31 / 126
31話
しおりを挟む
訓練場には兵士を始め組合員も素振りから始まり木人形を木剣で叩いたりしていた。
この中で模擬戦をしているものはいなかったが、模擬戦のスペースにモルドが歩いていくと、
「おや?モルドさんが模擬戦ですか?可哀想な相手はどなたですか?」
立派な鎧を着た兵士がモルドに話しかけた。
「後ろにいるだろ?てことで少しスペース空けてくれよ」
訓練場にいた人はみな驚いたことだろう、あのモルドとの模擬戦なのだ。誰しもが屈強な戦士を想像していたが、後ろにいたのは少し癖のある黒髪で鮮やかな緑色の瞳をしたまだ十代と思える男であったのだ。
周りが何に驚いているのかがわかっているジグレイドは舌打ちをしつつ、模擬戦のスペースに進み出た。
「さて、一応ルール説明必要だよな?殺しなし、刃引きされてなかったら寸止めだが今回は木製だから気にしないでいい、あと卑怯な行為は禁止、あとは・・・そうそう決着方法は審判の裁量によるものとするだったかな?今回の審判はこいつにしてもらう。こう見えて部隊長だから強いぞ。何か聞きたいことはあるか?」
『うろ覚えなのかよ!』とか思ったがどうでもいいかと思い直し、質問はないと答えた。
「よし、じゃあ適当な距離をとってから模擬戦の開始だ!ジグレイド、本気で来いよ!じゃあ合図は任せたぞ、部隊長殿」
そう言って距離を取るモルドを見送って自分も適当な距離を取った。
「では、模擬戦・・・はじめっ!」
部隊長の合図とともにモルドは詠唱を開始した。
「“火よ 火よ 偉大なる火よ その姿を炎に変じて 我が身 我が武器に宿れ バーンフォース”!」
炎に包まれたモルドを周りの野次馬が驚きの声を上げる(もちろん魔法を使ったことに対して)が、ジグレイドはモルドの詠唱を止めようともせずに眺めていた。
「随分と余裕じゃねーか!それとも魔法を止める必要もないとでもいうのか?」
まだ戦闘が始まったばかりだというのにもうテンション上がっているのか、ジグレイドを挑発するがなぜか自分も苛ついているモルド
「いや、単純にどんな魔法か知らなかっただけですよ。それにモルドさんが魔法使えるなんて知りませんでしたし、ね!」
話し終わると同時に身体強化魔法を使いモルドとの距離を一気に詰めて槍で薙ぎ払おうとするが、
「甘いぞ!おっらあっ!」
直線距離で詰めたせいなのか簡単にカウンター気味に木大剣を振り下ろしてきた。
「ふん!」
盾を使いうまく受け流すが、すぐさま炎を纏った足で回し蹴りを放ってきた。さすがに避けきれずに盾で受け止める。
“ガンッ”と音がして身体が僅かな浮遊感を感じた後に腕が少し痺れだすが、腕よりもどちらかと言えばモルドが発している熱の方がどうにかしないといけない。
『熱すぎるだろあれ!本人は熱くないってずるいぞ!』と愚痴りたくなるが吸い込む空気も熱せられ熱いため、やむなく距離を取った。
「おいおい、逃げるのか?」
距離を取ったジグレイドを挑発してくるが、気にも留めず集中する。少し息を吐き、魔素の吸収を最大まで強める。
「いきます・・・」
ジグレイドは静かに動いた。静かではあるもののその速度は観客(野次馬の人々)が視認できない速度であり瞬きの間にモルドに接近した。
今度はフェイントを織り交ぜており本命は左側面から盾の強打、右斜め下から左上に目掛けての薙ぎ払いであった。
さすがのモルドも瞬きの瞬間に移動されては見失ってしまう。慌てて後方から襲い掛かる突きを防御するもそれはフェイントであり、力の入っていない突きであった。
フェイントに引っかかったモルドは防御姿勢による力みのせいで身体が一瞬硬直した。
その隙を見逃さずに左側面から、
「しっ!・・・はあああああ!」予定通り渾身の二連撃が決まる。
「ぐっ、がはああ!」堪えきれずにモルドは吹き飛ばされた。
追撃のために足に力を入れた瞬間、
「それまで!勝者は・・・えーっと・・・。・・・こちら!」
審判役の部隊長が模擬戦を終わらせて止めに入り、勝者としてジグレイドの名前を言おうとするが、名前を知らなかったのか悩みに悩んだ末にジグレイドに手を向けて「こちら!」と叫んで終わった。
何とも締まらない終わり方である。観客もみな部隊長にジト目を送っていた。
この中で模擬戦をしているものはいなかったが、模擬戦のスペースにモルドが歩いていくと、
「おや?モルドさんが模擬戦ですか?可哀想な相手はどなたですか?」
立派な鎧を着た兵士がモルドに話しかけた。
「後ろにいるだろ?てことで少しスペース空けてくれよ」
訓練場にいた人はみな驚いたことだろう、あのモルドとの模擬戦なのだ。誰しもが屈強な戦士を想像していたが、後ろにいたのは少し癖のある黒髪で鮮やかな緑色の瞳をしたまだ十代と思える男であったのだ。
周りが何に驚いているのかがわかっているジグレイドは舌打ちをしつつ、模擬戦のスペースに進み出た。
「さて、一応ルール説明必要だよな?殺しなし、刃引きされてなかったら寸止めだが今回は木製だから気にしないでいい、あと卑怯な行為は禁止、あとは・・・そうそう決着方法は審判の裁量によるものとするだったかな?今回の審判はこいつにしてもらう。こう見えて部隊長だから強いぞ。何か聞きたいことはあるか?」
『うろ覚えなのかよ!』とか思ったがどうでもいいかと思い直し、質問はないと答えた。
「よし、じゃあ適当な距離をとってから模擬戦の開始だ!ジグレイド、本気で来いよ!じゃあ合図は任せたぞ、部隊長殿」
そう言って距離を取るモルドを見送って自分も適当な距離を取った。
「では、模擬戦・・・はじめっ!」
部隊長の合図とともにモルドは詠唱を開始した。
「“火よ 火よ 偉大なる火よ その姿を炎に変じて 我が身 我が武器に宿れ バーンフォース”!」
炎に包まれたモルドを周りの野次馬が驚きの声を上げる(もちろん魔法を使ったことに対して)が、ジグレイドはモルドの詠唱を止めようともせずに眺めていた。
「随分と余裕じゃねーか!それとも魔法を止める必要もないとでもいうのか?」
まだ戦闘が始まったばかりだというのにもうテンション上がっているのか、ジグレイドを挑発するがなぜか自分も苛ついているモルド
「いや、単純にどんな魔法か知らなかっただけですよ。それにモルドさんが魔法使えるなんて知りませんでしたし、ね!」
話し終わると同時に身体強化魔法を使いモルドとの距離を一気に詰めて槍で薙ぎ払おうとするが、
「甘いぞ!おっらあっ!」
直線距離で詰めたせいなのか簡単にカウンター気味に木大剣を振り下ろしてきた。
「ふん!」
盾を使いうまく受け流すが、すぐさま炎を纏った足で回し蹴りを放ってきた。さすがに避けきれずに盾で受け止める。
“ガンッ”と音がして身体が僅かな浮遊感を感じた後に腕が少し痺れだすが、腕よりもどちらかと言えばモルドが発している熱の方がどうにかしないといけない。
『熱すぎるだろあれ!本人は熱くないってずるいぞ!』と愚痴りたくなるが吸い込む空気も熱せられ熱いため、やむなく距離を取った。
「おいおい、逃げるのか?」
距離を取ったジグレイドを挑発してくるが、気にも留めず集中する。少し息を吐き、魔素の吸収を最大まで強める。
「いきます・・・」
ジグレイドは静かに動いた。静かではあるもののその速度は観客(野次馬の人々)が視認できない速度であり瞬きの間にモルドに接近した。
今度はフェイントを織り交ぜており本命は左側面から盾の強打、右斜め下から左上に目掛けての薙ぎ払いであった。
さすがのモルドも瞬きの瞬間に移動されては見失ってしまう。慌てて後方から襲い掛かる突きを防御するもそれはフェイントであり、力の入っていない突きであった。
フェイントに引っかかったモルドは防御姿勢による力みのせいで身体が一瞬硬直した。
その隙を見逃さずに左側面から、
「しっ!・・・はあああああ!」予定通り渾身の二連撃が決まる。
「ぐっ、がはああ!」堪えきれずにモルドは吹き飛ばされた。
追撃のために足に力を入れた瞬間、
「それまで!勝者は・・・えーっと・・・。・・・こちら!」
審判役の部隊長が模擬戦を終わらせて止めに入り、勝者としてジグレイドの名前を言おうとするが、名前を知らなかったのか悩みに悩んだ末にジグレイドに手を向けて「こちら!」と叫んで終わった。
何とも締まらない終わり方である。観客もみな部隊長にジト目を送っていた。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。

二度目の転生は傍若無人に~元勇者ですが二度目『も』クズ貴族に囲まれていてイラッとしたのでチート無双します~
K1-M
ファンタジー
元日本人の俺は転生勇者として異世界で魔王との戦闘の果てに仲間の裏切りにより命を落とす。
次に目を覚ますと再び赤ちゃんになり二度目の転生をしていた。
生まれた先は下級貴族の五男坊。周りは貴族至上主義、人間族至上主義のクズばかり。
…決めた。最悪、この国をぶっ壊す覚悟で元勇者の力を使おう…と。
※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも掲載しています。
異世界日帰りごはん【料理で王国の胃袋を掴みます!】
ちっき
ファンタジー
【書籍化決定しました!】
異世界に行った所で政治改革やら出来るわけでもなくチートも俺TUEEEE!も無く異世界での日常を全力で楽しむ女子高生の物語。
暇な時に異世界ぷらぷら遊びに行く日常にちょっとだけ楽しみが増える程度のスパイスを振りかけて。そんな気分でおでかけしてるのに王国でドタパタと、スパイスってそれ何万スコヴィルですか!

最弱ユニークギフト所持者の僕が最強のダンジョン探索者になるまでのお話
亘善
ファンタジー
【点滴穿石】という四字熟語ユニークギフト持ちの龍泉麟瞳は、Aランクダンジョンの攻略を失敗した後にパーティを追放されてしまう。地元の岡山に戻った麟瞳は新たに【幸運】のスキルを得て、家族や周りの人達に支えられながら少しずつ成長していく。夢はSランク探索者になること。これは、夢を叶えるために日々努力を続ける龍泉麟瞳のお話である。
いい子ちゃんなんて嫌いだわ
F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが
聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。
おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。
どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。
それが優しさだと思ったの?

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします
藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です
2024年6月中旬に第一巻が発売されます
2024年6月16日出荷、19日販売となります
発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」
中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。
数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。
また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています
この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています
戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています
そんな世界の田舎で、男の子は産まれました
男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました
男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます
そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります
絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて……
この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです
各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます
そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる