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48話
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671年 秋 カザフ要塞都市にて
「と、止まれ!」
そんな叫び声を上げたのはカザフ要塞都市で門衛を務め始めた新人門衛だった。
「あ?組合登録証なら後で見せるが?」
もちろん門衛に止められたのは禍々しい鎧を身に纏ってその背には巨大な背嚢を背負っているジグレイドであった。
「貴様その背にあるものはなんだ!?正直に答えろ!」
高圧的な口調とは裏腹に腰が引けてビビりまくっている門衛にため息を吐き出して無視する。
「き、貴様!?賊だっ!」
無視して進もうとするジグレイドに門衛は賊だと決めつけて増援を求めるために大声を上げた。
すると門の方からガシャガシャと鎧を鳴らしながら門衛が10人走ってこちらに向かってきた。
実は今ジグレイドがいる場所はまだ門ではなく門まであと30メルほどあったのである。
「もう貴様は終わりだ!だが貴様は俺様の役には立ったぞ。俺様が門衛に飛ばされてから数日で手柄を立てられたのだからな!光栄に思うがいい!」
だがそんなことを喚いている門衛をやはり無視して門へと歩くジグレイドだったが、駆け寄ってきた他の門衛に止められてしまった。槍と剣を向けられながら。
「お前が賊か?」
「何故かそうなっているな。俺は歩いてカザフ要塞まで来ただけだというのにな」
おそらく門衛のまとめ役の男に肩を竦めて答える。
「ベルデン男爵!どうだ!?賊を捕らえたぞ!流石ワマル伯爵家だろう?ノストフェレス公爵家にはきちんと俺様の手柄だと伝えておけよ!」
まだ捕らえてもいないし、ましてや賊とも判明していないのにそんなことを言うのはケーリッヒ・ワマルである。
ケーリッヒはもともと近衛兵見習いであったのだが度重なる狼藉により門衛での更生をノストフェレス公爵から直々にアーノルドに言い渡されたのであった。
アーノルドとは門衛のまとめ役のベルデン男爵家の次男である。
手柄を立てたと叫ぶケーリッヒにアーノルドはため息を吐き質問した。
「ケーリッヒ、なぜ彼が賊だと思った?理由を教えてくれ」
優しく問いただすアーノルドだったが、呼び捨てが気に食わないのかケーリッヒは怒鳴りだした。
「あ?男爵家ごときが伯爵家の俺様を呼び捨てにするだと!?まとめ役だからって調子に乗ってんのか?」
「アーノルド隊長、ここは私たちが引き継ぎますのであれの対処をお願いします」
アーノルドと一緒に駆け寄ってきた門衛が面倒ごとを隊長のアーノルドに任せて自分たちはそそくさとジグレイドの対処を始めてしまった。
結局ジグレイドは賊ではないということがすぐに分かった。なぜなら門衛の中にはジグレイドがカザフ要塞都市から深緑の森へと向かうときに対応した者がいたからである。
あっさりと解放されたジグレイドはもう組合に出向く気にもならなかったので前回お世話になった宿へと向かって歩き出した。
宿に着いたジグレイドは扉を押し開けて中に入っていった。
「いらっ・・・しゃい!泊まりかい?」
宿の女将は途中言葉が詰まっていたがなんとか持ちこたえたようだ。だがあんなに迷惑かけたのに俺のこと覚えてないのだろうかと思ったが、すぐにヘルムを被っていることを思い出した。
「流石にこのままだと分からないか・・・お久しぶりです。また泊まってもいいですか?」
「おや?君はあの時の傭兵さんかい?随分と逞しくなったねー。もちろんだよ!食事はどうするんだい?」
「そうですか?変わったところといえば装備くらいなものだと思いますが・・・。あー、今日は部屋でもいいですか?疲れたのでゆっくり食事したいです」
「自分では分からないものさ。わかった、部屋まで持っていくよ。部屋はそうだね・・・前の部屋でもいいかい?」
「はい、大丈夫です」
