43 / 126
42話
しおりを挟む
翌日、装備を整えたジグレイドは昼前頃組合に訪れていた。
もちろん依頼を探しにである。
「おい、あいつ誰だ?随分とやばそうな感じがするけどよ・・・」
「知るわけねーだろ、お前話し掛けてこいよ」
「バカ、俺に押し付けんなよ!あんな禍々しいもん身に着けてる奴になんて近寄りたくもねーよ!」
などとジグレイドが組合に入ってきただけで組合の中にいた人たちがザワザワと騒ぎだしているが、そんなことなどどうでもいいかのように反応もせずに受付へと向かった。
「ほ、本日はどのようなご、ご用件で?」
ビクビクと声と身体を震わせながら聞いてくる受付嬢に少し疑問と不快感を覚えるがそれも気にせずに
「深緑の森の依頼を受けたい、魔物を討伐できる依頼で急ぎではないものを見繕ってくれないか?」
そう言った禍々しい鎧を身に着けた男に様子を窺っていた周りの人たちは更にザワザワと騒ぎだした。
「し、深緑の森はとても危険な場所なのであ、あまりお勧めはしないのですが・・・」
未だにビクビクしながら対応してくる受付嬢にイライラしながらジグレイドは少し威圧しながら推せばなにかしら依頼を見繕ってくれるだろうと考えた。
「承知の上で言っているんだ、依頼がないのであればそう言ってくれて構わない。その場合は依頼を受けずに行くことにする。それであるのか?」
「ひっ!す、すみません!い、依頼は採取系しかないのです。ご、ごめんなさいです!」
何故か物凄い勢いで謝りだしてしまった。もちろんジグレイドの見た目と威圧のせいなのだが・・・。
そんな受付嬢を放置して立ち去ろうとすると、奥の方から声がした。
「おやおや、うちの可愛い受付をあまり苛めないでほしいのだけどね」
そう言って奥から現れたのはカザフ要塞都市にある組合のユニオンマスターであった。
「別に苛めているわけではない、依頼を見繕ってもらおうとしていただけだ。問題などなにもないだろう?」
威圧などせずに見繕ってもらう分には問題はないのだが。
「カッカッカ、威圧していたくせに惚ける気か?」
「なに、この受付嬢にずっと気もそぞろな対応されていたからな、受付嬢としてその対応はいかがなものかと思ってな。少し喝を入れてあげようとしていただけじゃないか」
「気もそぞろね・・・おそらくあんたの姿を怖がっていただけだと思うよ。それにそんなことはあんたみたいな一組合員の仕事じゃないね」
「は?怖がる?なぜ?」
「あんた鏡を見ないのかい?恐ろしい見た目しておるよ?」
ユニオンマスターにそう言われ『そういえば装備新調したんだったな、馴染み過ぎていて忘れていたな』と内心で思い出した。
「そういえばこの装備は見た目が少し厳つかったな・・・まあ装備の見た目で怯える受付嬢もどうかと思うがな」
いろいろと容赦なく言うジグレイドにユニオンマスターは呆気にとられるが、さっさと対応したほうがいいと考えた。
「そう言われてしまうと困ってしまうね。あとでこの子は教育し直しておくから勘弁してやってくれないかい?さて!あんたは何の依頼を受けにきたんだい?」
気をとりなして未だに震えている受付嬢の代わりを務めようとしたのだが、
「いや、もういい。どうやら俺の受けたかった依頼はないようだしな」
そう言って立ち去るジグレイドを口を開けて見送ることしかできなかったのだ。
ジグレイドが出ていった後の組合では我に返ったユニオンマスターが震えている受付嬢に事情を聴いていた。
「それであの男はどんな依頼を探していたんだい?」
「それが・・・その、深緑の森のしかも討伐系の依頼でして・・・」
「ほう、あの男は死にたがりか何かかな?それで・・・あんたはいつまで震えてんだい?」
未だにビクビクと震えている受付嬢を見て『見た目で怯えるのはどうなのかね?受付から外すかね?』と考えていた。
組合の受付嬢は組合の看板ともいえる存在である。
その上給料も高いため競争率が高く誰もが簡単に就くことができる仕事ではない。例外も存在するが大抵は美人で忍耐強く愛想のよい人物にしか就くことができないのである。もちろん頭が良いことは絶対条件である。
震えている受付嬢はカザフ要塞都市の組合において久方ぶりの新人受付嬢であったのだが、今回の一件で受付嬢を辞めさせられ書類整理などの中の仕事をすることになったのだった。
もちろん依頼を探しにである。
「おい、あいつ誰だ?随分とやばそうな感じがするけどよ・・・」
「知るわけねーだろ、お前話し掛けてこいよ」
「バカ、俺に押し付けんなよ!あんな禍々しいもん身に着けてる奴になんて近寄りたくもねーよ!」
などとジグレイドが組合に入ってきただけで組合の中にいた人たちがザワザワと騒ぎだしているが、そんなことなどどうでもいいかのように反応もせずに受付へと向かった。
「ほ、本日はどのようなご、ご用件で?」
ビクビクと声と身体を震わせながら聞いてくる受付嬢に少し疑問と不快感を覚えるがそれも気にせずに
「深緑の森の依頼を受けたい、魔物を討伐できる依頼で急ぎではないものを見繕ってくれないか?」
そう言った禍々しい鎧を身に着けた男に様子を窺っていた周りの人たちは更にザワザワと騒ぎだした。
「し、深緑の森はとても危険な場所なのであ、あまりお勧めはしないのですが・・・」
未だにビクビクしながら対応してくる受付嬢にイライラしながらジグレイドは少し威圧しながら推せばなにかしら依頼を見繕ってくれるだろうと考えた。
「承知の上で言っているんだ、依頼がないのであればそう言ってくれて構わない。その場合は依頼を受けずに行くことにする。それであるのか?」
「ひっ!す、すみません!い、依頼は採取系しかないのです。ご、ごめんなさいです!」
何故か物凄い勢いで謝りだしてしまった。もちろんジグレイドの見た目と威圧のせいなのだが・・・。
そんな受付嬢を放置して立ち去ろうとすると、奥の方から声がした。
「おやおや、うちの可愛い受付をあまり苛めないでほしいのだけどね」
そう言って奥から現れたのはカザフ要塞都市にある組合のユニオンマスターであった。
「別に苛めているわけではない、依頼を見繕ってもらおうとしていただけだ。問題などなにもないだろう?」
威圧などせずに見繕ってもらう分には問題はないのだが。
「カッカッカ、威圧していたくせに惚ける気か?」
「なに、この受付嬢にずっと気もそぞろな対応されていたからな、受付嬢としてその対応はいかがなものかと思ってな。少し喝を入れてあげようとしていただけじゃないか」
「気もそぞろね・・・おそらくあんたの姿を怖がっていただけだと思うよ。それにそんなことはあんたみたいな一組合員の仕事じゃないね」
「は?怖がる?なぜ?」
「あんた鏡を見ないのかい?恐ろしい見た目しておるよ?」
ユニオンマスターにそう言われ『そういえば装備新調したんだったな、馴染み過ぎていて忘れていたな』と内心で思い出した。
「そういえばこの装備は見た目が少し厳つかったな・・・まあ装備の見た目で怯える受付嬢もどうかと思うがな」
いろいろと容赦なく言うジグレイドにユニオンマスターは呆気にとられるが、さっさと対応したほうがいいと考えた。
「そう言われてしまうと困ってしまうね。あとでこの子は教育し直しておくから勘弁してやってくれないかい?さて!あんたは何の依頼を受けにきたんだい?」
気をとりなして未だに震えている受付嬢の代わりを務めようとしたのだが、
「いや、もういい。どうやら俺の受けたかった依頼はないようだしな」
そう言って立ち去るジグレイドを口を開けて見送ることしかできなかったのだ。
ジグレイドが出ていった後の組合では我に返ったユニオンマスターが震えている受付嬢に事情を聴いていた。
「それであの男はどんな依頼を探していたんだい?」
「それが・・・その、深緑の森のしかも討伐系の依頼でして・・・」
「ほう、あの男は死にたがりか何かかな?それで・・・あんたはいつまで震えてんだい?」
未だにビクビクと震えている受付嬢を見て『見た目で怯えるのはどうなのかね?受付から外すかね?』と考えていた。
組合の受付嬢は組合の看板ともいえる存在である。
その上給料も高いため競争率が高く誰もが簡単に就くことができる仕事ではない。例外も存在するが大抵は美人で忍耐強く愛想のよい人物にしか就くことができないのである。もちろん頭が良いことは絶対条件である。
震えている受付嬢はカザフ要塞都市の組合において久方ぶりの新人受付嬢であったのだが、今回の一件で受付嬢を辞めさせられ書類整理などの中の仕事をすることになったのだった。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました
常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。
裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。
ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。
異世界日帰りごはん【料理で王国の胃袋を掴みます!】
ちっき
ファンタジー
【書籍化決定しました!】
異世界に行った所で政治改革やら出来るわけでもなくチートも俺TUEEEE!も無く異世界での日常を全力で楽しむ女子高生の物語。
暇な時に異世界ぷらぷら遊びに行く日常にちょっとだけ楽しみが増える程度のスパイスを振りかけて。そんな気分でおでかけしてるのに王国でドタパタと、スパイスってそれ何万スコヴィルですか!

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!
とあるおっさんのVRMMO活動記
椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。
念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。
戦闘は生々しい表現も含みます。
のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。
また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり
一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が
お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。
また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や
無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

神様のミスで女に転生したようです
結城はる
ファンタジー
34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。
いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。
目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。
美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい
死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。
気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。
ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。
え……。
神様、私女になってるんですけどーーーー!!!
小説家になろうでも掲載しています。
URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております

ブラック・スワン ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~
碧
ファンタジー
「詰んだ…」遠い眼をして呟いた4歳の夏、カイザーはここが乙女ゲーム『亡国のレガリアと王国の秘宝』の世界だと思い出す。ゲームの俺様攻略対象者と我儘悪役令嬢の兄として転生した『無能』なモブが、ブラコン&シスコンへと華麗なるジョブチェンジを遂げモブの壁を愛と努力でぶち破る!これは優雅な白鳥ならぬ黒鳥の皮を被った彼が、無自覚に周りを誑しこんだりしながら奮闘しつつ総愛され(慕われ)する物語。生まれ持った美貌と頭脳・身体能力に努力を重ね、財力・身分と全てを活かし悪役令嬢ルート阻止に励むカイザーだがある日謎の能力が覚醒して…?!更にはそのミステリアス超絶美形っぷりから隠しキャラ扱いされたり、様々な勘違いにも拍車がかかり…。鉄壁の微笑みの裏で心の中の独り言と突っ込みが炸裂する彼の日常。(一話は短め設定です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる