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72話
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翌日の朝、モルドはジグレイドの捜索を願い出るためにオウルーゼルのもとに行っていた。だがオウルーゼルのいる指揮官テントに近付くにつれて言い争う声が聞こえてきた。
「だからそれはダメだと言っているだろう!いい加減に落ち着け!今はそれどころではないのは分かるだろう!」
「無理!それなら私一人で勝手に行く!邪魔しないで!」
「それもダメだ!今すぐ行ってしまうと軍の規則で裁かれることになるぞ!いいから落ち着け!」
指揮官テントからはオウルーゼルとカリーナの言い争う声が聞こえていた。
「な、なあ・・・何を言い争っているんだ?」
モルドは指揮官テントの入り口に控えている兵士に尋ねてみた。
「あー、これはですね・・・カリーナ様が、魔法師団の団長様がですね、組合員の捜索をさせろと公爵様に詰め寄っているのです」
「なるほど・・・ところで中に入ってもいいか?」
「構いませんが・・・今入るのはオススメしませんよ」
「かまわねーよ、俺も同じ目的だからな」
モルドはニカッと笑顔を兵士に向けて中に入った。その時兵士はものすごく嫌そうな顔をしていた。
「お邪魔しますよ、公爵様俺からも頼みます。ジグレイドの奴はそう簡単にくたばる奴じゃねえ。絶対に生きているはずだ。捜索の許可を出してはくれねーか?」
「む?モルド殿か・・・そうしたいのは山々なのだが、今は無理なのだ。何事にも優先順位というものがある、組合員の捜索も重要だが今は戦争終結を急がねばならん。戦争さえ終わればいくらでも捜索隊を出す。それまで待てないのか?それに聞いていると思うが、先日周囲の警戒をしていた組合員173名の内128名もまだ行方が分からなくなっている。これは由々しき事態だ。だからこそ今日中に戦争を終結させねばならんのだ!」
「それは聞いています・・・だからこそ!先に俺たちだけででも探させてくれませんか?」
必死に頭を下げてお願いするモルドにオウルーゼルが折れた。
「はあ・・・分かった。戦場の狼には行方不明の組合員捜索の許可を出そう、だが!カリーナ殿はダメだ!「なぜ!?私も先に探す!」カリーナ殿には軍での立場があるだろう!?なぜ分からんのだ!」
再び言い争いを始めようとしたカリーナにモルドが声を掛けた。
「カリーナ様のお気持ちはすごく分かります。俺もジグの奴とは仲がいいですから。とりあえず今日の捜索は俺たちに任せてはもらえないでしょうか?」
「・・・分かった。でも!見つからなかったら明日は私も捜索する!」
オウルーゼルは深いため息を吐き出しカリーナに明日の捜索の許可を条件付きでだが渋々出した。もちろんその条件は戦争が終結していることなのだが。
モルドたち戦場の狼は一日中探し続けたがこの日もジグレイドは見つからず、見つけたのは無残にも殺されている大量の組合員だった。
その日の夕方に戦場の狼はフェイシル王国陣地に戻ってきた。
そして門前には魔法師団の面々が待ち構えていた。
「その様子だとジグレイドさんは見つからなかったようですね・・・」
疲れ切った表情の戦場の狼を見てファマルが最初に声を掛けた。
「ああ、だがジグの死体を見つけたわけでも無い・・・どこほっつき歩いているんだか・・・」
モルドは乾いた笑みを浮かべながらそう答えてメンバーを連れて門の中へと歩いて行った。
「団長・・・」
「ジグなら生きてる」
そう言ってカリーナも門の中へと歩いて行った。
それから数刻が過ぎ日も完全に落ちた頃、ジグレイドが帰ってきた。
「だからそれはダメだと言っているだろう!いい加減に落ち着け!今はそれどころではないのは分かるだろう!」
「無理!それなら私一人で勝手に行く!邪魔しないで!」
「それもダメだ!今すぐ行ってしまうと軍の規則で裁かれることになるぞ!いいから落ち着け!」
指揮官テントからはオウルーゼルとカリーナの言い争う声が聞こえていた。
「な、なあ・・・何を言い争っているんだ?」
モルドは指揮官テントの入り口に控えている兵士に尋ねてみた。
「あー、これはですね・・・カリーナ様が、魔法師団の団長様がですね、組合員の捜索をさせろと公爵様に詰め寄っているのです」
「なるほど・・・ところで中に入ってもいいか?」
「構いませんが・・・今入るのはオススメしませんよ」
「かまわねーよ、俺も同じ目的だからな」
モルドはニカッと笑顔を兵士に向けて中に入った。その時兵士はものすごく嫌そうな顔をしていた。
「お邪魔しますよ、公爵様俺からも頼みます。ジグレイドの奴はそう簡単にくたばる奴じゃねえ。絶対に生きているはずだ。捜索の許可を出してはくれねーか?」
「む?モルド殿か・・・そうしたいのは山々なのだが、今は無理なのだ。何事にも優先順位というものがある、組合員の捜索も重要だが今は戦争終結を急がねばならん。戦争さえ終わればいくらでも捜索隊を出す。それまで待てないのか?それに聞いていると思うが、先日周囲の警戒をしていた組合員173名の内128名もまだ行方が分からなくなっている。これは由々しき事態だ。だからこそ今日中に戦争を終結させねばならんのだ!」
「それは聞いています・・・だからこそ!先に俺たちだけででも探させてくれませんか?」
必死に頭を下げてお願いするモルドにオウルーゼルが折れた。
「はあ・・・分かった。戦場の狼には行方不明の組合員捜索の許可を出そう、だが!カリーナ殿はダメだ!「なぜ!?私も先に探す!」カリーナ殿には軍での立場があるだろう!?なぜ分からんのだ!」
再び言い争いを始めようとしたカリーナにモルドが声を掛けた。
「カリーナ様のお気持ちはすごく分かります。俺もジグの奴とは仲がいいですから。とりあえず今日の捜索は俺たちに任せてはもらえないでしょうか?」
「・・・分かった。でも!見つからなかったら明日は私も捜索する!」
オウルーゼルは深いため息を吐き出しカリーナに明日の捜索の許可を条件付きでだが渋々出した。もちろんその条件は戦争が終結していることなのだが。
モルドたち戦場の狼は一日中探し続けたがこの日もジグレイドは見つからず、見つけたのは無残にも殺されている大量の組合員だった。
その日の夕方に戦場の狼はフェイシル王国陣地に戻ってきた。
そして門前には魔法師団の面々が待ち構えていた。
「その様子だとジグレイドさんは見つからなかったようですね・・・」
疲れ切った表情の戦場の狼を見てファマルが最初に声を掛けた。
「ああ、だがジグの死体を見つけたわけでも無い・・・どこほっつき歩いているんだか・・・」
モルドは乾いた笑みを浮かべながらそう答えてメンバーを連れて門の中へと歩いて行った。
「団長・・・」
「ジグなら生きてる」
そう言ってカリーナも門の中へと歩いて行った。
それから数刻が過ぎ日も完全に落ちた頃、ジグレイドが帰ってきた。
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