50 / 126
49話
しおりを挟む
薄暗くなった部屋でジグレイドは目が覚めた。
「・ ・・うっ。あれ?もう夜なのか!?」
本人はまったく自覚をしていなかったが身体は疲れ果てていたのだろう、ジグレイドは今は気づいていないが実は丸一日寝ていたのである。だがそんなことには気づかずジグレイドは昼過ぎくらいに寝たはずなのにもう夜か、仮眠とりすぎたなと思っていた。
宿の食堂に降りると案の定女将に心配された。
「大丈夫なのかい?ずっと寝ていたみたいだけど・・・」
「はい、仮眠のつもりだったんですけどね。まさか夜まで寝てしまうとは思いませんでした」
「え?気づいていないようだけど、君丸一日起きなかったんだよ」
「え・・・?じゃあ今は泊りにきた翌日ってことですか?」
「残念ながらそうなるね、今日の分の宿代は取らないからメシでも食べな!お腹空いているだろ?」
「ありがとうございます。じゃあ食事をお願いします」
「あいよ!席について待っていておくれ」
食事を終えたジグレイドは荷物を持って例の鍛冶師のところへ来ていた。
今度は床を持ち上げる様なことはせずに抜け道から店に入っていった。
「お?お前さんはヒュドラじゃないか!」
抜け道を出た直後にドワーフのおっさんに出くわした。そしてこの一言である。
「おい、俺は魔物になった覚えはないぞ!人聞きの悪いことを言うな!せっかく良いもん持ってきてやったのに・・・」
「お?なんだ?酒か?」
流石ドワーフ族は大の酒好きと言われているだけはある。
「なわけないだろ!?素材だよ!そ・ざ・い!あんたらドワーフ族は酒の事しか頭にないのか!?」
「なんじゃ?なにを当たり前のことを言っておるのだ」
「・・・」
「あー、なんじゃ・・・すまん。最近はここいらの酒は不味くてな、ちとおかしくなっておったわ」
ジグレイドの冷たい視線に耐え切れなくなったのか素直に謝ってきた。
「別にいいさ。それで素材はいるのか?」
「そうだな、儂くらいまでなると素材も一級品のもんじゃないと扱わんことにしておるのだ。まずはお前さんが持ってきたもん見せてくれんかの?」
「別に売りに来たわけじゃないが、まあいいか」
背負っていた背嚢を下ろし次々と魔物の素材を取り出した。
するとおっさんの顔がみるみる変わっていった。
「お、おい!お前さんどこに行ってきたのじゃ!?これらは明らかにヒュドラには劣るがどれも一級品以上の素材じゃないか!それにこいつはキングモスの鱗粉じゃないか!?どこでこれを!?」
キングモスは近付くだけで麻痺や毒、睡眠など様々な状態異常を引き起こす鱗粉を常時周囲に散布している。そのため気付かずに近付いたらいつの間にか殺されているという恐ろしい魔物として言い伝えられている。なぜ伝わっているだけなのかというとこの魔物を見て生き残っていた者が殆どおらず基本的に死んでいるからである。
だがキングモスが散布した鱗粉は毒性の塊のような物であるのに対して散布前の鱗粉は毒性がなく希少な薬として言い伝われているのでキングモスを探す組合員は少なからず存在するが未だに発見報告はないことになっている。
そもそも言い伝えではキングモスの姿形は残ってはおらず、ただのヴェノムモスをキングモスだと言い張って組合に持ち込む人もいるとか。
素材を手に取りはしゃぐおっさんにこのままだと永遠とはしゃいだままだと思い話し掛けた。
「おっさん!それでいるのか?それと一つ頼みたいことがある」
「全部売ってくれ!どの素材も一級品どころではない!そもそもこの素材はまだ儂くらいしか加工できんはずじゃ!・・・ん?頼みじゃと?なんじゃ?」
頼みがあると聞いてすぐに顔の緩みを元に戻すおっさん
「数本でいいから投げナイフにも使える短剣を打ってくれ。もちろんこの素材は全部やるよ。どうだ?」
「なんじゃ・・・そんなことか。そんくらいならいくらでも作ってやるわい。そうだな・・・3日後にまたこい」
「ありがとう。また来る」
そしてジグレイドは一先ず宿に戻ったのだった。
ジグレイドがおっさんに会いに行っている頃の組合では少し騒ぎになっていた。
「おい、聞いたか?」
「なにがだよ?」
「なんでもあの全身鎧男が帰ってきたらしいぜ?」
「は?誰だそれ?」
「覚えてねーのか?あの禍々しい鎧の男だよ」
「あー!あいつか!戻ってきたのか!?あいつ深緑の森に行くって言ってなかったか?」
「らしいぜ。確かに言っていたが逃げ帰ってきたんじゃねーか?」
「そうか!そうだよな!森の魔物にやられてどこぞで養生していたのかもな!ぎゃはははは」
そんな会話を繰り広げながら組合に併設された酒場で飲んだくれているパーティーがいた。その周りも似たような会話が繰り広げられいた。
その十数分後に件の鎧男が組合に現れた。
