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70話
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「はああああああ!」
雄叫びを上げ徐々に変貌を遂げていくハヌマエンをジグレイドは殴り飛ばされたせいで攻撃することも邪魔することもできなかった。
「なんかヤバい!逃げるぞ!」
すぐさま危険を察知したモルドは大声で叫んだ。
「無理です!まだ囲まれています!敵の包囲網を突破しないと逃げれません!」
戦場の狼の誰かがそう叫ぶ。
「っち!ジグ!なんとか包囲を破れるか!?」
近くまで飛ばされてきたジグレイドに聞くが、
「モルドがやれよ!それと仲間連れてさっさと退避しろ!俺は周りに味方がいると全力で戦えないんだ!」
ジグレイドはこのままだとハヌマエンには勝てないと判断した。先程でも少しおされていたのである、変貌を遂げたハヌマエンがよもや弱くなるといったことはないはずなので全力で迎え撃つしか手立てが思いつかなかった。だが今の状態で全力で戦えばモルドたちにも被害が出ることは確実だった。
「お前も一緒に逃げるんだよ!」
「今逃げても簡単に追いつかれるだけだぞ!誰かがあいつを足止めしないといけないんだよ!」
「それはお前じゃなくてもいいだろう!」
「分かっているはずだ!俺かお前が残らなければ簡単に追いつかれて全滅するとな!それならもとからソロで活動している俺が残るのが一番だ!・・・リーリャさん、この分からず屋を連れて行ってください!早く!」
「・・・死んだら承知しませんからね!」
リーリャは悲しげな顔でそう叫び、渋々他の仲間と一緒にモルドを引きずって退却し始めた。
目を離したのは一瞬だったはずなのだがハヌマエンの姿は激変していた。もともと大柄だったのだがさらに
デカくそして太くなっていた。その腕は巨木の如く太くなっており、その分厚い胸板は普通の刃物ではその筋肉に阻まれて容易に刺さることはないと思えるほどだ。そして一番驚愕したのは骨だろうか・・・骨の様なものでできた装甲を身体のいたる所に纏っているところだ。
「随分とデカく様変わりしたようだな。それに待っていてくれたのか?」
「儂はそれなりに礼儀ってものを弁えておるのでな。だからと言ってあ奴らを逃がしてやるほどではないがな」
「そうかい・・・できればもう少し待ってくれると嬉しいんだがな。どうせなら一対一の方があんたも好みだろ?」
ニヤリと挑発的な笑みを浮かべてジグレイドはハヌマエンに提案してみた。もちろんモルドたちが少しでも離れれるように。
「くっくははははは!この状況でそんな提案をしてくるとはな!面白い!その一対一の申し出受けようではないか!」
拳を打ち鳴らし歩み寄ってくるハヌマエンにジグレイドは問いかけた。
「戦う前に聞いていいか?」
「なんじゃ?」
「お前たちの仲間にエルフ族と竜人族はいるのか?」
それは確認だった。もしこの猿人族が仇の仲間であるならば、一人も逃がすつもりはないからだ。
「うん?なぜそんなことを聞く?ま、答えてやろう。最後の質問になるわけだしの。儂らの仲間にエルフ族も竜人族も両方所属しておる」
「そうか、ならお前たちは一人とて逃がさん・・・幸いここは見晴らしがいい、いくら獣人族がすばやくても隠れる場所のないここだと、俺相手に逃げても無駄だと分かるだろ?」
怒気を可能な限り抑えてそう言い放ち周囲の魔素を取り込みだした。
「ふむ、なぜ竜人族のことまで知っておるのか知らんが、大方味方を前回殺されたのだな。もちろんそれは儂らの仲間の仕業じゃよ。それに逃げる必要があるのはお主だろう?」
正確に理由を感じとったハヌマエンはあえて軽く挑発した。だがその効果は劇的だった。
「ふ、ふっ、ふははははははは!見つけたぞ!遂に見つけたぞ!サルシャ!まずはお前からだ!大猿!」
言い終えるとジグレイドはハヌマエンに丸盾を構えて突進した。そして既に猛毒の領域は全力で展開されていた。
「怒りで単調な攻撃になっとるの。それでは儂には勝てんよ・・・む?」
ジグレイドの突進を避けたハヌマエンだったが、なぜか身体がいつも通りに動かないことに気が付いた。そして殴り飛ばそうとしていた拳を引き戻し、自ら横飛びをして距離をとった。
「なんじゃ?身体が・・・お主の仕業なのか?」
拳を開閉したりして身体がある程度動くことを確認したハヌマエンはジグレイドに質問してきた。
「さすがボス猿だな。俺の猛毒をくらってまだその程度だとは、驚嘆に値するよ。でも俺の使う毒はそんなもんでは終わらない、一度掛かってしまうともう死しかない」
今度は急接近して丸盾を全力で振りぬいた。
先程とは全く違う速度で接近され攻撃を仕掛けてくるジグレイド、さらに猛毒により身体が思うように動かない絶望的な状況にもかかわらずハヌマエンは笑いながら丸盾を拳で迎え撃った。
甲高い音が鳴り響いた。その後も何度も何度も音が鳴り響いた。
「どうした!お主の全力はこの程度か!?猛毒に侵された老いぼれの儂におされとるではないか!」
「くっ!この化け物が!さっさと死ねええええ!」
「あまいわ!ふんっ!っ!?ごふっ」
ジグレイドの渾身の一振りをハヌマエンはなんてことないように軽々と避けた。だが限界が近づいてきたのかジグレイドを殴り飛ばした後に吐血して膝をついた。
「ぬう・・・さすがにきついの」
「ぐっ・・・漸く・・・効いてきたか、いてえ・・・」
横腹を擦りながら歩み寄っていくジグレイド、だがまだ戦闘は終わっていなかった。
雄叫びを上げ徐々に変貌を遂げていくハヌマエンをジグレイドは殴り飛ばされたせいで攻撃することも邪魔することもできなかった。
「なんかヤバい!逃げるぞ!」
すぐさま危険を察知したモルドは大声で叫んだ。
「無理です!まだ囲まれています!敵の包囲網を突破しないと逃げれません!」
戦場の狼の誰かがそう叫ぶ。
「っち!ジグ!なんとか包囲を破れるか!?」
近くまで飛ばされてきたジグレイドに聞くが、
「モルドがやれよ!それと仲間連れてさっさと退避しろ!俺は周りに味方がいると全力で戦えないんだ!」
ジグレイドはこのままだとハヌマエンには勝てないと判断した。先程でも少しおされていたのである、変貌を遂げたハヌマエンがよもや弱くなるといったことはないはずなので全力で迎え撃つしか手立てが思いつかなかった。だが今の状態で全力で戦えばモルドたちにも被害が出ることは確実だった。
「お前も一緒に逃げるんだよ!」
「今逃げても簡単に追いつかれるだけだぞ!誰かがあいつを足止めしないといけないんだよ!」
「それはお前じゃなくてもいいだろう!」
「分かっているはずだ!俺かお前が残らなければ簡単に追いつかれて全滅するとな!それならもとからソロで活動している俺が残るのが一番だ!・・・リーリャさん、この分からず屋を連れて行ってください!早く!」
「・・・死んだら承知しませんからね!」
リーリャは悲しげな顔でそう叫び、渋々他の仲間と一緒にモルドを引きずって退却し始めた。
目を離したのは一瞬だったはずなのだがハヌマエンの姿は激変していた。もともと大柄だったのだがさらに
デカくそして太くなっていた。その腕は巨木の如く太くなっており、その分厚い胸板は普通の刃物ではその筋肉に阻まれて容易に刺さることはないと思えるほどだ。そして一番驚愕したのは骨だろうか・・・骨の様なものでできた装甲を身体のいたる所に纏っているところだ。
「随分とデカく様変わりしたようだな。それに待っていてくれたのか?」
「儂はそれなりに礼儀ってものを弁えておるのでな。だからと言ってあ奴らを逃がしてやるほどではないがな」
「そうかい・・・できればもう少し待ってくれると嬉しいんだがな。どうせなら一対一の方があんたも好みだろ?」
ニヤリと挑発的な笑みを浮かべてジグレイドはハヌマエンに提案してみた。もちろんモルドたちが少しでも離れれるように。
「くっくははははは!この状況でそんな提案をしてくるとはな!面白い!その一対一の申し出受けようではないか!」
拳を打ち鳴らし歩み寄ってくるハヌマエンにジグレイドは問いかけた。
「戦う前に聞いていいか?」
「なんじゃ?」
「お前たちの仲間にエルフ族と竜人族はいるのか?」
それは確認だった。もしこの猿人族が仇の仲間であるならば、一人も逃がすつもりはないからだ。
「うん?なぜそんなことを聞く?ま、答えてやろう。最後の質問になるわけだしの。儂らの仲間にエルフ族も竜人族も両方所属しておる」
「そうか、ならお前たちは一人とて逃がさん・・・幸いここは見晴らしがいい、いくら獣人族がすばやくても隠れる場所のないここだと、俺相手に逃げても無駄だと分かるだろ?」
怒気を可能な限り抑えてそう言い放ち周囲の魔素を取り込みだした。
「ふむ、なぜ竜人族のことまで知っておるのか知らんが、大方味方を前回殺されたのだな。もちろんそれは儂らの仲間の仕業じゃよ。それに逃げる必要があるのはお主だろう?」
正確に理由を感じとったハヌマエンはあえて軽く挑発した。だがその効果は劇的だった。
「ふ、ふっ、ふははははははは!見つけたぞ!遂に見つけたぞ!サルシャ!まずはお前からだ!大猿!」
言い終えるとジグレイドはハヌマエンに丸盾を構えて突進した。そして既に猛毒の領域は全力で展開されていた。
「怒りで単調な攻撃になっとるの。それでは儂には勝てんよ・・・む?」
ジグレイドの突進を避けたハヌマエンだったが、なぜか身体がいつも通りに動かないことに気が付いた。そして殴り飛ばそうとしていた拳を引き戻し、自ら横飛びをして距離をとった。
「なんじゃ?身体が・・・お主の仕業なのか?」
拳を開閉したりして身体がある程度動くことを確認したハヌマエンはジグレイドに質問してきた。
「さすがボス猿だな。俺の猛毒をくらってまだその程度だとは、驚嘆に値するよ。でも俺の使う毒はそんなもんでは終わらない、一度掛かってしまうともう死しかない」
今度は急接近して丸盾を全力で振りぬいた。
先程とは全く違う速度で接近され攻撃を仕掛けてくるジグレイド、さらに猛毒により身体が思うように動かない絶望的な状況にもかかわらずハヌマエンは笑いながら丸盾を拳で迎え撃った。
甲高い音が鳴り響いた。その後も何度も何度も音が鳴り響いた。
「どうした!お主の全力はこの程度か!?猛毒に侵された老いぼれの儂におされとるではないか!」
「くっ!この化け物が!さっさと死ねええええ!」
「あまいわ!ふんっ!っ!?ごふっ」
ジグレイドの渾身の一振りをハヌマエンはなんてことないように軽々と避けた。だが限界が近づいてきたのかジグレイドを殴り飛ばした後に吐血して膝をついた。
「ぬう・・・さすがにきついの」
「ぐっ・・・漸く・・・効いてきたか、いてえ・・・」
横腹を擦りながら歩み寄っていくジグレイド、だがまだ戦闘は終わっていなかった。
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