そして部屋に入ったジグレイドは疲れていたので少しだけ仮眠をとることにしたのだった。
「と、止まれ!」
そんな叫び声を上げたのはカザフ要塞都市で門衛を務め始めた新人門衛だった。
「あ?組合登録証なら後で見せるが?」
もちろん門衛に止められたのは禍々しい鎧を身に纏ってその背には巨大な背嚢を背負っているジグレイドであった。
「貴様その背にあるものはなんだ!?正直に答えろ!」
高圧的な口調とは裏腹に腰が引けてビビりまくっている門衛にため息を吐き出して無視する。
「き、貴様!?賊だっ!」
無視して進もうとするジグレイドに門衛は賊だと決めつけて増援を求めるために大声を上げた。
すると門の方からガシャガシャと鎧を鳴らしながら門衛が10人走ってこちらに向かってきた。
実は今ジグレイドがいる場所はまだ門ではなく門まであと30メルほどあったのである。
「もう貴様は終わりだ!だが貴様は俺様の役には立ったぞ。俺様が門衛に飛ばされてから数日で手柄を立てられたのだからな!光栄に思うがいい!」
だがそんなことを喚いている門衛をやはり無視して門へと歩くジグレイドだったが、駆け寄ってきた他の門衛に止められてしまった。槍と剣を向けられながら。
「お前が賊か?」
「何故かそうなっているな。俺は歩いてカザフ要塞まで来ただけだというのにな」
おそらく門衛のまとめ役の男に肩を竦めて答える。
「ベルデン男爵!どうだ!?賊を捕らえたぞ!流石ワマル伯爵家だろう?ノストフェレス公爵家にはきちんと俺様の手柄だと伝えておけよ!」
まだ捕らえてもいないし、ましてや賊とも判明していないのにそんなことを言うのはケーリッヒ・ワマルである。
ケーリッヒはもともと近衛兵見習いであったのだが度重なる狼藉により門衛での更生をノストフェレス公爵から直々にアーノルドに言い渡されたのであった。
アーノルドとは門衛のまとめ役のベルデン男爵家の次男である。
手柄を立てたと叫ぶケーリッヒにアーノルドはため息を吐き質問した。
「ケーリッヒ、なぜ彼が賊だと思った?理由を教えてくれ」
優しく問いただすアーノルドだったが、呼び捨てが気に食わないのかケーリッヒは怒鳴りだした。
「あ?男爵家ごときが伯爵家の俺様を呼び捨てにするだと!?まとめ役だからって調子に乗ってんのか?」
「アーノルド隊長、ここは私たちが引き継ぎますのであれの対処をお願いします」
アーノルドと一緒に駆け寄ってきた門衛が面倒ごとを隊長のアーノルドに任せて自分たちはそそくさとジグレイドの対処を始めてしまった。
結局ジグレイドは賊ではないということがすぐに分かった。なぜなら門衛の中にはジグレイドがカザフ要塞都市から深緑の森へと向かうときに対応した者がいたからである。
あっさりと解放されたジグレイドはもう組合に出向く気にもならなかったので前回お世話になった宿へと向かって歩き出した。
宿に着いたジグレイドは扉を押し開けて中に入っていった。
「いらっ・・・しゃい!泊まりかい?」
宿の女将は途中言葉が詰まっていたがなんとか持ちこたえたようだ。だがあんなに迷惑かけたのに俺のこと覚えてないのだろうかと思ったが、すぐにヘルムを被っていることを思い出した。
「流石にこのままだと分からないか・・・お久しぶりです。また泊まってもいいですか?」
「おや?君はあの時の傭兵さんかい?随分と逞しくなったねー。もちろんだよ!食事はどうするんだい?」
「そうですか?変わったところといえば装備くらいなものだと思いますが・・・。あー、今日は部屋でもいいですか?疲れたのでゆっくり食事したいです」
「自分では分からないものさ。わかった、部屋まで持っていくよ。部屋はそうだね・・・前の部屋でもいいかい?」
「はい、大丈夫です」
そして部屋に入ったジグレイドは疲れていたので少しだけ仮眠をとることにしたのだった。
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