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25話
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夜警の人以外誰もが寝ているであろう深夜にジグレイドは目を覚ました。
「うっ・・・気絶していたのか」
今回は少しだけ冷静に状況を把握できてはいたが、未だにサルシャの死は受け入れられなかった。
殆ど動かない身体を無理やり魔素を吸収して動かして起き上がり、近くでリーリャが椅子に座りながら机に突っ伏して寝ているのが見えた。
普段の姿からは想像できない光景に、疲れていたのに回復魔法を使ってくれたのかと感謝しつつ立ち上がる。
身体のいたる所がミシミシと悲鳴を上げているが今は外に出たい気分だったため、無理やり身体を動かした。
テントの入り口に兵士が1人いたが器用にも長槍を杖にして立ちながら寝ていたため、気にせずにそのまま外に向かい歩き出した。
何度か兵士とすれ違うがトイレと思われているのか何も言われなかった。
人のいない場所を探して歩きまわっていると本陣の端に設置されている簡易の柵(と言っても3メル程あるが)に辿り着いていた。
「・・・なにやってるんだろ?・・・サルシャはあいつらに連れ去られただけだ、俺が弱かったばかりに!」
ジグレイドはサルシャがまだ生きていると思い込んでいるのか、はたまた思い込みたいのかザッハークに心臓を貫かれて持ち上げられている光景を気絶させたサルシャを持ち上げて連れ去ろうとしている光景だと思い込んでいた。
「あいつら!何のためにサルシャを!・・・理由なんてどうでもいい!必ず連れ戻す!」
新たな決意を胸にどうやったらあいつらを倒せるのか、そもそもどこに連れ去ったのかを朝になるまでぐるぐると柵を背にして座って考えていた。
リーリャは朝目が覚めるとジグレイドが居なくなっていることに気が付いた。
「え、なんで?・・・まさか兵士に連れていかれた!?」
一人では歩けないと思っていたリーリャはそんな勘違いをしつつ慌ててテントから飛び出した。
「うおっ!なんだ?どうしましたか?」
入り口にいた兵士はジグレイドが遠った後に目を覚まし、それからは眠気に負けず真面目に見張りをしていた。
「えっ・・・あの誰かジグレイド君を連れていきましたか?」
飛び出してきたリーリャに驚いている兵士にリーリャも驚いたが、すぐに尋ねたいことを尋ねた。
「いえ、誰も通しておりませんが・・・いかがなされましたか?」
「えっ・・・?」
また寝台から落ちているだけかと思い、テントに入り確認するがやはりいない。再びテントから飛び出して兵士を問い詰めた。
「ほんとに誰も出入りしてないのですね?それとあなたは一度でもこの場を離れましたか?」
矢継ぎ早に問われ、オロオロしている兵士が答えようとしたとき、
「おや、どうしたのだ?なにか問題でもあったのか?」
横から現れたのはローレン将軍であった。
「どうしたもこうしたもありません!ジグレイド君がいなくなっているのです!そのため夜中見張りをしてくださった兵士に幾つか質問をしているだけです!」
オロオロする兵士にイライラしているのか珍しく声を荒げるリーリャ
「落ち着け!リーリャらしくないぞ!将軍、申し訳ございません。うちのメンバーが無礼を」
リーリャの頭を無理やり下げさせて自分も将軍に頭を下げ謝罪したのは戦場の狼のリーダーモルドだった。
「いや、別に謝罪はいらぬ。聞くところによると彼女が慌てるのも頷けるからな・・・さて君、先ほどの質問に答えるのだ」
ローレンは頭を下げるモルドたちを改めさせて、兵士に話すように促した。
「はっ!私がここに立っていた間は誰もテントに出入りしておりません!・・・しかし、私が夜半に少し居眠りをしてしまったためその時間のことは判りかねます!申し訳ありません!」
兵士は後半を少し言い淀むが素直に白状し謝罪した。
「なるほど、ならばその短い刻限に本人もしくは何者かに連れられて出ていったということになるな・・・お主は門衛に事情を説明し彼らしき人物が通ったかどうか確認せよ!」
ローレンは素早く居眠りしていた兵士に指示を出した。
「うっ・・・気絶していたのか」
今回は少しだけ冷静に状況を把握できてはいたが、未だにサルシャの死は受け入れられなかった。
殆ど動かない身体を無理やり魔素を吸収して動かして起き上がり、近くでリーリャが椅子に座りながら机に突っ伏して寝ているのが見えた。
普段の姿からは想像できない光景に、疲れていたのに回復魔法を使ってくれたのかと感謝しつつ立ち上がる。
身体のいたる所がミシミシと悲鳴を上げているが今は外に出たい気分だったため、無理やり身体を動かした。
テントの入り口に兵士が1人いたが器用にも長槍を杖にして立ちながら寝ていたため、気にせずにそのまま外に向かい歩き出した。
何度か兵士とすれ違うがトイレと思われているのか何も言われなかった。
人のいない場所を探して歩きまわっていると本陣の端に設置されている簡易の柵(と言っても3メル程あるが)に辿り着いていた。
「・・・なにやってるんだろ?・・・サルシャはあいつらに連れ去られただけだ、俺が弱かったばかりに!」
ジグレイドはサルシャがまだ生きていると思い込んでいるのか、はたまた思い込みたいのかザッハークに心臓を貫かれて持ち上げられている光景を気絶させたサルシャを持ち上げて連れ去ろうとしている光景だと思い込んでいた。
「あいつら!何のためにサルシャを!・・・理由なんてどうでもいい!必ず連れ戻す!」
新たな決意を胸にどうやったらあいつらを倒せるのか、そもそもどこに連れ去ったのかを朝になるまでぐるぐると柵を背にして座って考えていた。
リーリャは朝目が覚めるとジグレイドが居なくなっていることに気が付いた。
「え、なんで?・・・まさか兵士に連れていかれた!?」
一人では歩けないと思っていたリーリャはそんな勘違いをしつつ慌ててテントから飛び出した。
「うおっ!なんだ?どうしましたか?」
入り口にいた兵士はジグレイドが遠った後に目を覚まし、それからは眠気に負けず真面目に見張りをしていた。
「えっ・・・あの誰かジグレイド君を連れていきましたか?」
飛び出してきたリーリャに驚いている兵士にリーリャも驚いたが、すぐに尋ねたいことを尋ねた。
「いえ、誰も通しておりませんが・・・いかがなされましたか?」
「えっ・・・?」
また寝台から落ちているだけかと思い、テントに入り確認するがやはりいない。再びテントから飛び出して兵士を問い詰めた。
「ほんとに誰も出入りしてないのですね?それとあなたは一度でもこの場を離れましたか?」
矢継ぎ早に問われ、オロオロしている兵士が答えようとしたとき、
「おや、どうしたのだ?なにか問題でもあったのか?」
横から現れたのはローレン将軍であった。
「どうしたもこうしたもありません!ジグレイド君がいなくなっているのです!そのため夜中見張りをしてくださった兵士に幾つか質問をしているだけです!」
オロオロする兵士にイライラしているのか珍しく声を荒げるリーリャ
「落ち着け!リーリャらしくないぞ!将軍、申し訳ございません。うちのメンバーが無礼を」
リーリャの頭を無理やり下げさせて自分も将軍に頭を下げ謝罪したのは戦場の狼のリーダーモルドだった。
「いや、別に謝罪はいらぬ。聞くところによると彼女が慌てるのも頷けるからな・・・さて君、先ほどの質問に答えるのだ」
ローレンは頭を下げるモルドたちを改めさせて、兵士に話すように促した。
「はっ!私がここに立っていた間は誰もテントに出入りしておりません!・・・しかし、私が夜半に少し居眠りをしてしまったためその時間のことは判りかねます!申し訳ありません!」
兵士は後半を少し言い淀むが素直に白状し謝罪した。
「なるほど、ならばその短い刻限に本人もしくは何者かに連れられて出ていったということになるな・・・お主は門衛に事情を説明し彼らしき人物が通ったかどうか確認せよ!」
ローレンは素早く居眠りしていた兵士に指示を出した。
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