「・ ・・うっ。あれ?もう夜なのか!?」
本人はまったく自覚をしていなかったが身体は疲れ果てていたのだろう、ジグレイドは今は気づいていないが実は丸一日寝ていたのである。だがそんなことには気づかずジグレイドは昼過ぎくらいに寝たはずなのにもう夜か、仮眠とりすぎたなと思っていた。
宿の食堂に降りると案の定女将に心配された。
「大丈夫なのかい?ずっと寝ていたみたいだけど・・・」
「はい、仮眠のつもりだったんですけどね。まさか夜まで寝てしまうとは思いませんでした」
「え?気づいていないようだけど、君丸一日起きなかったんだよ」
「え・・・?じゃあ今は泊りにきた翌日ってことですか?」
「残念ながらそうなるね、今日の分の宿代は取らないからメシでも食べな!お腹空いているだろ?」
「ありがとうございます。じゃあ食事をお願いします」
「あいよ!席について待っていておくれ」
食事を終えたジグレイドは荷物を持って例の鍛冶師のところへ来ていた。
今度は床を持ち上げる様なことはせずに抜け道から店に入っていった。
「お?お前さんはヒュドラじゃないか!」
抜け道を出た直後にドワーフのおっさんに出くわした。そしてこの一言である。
「おい、俺は魔物になった覚えはないぞ!人聞きの悪いことを言うな!せっかく良いもん持ってきてやったのに・・・」
「お?なんだ?酒か?」
流石ドワーフ族は大の酒好きと言われているだけはある。
「なわけないだろ!?素材だよ!そ・ざ・い!あんたらドワーフ族は酒の事しか頭にないのか!?」
「なんじゃ?なにを当たり前のことを言っておるのだ」
「・・・」
「あー、なんじゃ・・・すまん。最近はここいらの酒は不味くてな、ちとおかしくなっておったわ」
ジグレイドの冷たい視線に耐え切れなくなったのか素直に謝ってきた。
「別にいいさ。それで素材はいるのか?」
「そうだな、儂くらいまでなると素材も一級品のもんじゃないと扱わんことにしておるのだ。まずはお前さんが持ってきたもん見せてくれんかの?」
「別に売りに来たわけじゃないが、まあいいか」
背負っていた背嚢を下ろし次々と魔物の素材を取り出した。
するとおっさんの顔がみるみる変わっていった。
「お、おい!お前さんどこに行ってきたのじゃ!?これらは明らかにヒュドラには劣るがどれも一級品以上の素材じゃないか!それにこいつはキングモスの鱗粉じゃないか!?どこでこれを!?」
キングモスは近付くだけで麻痺や毒、睡眠など様々な状態異常を引き起こす鱗粉を常時周囲に散布している。そのため気付かずに近付いたらいつの間にか殺されているという恐ろしい魔物として言い伝えられている。なぜ伝わっているだけなのかというとこの魔物を見て生き残っていた者が殆どおらず基本的に死んでいるからである。
だがキングモスが散布した鱗粉は毒性の塊のような物であるのに対して散布前の鱗粉は毒性がなく希少な薬として言い伝われているのでキングモスを探す組合員は少なからず存在するが未だに発見報告はないことになっている。
そもそも言い伝えではキングモスの姿形は残ってはおらず、ただのヴェノムモスをキングモスだと言い張って組合に持ち込む人もいるとか。
素材を手に取りはしゃぐおっさんにこのままだと永遠とはしゃいだままだと思い話し掛けた。
「おっさん!それでいるのか?それと一つ頼みたいことがある」
「全部売ってくれ!どの素材も一級品どころではない!そもそもこの素材はまだ儂くらいしか加工できんはずじゃ!・・・ん?頼みじゃと?なんじゃ?」
頼みがあると聞いてすぐに顔の緩みを元に戻すおっさん
「数本でいいから投げナイフにも使える短剣を打ってくれ。もちろんこの素材は全部やるよ。どうだ?」
「なんじゃ・・・そんなことか。そんくらいならいくらでも作ってやるわい。そうだな・・・3日後にまたこい」
「ありがとう。また来る」
そしてジグレイドは一先ず宿に戻ったのだった。
ジグレイドがおっさんに会いに行っている頃の組合では少し騒ぎになっていた。
「おい、聞いたか?」
「なにがだよ?」
「なんでもあの全身鎧男が帰ってきたらしいぜ?」
「は?誰だそれ?」
「覚えてねーのか?あの禍々しい鎧の男だよ」
「あー!あいつか!戻ってきたのか!?あいつ深緑の森に行くって言ってなかったか?」
「らしいぜ。確かに言っていたが逃げ帰ってきたんじゃねーか?」
「そうか!そうだよな!森の魔物にやられてどこぞで養生していたのかもな!ぎゃはははは」
そんな会話を繰り広げながら組合に併設された酒場で飲んだくれているパーティーがいた。その周りも似たような会話が繰り広げられいた。
その十数分後に件の鎧男が組合に現れた。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説

【蒼き月の輪舞】 モブにいきなりモテ期がきました。そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!
黒木 鳴
BL
「これが人生に三回訪れるモテ期とかいうものなのか……?そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!そして俺はモブっ!!」アクションゲームの世界に転生した主人公ラファエル。ゲームのキャラでもない彼は清く正しいモブ人生を謳歌していた。なのにうっかりゲームキャラのイケメン様方とお近づきになってしまい……。実は有能な無自覚系お色気包容主人公が年下イケメンに懐かれ、最強隊長には迫られ、しかも王子や戦闘部隊の面々にスカウトされます。受け、攻め、人材としても色んな意味で突然のモテ期を迎えたラファエル。生態系トップのイケメン様たちに狙われたモブの運命は……?!固定CPは主人公×年下侯爵子息。くっついてからは甘めの溺愛。

美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛
らがまふぃん
恋愛
人の心を持たない美しく残酷な公爵令息エリアスト。学園祭で伯爵令嬢アリスと出会ったことから、エリアストの世界は変わっていく。 ※残酷な表現があります。苦手な方はご遠慮ください。ご都合主義です。笑ってご容赦くださいませ。 *R5.1/28本編完結しました。数話お届けいたしました番外編、R5.2/9に最終話投稿いたしました。時々思い出してまた読んでくださると嬉しいです。ありがとうございました。 たくさんのお気に入り登録、エール、ありがとうございます!とても励みになります!これからもがんばって参ります! ※R5.6/1続編 美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛 投稿いたしました。再度読み返してくださっている方、新たに読み始めてくださった方、すべての方に感謝申し上げます。これからもよろしくお願い申し上げます。 ※R5.7/24お気に入り登録200突破記念といたしまして、感謝を込めて一話お届けいたします。 ※R5.10/29らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R5.11/12お気に入り登録300突破記念といたしまして、感謝を込めて一話お届けいたします。 ※R6.1/27こちらの作品と、続編 美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れる程の愛(前作) の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.10/29に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。
※R6.11/17お気に入り登録500突破記念といたしまして、感謝を込めて一話お届けいたします。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる
けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ
俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる
だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております

私は、忠告を致しましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。
ロマーヌ様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
いい子ちゃんなんて嫌いだわ
F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが
聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。
おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。
どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。
それが優しさだと思ったの?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる