69 / 126
68話
しおりを挟む
バルクド帝国陣営にて
現在ミダは苛立っていた。
「報告はまだなのか・・・」
なんの報告を待っているのかというと、例年にもれず深緑の森から迂回しようとしているため、その行軍の見届け役の帰りを待っているのである。そしてその行軍する数はなんと500、明らかに多すぎである。ジグレイドの策がなくてもこれだけの数で移動していれば、魔物に襲われることを避けられるはずがなく、深緑の森に入って暫くすると魔物に襲われた。
そして呆気なく全滅・・・。見届け役の兵士はすぐに逃げ出したため無事ではあるのだが、全滅報告をしなければならない兵士の気持ちはかなり重いことだろう
「なんだと!?全滅とはどういうことだ!?説明しろ!この戦争は皇帝陛下の勅命なるぞ!」
漸く帰ってきたかと思えば、その報告は全滅と最悪のものだった。自分のミスにも関わず見届け役の兵士に当たり散らすミダ、怒りで咄嗟に剣に手が伸びるが寸でのとこで思いとどまった。
「っち!これ以上駒を減らすのも良くないな。さっさと下がれ!無能が!」
今回、バルクド帝国側には総指揮官としてミダが、そしてその下には傘下貴族が就いている。そう、あの剛鬼ログ・ハイローがいないのである。なぜかというと、ミダがログのおかげで勝てたなどということには絶対にしたくなかったため、ログを牢屋からは出さずに自分だけで勝とうと考えたからである。
バルクド帝国最大の戦力であるログがいない戦争など勝てる見込みが皆無だということにこの野心家は気づきもしなかった。
「くそっ!正面からぶつかるしかないな・・・。数で勝る我々が負けるはずはないのだが、念のために強襲部隊を出したのは失敗だったか?いや、魔物程度に後れをとる無能などいても邪魔なだけか?」
「そうでございます。ミダ様の命令を遂行できない無能など捨て置けばよいのです」
ミダの呟きに合いの手を差し出したのはミダの取り巻きであるムーノ子爵だった。
「そうだな、無能を切り捨てたと思えば私の良心も痛まないで済むな」
高笑いをしながらそんなことを言いだすミダ。もともと良心も痛める心もないというのに・・・。
一方、フェイシル王国陣営では
「密偵からの連絡がありました!こちらを」
兵士が指揮官テントに駆け込んできて小さな紙切れを手渡した。
「ふむ・・・なるほど、これは吉報だ!」
紙切れを受け取ったオウルーゼルがニヤリと笑みを浮かべた。
「何と書いてあったのだ?」
先日到着したばかりで状況把握がまだ完璧ではないローレン将軍がすぐに聞いてきた。
「将軍、今回は出番なさそうだぞ。あのログ将軍が来ていないらしいぞ。しかも理由が総指揮官の大臣?のせいだと書かれているな。詳しいことは予想しかできないが、おそらくこの大臣が手柄欲しさにログ将軍を参戦させなかったのだろう。バルクド帝国最大戦力のログ将軍がいないのであれば、魔法師団の出番かもしれんな」
前回、魔法師団は戦争に参加していなかった。だが今回は団長の気まぐれで参戦している。理由は何となく察することができるが・・・。それに魔法を切り裂き突進してくる天敵のログ将軍がいないとあっては魔法を防がれることもない上に敵の接近の心配もない。まさに魔法師団の独壇場になるとも言える状況だ。
「確かにあのログ将軍がいないのであれば、儂の出番はないかもしれんが・・・油断はできん。亜人共の強襲があるやもしれんからな。前回は組合員にしか被害がなかったが今回も同じとは限らん」
「では将軍は亜人共の警戒をお願いしよう。報告書を読んでいるだろうが、亜人共はエルフ族、獣人族、ドワーフ族、そして竜人族が確認されている。地上からは獣人族とドワーフ族が空中っからは竜人族が強襲してくるはずだ。エルフ族に関しては恐らくだが、森からは出てこないはずだ。奴らの主戦場は森だからな」
「了解した。では組合員に混ざって警戒任務をしよう」
「念のためだが警戒する位置が分かったら教えておいてくれ、伝令役を行かせるかもしれないからな」
「了解した。組合員との会議はもうそろそろだったよな?その時に聞いてみよう」
そしてその後に組合員と作戦会議を綿密に行った。
その数日後、フェイシル王国軍とバルクド帝国軍が激突した。
この時の戦力はフェイシル王国側は組合員も含めずに2741名、組合員を含めると2938名となっていた。
一方、バルクド帝国軍は組合員を含めずに3506名、組合員を含めても3518名と全然増えなかった。
現在ミダは苛立っていた。
「報告はまだなのか・・・」
なんの報告を待っているのかというと、例年にもれず深緑の森から迂回しようとしているため、その行軍の見届け役の帰りを待っているのである。そしてその行軍する数はなんと500、明らかに多すぎである。ジグレイドの策がなくてもこれだけの数で移動していれば、魔物に襲われることを避けられるはずがなく、深緑の森に入って暫くすると魔物に襲われた。
そして呆気なく全滅・・・。見届け役の兵士はすぐに逃げ出したため無事ではあるのだが、全滅報告をしなければならない兵士の気持ちはかなり重いことだろう
「なんだと!?全滅とはどういうことだ!?説明しろ!この戦争は皇帝陛下の勅命なるぞ!」
漸く帰ってきたかと思えば、その報告は全滅と最悪のものだった。自分のミスにも関わず見届け役の兵士に当たり散らすミダ、怒りで咄嗟に剣に手が伸びるが寸でのとこで思いとどまった。
「っち!これ以上駒を減らすのも良くないな。さっさと下がれ!無能が!」
今回、バルクド帝国側には総指揮官としてミダが、そしてその下には傘下貴族が就いている。そう、あの剛鬼ログ・ハイローがいないのである。なぜかというと、ミダがログのおかげで勝てたなどということには絶対にしたくなかったため、ログを牢屋からは出さずに自分だけで勝とうと考えたからである。
バルクド帝国最大の戦力であるログがいない戦争など勝てる見込みが皆無だということにこの野心家は気づきもしなかった。
「くそっ!正面からぶつかるしかないな・・・。数で勝る我々が負けるはずはないのだが、念のために強襲部隊を出したのは失敗だったか?いや、魔物程度に後れをとる無能などいても邪魔なだけか?」
「そうでございます。ミダ様の命令を遂行できない無能など捨て置けばよいのです」
ミダの呟きに合いの手を差し出したのはミダの取り巻きであるムーノ子爵だった。
「そうだな、無能を切り捨てたと思えば私の良心も痛まないで済むな」
高笑いをしながらそんなことを言いだすミダ。もともと良心も痛める心もないというのに・・・。
一方、フェイシル王国陣営では
「密偵からの連絡がありました!こちらを」
兵士が指揮官テントに駆け込んできて小さな紙切れを手渡した。
「ふむ・・・なるほど、これは吉報だ!」
紙切れを受け取ったオウルーゼルがニヤリと笑みを浮かべた。
「何と書いてあったのだ?」
先日到着したばかりで状況把握がまだ完璧ではないローレン将軍がすぐに聞いてきた。
「将軍、今回は出番なさそうだぞ。あのログ将軍が来ていないらしいぞ。しかも理由が総指揮官の大臣?のせいだと書かれているな。詳しいことは予想しかできないが、おそらくこの大臣が手柄欲しさにログ将軍を参戦させなかったのだろう。バルクド帝国最大戦力のログ将軍がいないのであれば、魔法師団の出番かもしれんな」
前回、魔法師団は戦争に参加していなかった。だが今回は団長の気まぐれで参戦している。理由は何となく察することができるが・・・。それに魔法を切り裂き突進してくる天敵のログ将軍がいないとあっては魔法を防がれることもない上に敵の接近の心配もない。まさに魔法師団の独壇場になるとも言える状況だ。
「確かにあのログ将軍がいないのであれば、儂の出番はないかもしれんが・・・油断はできん。亜人共の強襲があるやもしれんからな。前回は組合員にしか被害がなかったが今回も同じとは限らん」
「では将軍は亜人共の警戒をお願いしよう。報告書を読んでいるだろうが、亜人共はエルフ族、獣人族、ドワーフ族、そして竜人族が確認されている。地上からは獣人族とドワーフ族が空中っからは竜人族が強襲してくるはずだ。エルフ族に関しては恐らくだが、森からは出てこないはずだ。奴らの主戦場は森だからな」
「了解した。では組合員に混ざって警戒任務をしよう」
「念のためだが警戒する位置が分かったら教えておいてくれ、伝令役を行かせるかもしれないからな」
「了解した。組合員との会議はもうそろそろだったよな?その時に聞いてみよう」
そしてその後に組合員と作戦会議を綿密に行った。
その数日後、フェイシル王国軍とバルクド帝国軍が激突した。
この時の戦力はフェイシル王国側は組合員も含めずに2741名、組合員を含めると2938名となっていた。
一方、バルクド帝国軍は組合員を含めずに3506名、組合員を含めても3518名と全然増えなかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
17
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる