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83話
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674年 秋 フェイシル王国 王都ムルスにて
ジグレイドがローレンに弟子入りしてから2年が経過していた。
この2年バルクド帝国は戦争を仕掛けてはこずに自国の建て直しに力を注いでいるようだった。おかげでジグレイドはローレンと共に各地を回るといった訓練の妨げになるようなことをしなくて済んでいた。尤も訓練がキツすぎて各地を回っていた方が楽だったかもしれないが、強くなるためだと言い聞かせてローレンの鬼のような訓練に必死でしがみついていっていた。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
「どうした?もうへばったのか?そんな事では私に一撃をいれることはまだまだ先になるな」
「なんでその歳でそんなに動けるんだよ!魔法使ってるだろ!」
「何を言っている。魔法を使っていないことはジグにも分かっているだろう。いつまでもへばってないで次の訓練をするぞ!」
今日も朝から軽い走り込みから始まり筋力トレーニング、そして昼まで永遠と素振りを行う。昼休憩の後は模擬戦を夜になるまで行う。
これが1日の訓練メニューだ。意外と楽そうだと思うが考え直してほしい。この訓練の相手は全て人外のローレンなのだ。訓練の途中で食事以外の休憩を挟むわけがないのである。
いつもであれば騎士や兵士が一緒に訓練をしているのでまだ楽なのだが、今日はローレンと二人っきりでの訓練なのである。
なぜかというと、普通に訓練が休みなのだ。だが弟子のジグレイドに休みなどない。ローレンが訓練すると言えばそれについていくしかないのである。
「よし!そろそろ昼食を食べに行くぞ」
漸く素振り地獄から解放されたジグレイドはいつものように声にもならない声を出しながら地面に倒れこんだ。
「なんだ?またへばったのか?いい加減魔法無しでついてこられるようになれ。魔法に頼りきっている証拠だ。魔力が尽きたら何もできなくなるぞ」
「ぐっ…わかっているさ」
本当は魔力が尽きることがないジグレイドだが、ローレンにはまだそのことを伝えていなかった。
「ローレン様!」
疲れ果てていたジグレイドがなんとか立ち上がろうとしているとき兵士が走り寄ってきた。
「どうした?」
「陛下がお呼びです。すぐに会議室へ来るようにと」
「そうか、すぐにいこう。おそらく会議はすぐには終わらんだろう。今日の訓練はここまでだ。ではまた後でな」
そう言うとローレンは呼びにきた兵士と共に王城へと走っていった。
フェイシル王国 王城にて
今日の会議は四人ではなく多くの上級貴族の当主が出席していた。いつもは自分の領地にいてなかなか会議に参加できないのだが今回は珍しく多くの貴族が参加していた。
「では将軍も来たことだ。会議を開始しよう。まずバルクド帝国へと放っていた密偵からなにやら兵や武器を集める動きがあると報告がきた。次の春にはまた戦争を仕掛けてくるやもしれん」
この国王の発言にすでに知っていた大臣のウォルマを除いた一同がまたかとでも言いたげにため息を吐いた。
「また戦争ですか…漸く落ち着いてきたというのに」
「大臣、そうは言っても相手が仕掛けてくるのだ。仕方なかろう」
「そうはいいますが戦争の度に膨大な資金を使わねばならないのです。予算をかき集めるこちらとしては勘弁してほしいのですよ。それにその予算をもっと国民の為に使えばより良い国へと出来るというのに…バルクドの阿呆共め!いい加減勝てぬとなぜ気づかぬのだ!」
「大臣、落ち着くのだ。予算であれば国庫から出せばよかろう。それに問題はバルクド帝国よりも他にあるだろう」
「亜人…ですね」
「そうだ。亜人族に好き勝手にさせるわけにはいかん。今年こそこちらの被害なく対処せねばならぬ。もしこれ以上被害が出るのであれば組合から何を言われるか分かったものではないからな」
「もうすでに苦情はきてる。私の方にも何件かきてた」
「魔法師団にもきていたのか…苦情なら亜人族に言えばいいものを」
「そう言うでない、全ての亜人族が加担している訳ではあるまい。して亜人族の拠点探しはどうなっておるのだ?」
「進展はなし、誰かがジグを独り占めしてるせい」
「ジグはまだ私の弟子だ。仕方ないだろう」
「そこまでだ。今は戦争の話をしよう!」
なんとかウォルマが仲裁して会議を再開するのだった。
ジグレイドがローレンに弟子入りしてから2年が経過していた。
この2年バルクド帝国は戦争を仕掛けてはこずに自国の建て直しに力を注いでいるようだった。おかげでジグレイドはローレンと共に各地を回るといった訓練の妨げになるようなことをしなくて済んでいた。尤も訓練がキツすぎて各地を回っていた方が楽だったかもしれないが、強くなるためだと言い聞かせてローレンの鬼のような訓練に必死でしがみついていっていた。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
「どうした?もうへばったのか?そんな事では私に一撃をいれることはまだまだ先になるな」
「なんでその歳でそんなに動けるんだよ!魔法使ってるだろ!」
「何を言っている。魔法を使っていないことはジグにも分かっているだろう。いつまでもへばってないで次の訓練をするぞ!」
今日も朝から軽い走り込みから始まり筋力トレーニング、そして昼まで永遠と素振りを行う。昼休憩の後は模擬戦を夜になるまで行う。
これが1日の訓練メニューだ。意外と楽そうだと思うが考え直してほしい。この訓練の相手は全て人外のローレンなのだ。訓練の途中で食事以外の休憩を挟むわけがないのである。
いつもであれば騎士や兵士が一緒に訓練をしているのでまだ楽なのだが、今日はローレンと二人っきりでの訓練なのである。
なぜかというと、普通に訓練が休みなのだ。だが弟子のジグレイドに休みなどない。ローレンが訓練すると言えばそれについていくしかないのである。
「よし!そろそろ昼食を食べに行くぞ」
漸く素振り地獄から解放されたジグレイドはいつものように声にもならない声を出しながら地面に倒れこんだ。
「なんだ?またへばったのか?いい加減魔法無しでついてこられるようになれ。魔法に頼りきっている証拠だ。魔力が尽きたら何もできなくなるぞ」
「ぐっ…わかっているさ」
本当は魔力が尽きることがないジグレイドだが、ローレンにはまだそのことを伝えていなかった。
「ローレン様!」
疲れ果てていたジグレイドがなんとか立ち上がろうとしているとき兵士が走り寄ってきた。
「どうした?」
「陛下がお呼びです。すぐに会議室へ来るようにと」
「そうか、すぐにいこう。おそらく会議はすぐには終わらんだろう。今日の訓練はここまでだ。ではまた後でな」
そう言うとローレンは呼びにきた兵士と共に王城へと走っていった。
フェイシル王国 王城にて
今日の会議は四人ではなく多くの上級貴族の当主が出席していた。いつもは自分の領地にいてなかなか会議に参加できないのだが今回は珍しく多くの貴族が参加していた。
「では将軍も来たことだ。会議を開始しよう。まずバルクド帝国へと放っていた密偵からなにやら兵や武器を集める動きがあると報告がきた。次の春にはまた戦争を仕掛けてくるやもしれん」
この国王の発言にすでに知っていた大臣のウォルマを除いた一同がまたかとでも言いたげにため息を吐いた。
「また戦争ですか…漸く落ち着いてきたというのに」
「大臣、そうは言っても相手が仕掛けてくるのだ。仕方なかろう」
「そうはいいますが戦争の度に膨大な資金を使わねばならないのです。予算をかき集めるこちらとしては勘弁してほしいのですよ。それにその予算をもっと国民の為に使えばより良い国へと出来るというのに…バルクドの阿呆共め!いい加減勝てぬとなぜ気づかぬのだ!」
「大臣、落ち着くのだ。予算であれば国庫から出せばよかろう。それに問題はバルクド帝国よりも他にあるだろう」
「亜人…ですね」
「そうだ。亜人族に好き勝手にさせるわけにはいかん。今年こそこちらの被害なく対処せねばならぬ。もしこれ以上被害が出るのであれば組合から何を言われるか分かったものではないからな」
「もうすでに苦情はきてる。私の方にも何件かきてた」
「魔法師団にもきていたのか…苦情なら亜人族に言えばいいものを」
「そう言うでない、全ての亜人族が加担している訳ではあるまい。して亜人族の拠点探しはどうなっておるのだ?」
「進展はなし、誰かがジグを独り占めしてるせい」
「ジグはまだ私の弟子だ。仕方ないだろう」
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