼もいるんだろ?」
「ああ、そうらしいな。今回も魔法師団に開幕から魔法を放ってほしかったのだが…剛鬼がいては無理だろうな」
残念そうに言っているが、ジグレイドにはどこか楽しげにも見えた。
「前々から思っていたんだが、なぜ剛鬼がいると魔法が使えないんだ?」
それは当然の疑問だった。魔法はあれだけの被害を与えれるのだ。毎回開幕に魔法を放てばそれだけこちらの被害を減らせるはずなのである。
「確かに魔法の効果は絶大だ。普通の相手ならば毎回魔法を放ってもいいだろう。だが相手はあの剛鬼だ。何年前だったか…剛鬼はな、前任の魔法師団団長が放った魔法を瞬時に察知し、どうやったかは知らないが効果が現れる前に魔法を斬り裂いたのだ。そして剛鬼はその魔法が危険だと判断し、すぐに発動者を殺しにかかった。遠く離れていたはずなのに剛鬼は一人で突進して逃げる前団長の首を跳ねたのだ。この出来事から剛鬼がいるときは魔法を放つことを止めている。魔法師というのは貴重だからな」
「ローレンさんでも止めれないのか?」
「無理だな。確かに毎回剛鬼を止めているのは私だ。皆には力が拮抗しているようにも見えるだろう。だがな、それはまやかしだ。剛鬼の方が私よりもずっと強い。私が剛鬼を止めれていれるのは周りの味方のおかげでもあるのだ。攻撃をしてはこないが武器を持った敵に囲まれている状況では私一人に集中できるはずもない。毎回剛鬼はその状況で私と互角に以上に戦っているのだ。剛鬼こそ本物の化け物だよ」
やれやれと首を竦めてそう言うローレン。
すると外からこちらへ走り寄ってくる音がした。
「ローレン様、そろそろ会議を始めるため、至急指揮官テントへ出向くようにとのことです」
兵士がそう言ってきたので、ローレンは返事をして立ち上がった。
「やれやれ、オウルが総指揮官であれば良かったんだがな。ジグ少し出てくる。ここに居てもいいが、私の酒を飲み干したりしないでくれよ。ではまたな」
今回の戦争が始まる前、オウルーゼルは急に体調を崩した。すぐに体調が良くなると思われたが、数ヶ月経とうと体調は良くならなかった。
そして戦争の兆しが現れた時には体調はまだ回復しておらずやむなく違う総指揮官を国王陛下が任命したのだった。
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