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35話
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翌日、奴隷小屋がもぬけの殻だと見つけた兵士がログのテントに駆け込んできた。
「ログ将軍、大変です!亜人の奴隷が昨夜のうちにいなくなりました!」
「・・・。」
実は知っているのだが、ログは自分が演技出来ないことをよく分かっていたため悩んでいる風に頭に手を当てて黙っていることにした。
「あ、あの将軍どうしましょう?」
沈黙に耐えられなかったのか兵士が聞いてくる。
「ふむ、そもそもなぜ逃げられたのだ?奴隷小屋には見張りがいたはずだが?そいつらはどうしたのだ?それにどうやって脱出したのだ?門衛はなにをしているのだ?・・・色々問い詰めたいことはあるが、まずは残った奴隷の数を調べてきてくれ。よもや奴隷全員がいなくなったわけではあるまい。奴隷の数によっては撤退もあり得るから漏れのないよう調べてくれ」
今回ここには奴隷およそ800名連れてきていた。その内亜人奴隷はおよそ600名だった。亜人奴隷が全ていなくなっていたとしたら、先日の戦いで亡くなった兵士も合わせるとおよそ1000名が1日の内に戦力として削られたことになる。
先日の戦いでは殆どフェイシル王国側には被害が出せなかった。ただでさえ戦力差があったというのに更に広がったのだ。最悪の状況で1000対3300・・・3倍以上の差なのだ。いくらログが独りで何百と敵を薙ぎ倒し奮戦しても盛り返せる差ではないのだ。
ログはとりあえず顔を洗い着替えを済ませて食事をとっていると再び兵士が駆け込んできた。
「報告します!奴隷824名の内、逃走したもしくは殺されていた者を除きますと179名の奴隷が残っておりました!主に逃走した奴隷は亜人だと思われます!」
逃走したことは知っていたがよもや殺されている者がいることはさすがに知らなかったので驚愕して勢いよく立ち上がり兵士を問いただした。
「なんだと!?奴隷が殺されていたのか!?残っていた奴隷からはなにか聞き出せたのか?」
「はい、38名分の死体がありました。現在残っている奴隷から事情を聞き出しているとのことです」
「その38名の中に亜人の死体はあったのか?」
「詳しくはまだ調べておりませんので断言はできかねますが、おそらくは亜人の死体はなかったはずです」
「そうか、報告ご苦労だった。引き続き調査を頼む。特にどうやって脱走したのかが知りたい」
兵士にそう言うとログは椅子に座り直し、頭を抱えて悩みだした。
『なぜだ・・・あのハヌマエンとか呼ばれていた男は救出が目的だと言っていたではないか!いや、その隣にいた男は随分と過激な思考をしていたな。あやつと似たような思考の奴が人族の奴隷を殺したのか?わからん!わからないことだらけだ!そもそも俺はこういう頭で考えることは苦手なのだ!・・・頼りになる文官が欲しいものだ』と頭の中で考えていた。特に最後の文官の部分は切望していると言ってもよかった。
少し思考放棄していたログに新たな報告がきた。
「報告します!奴隷から聞き出した情報によりますと、奴隷を連れ出した者がいるそうです。そしてそれが亜人であることも分かっており、その数は数十の集団だったそうです。殺された原因については、亜人奴隷ばかりが牢から助け出される光景を見た他の奴隷が文句を言ったらしく、文句を言った奴隷は容赦なく殺されたそうです。ただその後に同じ牢に入っていた奴隷も亜人奴隷を除き殺されたそうです」
「なるほど・・・なぜ同じ牢にいた奴隷も殺したのか理由は判明しているのか?」
「理由は、その・・・なんでも憂さ晴らしだと言っているのを聞いた奴隷が複数いました。真偽は定かではありませんが・・・」
信じられないのか少したどたどしく報告してきた兵士にログは「そうか、ご苦労だった」と言い下がらせた。
その後、侵入経路も脱出経路も判らずログは更に頭を抱えることになった。
そして亜人奴隷の逃亡から2日後の朝、ログは帝国へと撤退することを宣言して翌日には撤退を開始した。
「ログ将軍、大変です!亜人の奴隷が昨夜のうちにいなくなりました!」
「・・・。」
実は知っているのだが、ログは自分が演技出来ないことをよく分かっていたため悩んでいる風に頭に手を当てて黙っていることにした。
「あ、あの将軍どうしましょう?」
沈黙に耐えられなかったのか兵士が聞いてくる。
「ふむ、そもそもなぜ逃げられたのだ?奴隷小屋には見張りがいたはずだが?そいつらはどうしたのだ?それにどうやって脱出したのだ?門衛はなにをしているのだ?・・・色々問い詰めたいことはあるが、まずは残った奴隷の数を調べてきてくれ。よもや奴隷全員がいなくなったわけではあるまい。奴隷の数によっては撤退もあり得るから漏れのないよう調べてくれ」
今回ここには奴隷およそ800名連れてきていた。その内亜人奴隷はおよそ600名だった。亜人奴隷が全ていなくなっていたとしたら、先日の戦いで亡くなった兵士も合わせるとおよそ1000名が1日の内に戦力として削られたことになる。
先日の戦いでは殆どフェイシル王国側には被害が出せなかった。ただでさえ戦力差があったというのに更に広がったのだ。最悪の状況で1000対3300・・・3倍以上の差なのだ。いくらログが独りで何百と敵を薙ぎ倒し奮戦しても盛り返せる差ではないのだ。
ログはとりあえず顔を洗い着替えを済ませて食事をとっていると再び兵士が駆け込んできた。
「報告します!奴隷824名の内、逃走したもしくは殺されていた者を除きますと179名の奴隷が残っておりました!主に逃走した奴隷は亜人だと思われます!」
逃走したことは知っていたがよもや殺されている者がいることはさすがに知らなかったので驚愕して勢いよく立ち上がり兵士を問いただした。
「なんだと!?奴隷が殺されていたのか!?残っていた奴隷からはなにか聞き出せたのか?」
「はい、38名分の死体がありました。現在残っている奴隷から事情を聞き出しているとのことです」
「その38名の中に亜人の死体はあったのか?」
「詳しくはまだ調べておりませんので断言はできかねますが、おそらくは亜人の死体はなかったはずです」
「そうか、報告ご苦労だった。引き続き調査を頼む。特にどうやって脱走したのかが知りたい」
兵士にそう言うとログは椅子に座り直し、頭を抱えて悩みだした。
『なぜだ・・・あのハヌマエンとか呼ばれていた男は救出が目的だと言っていたではないか!いや、その隣にいた男は随分と過激な思考をしていたな。あやつと似たような思考の奴が人族の奴隷を殺したのか?わからん!わからないことだらけだ!そもそも俺はこういう頭で考えることは苦手なのだ!・・・頼りになる文官が欲しいものだ』と頭の中で考えていた。特に最後の文官の部分は切望していると言ってもよかった。
少し思考放棄していたログに新たな報告がきた。
「報告します!奴隷から聞き出した情報によりますと、奴隷を連れ出した者がいるそうです。そしてそれが亜人であることも分かっており、その数は数十の集団だったそうです。殺された原因については、亜人奴隷ばかりが牢から助け出される光景を見た他の奴隷が文句を言ったらしく、文句を言った奴隷は容赦なく殺されたそうです。ただその後に同じ牢に入っていた奴隷も亜人奴隷を除き殺されたそうです」
「なるほど・・・なぜ同じ牢にいた奴隷も殺したのか理由は判明しているのか?」
「理由は、その・・・なんでも憂さ晴らしだと言っているのを聞いた奴隷が複数いました。真偽は定かではありませんが・・・」
信じられないのか少したどたどしく報告してきた兵士にログは「そうか、ご苦労だった」と言い下がらせた。
その後、侵入経路も脱出経路も判らずログは更に頭を抱えることになった。
そして亜人奴隷の逃亡から2日後の朝、ログは帝国へと撤退することを宣言して翌日には撤退を開始した。
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