86 / 126
85話
しおりを挟む
674年 秋 バルクド帝国 帝都マグギルにある宮廷にて
カツカツと誰かが階段を降りてくる音が聞こえてきた。
「さて我が帝国は前回の戦争で手酷くやられたわけだが…そろそろ我が帝国の本気というものをフェイシルの蛮族共に教えてやる必要がある。そこでだ!ログ・ハイローよ。貴様をここから出してやる。その代わりに次の戦争で誰よりも武功を立てるのだ。そうすれば今までの敗戦のことは水に流し、将軍の座に戻してやろう。よいな!」
アルザーンは牢の中にいるログへとそう伝えるだけ伝えて返事も聞かずに降りてきた階段を登り行ってしまった。
「はぁ…拒否権はないのか。体力も衰えているだろうし、もはやあやつと戦うのは厳しいかもしれぬな…」
ログはここ数年もの間、ずっと牢に容れられていた。理由は反省を促すためとアルザーンは言っているが、本当の理由は他の部下に失敗すればログのように牢へ何年も容れるぞ!という脅しのためだった。
「ログ将軍…大丈夫ですか?」
何年もの間、ログへと食事を運んできてくれていた兵士が牢の鍵を開けて手を差し伸べてくれた。
「ああ、どうやら動くだけならば大丈夫なようだ。それとまだ俺は将軍に復帰してはいない。一兵士のログ・ハイローだ。そう畏まらなくてよい」
「いえ、たとえログ様がどのような立場であろうと私のような雑兵からすれば立場のあるお方ですので」
「そういうものなのか?…ところでいくつか知りたい事があるのだが、大丈夫か?」
何年も牢の中で過ごしていたので世間の情報が全く分からないのだ。まずは情報収集から始めようとログは歩きながら兵士に尋ねる。
「はい、私が知る範囲であれば何にでもお答えします」
「助かる。ではまずは前回の戦争のことを知りたい。出来るだけ詳しく教えてくれないか?」
「わかりました。では結末から言いますと……」
「長時間喋らせてすまなかったな。帰りにこれで何か買って帰ると良い」
すでに外は暗くなっており、ログが牢から出たのが昼前くらいだったので、この兵士に随分と長い間質問していたことになる。
その手間賃としてログは兵士に銀貨数枚を革袋に入れて渡したのである。
「こんなに頂けません!」
慌てて返そうとしてくるが、
「気にするな、俺が牢にいたときに良くしてくれた返礼も含めてあるからな」
ログはそう言って無理やり兵士にお金を持たせたのだった。
ログが牢から出されて数日後、バルクド帝国の上級貴族が宮廷に集められ会議が開かれた。
「よく集まってくれた。我は嬉しいぞ!ここで世間話でもしたいところだが、あまり時間がないのでな。早速本題に入らせてもらおう。皆も感付いているとは思うが、翌年の春にフェイシル王国の蛮族共に先の返礼をしようと思う。前回は少し無理をしたため返礼が数年遅れてしまったが、今回は誰がなんと言おうと我自らが指揮を執りしっかりと返礼をしよう。さて…我にバルクド帝国の貴族の力を見せてくれる者はいるか?もし!目立った武功を立てた者がいたのならば!今空いている大臣の席にも就くことが出来るやもしれぬぞ?」
アルザーンは集まった上級貴族を挑発的な笑みを浮かべながら見渡す。
「陛下!私めが必ずや武功を立ててご覧にいれましょうぞ!」
「いえ!陛下!私めが!」
「いえ、私めが!」
一人が宣言した途端に続々と宣言しだした貴族たちにアルザーンは満足そうに頷き。
「さすが我が帝国自慢の上級貴族だ!では我と共にフェイシルの蛮族共を根絶やしにしようぞ!」
「「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」」
貴族の返事に満足したアルザーンは鷹揚に頷き、本日の会議をお開きとした。
カツカツと誰かが階段を降りてくる音が聞こえてきた。
「さて我が帝国は前回の戦争で手酷くやられたわけだが…そろそろ我が帝国の本気というものをフェイシルの蛮族共に教えてやる必要がある。そこでだ!ログ・ハイローよ。貴様をここから出してやる。その代わりに次の戦争で誰よりも武功を立てるのだ。そうすれば今までの敗戦のことは水に流し、将軍の座に戻してやろう。よいな!」
アルザーンは牢の中にいるログへとそう伝えるだけ伝えて返事も聞かずに降りてきた階段を登り行ってしまった。
「はぁ…拒否権はないのか。体力も衰えているだろうし、もはやあやつと戦うのは厳しいかもしれぬな…」
ログはここ数年もの間、ずっと牢に容れられていた。理由は反省を促すためとアルザーンは言っているが、本当の理由は他の部下に失敗すればログのように牢へ何年も容れるぞ!という脅しのためだった。
「ログ将軍…大丈夫ですか?」
何年もの間、ログへと食事を運んできてくれていた兵士が牢の鍵を開けて手を差し伸べてくれた。
「ああ、どうやら動くだけならば大丈夫なようだ。それとまだ俺は将軍に復帰してはいない。一兵士のログ・ハイローだ。そう畏まらなくてよい」
「いえ、たとえログ様がどのような立場であろうと私のような雑兵からすれば立場のあるお方ですので」
「そういうものなのか?…ところでいくつか知りたい事があるのだが、大丈夫か?」
何年も牢の中で過ごしていたので世間の情報が全く分からないのだ。まずは情報収集から始めようとログは歩きながら兵士に尋ねる。
「はい、私が知る範囲であれば何にでもお答えします」
「助かる。ではまずは前回の戦争のことを知りたい。出来るだけ詳しく教えてくれないか?」
「わかりました。では結末から言いますと……」
「長時間喋らせてすまなかったな。帰りにこれで何か買って帰ると良い」
すでに外は暗くなっており、ログが牢から出たのが昼前くらいだったので、この兵士に随分と長い間質問していたことになる。
その手間賃としてログは兵士に銀貨数枚を革袋に入れて渡したのである。
「こんなに頂けません!」
慌てて返そうとしてくるが、
「気にするな、俺が牢にいたときに良くしてくれた返礼も含めてあるからな」
ログはそう言って無理やり兵士にお金を持たせたのだった。
ログが牢から出されて数日後、バルクド帝国の上級貴族が宮廷に集められ会議が開かれた。
「よく集まってくれた。我は嬉しいぞ!ここで世間話でもしたいところだが、あまり時間がないのでな。早速本題に入らせてもらおう。皆も感付いているとは思うが、翌年の春にフェイシル王国の蛮族共に先の返礼をしようと思う。前回は少し無理をしたため返礼が数年遅れてしまったが、今回は誰がなんと言おうと我自らが指揮を執りしっかりと返礼をしよう。さて…我にバルクド帝国の貴族の力を見せてくれる者はいるか?もし!目立った武功を立てた者がいたのならば!今空いている大臣の席にも就くことが出来るやもしれぬぞ?」
アルザーンは集まった上級貴族を挑発的な笑みを浮かべながら見渡す。
「陛下!私めが必ずや武功を立ててご覧にいれましょうぞ!」
「いえ!陛下!私めが!」
「いえ、私めが!」
一人が宣言した途端に続々と宣言しだした貴族たちにアルザーンは満足そうに頷き。
「さすが我が帝国自慢の上級貴族だ!では我と共にフェイシルの蛮族共を根絶やしにしようぞ!」
「「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」」
貴族の返事に満足したアルザーンは鷹揚に頷き、本日の会議をお開きとした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
17
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる