おちゆく先に

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28話

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 モルドのとんでも発言にリーリャが
 「モルドさん、いくら何でもそれはないのでは?いくらエルフが生き残っていたとしても竜人は神罰によって滅ぼされたのですから、さすがに絶滅しているのでは?」

 度々出てくるこの昔話はおよそ3000年前の話である。言い伝えられてる話は
 『遥か昔、数多の種族が争いを繰り返しているのを悲しんだとある神は唯一争いをしていなかった竜人族に争いの仲裁を頼んだ。だが竜人族は神に頼まれたという免罪符を盾に戦場に現れては他種族を虐殺した。歯向かおうとしたが数多の種族がいても空を飛べるのは竜人族だけであり、空から一方的に攻撃されるためなすすべがなかった。そんな折、とある人族が虐殺の限りを尽くす竜人族を止めてくれと神に祈りを捧げていると、祈りが通じたのか天より数多の光の柱が大陸の各地に降り注いだ。その光は竜人族だけを貫き殺したと言われている。竜人族に神罰が下ったときにはもう数多の種族はすでに滅んだ後であり、生き残りである人族が世の中を平和に導いた。』
 とされている。もちろんこれは人族が自分たちにとって都合のいいことを盛り込みでっち上げた作り話である。
 ちなみに作り話ではないのは、争いを繰り返していたところだけである。

 「いや、そうでもないみたいだぞ。ジグレイド教えてくれないか?俺たちが足止めしている間に何が起きた?」
 モルドは半ば確信しているのか、ゆっくりと話すように促した。
 「モルドさんの予想通りだよ。俺たちが本陣まで走って逃げていたら空から15人くらいの竜人が降ってきた。奴らはエルフと仲間みたいで俺以外は次々と殺されていったよ。仕舞いにはサルシャを!囚われたサルシャを助けるために戦ったが歯も立たずに倒されたよ」
 所々省略しているようだが大筋は分かった。

 「ふむ、それではなぜお主は生きておるのだ?よもや竜人が殺し損ねたというわけではあるまい」
 当然の疑問を投げかけたのはローレンであった。
 「ははは、ふざけたことに奴らの中に知り合いとまではいかないが知った顔があったんですよ。俺とサルシャはお情けで生かされたんです。理由は知りませんがサルシャはやつらに連れ去られましたけど・・・」
 まさかの知り合い発言と未だにサルシャが生きていると思っているジグレイドに
 「あ、あのよ・・・言いにくいんだが、サルシャちゃんは死体で見つかったんだ」
 モルドが再度サルシャの死を告げるが、
 「いくらモルドさんでも許せる発言と許せない発言がありますよ・・・」

 いつの間にか立ち上がったジグレイドはモルドに掴み掛ろうとしたがローレンに腕をとられて組み伏せられていた。
 「ぐっ、なにをしやがる!?」
 その言葉でローレン以外の3人はジグレイドが床に組み伏せられているのに気が付いた。

 モルドは辛うじてジグレイドが掴み掛ったのは見えていたのだが
 「まじかよ、なんだ今の速さ・・・」
 「しょ、将軍、なぜジグレイド君を取り押さえているんですか?」
 「・・・。」
 上からモルド、リーリャの発言で、何も言わず成り行きを見守っているのがオウルーゼルである。

 「これが身体の筋肉が引き裂かれている者の力か?ありえんな・・・」
 そう驚愕しているのはジグレイドを組み伏せているローレンだが、ジグレイドのあまりの力に
 「すまぬ・・・」
 と一言の後、ジグレイドの体勢をうつぶせから引っ張り上げてその一瞬で腹に拳をめり込ませて気絶させた。
 あまりの早業に誰も気づいてなかったが、そんなこと気にも留めずにジグレイドをベッドに横たえた。

 「「「いつの間に・・・」」」

 3人とも同じ感想である。ローレンの拳打はモルドでさえ見えていなかった。
 「ありがとうございます、ジグレイドを止めてくれなければ俺はー・・・どうなっていたのでしょう?」
 思いがけない出来事だったからかモルドは礼を言いながらも動揺を隠せていなかった。
 「恐らくだが、お主は掴まれて殴り倒されていただろうな。少ししか反応出来てなかったお主を見て割り込ませてもらった」

 その言葉にモルドは俺もまだまだだなと痛感しつつ、ジグレイドのやつ強かったんだなと考えていた。
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