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74話
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フェイシル王国陣地にある指揮官テントにて
ジグレイドとローレンが机を挟んで向かい合って椅子に座っていた。
「久しいな。前回の戦争の時以来になるかな?」
「そうでもないですよ、まだ一年くらいしか経っていませんし。まあ俺としては再びこうして将軍様とお話する機会なんて一般人の俺には一年に一回あれば多い方だと思っていますが」
「そうでもないだろう、オウルーゼル公爵の依頼を何度か受けていたとか聞いているぞ。立場的には私よりもオウルーゼル公爵の方が上なんだがな、知らないわけではないだろう?」
ローレンはカリーナと仲の良いことも知ってはいるが、ここではあえて言わないでおいた。
「そういえばそうでしたね、俺的には将軍様の方が見た目も貫録があって緊張してしまいまからね。そうだ、将軍様に聞いてみたかったことがあったんでした」
「ほう、答えられることならば答えよう」
「将軍様はどのようにしてその強さを手に入れたのですか?できれば鍛錬法を教えてほしいのですが・・・」
今回、ジグレイドはハヌマエンと戦い手も足も出なかったことが悔しくて仕方なかった。装備のおかげで勝てはしたが、内容を思い返してみると一方的に殴り飛ばされている場面しかなかったからだ。
「ふむ・・・ではまずジグレイド君に問おう。なぜ強さを欲する?今のままでも十分に強いと私は思うがな」
ローレンは前回モルドに飛び掛かったジグレイドを取り押さえたときにその動きや身のこなしである程度の実力は計れていた。もちろんあの時は重傷で万全の動きではないことも考慮してだが。
「今のままではおそらくダメなんです・・・。今のままでは俺が倒すべき敵には全く歯が立たない」
悔しそうに俯いてしまったジグレイドを眺めてローレンはどう答えるか悩んだ。
『おそらく敵というのは竜人だろう。となると強くなる目的は復讐か・・・。手を貸してもいいのだろうか・・・だが今回も多くの組合員が亜人族に殺されてしまった。私だけではすべてを防ぐことはできないことは明白だが、復讐にとりつかれてしまいそうな彼を頼りにするのはどうなのだろうか・・・だが今回、仲間を守るために単身囮になったと聞いた。そのくらい冷静な判断ができるのであれば鍛えてやるのもいいかもしれないな』
「不純な動機ですが、どうしても強くならないといけないんです!もう二度と亜人共に奪われないためにも!だから教えてくれませんか?」
ローレンが悩んでいると俯いていたジグレイドが強い眼差しで見詰めてきた。
「そうだな・・・確かに最近の亜人族はやりたい放題にしておるようだしな。私もどうにかしたいとは思っているのは確かだ。今回、私のいた場所にだけ亜人族は現れなかったのは知っているか?運がよかったのかもしれんが、まずそれはないと私は考えている。つまり亜人族は分の悪い戦いは避けている傾向がある。何が言いたいのかというと、部隊の中に私並みの強大な戦力がいたとしたら亜人族は襲い掛かってこないという可能性がある。その役目を引き受けてもいいというならば、ジグレイド君を私自ら鍛えてあげよう。どうかな?」
「いいのですか?俺としては大歓迎な申し出なのですが・・・」
「かまわんさ、それに私の仕事にも同行してもらうぞ。まあ殆ど王城にいることが多いがな」
「それはどのくらいの期間鍛えてもらえるのですか?流石に数日とかだと殆ど意味がなさそうですし、逆に何十年もとなると鍛え続けるだけで目的が完遂できなくなりそうですので・・・」
「ならば目標を立てよう。一日一回模擬戦を行い、その中で私にまともな一撃を一度でも放てれば終わりとしよう。もし私に一撃入れることができたのであれば、それは王国でナンバー2の実力となるからな」
「分かりました。ぜひお願いします。あと条件は常時仕事の同行と戦争時は亜人への牽制で大丈夫ですか?足りないのであればなにか付け足してください」
「そうだな・・・条件はそのくらいでいいだろう。では今から君は私の弟子となった。ならば私のことはローレンと呼ぶといい。むしろおっさんと呼んでくれてもいいぞ。それと私はジグと呼ばせてもらおう」
いきなり砕けた感じになったローレンに驚く。
流石に師匠となるローレンを呼び捨てにはできないし、ましてやおっさん呼びなんてもっと無理である。
「流石におっさんは無理ですよ。ローレンさんで勘弁してください」
「ふむ、最初はそれでいいだろう。そういえばジグはまだ帰ってきたばかりだったな。戦争の顛末は知らないだろう?オウルが戻ってくるまではまだ時間かかるだろうから話しておこう。私が聞いた限りでは圧勝だったらしいぞ。なんでも・・・」
ローレンが戦争の顛末を話して聞かせた後は二人でたわいない話を暫くしていた。
そして漸くオウルーゼルたちが戻ってきたようである。
ジグレイドとローレンが机を挟んで向かい合って椅子に座っていた。
「久しいな。前回の戦争の時以来になるかな?」
「そうでもないですよ、まだ一年くらいしか経っていませんし。まあ俺としては再びこうして将軍様とお話する機会なんて一般人の俺には一年に一回あれば多い方だと思っていますが」
「そうでもないだろう、オウルーゼル公爵の依頼を何度か受けていたとか聞いているぞ。立場的には私よりもオウルーゼル公爵の方が上なんだがな、知らないわけではないだろう?」
ローレンはカリーナと仲の良いことも知ってはいるが、ここではあえて言わないでおいた。
「そういえばそうでしたね、俺的には将軍様の方が見た目も貫録があって緊張してしまいまからね。そうだ、将軍様に聞いてみたかったことがあったんでした」
「ほう、答えられることならば答えよう」
「将軍様はどのようにしてその強さを手に入れたのですか?できれば鍛錬法を教えてほしいのですが・・・」
今回、ジグレイドはハヌマエンと戦い手も足も出なかったことが悔しくて仕方なかった。装備のおかげで勝てはしたが、内容を思い返してみると一方的に殴り飛ばされている場面しかなかったからだ。
「ふむ・・・ではまずジグレイド君に問おう。なぜ強さを欲する?今のままでも十分に強いと私は思うがな」
ローレンは前回モルドに飛び掛かったジグレイドを取り押さえたときにその動きや身のこなしである程度の実力は計れていた。もちろんあの時は重傷で万全の動きではないことも考慮してだが。
「今のままではおそらくダメなんです・・・。今のままでは俺が倒すべき敵には全く歯が立たない」
悔しそうに俯いてしまったジグレイドを眺めてローレンはどう答えるか悩んだ。
『おそらく敵というのは竜人だろう。となると強くなる目的は復讐か・・・。手を貸してもいいのだろうか・・・だが今回も多くの組合員が亜人族に殺されてしまった。私だけではすべてを防ぐことはできないことは明白だが、復讐にとりつかれてしまいそうな彼を頼りにするのはどうなのだろうか・・・だが今回、仲間を守るために単身囮になったと聞いた。そのくらい冷静な判断ができるのであれば鍛えてやるのもいいかもしれないな』
「不純な動機ですが、どうしても強くならないといけないんです!もう二度と亜人共に奪われないためにも!だから教えてくれませんか?」
ローレンが悩んでいると俯いていたジグレイドが強い眼差しで見詰めてきた。
「そうだな・・・確かに最近の亜人族はやりたい放題にしておるようだしな。私もどうにかしたいとは思っているのは確かだ。今回、私のいた場所にだけ亜人族は現れなかったのは知っているか?運がよかったのかもしれんが、まずそれはないと私は考えている。つまり亜人族は分の悪い戦いは避けている傾向がある。何が言いたいのかというと、部隊の中に私並みの強大な戦力がいたとしたら亜人族は襲い掛かってこないという可能性がある。その役目を引き受けてもいいというならば、ジグレイド君を私自ら鍛えてあげよう。どうかな?」
「いいのですか?俺としては大歓迎な申し出なのですが・・・」
「かまわんさ、それに私の仕事にも同行してもらうぞ。まあ殆ど王城にいることが多いがな」
「それはどのくらいの期間鍛えてもらえるのですか?流石に数日とかだと殆ど意味がなさそうですし、逆に何十年もとなると鍛え続けるだけで目的が完遂できなくなりそうですので・・・」
「ならば目標を立てよう。一日一回模擬戦を行い、その中で私にまともな一撃を一度でも放てれば終わりとしよう。もし私に一撃入れることができたのであれば、それは王国でナンバー2の実力となるからな」
「分かりました。ぜひお願いします。あと条件は常時仕事の同行と戦争時は亜人への牽制で大丈夫ですか?足りないのであればなにか付け足してください」
「そうだな・・・条件はそのくらいでいいだろう。では今から君は私の弟子となった。ならば私のことはローレンと呼ぶといい。むしろおっさんと呼んでくれてもいいぞ。それと私はジグと呼ばせてもらおう」
いきなり砕けた感じになったローレンに驚く。
流石に師匠となるローレンを呼び捨てにはできないし、ましてやおっさん呼びなんてもっと無理である。
「流石におっさんは無理ですよ。ローレンさんで勘弁してください」
「ふむ、最初はそれでいいだろう。そういえばジグはまだ帰ってきたばかりだったな。戦争の顛末は知らないだろう?オウルが戻ってくるまではまだ時間かかるだろうから話しておこう。私が聞いた限りでは圧勝だったらしいぞ。なんでも・・・」
ローレンが戦争の顛末を話して聞かせた後は二人でたわいない話を暫くしていた。
そして漸くオウルーゼルたちが戻ってきたようである。
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