おちゆく先に

目日

文字の大きさ
上 下
61 / 126

60話

しおりを挟む
 そして更に36日が過ぎて、深緑の森に入って49日目

 「もう深層にあるんじゃねーか?」
 このギースの言葉を発するのはここ数日で日に日に増えていた。言いたくもなるのだろうずっと在るかもわからない敵の拠点を探しているのだ。
 「だが深層の探索は任務にはないと団長が仰っている」
 「分かってるけどよ・・・このまま中層の探索してても時間お無駄なような気がしてよ・・・」
 「そのことは団長も頭を抱えてらっしゃる、あまり言うでない。我々では深層の魔物に対処できないだろう?」

 事実ここ数日、カリーナはジグレイドと二人で頭を抱えていた。
 「そろそろ帰還しないといけない時期だよな?」
 「ん、そうなる」
 「今日は単独行動していいか?ちょっと深層に行ってきて魔物の素材を調達しないといけないし」
 「一緒にいく」
 「駄目だ、深層の魔物相手だとカリーナを守り切れない!」
 「大丈夫・・・」
 そう言ったカリーナだったが頭に過ったのは中層で遭遇した深層の魔物との戦闘だった。ジグレイドが庇ってくれなければ自分は死んでいたことを思い出したのだ。

 「カリーナ、お願いだから皆とここにいて休息していてくれないか?」
 「・・・わかった」
 自分が足手纏いになっていることが悔しいのかカリーナは小さい手を握りしめて悔しさを必死に我慢していた。
 「よかった、なら今日は休息日だと他の連中に伝えてくるよ」
 「・・・お願い」


 カリーナの元を離れたジグレイドはまずフルクトスに話し掛けた。
 「フルクトスさんちょっといいですか?」
 「なんだ?頼み事か?」
 「頼み事ではないですね。報告というか伝言です。今日は休息日という事になりましたので皆に伝えてもらえますか?」
 「うむ、分かった。しっかりと伝えよう。しかしジグレイド君はどこかに行くようだな」
 「はい、ちょっとオルトレイム公爵閣下からの依頼がありまして・・・」
 「なるほど、だが我らよりも体力があるからと言っても休息は大事だぞ?」
 「はい、なにも今日一日帰らないわけではありませんから、ではいってきますね。伝言お願いします」

 ジグレイドが深層へと向かった後、魔法師団の拠点では歓声が上がったとか・・・。



 深層に訪れたジグレイドは獲物を探していた。加工しやすく更に散布しやすい素材をもつ魔物などそうそういない。中層で遭遇したヒュージビスカプリズムは比較的散布しやすい素材であるが、加工が難しそうである。だが最悪あの素材をそのまま散布すれば何とかなりそうな予感はするので、ジグレイドはあの巨大な魔物を探しているのであった。
 しかし探し始めると目的の魔物は出てこずに違う魔物ばかりに遭遇する。
 例えば、この今倒したばかりの堅牢な外皮をもつロバストリノや先程見かけた名前の分からない巨大な亀の魔物とかにしか出会わない。とにかく出会う魔物は皆重く持ち運びの不便な素材にしかなりそうにない魔物なのだ。
イライラしながらもジグレイドは深層で探し続ける。漸く持ち運びが簡単そうな魔物を見つけたのは日が落ち始めた頃だった。

 「やっと見つけた・・・さっさと倒して素材を持ち帰ろう」
 ジグレイドが見つけた魔物はインジェクトヘッジホッグという刺々しい魔物であった。
 この魔物は全身に太い針を生やしていて敵への攻撃や自分の縄張りの主張のために針を飛ばす習性のある魔物であった。まさに今回に必要な素材に相応しい魔物であるのだ。

 「疲れているんだ、逃げようとするなよ」
なぜこの魔物が深層の魔物にも関わらずジグレイドを見るや否や逃げ出そうとしたのかというと、このインジェクトヘッジホッグの攻撃方法にあった。その攻撃方法は強力な毒を含んだ針を使い体当たりや針を飛ばすことまでするのだ。よってこの魔物は毒の気配もしくは濃度には非常に敏感なのだ。ジグレイドが発する毒は世界一強力とも言われるヒュドラの毒である。そんな毒の気配のする敵が近寄ってきたら、もちろん一目散に逃げだすだろう。この魔物もすぐに逃げ出そうとしたのだが、すでに回り込まれていた。回り込まれていたという事はジグレイドが近くを通ったという事であり、深層の魔物が反応できない程の速さで動くために全力で強化しているということになる。全力で強化しているという事はもちろん猛毒の領域が発動しているということである。回り込まれた時が付いた時にはすでに猛毒が襲い掛かっており、深層の魔物といえどもものの数秒で息絶えた。

 戦闘にもならずに倒し終えたジグレイドは手際よく魔物を捌き必要な毒腺と極太の針をあるだけ持ち帰ることにした。
 帰りに襲われることを想定したが、めんどくさいので猛毒を常時拡散させておけばいいかと考えた。
 これがある事件を引き起こすことになるのだが、ジグレイドは気づかないまま拠点へと帰ってしまった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

【完結】愛とは呼ばせない

野村にれ
恋愛
リール王太子殿下とサリー・ペルガメント侯爵令嬢は六歳の時からの婚約者である。 二人はお互いを励まし、未来に向かっていた。 しかし、王太子殿下は最近ある子爵令嬢に御執心で、サリーを蔑ろにしていた。 サリーは幾度となく、王太子殿下に問うも、答えは得られなかった。 二人は身分差はあるものの、子爵令嬢は男装をしても似合いそうな顔立ちで、長身で美しく、 まるで対の様だと言われるようになっていた。二人を見つめるファンもいるほどである。 サリーは婚約解消なのだろうと受け止め、承知するつもりであった。 しかし、そうはならなかった。

マヨマヨ~迷々の旅人~

雪野湯
ファンタジー
誰でもよかった系の人に刺されて笠鷺燎は死んだ。(享年十四歳・男) んで、あの世で裁判。 主文・『前世の罪』を償っていないので宇宙追放→次元の狭間にポイッ。 襲いかかる理不尽の連続。でも、土壇場で運良く異世界へ渡る。 なぜか、黒髪の美少女の姿だったけど……。 オマケとして剣と魔法の才と、自分が忘れていた記憶に触れるという、いまいち微妙なスキルもついてきた。 では、才能溢れる俺の初クエストは!?  ドブ掃除でした……。 掃除はともかく、異世界の人たちは良い人ばかりで居心地は悪くない。 故郷に帰りたい気持ちはあるけど、まぁ残ってもいいかなぁ、と思い始めたところにとんだ試練が。 『前世の罪』と『マヨマヨ』という奇妙な存在が、大切な日常を壊しやがった。

当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします!

異世界無知な私が転生~目指すはスローライフ~

丹葉 菟ニ
ファンタジー
倉山美穂 39歳10ヶ月 働けるうちにあったか猫をタップリ着込んで、働いて稼いで老後は ゆっくりスローライフだと夢見るおばさん。 いつもと変わらない日常、隣のブリっ子後輩を適当にあしらいながらも仕事しろと注意してたら突然地震! 悲鳴と逃げ惑う人達の中で咄嗟に 机の下で丸くなる。 対処としては間違って無かった筈なのにぜか飛ばされる感覚に襲われたら静かになってた。 ・・・顔は綺麗だけど。なんかやだ、面倒臭い奴 出てきた。 もう少しマシな奴いませんかね? あっ、出てきた。 男前ですね・・・落ち着いてください。 あっ、やっぱり神様なのね。 転生に当たって便利能力くれるならそれでお願いします。 ノベラを知らないおばさんが 異世界に行くお話です。 不定期更新 誤字脱字 理解不能 読みにくい 等あるかと思いますが、お付き合いして下さる方大歓迎です。

愛し子

水姫
ファンタジー
アリスティア王国のアレル公爵家にはリリアという公爵令嬢がいた。 彼女は神様の愛し子であった。 彼女が12歳を迎えたとき物語が動き出す。 初めて書きます。お手柔らかにお願いします。 アドバイスや、感想を貰えると嬉しいです。 沢山の方に読んで頂けて嬉しく思います。 感謝の気持ちを込めまして番外編を検討しています。 皆様のリクエストお待ちしております。

ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず
ファンタジー
今年から冒険者生活を開始した主人公で【ソロ】と言う適正のノア(15才)。 その適正の為、戦闘・日々の行動を基本的に1人で行わなければなりません。 そこで元上級冒険者の両親と猛特訓を行い、チート級の戦闘力と数々のスキルを持つ事になります。 『悠々自適にぶらり旅』 を目指す″つもり″の彼でしたが、開始早々から波乱に満ちた冒険者生活が待っていました。

処理中です...