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67話
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モルドはオウルーゼルに連れられて近くのテントの前まで来ていた。
「このテントだ・・・入るぞ」
一声かけてテントに入っていくオウルーゼルの後に続いてテントに入ると、そこには何処かで見覚えのある鎧を身に纏ったジグと有名な魔法師団団長のカリーナがいた。
「何か用?」
自分のテントかのように言ってくるカリーナだが、先にジグレイドがオウルーゼルに声を掛けた。
「公爵閣下、モルドを連れてどうしたのですか?」
「なに、貴殿らは知り合いだろう?儂の依頼のせいで会えていないだろうと思ってな。こうして連れてきたというわけだ」
「そうか・・・モルド、久しぶりだな」
「お、おう・・・えらい偉くなったみてーだな」
「偉く?俺はもう組合員を辞めてフリーの傭兵みたいなことをしているんだが、もしかして嫌味か?」
「そうなのか?それにしては随分お偉いさんの知り合いが増えたみたいだな」
モルドはカリーナとオウルーゼルに視線をやってそう言う。
「確かに公爵閣下からの依頼の時に知り合いはしたが、俺自身はあの頃からなんら変わらないさ。むしろ組合を抜けたから落ちたとも言えるな。モルドはあれから何していたんだ?」
「俺らか?そうだな・・・組合の依頼を受けては飲んでの繰り返しだったな。俺も前と変わらねーよ」
「くっくく、どうせまた飲んだくれてリーリャさんに叱られてを繰り返していたんだろ?相変わらずで安心したよ」
「どうせって言うなよ・・・仕事の後は酒を飲むのが普通だろ!?当たり前だよ」
「モルド場合は飲み過ぎなんだよ。リーリャさんが心労で倒れるぞ」
「そんなことねーよ!・・・そう言えば見てたぜ、ジグが組合に喧嘩売るとこをよ」
さすがに情勢が悪いと思ったのか、話題を変えてきた。
「誤魔化したな・・・それよりあのとき居たのかよ?なんで話し掛けてこなかったんだ?」
「いや、全身鎧で顔も隠してる奴に話し掛けれるやつなんていねーよ。そもそもあれがジグだなんて知らなかったしな。しかも変な二つ名持ってるみたいだったしよ」
「あー、確かに普段は面倒ごとを避けるために顔隠してたな・・・というか二つ名?なんだそりゃ」
ジグレイドには聞き覚えがなかった。それもそのはずで二つ名は基本的にいつの間にか周りから付けられる異名であり、人と極力関わらないようにして過ごしているジグレイドが知っているはずもなかった。
「知らないのか?お前、黒騎士って呼ばれてるぜ」
「黒騎士!?黒は何となく装備のせいだと分かるが、なんで騎士なんだよ。俺は貴族のつかいっぱしりに見えているのか?」
「あー・・・理由は何だったかな、聞いたはずなんだが忘れちまった。すまん」
「まじかよ・・・なんかつかいっぱしりとかショックだ」
項垂れるジグレイドだったが、思いもよらずカリーナが理由を知っているようだった。
「ジグ、元気出して。理由なら私が知ってる」
「本当か?どんな理由だ?」
「騎士みたいに全身を鎧で包んでいて、その鎧が高潔さというよりも禍々しい感じがするから暗黒騎士、少し濁した言い回しにして黒騎士」
「「・・・」」
さすがにここまで詳しく知らなかったが少しは聞いたことのあるモルドもジグレイド同様にその理由に空いた口がふさがらなかった。
暗黒騎士とは大昔に実在した騎士で、言い伝えではこの世には実在しない魔法属性の闇属性を扱って多くの人々を虐殺しつくしたと言われている人物である。子供への脅し文句として『悪い事すると暗黒騎士が迎えに来るぞ』と使われるほどである。
「悪名じゃねーか!聞かなきゃよかった・・・いや、つかいっぱしりじゃなくてよかったのか?・・・あー、そもそも周りの目なんてどうでもいい、よな?そんな見た目でしか判断できない奴らが何と言おうと気にする必要ないよな!」
ジグレイドはブツブツと二人に聞こえない程度で言いながらすぐに立ち直った。
「おおう、いきなり吹っ切れたな。どうした?」
いきなり立ち上がったジグレイドを訝しんで尋ねるモルドだが、ジグレイドは何でもないと首を振っただけだった。
「あーそうだ。ジグ、いきなりだが俺のギルドに入らないか?」
「は?随分唐突だな。今は時間がないから無理だな。そもそも俺はもう組合員じゃないぞ」
呆気なく断られてしまったが、予想出来ていたのかモルドは気にもせず次の話題を提供するのだった。
そして夜になった頃に解散となった。
意外と話題は尽きないもので昼からずっと話していたようである。もちろん食事はジグレイドの持っていたもので済ませた。
そして解散後モルドは自分のテントに戻るのだが、そこにはカンカンに怒ったリーリャに「どこをほっつき歩いていたのですか!?」と叱られることになる。もちろん言い訳をしたのだが、今度は「なぜジグレイド君を連れて帰ってこないのです!」とまた叱られ、結局後日にジグレイドの元まで連れていくことを約束させられて説教は終わったのだが、寝る前まで正座させられていたとか・・・。
「このテントだ・・・入るぞ」
一声かけてテントに入っていくオウルーゼルの後に続いてテントに入ると、そこには何処かで見覚えのある鎧を身に纏ったジグと有名な魔法師団団長のカリーナがいた。
「何か用?」
自分のテントかのように言ってくるカリーナだが、先にジグレイドがオウルーゼルに声を掛けた。
「公爵閣下、モルドを連れてどうしたのですか?」
「なに、貴殿らは知り合いだろう?儂の依頼のせいで会えていないだろうと思ってな。こうして連れてきたというわけだ」
「そうか・・・モルド、久しぶりだな」
「お、おう・・・えらい偉くなったみてーだな」
「偉く?俺はもう組合員を辞めてフリーの傭兵みたいなことをしているんだが、もしかして嫌味か?」
「そうなのか?それにしては随分お偉いさんの知り合いが増えたみたいだな」
モルドはカリーナとオウルーゼルに視線をやってそう言う。
「確かに公爵閣下からの依頼の時に知り合いはしたが、俺自身はあの頃からなんら変わらないさ。むしろ組合を抜けたから落ちたとも言えるな。モルドはあれから何していたんだ?」
「俺らか?そうだな・・・組合の依頼を受けては飲んでの繰り返しだったな。俺も前と変わらねーよ」
「くっくく、どうせまた飲んだくれてリーリャさんに叱られてを繰り返していたんだろ?相変わらずで安心したよ」
「どうせって言うなよ・・・仕事の後は酒を飲むのが普通だろ!?当たり前だよ」
「モルド場合は飲み過ぎなんだよ。リーリャさんが心労で倒れるぞ」
「そんなことねーよ!・・・そう言えば見てたぜ、ジグが組合に喧嘩売るとこをよ」
さすがに情勢が悪いと思ったのか、話題を変えてきた。
「誤魔化したな・・・それよりあのとき居たのかよ?なんで話し掛けてこなかったんだ?」
「いや、全身鎧で顔も隠してる奴に話し掛けれるやつなんていねーよ。そもそもあれがジグだなんて知らなかったしな。しかも変な二つ名持ってるみたいだったしよ」
「あー、確かに普段は面倒ごとを避けるために顔隠してたな・・・というか二つ名?なんだそりゃ」
ジグレイドには聞き覚えがなかった。それもそのはずで二つ名は基本的にいつの間にか周りから付けられる異名であり、人と極力関わらないようにして過ごしているジグレイドが知っているはずもなかった。
「知らないのか?お前、黒騎士って呼ばれてるぜ」
「黒騎士!?黒は何となく装備のせいだと分かるが、なんで騎士なんだよ。俺は貴族のつかいっぱしりに見えているのか?」
「あー・・・理由は何だったかな、聞いたはずなんだが忘れちまった。すまん」
「まじかよ・・・なんかつかいっぱしりとかショックだ」
項垂れるジグレイドだったが、思いもよらずカリーナが理由を知っているようだった。
「ジグ、元気出して。理由なら私が知ってる」
「本当か?どんな理由だ?」
「騎士みたいに全身を鎧で包んでいて、その鎧が高潔さというよりも禍々しい感じがするから暗黒騎士、少し濁した言い回しにして黒騎士」
「「・・・」」
さすがにここまで詳しく知らなかったが少しは聞いたことのあるモルドもジグレイド同様にその理由に空いた口がふさがらなかった。
暗黒騎士とは大昔に実在した騎士で、言い伝えではこの世には実在しない魔法属性の闇属性を扱って多くの人々を虐殺しつくしたと言われている人物である。子供への脅し文句として『悪い事すると暗黒騎士が迎えに来るぞ』と使われるほどである。
「悪名じゃねーか!聞かなきゃよかった・・・いや、つかいっぱしりじゃなくてよかったのか?・・・あー、そもそも周りの目なんてどうでもいい、よな?そんな見た目でしか判断できない奴らが何と言おうと気にする必要ないよな!」
ジグレイドはブツブツと二人に聞こえない程度で言いながらすぐに立ち直った。
「おおう、いきなり吹っ切れたな。どうした?」
いきなり立ち上がったジグレイドを訝しんで尋ねるモルドだが、ジグレイドは何でもないと首を振っただけだった。
「あーそうだ。ジグ、いきなりだが俺のギルドに入らないか?」
「は?随分唐突だな。今は時間がないから無理だな。そもそも俺はもう組合員じゃないぞ」
呆気なく断られてしまったが、予想出来ていたのかモルドは気にもせず次の話題を提供するのだった。
そして夜になった頃に解散となった。
意外と話題は尽きないもので昼からずっと話していたようである。もちろん食事はジグレイドの持っていたもので済ませた。
そして解散後モルドは自分のテントに戻るのだが、そこにはカンカンに怒ったリーリャに「どこをほっつき歩いていたのですか!?」と叱られることになる。もちろん言い訳をしたのだが、今度は「なぜジグレイド君を連れて帰ってこないのです!」とまた叱られ、結局後日にジグレイドの元まで連れていくことを約束させられて説教は終わったのだが、寝る前まで正座させられていたとか・・・。
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